魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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ドレーナの潜入秘話が明かされます…。


隠したかったこと…

 

 

 

 「え…、ドレーナがショウリンの…、ママ…?」

 

 

 「そ、そんな…。まさか…。」

 

 

 「ど、どういう事なの?暁彰…、私達にも分かるように説明して…。」

 

 

 あまりにも衝撃的な真実に唖然とし、この状況を一番理解しているであろう暁彰にみんなの視線が集中する…。

 

 注目を集めた暁彰は、唇を強く結んで考え込んだ後、深呼吸して、口を開く。

 

 

 「………間違いないよ、ドレーナは正真正銘、ショウリンの実の母親だ。」

 

 

 みんなの疑問を肯定し、暁彰が攻撃しようとしていたカバルレを『避雷針』で抑え込み、周囲に結界を張った。

 

 

 「これで邪魔は入らない…。早く今のうちに…!!」

 

 

 暁彰は、血相を変えた顔でみんなに声を掛け、急いでドレーナ達の元へ駆け寄る。

 

 みんなもいろいろ聞きたい事があったが、今は優先するべき事があると分かっていたから、言葉を飲み込み、暁彰の後ろをついていく。

 

 ドレーナに駆け寄る暁彰は、あの時の事を思い起こしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 

 ホームズ達を先に行かせて、炎獣たち全てを消し去り、ドレーナと一対一になった暁彰は、本題に入る。

 

 

 

 「やってくれたわね…。まぁ、分かっていたのだけど。

 

  それで、あなたはカバルレを倒すための切り札を失くしてしまったわね。」

 

 

 

 「ああ…、わかっている。でもまだ勝機は消えていないさ。

  

  それに、本当に君がだれを愛していて、守ろうとしているのか…。…も分かっている…。

 

 

  だから、俺はここで君と対峙しているんだ。」

 

 

 

 意味深な言葉を口にし、ドレーナに手を差し伸べる暁彰は、既に先を見通した眼差しをしていた。

 

 その眼差しを向けられたドレーナもため息を吐いて、アップしていた髪を下ろし、苦笑する。

 

 

 「……やっぱりタツヤ族って可愛げがないんだから。こういう時は知らずに、関わらないでもらいたいって言うのが分からない?」

 

 

 「可愛げがないのは、同感だ。しかし、君が隠していたい事は、俺だけで留めておける事ではないからな。」

 

 

 「そうやって何もかも見透かした感じが嫌なのよ。…私もだけど。

  はぁ~…、分かりました。いいわよ」

 

 

 拗ねた顔を見せ、腕組みし、そっぽを向くドレーナに今度は暁彰がため息を軽く吐き出し、一方的に話し始めた。

 しかしその話し方は説得や確認というより、読み聞かせのようだった。内容も、それに見合ったものだった…。

 

 

 「ドレーナ…、君は”SAMA(Secret Action Magic Agent)秘密実行魔法捜査官”として魔法師失踪事件を追っていた。そして、そこでこのサーカス団に辿り着き、潜入し、最終調査をしていた。もちろんSAMAのルール通り、華族には絶対に秘密で…。

  だが、それが裏目に出てしまった。どういう事か、君がここに潜入し、パフォーマーになっている事を知った君の夫がここに乗り込んできた。

  君は焦っただろう…。とにかく夫を帰らせようとおそらく知り合いから昔の伝手で手伝ってほしいと頼まれて今だけパフォーマーをしていると言って、なんとかその場を切り抜けた。

  しかし、君の夫はその帰路の途中で、きっと見てはいけない物を見てしまったんだ。例えば、闇取引…。しかも魔法師の奴隷を受け渡している現場…。

  それを目撃し、君の夫は君が魔法師であることを知っているため、君が奴隷にされると危機感を感じ、急いで君を連れ帰ろうとした。だが、それは敵わずに、敵に見つかり、事もあろうに…、カバルレの実験体にされ、日常生活が可能か、観察までした…。」

 

 

 「ええ…、その通りよ。もう推測というより、事実だけどね。

  その時の私は、既に幹部にまで昇進し、あと少しで最高幹部になり、カバルレの懐まで侵入し、欲しい情報を全て手にする事が出来るはずだったわ…。

  でもあの時、買い出しに出た私を偶然見つけた夫に見つかり、泣きながら抱きしめてくれたわ…。久しぶりのあの人の温もりに心が揺らぎそうになったけど、任務は絶対…。

  彼には、あなたが言ったとおりに説明して、その場は去ったわ。でもそれがいけなかった…。私に会いに来た彼が、奴隷オークションで落札された奴隷の受け渡しを目撃して、私をここから救おうと侵入し、捕まったわ…。そして彼は…、カバルレの実験体にされたわ。

  彼を殺し、腐敗速度を遅め、人工的に作り上げた魔物にあの人の皮を被らせ、外に放ったのよ。『ばれずに日常生活を送る事は出来るか?』この実験が成功すれば、連れ去った魔法師達を同じようにして、自分の意のままの奴隷を増やそうと計画していたわ。」

 

 

 「どうして、君はそれを見過ごしたんだ…?」

 

 

 「……その時、私は隣国で出張曲芸していたのよ。もちろん、離れていても『精霊の眼』があれば、物理的距離を無視して、魔法は使えるわ。でもあの時は、魔法が誰かに吸収された感覚がした…。

  それで、あの人を…。慌てて私一人で帰った時は、既に日にちが経っていて、私がやっと首都に帰ってきた時は、最悪の瞬間だったわ…!!」

 

 

 「最悪…か…。」

 

 

 「ええ…! あの人があなた達ROSEに止めを刺した瞬間だったわ…!」

 

 

 その時の怒りを思い出したのか、ドレーナからとてつもない相子が吹き荒れた。

 

 

 




暁彰とドレーナの再戦がありそうな~!! 待って落ち着こうよ!!

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