魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

155 / 453
「もう出番か…。さて、糞共を殺しに行くか!!」

そして再び、魔物の着ぐるみをスタッフに手伝ってもらい、着こなすと、高笑いしながら舞台に上がるカバルレでした…。

舞台に出ても、出なくても、カバルレだ~…。


 昨日は番外編、今日は本編に戻って、ROSEを救いに行こう!!

 ぺたんっぺたんっ!! ←足音です…。





魔物の誤算!!

 悲しみ嘆くROSEが仲間同士で戦っているのを、高みの見物気分で上から見下ろしてほくそ笑む魔物のカバルレ。

 

 (自分の身体を犠牲にして、”人”を捨てた甲斐があっただけに効果は抜群だな…。)

 

 精神干渉魔法を発動し、ROSEの仲間割れ状態を見て、少しは理性を取り戻したカバルレは、自分が編み出した魔法の素晴らしさを実感していた。

 

 

 

 自分自身を生贄にするこの魔法を、まさかここで使う事になるとは思わなかったが、実験できてよかったと考える事にしよう。

 もう人には戻れないが、今までの実験してきた失敗作のデータをもとに、改善を繰り返し、成功したのだ。結果が出たのだから、それでいい。

 人では手に入れる事が出来なかった、魔物の邪悪な力を手に入れる事が出来た。そして何より、失敗作のような理性や記憶が消える事はない。思いのままに存分に自分の意で動ける。この力を持って、この帝国を俺の物にしてやる!!

 …そのためにも、予定を早める必要があるな…。

 

 どれどれ…、まずいと思うが、先に一人だけでも食っておこうか…。

 

 

 

 自分がこの帝国を…、もっと欲を言えば、世界を支配するため、その力を手にするため、ROSEのみんなを吟味し始める。

 魔物となったカバルレは、幻影としてみせていた魔物よりも、大きくなっていて、天井をぶち壊し、巨体を振るっていた。上腕も腹筋も引き締まった人の身体をしているが、下半身は、牛のような、ヤギのような蹄のある細い脚だ。一振りで建物を壊しそうな腕と違って、上半身をしっかりと支えながら瞬発力も備えている。そして、尻からは、蛇のような動きで先端が尖った細い尾がカバルレの背丈ほどの長さを持っていた。自由自在に動く尾はまるで、第三の腕のようだ。

 極めつけは、獰猛さを兼ね備えた顔だ。人だった時の見下し、驕った表情は見事に反映されているが、見た目は人よりも獣と言ってもいい顔つきになっていた。口は尖っており、開いた口の中には、一噛みでだけで人を殺せるような鋭い歯をチラつかせていて、大きな赤い瞳は、血を求めている…、と感じさせる血の色をした色だった。

 

 

 血を求めている…という表現は、見事に当たっていた。

 

 カバルレは、早速目に付けた、一番厄介そうな者から始末する事にする。食ってしまえば、ROSEの戦力を減らすどころか、その戦力を自分の力に変える事が出来る…。

 

 そう自分の策に満足し、最初の生贄…、暁彰に人を握りつぶせるほどの巨大な手を差し伸ばす。暁彰は、今、御神の攻撃魔法に相子弾を放ち、『術式解体』で交戦中だった。カバルレの手から逃げようともしない。そして、周りもカバルレの手が近づくのを完全無視して、闘い続けていた。

 

 

 まだ、カバルレの『ダークサイド・ブレインウォッシュ』が影響しているのだ。

 

 

 カバルレは自身の魔法に酔いしれながら、ほくそ笑む。そしてついに暁彰を手中に入れた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と思った瞬間!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如として放たれた白いレーザー魔法で、伸ばしていた手首を撃たれ、手が落ちる…。

 

 

 『ダ、ダレダ!!!』

 

 

 反射的に腕を戻し、反対側の手を横一閃に振るい、長く尖った爪から『鎌鼬』を放つ。いくつもの『鎌鼬』がROSEのみんなの元へと向けられ、全員が斬られるところだった…。

 

 しかしそうはならなかった…。

 

 

 

 

 「くっ…!『術式解散』!!」

 

 

      ・・・・・・・

 まだ肉声が発達していない声が、叫ぶ魔法が、カバルレの『鎌鼬』を霧散させ、無効化した。

 

                 ・・

 魔法を無力化され、自分に逆らった者達が、前に躍り出て、自分と対峙する姿を見て、奥歯で歯軋りする。

 

 

 『……オマエタチガ!!』

 

 

 

 みんなを庇う形で対峙した二人の瞳は、真っ直ぐにカバルレを強く見つめ返す。

 

 

 「…悪いですけど、あなたの邪悪な魔法如きでは、私の心を支配することなど出来はしません。残念ですが、あなたの誤算は、私がここにいた事ですわね。」

 

 

 

 二人の内の一人がそう、カバルレに含みのある言葉と笑みを向けた。

 

 

 

 




おお!! ここでカバルレが勝利する訳ないでしょ!!

絶望にこそ、一つの希望が照らされれば、大きな光になる!!

あ…、この言葉、本編であのキャラに言ってもらおうと思ったのに…!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。