魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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(昨日のあとがきの続き)
はぁ、はぁ、何とか捕まらずに済んだ~~!!
拘置所入れられたら、せっかくのいい展開を見過ごしてしまうじゃないか!!?

カバルレを逮捕できないなら、こっちで何とかするんだから!!

ね!tokoっち!!




究極の愛は強し!?

 

 

 

 

 

 思い出したくもない過去を掘り返され、tokoの台詞がセイヤがあの時、黒ずくめの男を使って寄越した伝言と同じことを言われ、忘れていたセイヤへの怒りと殺意が復活した。

 カバルレが死んだセイヤにまだ殺意を抱いているのは、それほどまで憎しみがあるのか…。しかし、カバルレはどうしてここまでセイヤを嫌うのかは、自分でも理解していない。嫌悪するきっかけはオドリーだったが。

 

 …もう、オドリーはどうでもいいが、カバルレが、オドリーを手に入れるために動いていた時、さりげなくカバルレのストーカーを妨害し、度々覗き見るカバルレに、まるで死神のように睨みつけ、視線だけで人の首を刎ねる事が出来る…。それを感じさせるような雰囲気を纏った視線で返された時、カバルレは人生初の得体の知れない恐怖に襲われた。今まで不自由なく、周りが自分に頭を下げて、機嫌を窺ってきて腰巾着のように人がついてくるのが当たり前の長い人生を生きてきたカバルレにとって、自分が一番偉く、全国民が自分に頭を深く下げ、自分のために犠牲になる物だと考えてきた。

 

 

 自分こそがこの国の頂点に君臨するのが相応しい…。

 

 

 そう思ってきたカバルレだから、セイヤの人ではないような視線で、自分が簡単に弱者に殺される幻覚を魅せられるほどの畏怖、恐怖、恐れ、脅威…。

 

 その今まで抱いてこなかった感情で、初めて自分が”特別”な存在ではない事を、本能で察したのだろう。それが、カバルレの傲慢なプライドの塊を大きく壊したため、その怒りを本能的にセイヤに向け、殺害を執拗に何度も計画するほどに思い立った…。

 …それを頭の意識の片隅で分かっているはずだが、その時に感じた恐怖から自己防衛が暴走し、憎しみに変わり、カバルレを非道な道へと引き摺り、更に人を変えたのかもしれない…。

 

 

 気付かせてくれる機会を与えられたと考えれば、カバルレはここまで残語句で、外道な男にはならなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 ROSEのみんなに庇われた形で、治療を受けるオドリーは、まだ息があった。

 

 オドリ―親衛隊の部下に刺された場所と同じ場所なだけに、さすがに弱りきった様子のオドリーだった。

 その様子を、胸の奥で燻っていた殺意を引き出し、悍ましく冷酷に哂うカバルレは、ある疑問を頭の中で抱いていた。

 

 

 (………俺は確かに、オドリーを殺そうと止めを刺したはすだ…。

 

  どうして、まだ息がある…?

 

  …オドリー、お前はとうとう心から俺を愛してはくれなかったな。

 

  記憶を書き換えたというのに、お前の心には、いつもあの男への感情が残っていた…。その想いを切なそうにしてみせるお前のその表情に、俺がどれだけ嫉妬し、どれだけあの男を死から蘇らせ、殺そうと思った事か…!!

 

  身体を重ねた時も、お前は…遠くを見ていたな。俺が気づかないとでも思っていたか…?

 

 

  …ふん!思い返すだけで、殺意が更に昂って来るわっ!!

 

 

  そして、お前はくだらない信念を持ったこんな馬鹿らしい連中に心を通わせ、俺の元から去ろうとした…。あの男だけでなく、こんな連中にも俺は、オドリーを取られる…!? 

 

  そんな事には、させない!!

 

  それならお前を俺の手で殺した方がいい…。

 

 

 

  …そう思って、お前の身体を貫いた。…忌々しい心臓を目掛けて。生暖かい血肉が腕に巻きついたような感触を感じた。幻想を見せられたわけではない。それなのに、どうして、お前が生きている…?)

