どうしよう!! 一大事だよ!!とにかくっ!!テーブルの下に隠れて…。
蹲るのだ!! …………シ~~~~~~~ン
「ま、まさか!まさかだけど…!!カバルレが魔物に…!!」
「何という大きさだ…! 予想を大きく上回ってるぜ!!」
「こんなのって…!」
突然の魔物の出現…、いや、魔物と成り果てたカバルレを見て、ROSEは絶句する。
人間が魔物となるのを間近で目撃したのだ。ここに潜入する前…、ギルドを立ち上げてから、今日まで地方で確認される鎧の亡者や魔物を倒し、調査してきたROSE。調べる内に、自分達が相手にしていた亡者やモンスターたちが元は人間だったと知った時は、どれだけ自責の念に駆られ、苦しみ、嘆き、張り裂けんばかりの胸の痛みを受け、泣いた事か…。
自分達が倒さなければ、被害が今以上に増えていたのは間違いない…。
でも、事実を知った時、これ以上は元人間だから、倒したくない!!戻してやりたい!!と思って、研究もした。それでも救う方法は見つからずに結局命を絶って楽にさせる事しかできないという事を思い知っただけだった。
苦しい決断を繰り返し、今日まで犠牲になった元人間に懺悔を持って生きていた。
そんなROSEの前で起きたこの状況が脳裏で重なり、体の筋肉が強張る。
ROSEでもかなりの腕を持つ御神や暁彰、ホムラでも手が震えている。
ROSEのみんなは、カバルレを見て、脅威や今までの言動による怒りを感じるとともに、同じことを繰り返そうとする苦しみや悲しみが相まって、葛藤する。
葛藤するのは、人を愛しているから…。
例え、姿が変わっても、人間であったことは変わらないから、何とか助けてあげたい…!!
その想いをROSEは胸に秘めている。
だが、冷静沈着に物事を整理する者がいれば、「その必要はない」と一刀両断するだろう。
みんなが自責の念を持つ出来事と今回の事は完全に同じではないのだ。敵の性質も、状況も全く違う。強いて言うなら、『元人間だった…』という事だけだ。
それを指摘して、「だから葛藤する必要なんかない」と言い放つ事が出来るだろう…。
しかし、みんなは、それに気づく事は出来ず、ただ自責の念を募らせ、自分達が各々で抱えていた闇を膨れ上げらせる。そして、さっちゃんやるーじゅちゃん達は、自分の心に押しつぶされそうになり、頭を抱え脱力した。呼吸も激しくなり、号泣する。
二人以外にも、やるせない自分への怒りで自分を殴ったり、仲間同士で傷つけ合う。どこか黒ずんだ瞳で互いに魔法を繰り出し始めたROSE達…。
こうさせたのは、魔物と化したカバルレの瘴気が空気と混ざり合って、それを吸いこんだ事による幻覚症状を起こしているのだ。
カバルレが魔物となった瞬間、もうROSE達はカバルレの術中に嵌っていた…。
みんなが見ていた魔物は、魔物であって、魔物ではない。
みんなが抱えている心の闇が映し出された幻に過ぎなかったのだ。巨大な人型をした魔物は、心の闇を具体化したものだった。
『ダークサイド・ブレインウォッシュ』
…瘴気に混ぜ込んだ精神干渉魔法の起動式を対象に付着させるか、体内に取り込ませることで、発動させる。対象の抱えるトラウマや病んでいる過去を強制的に引き出し、幻覚症状を見せる。そして、その心の闇に手を加え、洗脳する事で、闇へと引き攣りこむ。
抱える闇が大きければ大きいほど、この魔法に掛かりやすい。実力のある魔法師程、危険な魔法だ。それに、瘴気に混ざりこんだ起動式は、小さく砕かれた状態で空気上を行き来し、対象に入り込み、そこでバラバラになった起動式が再構築される。その後、対象の相子で魔法展開する。自らで編み出した魔法は、『自分が何をされたら壊れるか』を知っているし、脳裏で流されるトラウマを見ながら、そうならないようにと同時に意識してしまう。もっとも耐え難いトラウマを引き出したら、それを最大限に植えつけるだけ。
後は、勝手に幻覚を見続け、暴れ出すという恐ろしい精神干渉魔法だ。
・・・・・・
その魔法に、ROSEの実力派魔法師は、抱え込むトラウマを読み起こされ、仲間同士で戦い、自分を傷つけた。
そんなROSEが仲間で戦い始めたのを、冷酷な哂いで見つめ、ボロボロになってゆくROSEを愉快そうな表情を浮かべて、大きくて赤く光る瞳孔の瞳に焼き付けていた。
…仲間を大事にするROSEが、その大事な仲間を傷つける様を目に焼き付け、後で傑作だったと嘲笑い、屍となったROSEをつまみとして食べる為に…。
………え?これなに?何でROSEが仲間割れ…?(実際には、自分と戦っているみんな)
こんなひどい事を!! みんな~~~!!目を覚まして!!
告知です!!
明日は、『敬老の日』なので、番外編をお送りします!!また、ROSEが大暴れするので、見てくださいね~!!