そっちの方が似合いすぎるっておもうけどね。
『”バ、バカナッ!!! オレノマホウハダレニモアラガエナイノダ!!!”』
赤い血の色の目を大きく見開き、怒声を投げる。それはもう、咆哮と言ってもいいレベルだ。ただの咆哮で、飛ばされないように硬化魔法で足を床に固定する。耐えきった後、真っ直ぐにカバルレを見て、堂々とした態度で見据える。その立ち振る舞いは、まるで人々の上に立つ統率者ともいえる。
「この世界に”完璧”とか、”抗えない”とかそんな絶対的なものは存在しないわよ。魔法も同じよ。完璧だと自負し、裏を返せば、まったく完璧とは言えない魔法干渉しかできていないことだってあるんだから。」
『”ナニヲっ!!”』
「現に、あなたの魔法を物ともせずに私達がここに立ち、あなたと向き合って話しているではないですか?
それこそ、あなたの闇魔法…、『ダークサイド・ブレインウォッシュ』でしたかしら? それが抜け穴だらけだったという他ないですね。
あなたは自分を特別視しすぎていて、周りが見えていない…、見ようとしない事に敗因があったという事ですよ。」
不敵な笑みを浮かべつづけながら、カバルレを静かな声色で罵倒する魔法師に、馬鹿にされて再び怒りで理性が吹き飛びそうになる。
『”……イッタイナニモノダ!!オマエっ!!!”』
「………やっと私を意識してくれたわね。もう何度も私の顔は拝んでいるはずなのに…。
まぁ、いいわ。改めて…、リテラ・ピュアン。
このイレギュラー帝国の正統な王の一族の末裔ですわ。」
『”セイトウナ…、オウダト…!”』
「ええ…、あなたにこの地下都市を奪われ、こき使われてきましたけどね!
やっと、あなたに一泡吹かせてあげれましたわ!!」
今までの鬱憤を吐き出すかのように、勝ち誇った顔を見せつけるリテラ。ずっと、くろちゃん達に助けられた後も、ROSEのみんなと行動を共にしていたが、ずっと地下都市で生活し続け、カバルレからの猛威から囚われた奴隷達と一緒に逃れるために息を潜めていたからか、存在感が薄く、カバルレに今まで気づかれる事はなかった。
そしてリテラともう一人…、カバルレの精神干渉魔法に掛からなかったショウリンも震える小さな足で立ちながらも、強い眼差しでカバルレを見つめていた。
『”ナゼダ、ナゼダ、ナゼダ!! ”』
小汚い女と幼い子供に破られた最高傑作の魔法が通じず、腸が煮えぐり返る思いを感じるカバルレは、言葉にならなかった問いにぶつける。
「『ダークサイド・ブレインウォッシュ』…。確かに精巧につくられた禍々しい魔法ですわね。人の心の闇を弄ぶ下賤な魔法をよく作り上げましたわ…!その執念だけは褒めてあげてもいいですわね。
ですが、元々この帝国中に広まる”魔法”というものは、私の先祖の初代イレギュラー国王が民にも”魔法による幸せを”…と望み、広めたもの…。そして現代の魔法もその基となった起動式を派生して作っています。
つまり、新しく作られた魔法でも、その魔法の基となる起動式を民に広めてきた王の一族である私には、魔法の本質を見抜く事が出来ます。
更に、王の家系は代々、精神干渉魔法に最高級の遺伝が受け継がれており、様々な精神干渉魔法を使えるだけでなく、相手の精神干渉魔法を跳ね返す秘術も持っているのです!!
あなたの魔法は、私には効かないっ!!
…それと、この子にもね。 あなたの精神干渉魔法は、心の闇を増幅させ、その闇を利用し操る魔法…。心の闇がない子供には、まったく意味のない代物よ…!」
リテラの熱くなってきた口調での説明に、耳を傾けていたショウリンは、うんうんと大きく頷く。
ショウリンはROSEと出会った時に、父親を亡くしているが、その現場にはいなかったため、父親の最期を見て、トラウマになる事はなかった。そのため、心の闇と言えるほどの悲しみを持っていなくて、カバルレの魔法の影響下に置かれる事はなかったのだ。
言いたい事は言い終わったと、リテラが徐に深呼吸を数回し始める。すると、リテラの身体から眩い光が放たれる。その光は、神々しく大部屋を照らし出す。
『ヒーリング・シャイン』
…自分自身を媒体とし、癒し効果をもたらす光を放出する事で、精神干渉を受けたものの意識を正常に戻す、精神干渉魔法。
更に、悪の心に染まった精神に、ポジティブな記憶をフラッシュバックさせる事で、良心を取り戻させる白魔法でもある。
この精神干渉魔法は、ピュアン一族に代々伝わる魔法で、高度な精神干渉魔法の使い手であると同時に、強い精神力を有する者でなければいけない。
遥か昔は、この魔法を使う事で、魔法を悪事に利用した者達を”浄化”し、魔法が悪の脅威になる事を防いでいた。
リテラの魔法を全身に浴び、争っていたROSEのみんなが徐々に我を取り戻していく。しかし、心の闇を永遠に流されていたためか、その精神干渉の動力は、自分達の相子を使っての魔法だったので、リテラによって解放されたみんなは、その場に崩れ倒れた。すぐに動くのは、難しいだろう。早く見積もっても、全員復活までには5分はかかる。 それまでは、ショウリンと何とか二人で保たなくちゃ…!と決心するリテラ。
しかし、実質的には、リテラ一人で戦うのと変わりない。
先ほどの攻撃も、リテラがレーザー攻撃をして、『鎌鼬』をショウリンが『術式解散』で事なきを得たが、ショウリンは、暁彰やミナホ、tokoたちの闘いを見て、参考にし、初めて発動した、まさに継ぎ接ぎ状態の魔法だった。次がうまくいくとは限らない。リテラは、それを踏まえてこの場を保つために、思考を巡らす。
リテラがこの場の逆転を思考している中、リテラの魔法の効力で、取り込んだ相子が”浄化”され、手首を落とされた腕が霧散し、片腕だけとなった。先程から邪魔が入り、誤算が生じてしまった事で、激しい怒りに襲われたカバルレは、瘴気に塗れた相子を放出する。
すると、リテラの魔法で落ちた腕がみるみると復活していくではないか。
あっという間に復活してしまった腕を凝視するリテラとショウリン。この展開は読んでいなかったリテラは、直感でまずいと思った。
カバルレは、大きく息を吸い込み始め、胸を膨らませる。
「…!!ショウリン!!避けて!!」
『”コノオレニ~~!! マチガイナドナイ!! シネ~~~~!!!”』
カバルレが相子を溜め込み、発動した咆哮は、凄まじい威力で、二人を狙った。
リテラ…、久しぶり~~!!
ここで出てきた未来の女王!!
でも、専門は精神干渉魔法だから、戦闘は護身術程度だし、魔物となったカバルレと戦うのは厳しいかも?
…ってそれよりも、リテラとショウリンが危ない!!
次回は、またもやあのキャラが出て…。うわ~~~ん!!(泣)
あっ、でもその前に、明日は、秋分の日なので!!
原作キャラを起用した短編を書きたいと思います!!実は、これは我らROSEで考え温めていたもので…。
ですので、お楽しみに!!
(もしかしたら、初めの方に投稿しているかも?)