魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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今日でうちの詩奈ちゃんの話が完結します!!

そして明日は原作発売~~!!

今日のニコ生放送なんとか入り込んで達也様を拝む事が出来ました!


乙女合戦の幕が上がりますっ! ⑨

 

 

 

 

 

 

 

 

 思いもかけずに達也と二人きりで少し遅めの朝食を食べる事も出来た詩奈は、食べ終わった後、一緒に会場へと向かう。隣で歩く詩奈の歩幅に合わせて歩いてくれる達也に大人な雰囲気を感じた詩奈が夢心地だ。

 

 

 (ああ…、もう幸せすぎて答辞が上手く頭に入ってこないかも…!)

 

 

 恋する乙女の気持ちと新入生総代として、また十師族に名を連ねる者として、恥を掻いてはいけないという緊張とが詩奈の心の中にせめぎ合っていた。

 

 

 「大丈夫だ。答辞といっても、三矢さんがこの学校で何をしたいかをありのまま話せばそれで終わりだ。何も深く考えて語るものでもない。…それに大半は答辞の内容にはあまり気にしてはいないさ。」

 

 

 詩奈が緊張していると分かったんだろう。達也が前を向きながら詩を励ます。途中から口調が強すぎたと感じた達也は、意識して口調をほんのりと柔らかくしてみる。

 

 

 「そうなのですか?」

 

 

 「ああ…、答辞っていっても、さほど時間はかからないし、入学式の項目の中では最もシンプルなものだろうな。」

 

 

 詩奈の緊張を解すために不安要素等をさりげなく低くしていく達也の言葉に詩奈は笑いを堪えられず、溢す。詩奈の笑い声を聞き、達也が顔を向けてくる。

 

 

 「何か可笑しな事でも言ったか?」

 

 

 「いえ、何も。…司波先輩のお蔭ですっかり元気になりました。もう大丈夫です。ありがとうございます。」

 

 

 「そうか、困ったことがあればできる限り力にはなる。…舞台裏から俺達がついているからな?」

 

 

 詩奈の子犬のような視線で尊敬と嬉しさを大量に向けられた達也は言わなくてもいい事まで口に出す。それほど達也にとって好意的な視線に対する反応に弱いのだ。そうとは知らない詩奈は、達也が言った「俺達がついている」を「俺がついている」と都合の良い聞き間違いをして、違う意味でのはりきりを見せ、達也がそのはりきりを答辞に向けた意気込みだと勘違いさせたまま、入学式が始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 「それではお疲れ様でした。御先に帰らせていただきます。」

 

 

 「はい、気を付けて帰ってくださいね?」

 

 

 「お気遣いありがとうございます、深雪先輩。」

 

 

 入学式が終わり、詩奈は深雪達と別れて、一人で門まで歩く。

 

 本当は達也と一緒にいたかったので、自分も手伝うと申し出たが、先程足をくじいてしまった事もあって、今日は大事を取って帰るように打診されたのだ。…その打診したのは達也だったが。

 治癒魔法をかけたとはいえ、連続して魔法を行使しなければ完全には治らないのは詩奈も分かっている。入学式の間も効果が切れ始める前に水波に治癒魔法をかけ直してもらっていた。この事実から手伝うどころか足を引っ張ると理解したため、今日はこれで帰る事になったという訳だ。(しかし一番の効力はやはり達也から打診を受けた事は間違いない)

 

 

 「お嬢様、お疲れ様っす。」

 

 

 それで、門まで歩いてきた詩奈だったが、不意に後ろから声を掛けられ、悲鳴を上げそうになった。しかし、唾を呑み込んで間一髪で踏みとどまる。そして振り返って知っている顔が目に入り、ほっと息を溢しながら文句を言う。

 

 

 「もう…、後ろからこっそり話しかけないでよ。太一!」

 

 

 「すみませんでした、お嬢様。答辞…、決まってましたね。良かったですよ。」

 

 

 「当たり前じゃない…! そのために一生懸命原稿を書いたんだから!」

 

