ドMにしたれ!!(怒)
カバルレをあられのない姿にし、ドMに開花させるという野望?を抱くROSE。
しかし、実際にそれを実行できるかと言えば、難しいかもしれない。
ROSE全員に対し、敵はただ一人、カバルレだけだ。
ただ、ここに来るまでの間の戦闘やトラップ回避なんかで魔法や体力を使って、まだ十分に相子も回復していない。いつもの力が出る所か、逆に半減してしまっている。
怪我等は暁彰やミナホ達のお蔭で、みんなの身体には外傷はない。ミナホや御神達が治癒魔法や応急処置をしてから、暁彰が『再成』をしたからだ。傷が治っても、疲労や相子が戻る訳ではない。あくまで外傷を治し、復元するだけだ。万全ではない。
それに対して、カバルレはずっとこの最上階で部下達が倒れていっているのを知っておきながら、のんびりと玉座に座り、ひじも立て、傲慢な態度で待っていたのだ。体力だけでなく、相子も温存している上に、この最上階で待っている間、仕掛けも準備できたはず。先程から見せる余裕たっぷりの笑みがそう感じさせ、ROSEに緊張をもたす。
「その緊張した顔、いいですね~~。私が何を披露するか、未知のために動揺しているのでしょう…。
私はその次に何をするか、理解できないっていう顔が好きなんですよ。ショーを観客に披露している時も、次にどんな曲芸が登場するか、観客の方々がドキドキでご覧になっていただける…、あの時の表情と同じです。
その表情を見るのが、私の最高の一時…!!」
ショーのスポットライトを浴びているかのように両手を大きく広げ、情熱的に、楽観的に語り、笑うカバルレに、心を読まれたと表に出さないように内心で驚きを見せるROSEたち。
「……ですから、その最高の一時を味わいたいので、皆さんにはこの”ショー”をご覧いただきましょう!! 私が長年、研究に研究を重ね費やしてきた最高のショーで、地獄を見せてあげましょう!!」
人懐こい曲芸魔法師の顔から、猟奇的な笑い顔へと変貌した。
それを合図に、絨毯の横を覆い尽くすようにあった不気味な彫刻や甲冑たちが一斉に動き始めたのだ!!
ガチャ…… ガチャンっ!!!
……ベタ…ン…、ベタン……
突如として動き始めた彫刻や甲冑たちが息を吹き返したように、身体を起き上がらせ、関節部分を回したりする。首が異常なほど回転する者もいて、それを見たtokoが軽く失神し、あまりの怖さで剣崎兵庫の後ろへ隠れる。ただし、怖いもの見たさで半身は出していた。
「…さぁ、我が僕たちよ。殺ってしまえっ!!!」
手を振り下ろし、彫刻や甲冑たちに命令すると、雄叫びの代わりに、彫刻は剣や槍を地面に打ち付けて音を出し、甲冑は自分達を叩く事で金属音を出し、承知の意を示す。それを当然というばかりに頷き、自分は玉座に座って、高みの見物を決め込む。
その態度にまた苛立ち、ROSEもCADに手を翳して、臨戦態勢になる。
そしてとうとう、人外の物との戦いが勃発した。
まずは、彫刻の方から重たい足取りで向かってくる。甲冑は更に動きがたどたどしく、ロボットの歩みよりひどい。
「何だ~…!! よっと…!! それほど大した敵ではないわね。」
「剣の使い方もまるで初心者、だよ!!」
「個々の戦闘力よりも、数で攻めるって言う戦法みたいだにゃ!!」
「なら、さっさと片付けてしまおう!!」
御神とくろちゃん、ちゃにゃん、hukaが襲ってくる彫刻達の攻撃をそれほど激しく動かないで、寧ろ軽くステップを踏んで踊っているかのように避けて、剣を奪って返り討ちにしたり、放出系魔法のレーザー魔法で倒したりする。
他のみんなも自分達にあった戦い方で次々と彫刻達を粉砕していく。
しかし、ホームズと暁彰、ミナホはこの流れに疑問を感じた…。
確かに、体力消耗した自分達を倒すには、圧倒的数での総攻撃をして追い込むのも悪くはない…。
悪くはないが、それにしても、相手の攻撃力が低すぎるのだ。
まるで、熟練の魔法師が長い旅を経て、Lv.1のモンスターの大群と鉢合わせし、逆に一掃してしまうくらいのものだ。
そんな脅威を感じないこの攻撃方法をカバルレは『最高のショー』だと言って、高みの見物状態…。
何か裏がある…。
そう思ってならない三人だった。
ホームズが何を企んでいるのか、カバルレの真意を推理していると、目の前に彫刻がいきなり現れ、大剣を振り下ろす。それをホームズはあっさりと躱し、『殴打』を発動して、鉄拳をお見舞いする。その際、彫刻の顔を見たホームズはあり得ない物を見てしまったのだ…。
(な…!! なんだ…!? なぜ彫刻が涙を流すんだ…?)
