セイヤのちょっとした一面が見られますよ~~。
2本の魔法剣を構え、右手で持つ魔法剣を飛びかかってきた黒ずくめ達に大きく振り被って、横に一閃する。すると、剣から炎が現れ、剣に纏うようにして、渦巻き、その炎を纏った一閃によって、黒ずくめ達の身体が斬りつけられると同時に全身に炎が燃え広がり、黒焦げになって、消えた…。
炭にならずに済んだ黒ずくめは、レーザー魔法や加重系統魔法で応戦するが、アクロバティックの俊敏な動きであっさりと躱されてしまう。それによって生まれた動揺を見逃さなかったセイヤは、左手で持った魔法剣で黒ずくめ達の間を擦り抜けながら、斬り付けていく。斬り付けられた黒ずくめ達は、魔法剣の効果で身体中が氷で覆われ、残りの黒ずくめへと歩き出しながら、地面を媒介し、振動系統魔法を発動し、与えられた振動波で、氷ごと氷漬けされた黒ずくめは砕け散った…。
仲間が次々と消えていく現状に最後に残った黒ずくめのリーダー格は、思いもよらない出来事に体中から嫌な汗を浮き出し、身体を震わせて、武器を手にする。その武器を持つ手には、小刻みに震えていて、まともに握れていない。
それを、接近しながら、苦笑するセイヤは、魔法剣を持った両腕を降ろしたまま、近づく。一軒隙があるように見えるこの動作を、リーダー格の黒ずくめはそうとは取らなかった。隙があるように見せかけた、立派な構えに今まで暗殺してきたターゲットよりも厄介で、そして敵わないと感じさせるものだと直感で理解した。だから、近づいてくるセイヤに少しずつ後退りして、いつでも脱出するできるように周囲を見渡す。
(ターゲットがここまでの人間だったとは…!! 話に聞いていないぞ!!?
…だが、これは私の判断ミスだ。受けてしまった依頼は必ず遂行しなければ…。そのためにも、ここは一旦引いて、手直すしかない…!!)
冷や汗を額に掻き、緊張感を持ち続ける黒ずくめに、セイヤは話ができる一定の距離まで近づくと、そこで足を止め、炎の魔剣を黒ずくめに向け、取りつく暇を与えない冷酷さを感じさせる視線という圧力だけで、黒ずくめの動きを固め、口を開く。
「…判断を見誤ったな、お前は。
俺はこうなる前にちゃんと”警告”したはすだがな…。
だが、お前たちは罪を犯したのだから、死んでも仕方ないか…。」
「我々の罪…だと?」
何とか恐怖で痺れる身体に鞭を打って、言葉を紡いだが、声は震えている。それを、当然と受け止めたセイヤは冷酷な笑みを浮かべたまま、黒ずくめに言い放つ。
「…オドリーと俺との安眠妨害の罪だ…。」
「…………」
まさかの罪内容に言葉が出ない。
そんなどうでもいい事で自分達はこんな目に遭っているのかと思うと、冗談じゃないという思いが込み上げてくる。
「ふざけるでない…。そんな訳のわからん理由で殺められても困る…。」
「…訳のわからない理由だと? …こっちは招いてもいない御客人に、わざわざ出迎えした上に、相手してやっているんだ。
…オドリーの添い寝もできない。
…お前達の所為で、俺の可愛い、愛するオドリーの寝顔を愛でる時間がもう30分も奪われた。
早くしないと、オドリーが異変に気づいて、せっかくの可愛らしい今日の寝顔が見れなくなる…。
これを、罪と言わずに、何だっていうんだ…?
俺は、大事な用事があるんだ。
さっさと、終わらせようか…!」
オドリーへの深い愛情を口にしたセイヤが、目の前から姿を消した。
それに驚き、辺りを見渡す黒ずくめの背後に、セイヤがナイフを首に当て、現れた。ナイフの冷たい感触に己の最期を予知した黒ずくめは、慌てて命乞いをする。
「わ、悪かった!! あんたの邪魔をしてしまって…!! さっさとここから退散する!!もうここにも来ない!!だから、命だけは、助けてくれ…!!」
「…おかしいな、確かこういう事は”専門”だって言ってただろ?なら、人を殺す事にも、殺される事にも覚悟しているんじゃなかったのか?
