魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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 さあ、前から練っていたこのストーリー、皆のためにも楽しく、笑いありでやっていくぞ!!


では、どうぞ!!


旅立ちの時

 

イレギュラー国はいくつもの部族が集合して出来た連合国。

 

そのうちの一つであるシズク族は他部族にはないほどの膨大な財力を持つ一族である。

 

帝都に人気の商店を多く出店し、さらに国営施設への多額の寄付金を行っているために、他部族より領土が広く、一人当たりに屋敷を一棟の所有が当たり前なのだ。

 

 

そんなシズク族の領外れにある丘の上の屋敷からにぎやかな声が広がっていた。

 

 

「くろ、お誕生日おめでとう! 立派に成長してくれて、パパ、感激だよ。」

 

「ウシオ君。はしゃぎすぎですよ。 くろ、お誕生日おめでとう。」

 

「お姉さま。お誕生日おめでとう、ございます! 僕、お姉さまの誕生日、お祝いできてうれしいです!」

 

家族からの祝言を受けた、今日が16歳の誕生日であるくろちゃんは嬉しさのせいか、身体が小刻みに震えていた。

 

「ありがとうございます。これも父上、母上、ワタル、そして従業員の皆様方のおかげです。」

 

従業員達が壁に張り付いているかのように微動だにせず、立っているため、いつもの気さくで、優しく温かみのある彼らを知るくろちゃんは、彼らの仕事に対する姿勢を尊重する思いで、少し堅苦しいあいさつになってしまった。

 

まあ、たとえ、いつも通りに気楽にしたとしても、家族全員、従業員を家族同然のように暮らしているから、咎めないけど。

 

「16歳か。いよいよこの時が来たんだな。……パパも一緒に行こうか?やっぱり心配だし。」

 

「ウシオ君は心配よりもくろがいなくなるのが、寂しいだけでしょ?

 『16歳になれば、帝都へ旅に出て、ギルドに入り、己を磨く』これは私たち家族の決まり事よ。」

 

「うっ、分かっているが…、可愛らしい我が娘にしばらく会えないのは、パパ、つらい!」

 

そういうと、今まで、抑え込んでいたのか、涙がポロリ、ポロリと大粒をこぼし始め、本格的に泣き出してしまった。

 

そんな父の様子に皆呆れながらも、思いは分かるためか誰も止めはしなかった。

 

しばらくしてから、落ち着いてきたのか、ウシオは口を開いた。

 

「…家のことは心配するな。くろはくろのしたい事、やりたい事をして来い。そして旅をして、いろんな経験をして来い。その経験はきっとくろをもっと成長させてくれる。」

 

 

これからの旅へのエールを送るウシオは先ほどの泣き崩れた態度はもう残っていなかった。家族を支える当主の器を醸し出していた。…まだ、目元は赤く腫れていたのは、見なかったことにしよう。

 

「ウシオ君の言ったように、旅に出ると、そこはあなたが知らない世界があります。それを知り、自分を知り、前進していきなさい。」

 

「お姉さま。 僕も、お姉さまに恥じぬように鍛錬に励みます。」

 

今日最高の飛び切り笑顔付きで姉へのエールを送ったワタルはやっと言えたとほっとした。

 

その可愛らしい言動を向けられたくろはいつの間にかワタルに飛びついて抱きしめていた。

 

「ワタル、かわいい!!本当にかわいい!!もう十分に偉いよ~!はあ、可愛過ぎて連れて行きたいくらい!!」

 

ほっぺすりすりしながら、ワタルを愛でてブラコンを発揮して、充電終えると、昨日のうちにまとめていたバッグを持ち、急ぎ足で玄関口まで歩いて行った。その時、黒髪のショートヘアが窓からの風に靡ぎ、日の光が楽しみで仕方がないとでも言っているかのようなくろちゃんの顔を照らしていた。

 

くろの後を見送りのため、皆が付いていき、その顔には、微笑ましさが滲んでいるもの、涙を堪えているもの、心配で少し青白くなっているものなど、様々な表情をしていた。

 

 

 

「じゃ、早速、行きます! みんなも体に気を付けて」

 

身体を180度回転させ、足を進めようとしたが、呼び止められる。

 

「くろ、待って。 これを誕生日のプレゼントで渡しておくわ。これからの旅に絶対、必要になるはずよ。」

 

そういって渡されたものは、CAD(術式補助演算機)。

 

魔法を発動するための起動式を呪文や魔法書なしで使用できる、魔法師にとっては必須のツールだ。

 

「ウシオ君と私で選んだ、最高級のものよ。あなたが使える魔法の起動式はある程度入れてあるわ。旅の間でも、試してみなさい。」

 

くろの頭を優しくなでながら、愛しそうにほほ笑んだ。

 

くろは欲しがっていたCADが大好きな母上からプレゼントされたのがうれしく、抱きついた。

 

「ありがとう…。大事にするね。」

 

その後は、従業員達ともハグして、別れを惜しんだ。

 

そしてみんなのくれた温かみを胸に秘め、いま、くろちゃんは旅に出るのだった。

 

 

 

くろちゃんの姿が見えなくなるまで、見送った一同は景気づけに自らの仕事の向かっていった。

 

ただ一人を残して…。

 

 

 

 

 

「……あれ? パパには抱きついてくれないの?」

 

 

 






よし、くろちゃん、冒険に出たよ!!


ウシオパパ、かなりの娘ラブだったな~…。


次回はあの人と運命の邂逅を!!

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