足元に倒れた彫刻の最後の顔に流れた涙が衝撃的過ぎて、確認のため、しゃがんで顔を覗き込む。そして先程見たのは錯覚ではなく本当だという事を知った。表情は全くの無表情で目も死んでいて、完全に彫刻だった…。でもその目から零れ落ちた涙はこの彫刻が泣いたように思えた。
そして、その時、ホームズはある結論に達する。
それは、あまりにも”生”を冒涜するもので、許してはならない物…。
ホームズは心の奥底から沸き起こる怒りで自分がどうにかなりそうなほど、カバルレが憎くて、仕方なかった。
すっと立ち上がったホームズの背中は怒りだけでなく、恐怖を感じさせる雰囲気が宿っていた。その雰囲気を纏ったまま、ホームズは暁彰を呼ぶ。
呼ばれた暁彰と、同じく彫刻への攻撃で、その彫刻を調べる事でホームズと同じ結論に至ったミナホがホームズに近寄る。
「……暁彰、この彫刻を視てくれないか?」
「……わかった。」
・・
『精霊の眼』を通して視た彫刻の中身を確認して、目を閉じる暁彰。
「…これもだ。 ここにいるすべての彫刻と甲冑は………」
「もういい、暁彰。それ以上はいい。
………みんなに彫刻への攻撃は止めて、動きを封じる程度にさせてくれ。
……頼む…っ!!」
そう告げると、ホームズは歩き出した。―――――カバルレの元へ。
それを心配そうに見つめるミナホ。だけど、かける妥当な言葉が見つからず、ホームズを見守る事にした。そして、今からホームズがやろうとする事をサポートするため、CADに手を翳す。
怖い顔でカバルレを睨み、歩くホームズをROSEの一行も気づいて、見つめる。
もちろん睨まれているカバルレもホームズを見つめる。
ここにいる”生”を受けているものがホームズに注目する中、突如としてホームズの姿が消えた。
そして、次にホームズが現れたのは、カバルレの正面からわずか数十センチにも満たないほどの距離にパッと現れ、大きく振りかぶった右腕で、カバルレの顔面を狙う。
「『マシンメイル・バズーカァ――――――!!!!!』」
収束系・加速系統魔法で、腕に”硬化魔法”を施し、更に加速させ勢いをつける事で、かなりの破壊力で標的を粉砕する魔法。
その渾身の鉄拳がカバルレの顔面に突っ込み、ホームズの腕がカバルレの顔面にめり込む。
「おりゃ~~~~~~~~~~~~!!!!!」
そのまま、力を入れ続け、カバルレを後ろへと殴り飛ばす。
殴り飛ばされたカバルレは後ろに飾っていた自画像のこれまた顔面に激突し、自画像を貫通して、壁に大きな穴を開け、身体が壁に挟まった。
ホームズの鉄拳の威力で最上階が揺れる中、目の前で起きた衝撃にROSEのみんなはただ、言葉を失い、口を開けっ放しにして、固まるのだった…。
ほーちゃんが怒っていた理由はすぐに明らかになるけど、それを知ったら、もうほーちゃんの事、みんな絶対に
「よくやった!!」「すっきりした!!」って思うに違いない!!♥
理由を知る前でもやった!!って思うかもしれないけど。