命乞いをするとは、滑稽な事だな…。」
黒ずくめはもうプライドなんて物を持ち合わせていなかった。いまは、早くここから…、魔物が棲むここから早く目の届かないところへ逃げたいという今日蛇を前にして、弱者が感じる圧倒的存在に対する恐怖しか黒ずくめの心の内には、なかった。
震えながら、小さく「お願いします…。」と繰り返しに命乞いをする黒ずくめにセイヤは、ナイフを首に強く押し当て、刃先が少し黒ずくめの喉に刺す。首に何かが流れる感触を実感した黒ずくめは悲鳴を上げるが、セイヤに口を押えられたまま、背後から耳打ちで告げられた内容が耳から全身に伝わっていった。
「…なら、このまま真っ直ぐにお前の雇い主の元へ行け。そして、俺の言葉を直接、はっきりと言い放て。
そして、もう二度と俺達の前に姿を見せるな、関わるな…。もし、一度でも俺の視界に入りこんだときには…、先に行ったお前の仲間のいる所へ引導してやるからな…。」
セイヤの言葉にうんうんと大きく首を縦に振り、了承する黒ずくめからナイフを降ろし、解放する。
そして、再び耳打ちで告げられた”伝言”を携えて、雇い主の元へと暗闇の中を駆けていった。
黒ずくめが逃げ去るのを、見届けたセイヤは、荒れた庭を元通りに掃除した後、溜息を吐いて、心の溜め込んでいた感情を吐き出す。気持ちを沈めた後、苦笑して、黒ずくめに言った罪内容を改めて思い出し、「ほんの少し。大人げなかったか?」と考え、屋敷の中へ戻っていった。
(…オドリーを守るのは、俺の定められた運命…。
誰にも穢させたりはしない…。 特に、お前にはな!!カバルレ…!)
心の中で毒吐きながら、セイヤは黒ずくめが任務に失敗し、カバルレの発狂で殺される幻想を思い浮かべ、いよいよカバルレ本人が仕掛けてきた際には、返り討ちにしてやろうと妖艶な笑いで考え、薄暗い廊下を一人で歩くのだった。
一方、その頃、黒ずくめの伝言を聞いた雇い主のカバルレは、激昂し、使えない奴はいらんとセイヤの予想したとおりに、カバルレの『怒りの爆裂』を受け、木端微塵になり、死んだ。
部屋が血の海になり、息を荒げるカバルレがソファーに座り込んだまま、狂気的な大笑いを発する。
『……お前には一生費やしても、絶対に理解できないだろうな…。
人を見下し続ける…、自分中心で世界が回っている…、それが当然とばかりに振る舞うお前に、本気で付き合っていきたいと…、心から慕う人間はいないぞ…。』
黒ずくめのセイヤからの伝言で、全てお見通しだったことを悟ったカバルレは最終計画に踏み切る事にした。
「やはり、あの男は只者ではなかったな。ますます、生かしてはいかない…!!
オドリーとの未来のために、消えてもらわなければ…。」
カバルレはそういうと、左手の中指にはめている赤い石が輝く指輪にテーブルに置いてあった酒をかけた。すると、赤い石の色が変わりだし、黒くなっていく。
その光景を窓から入る、夜にしては明るすぎる朱色の木漏れ日で照らされながら、カバルレは、訪れる未来を祝して、ただ一人…、酒を酌んで、ほくそ笑んだ…。
その数時間後、騒ぎを聞きつけた警魔隊が炎に包まれて燃える一軒の家から、一人の生存者と一人の遺体を回収する事になる…。
セイヤ、かっこいい~~!!
そして、カバルレ、お前は一体何をしたんだ~~!!