 

 

 

 

 心の底から沸き起こる、苛立ちと怒りを感じながら、疑問を払拭しようとする。

 

 

 しかし、オドリーの治療に関わっていた暁彰が『精霊の眼』でオドリーの中を見た事で、それが判明した。

 

 暁彰もオドリーを見た時から疑問に思っていた。

 

 

 タツヤ族はミユキ族を身体張ってでも護る事を、本能的に植えつけられている。例え会って間もない相手でも。

 それでも、オドリーには反応しなかった精神的命令に納得できなかったが、オドリーの裏切りの時、声帯と心臓が他人の物であるため、その心臓から血管を通して送り込まれる血の形態が本来のミユキ族のDNAを薄めているからだと『精霊の眼』で見て、そう思っていた。

 

 でも、実際はそうではないと分かった。

 

 

 

 なんとオドリーの心臓が、起動式を巻きつけているような状態でいて、心臓の周りを障壁で張っていたのだ。

 

 

 心臓自体が魔法を発している…。

 

 

 

 

 そんな現状に直面し、暁彰は驚愕するとともに、納得した。

 

 

 (…もしかしたら、彼の秘めた想いに共感し、心の底で任せても大丈夫だと、無意識にそう思っていたのかもしれないな…。)

 

 

 今、オドリーの命を繋げている心臓に、優しく笑いかけながら、暁彰はそう思った。

 

 

       .

 「どうやら、彼がオドリーをずっと守っていたみたいだな…。

  オドリーの一番近くで…。」

 

 

 思わずそう言葉を漏らす暁彰の目には、ほんのりと涙が零れだしそうになっていたのを、暁彰をサポートしていたRDCやさっちゃん達が、暁彰が視たモノを察して、一緒に泣いた。

 

 

 

 

 セイヤが息を引き取る前に、オドリーに心で伝えたもの…。

 

 

 『俺はずっと君の一番近くにいる…。』

 

 

 

 『何があっても、君を守る…。』

 

 

 愛しいオドリーに死に際で誓った愛が、心臓に宿り、ずっとオドリーを守っていたのだ。

 …本当は、セイヤの心臓がオドリーに宿った当初は、オドリーが危険になると、身体を包み込むくらいの障壁を張っていた。しかも可視化できない障壁を。

 しかし、オドリーが、その…、カバルレと~…、ベッドを共にするようになってからは、徐々に障壁の範囲が狭まり…、今では、心臓を囲めるだけの障壁を張るのが精いっぱいとなってしまっていた。

 

 

 

 それでも、臓器に”心”が宿り、魔法を発するというのは、珍しい事だ!

 

 

 

 その軌跡が今、ここにあった…。

 

 

 

 

 

 

 暁彰の『再成』で、再び傷が消えたオドリーは目を覚まし、自分の手を胸に重ねておいて、涙を流す…。

 

 

 「…………ここにずっといたんだね? ずっと私を守ってくれていたんだね?

  私…、やっとあなたと向き合えた気がする…。

 

  ………セイヤ、私も愛しているわ。」

 

 

 自分の胸に囁くように言葉を紡ぐオドリーは、涙をあふれだしながらも、愛おしく想いに馳せた。

 

 

 それは、カバルレの植えつけられた偽りの記憶の殻から、飛び出した綺麗な白鳥が自由になった瞬間だった…。

 

 

 

 

 まさに、究極の愛をしみじみと感じさせる光景だった。

 

 

 オドリーの泣く姿は、ROSEのみんなを号泣させるほどの、セイヤへの思いが込められていたから…。

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、この場で一人だけ、正反対の凄まじい負のオーラを発する。

 

 

 

 

 

 もちろん、それはカバルレだ。

 

 

 

 

 遠目でオドリー達を怨めしそうに見つめていたカバルレにも伝わった。

 カバルレはどうしてオドリーが死なずに、どうして狙いが逸れたのか…。

 

 

 

 それが、憎きあの男の仕業だと気づき、もう計り知れないほどの殺意がカバルレの理性をぶち壊す。

 

 

 

 

 




セイヤの”心”がオドリーを守ったんだね!!

あかん、また涙が!!

実際に医学的にも、移植を受けた人物が、臓器提供してくれた人の癖を無意識にしてしまったとか事例があるそうで、これを聞いたときは、感動で、セイヤの亡き想いを伝えるためにはこれだ!!と思い、ゆびが弾みました!!

さて…、もうこれは。カバルレの逝かれた暴れ方が見えてくる…。

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