後でじっくり読もう!!
…そして、前回の最後にまさかの展開…。どうなったんだ!!ちょっと、ハンカチを用意しないと!!
夜が明け、鎮火も終え、現場では原因究明に警魔隊が動き回って、調べていた。騒ぎを聞きつけ、記者や周辺の住人達が様子を見に、寝間着のまま集まってきて、警魔隊が張った捜査網の外から首を長くして見ていた。
そして、その中にフードを目深に被って、様子を窺うカバルレの姿があった。燃えた屋敷のを見ながら、その悲惨な残骸となった現場を見て、上手くいった事に対する自画自賛の笑みを必死に気を引き締めて、堪えながら、調査する警魔隊の上官に報告する話し声に耳を傾け、オドリーの居場所を求め、神経を全て注ぎ込む。そして聞こえてきた内容は、カバルレにとって、予想していなかったものだった。
「…ったく、火元となった一室…、あれはやばかったな。爆発の衝撃で、家具だけでなく、内装も酷い有様だったな…。」
「はい。ですが、奇跡的にも要救助者が生存していたのは、喜ばしい事です。まだあんなにか弱い女性でしたし…。」
「……お前の目は節穴か?あれは、奇跡的ではない。彼女は護られていたのだ。…犠牲になったもう一人にな。」
叱咤する視線を部下に向け、紡がれた言葉に、はっと何かを思い出した部下は言葉を飲み込み、自分の発言が亡くなった人に対する失言だったと気づき、唇を固く結ぶ。
「申し訳ありませんでした。」
「…なら、さっさと調査に戻れ。重傷を負った彼女には、厳重な警備をつけておけ。もしかしたら、犯人が狙ってくるかもしれない。」
「はい!! すぐに手配します!!」
敬礼し、走り去る部下を見届け、現場の中に入っていく上官が消えるのを、確認したカバルレは、オドリーが重傷を負った事を聞き、驚愕を露わにし、野次馬からそっと抜け出し、覚束ない足取りでこの場を離れる。
(まさか…、そんなはずは…!! オドリーが傷を負うことなど断じてありえん!!
なぜだ!! どうしてこうなった!!?
……私の!!私の嫁は、無事なのか!!?)
げっそりした顔つきで力なく、歩いていたが、その足取りが早くなり、突如走り出した。向かった先は、すぐ近くの魔法病院だった。
病院に着いたカバルレは、知り合いだと言って病室の聞き出し、病室の前でがっちりと警備する警魔隊を目撃し、目の前を通ったマジックドクターを襲い、白衣を手に入れた後、ドクターを装って、入室した。
すると、そこには、点滴を打たれ、包帯を至る所に巻いて眠るオドリーの姿があった。
その包帯の数だけで、どれだけの衝撃を受けたか、想像できるカバルレはこんなはずではなかったと激しく後悔する。
…カバルレは、以前修理業者を装って、オドリー達の屋敷に潜入し、セイヤの自室に特製の爆弾を作り、仕込んでいたのだ。無臭で物体が超小型で虫サイズのものだから、発見は難しい。そして、セイヤの暗殺に失敗したあの時、指輪に仕込んでいた遠隔操作を発動したのだ。
本来なら、セイヤが粉々に吹き飛び、この世から消し去るつもりだった。そして、涙を流すオドリーに近づき、慰めると見せかけ、オドリーを手に入れる算段だった…。
それが、形は違ったが、警魔隊の話ではセイヤは死んだ。目的は達成した。
しかし、オドリーが重傷を負う予定ではなかったため、激しい動揺が沸き起こる。
頭を激しく掻き、毟る事で平常心を取り戻そうとすると、オドリーの手がぴくっと動いた。
カバルレは、その反応を見逃さず、すぐにオドリーに声を掛ける。…しかし、扉の外にいる警魔隊員に気付かれてはいけないため、振動系統魔法を用いて、声を抑えた状態でもしっかりと届くようにした。
その効果があったのか、目を閉じていたオドリーの瞼が数回瞬きをした後、ゆっくりと視界を回復させていった。そして、ぼやけた表情で天井を見つめ続けるオドリーをずっと一定の距離を保って、観察していたカバルレは目覚めたオドリーに、心の底からホッとし、安堵の表情になる。
だが、次の瞬間、安堵が拒絶の物となるのは、避ける事は出来なかった。
此方に注がれる視線に気づいたオドリーは、身体の自由が取れないため、天井に見上げながら、その視線の相手に話しかけた。…その視線の相手が愛しいセイヤだと思って。
「”…セイヤなの? …怪我は?、…痛い所はない?”」
..
オドリーの口から発せられる声色に、カバルレは驚愕し、思わず口元を押さえる。
「”…ああ、無事だった…のね。…よかった…。”」
その声色は、男性のような、引き締まった低い、大人びた声だった…。
その声には、カバルレも聞き覚えがあった。
あの忌々しい男の声とまったく同じ…。
耳に入ってくるその声に、安堵するオドリーはその声が自分の口から発せられたものだと気づかず、涙をこぼす。
「”本当に…、よかった………。生きていてくれた………。”」
そう言葉を紡ぐオドリーの嬉しそうな、愛おしそうな表情を見て、とうとう耐えられなくなったカバルレは酷い吐き気を抑え、病室を後にする。
そして誰もいない建物の死角まで来ると、一気に堪えていた吐き気を発散させ、消化されていない嗚咽物を全て吐き出した。
カバルレにとって、決して受け入れられないものが目に前に突き出されたからだ。
……そう、オドリーの声は、セイヤの声に変わっていたから…。
いや、変わっていたとは違うかもしれない。
”生まれ変わった”…という方が適切かもしれない…。
そこには、セイヤの想いが託されていたから…。
その現実を、しばらく後になって、オドリーは主治医から聞かされることになるだろう。だがその前に知ってしまったカバルレにとっては、悍ましく、許せない物でしかなく、ぶつける事が出来ない怒りを壁に何度も自分の拳を打ち続け、壁がカバルレの血で染まるまで、やるせない怒りをぶつけた。
「おのれ~~~~~!!!!! よくも、よくも、よくも、よくも!!!!!」
よくも、俺のオドリーに怪我をさせたな!!
よくも、俺のオドリーを穢したな!!
よくも、俺のオドリーを奪ったな!!
よくも、俺のオドリーから引き裂こうとしたな!!
カバルレは底知れない殺意を抱くが、その相手のセイヤが既にこの世にいないため、この手で葬り去る事ができず、脳裏で作り上げたセイヤの厳格にひたすら殴り続け、完璧なオドリーを、手に入れる事が出来なくなった腹立たしさを拭えずにいた。
もし、こんなカバルレをセイヤが見たら、勝ち誇った笑みを浮かべていただろう。
”お前にオドリーを渡すものか!”……と。
そして、生きているオドリーを見て、ほっと胸を撫で下ろし、微笑するだろう。
”君が無事でよかった…。”
”あの時の判断は間違っていなかった”
”これでずっと君のすぐそばに寄り添える…”
”君に俺の想いを送ったから…”…と。
セイヤが~~~~~!!!(号泣)
セイヤが~~~~~~!!!!(恨み泣き)
カバルレめ~~~!!許さん!!
…はぁ、はぁ、…そして、オドリーが~~~~!!!(大号泣)
もう泣きのオンパレードだよ!!