魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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誰もがしたことがあるあれ…。

カバルレもこうだったと思うとなぜかうれしい!…とならずに

吐き気が来たのは、どうしてだろう…?


人生初の○○

 

 

 

 あれは、カバルレが”カバルレ・サマダ大サーカス”を立ち上げ、帝国一の曲芸一座にまで上り詰める前…、そして曲芸魔法師になる、ほんの7年前の事…。

 

 

 

 魔法関連開発研究所の業績に大きく関係するほどにまで任され、彼なしではここまで大きく成し得なかったと言われるくらいの活躍をしていたカバルレ。

 

 …だったが、突然のリストラを受け、解雇され、カバルレは絶望した。

 

 解雇理由は、これ以上カバルレに権限を与え、好き勝手されれば、いずれはカバルレの私物化となり、今以上に危険な開発を他の研究員に強いる可能性を秘めていたため、カバルレを追いだしたのだった。

 

 カバルレは何で自分が解雇されたのか、全く理解できていなかった。カバルレは不当な解雇だと訴えたが、研究所だけでなく、スポンサーやサポーターまでもがカバルレの仲間を大切にしない、自分中心主義の塊を批判し、一切受け入れなかった。

 

 爪弾きされたカバルレは絶望した。…魔法研究が愚かな考えを抱いたクズの所為で、できなくなったと。

 

 

 頭を抱え、公園でブツブツと暗号めいた呟きをするカバルレは、周りからは、『とうとう頭がイカれてしまった可愛そうな老人』…というカテゴリで遠まわしで見られ、通報するべきかどうか迷っていた。

 

 そうとは知らないカバルレは地面に木の棒で新たな魔法の起動式を書いていきながら、模索中だった。

 

 

 

 (……これが完成すれば、もしかしたら、俺の功績が認められ、あいつらに一泡吹かせられる!!)

 

 

 

 そう考え、没頭していると、公園の様子がおかしくなってきた。

 

 

 公園というよりは、公園に来ている利用者たちの様子、がだ。

 

 

 集中力が切られるほどのざわめきが利用者達から発せられる動揺やら、ひそひそ話やらで盛り上がりを見せる。

 

 

 (…ったく、俺様の邪魔をするな!! なんだ、さっきから、顔を真っ赤にして、浮かれまくりやがって…!! 若い奴は落ち着きというものをしらねぇ~のか!?)

 

 

 苛立ち交じりで騒ぐ人だかりを睨むが、彼らが全員ある方向を凝視して、(時には視線を逸らして、隠し見を)一点集中する様を目撃し、つられてカバルレも顔を上げ、立ち上がり、彼らの視線を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 --------そして、人生初の恋に落ちた…。

 

 

 

 

 

 

 

 彼らが見つめる先には、この世のものとは思えない、純粋で、華麗で、男女の性別関係なしに見惚れるだろう…、いや、見惚れるべき存在の美しい女性が公園の時計塔の下で背筋を伸ばし、佇む。

 

 カバルレはその女性を見て、一目惚れしたのだった。

 

 

 (……なんて、神々しい女性なんだ。まさに、私を救うためだけに現れた女神…!!

  あの女性を私だけのものにすれば…)

 

 

 

 自分は神にも匹敵する頭脳とカリスマを持った存在だ。そして、その横に立つ女性は自分に相応しく、釣合の取れる異性でなければならない。

 

 

 

 カバルレはずっとこんなことを考えていたため、年相応に老け込んだ今でも、一生を添い遂げる人はいなかった。

 (いや、カバルレ自体についてくる女性はなかなかいないだろう!!)

 

 

 

 カバルレは木の棒を捨て、両手で髪や服を整え、「いざ!!」と勢いづけて前に一歩踏み込み、その女性に人生初のアプローチをしようと意気揚々と向かった。

 

 

 しかし、一歩踏み出した途端、カバルレの初恋は破綻する。

 

 

 

 

 

 「………待たせて悪かった。オドリー」

 

 

 そう言って、現れた長身で痩せていて、大人な雰囲気を醸し出す男性がその女性に話しかけながら、近寄り、オドリーと呼ばれた女性は子供っぽい笑顔で嬉しそうに男性に近づき、腕に抱きついたのだ。

 

 

 

 

 

 「いえ!! 逢えてよかったですわ!! セイヤ!!」

 

 

 

 

 カバルレの初恋はあっという間に霧散した。

 

 




…うわぁ~~…。

なんか嫌な予感しかしないわ~~!!

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