 

 褒められて嬉しかった詩奈は目を逸らし、拗ねた表情で頬を膨らませる。しかしその口元は緩んで嬉しさを隠しきれていない。太一はいつものデレる詩奈の顔を見て、笑い出す。

 

 

 「そうですね、お嬢様が夜を充血させて眠たいのを必死に堪えながら何度も書き直して最終的に机で寝落ちするというまるで受験生の猛勉強ぶりをしたんですからできて当然でしたね。」

 

 

 「結局馬鹿にしてるんじゃないっ!!」

 

 

 自分がからかわれていたと気づいた詩奈は、怒って先を進みだす。それを未だに笑いながら太一が後を追う。

 

 

 「ついてこないでよ! しばらく太一の顔なんて見たくないんだから!」

 

 

 「そう言っても仕方ないでしょう、お嬢様。俺の家はお嬢様と同じですし。それに足を盛大にくじいて今もやせ我慢しているお嬢様を放っておいたら俺がこの高校に入った意味も使用人である意味もなくなりますって。」

 

 

 そう言いながら、詩奈を軽く抱き上げた太一はそのまま最寄駅まで歩き出す。

 

 

 「ちょっと!!太一!下ろして!」

 

 

 「怪我人は黙って人の言うこと聞いてくださいよ。それともこのまま家に帰るまでやせ我慢した結果、更に足を痛めて痛がって情けない顔をしたままあの人に会う気ですか?」

 

 

 「…………」

 

 

 太一が誰を指したのか、言われなくても理解した詩奈は暴れていたのに動きを止め、沈黙する。そして、太一を見上げて羞恥を感じたまま、詩奈が太一にお願いする。

 

 

 「じゃ…、お願いします。」

 

 

 「………はいよ、お嬢様。」

 

 

 詩奈が誰のために公共の場で姫抱っこされるのを我慢しながら、自分に運ばれているのか…。その理由を頭を振り絞って考えなくてもいい分、太一には心が曇る感覚を与えるだけであった。

 

 

 元々、太一は数字落ちした一族で”三浦”が本来の苗字だった。しかし、禁忌を犯した事で剥奪され、訳あって三矢家に主従関係を契約しているのだ。そして太一は魔法の才能が著しく低いため、詩奈と一高には入れたものの、二科生としての入学となった。

 

 使用人としていつも詩奈を護れるように…。そう思って今まで特訓もしてきた。そして年の近い詩奈と過ごす内にいつしか詩奈に恋心を抱くようにもなった。だけど、気付いたら詩奈は達也に好意を抱くようになり、以前と同じなのに、どこか寂しくもあり、悔しくもあった。

 

 

 そんな気持ちで初対面した今日、太一は詩奈の想い人である達也と対峙して、「こいつは危ない。…詩奈を譲っては駄目だ…!」と今まで隠してきた想いに火をつけたのだった。

 

 

 「…俺も負けていられねぇ~。」

 

 

 こそっと呟いた太一の秘めた決意は、詩奈の耳には入らず、風に乗って消えていく。ただし、その風は太一の想いを更に強くするものとなった。

 

 

 

 一方で、詩奈も今日の経験から、深雪だけでなく、ほのかも恋のライバルだと知り、更に増えるであろう達也を巡るライバルに負けられないと更なるアピールをする事を決意し、帰ったら早速お菓子作りをしようと計画を練るのであった。

 

 

 

 この二人の決意が乙女合戦の幕を上げる一年になるのは、明白。

 

 

 「今年こそは、面倒事に巻き込まれなければいいが」と願ってもいる達也の希望は、今年も消え失せる事は言うまでもない…。

 

 

 

 




はい…、これで詩奈ちゃんの話は終わって、再びアイドルストーリーに戻ります!

さて…、いよいよ明日原作が発売されますからね~、どこまで当たっているか、実際の詩奈と幼馴染がどういった関係なのか…。比べてみるのが楽しみだぜ!


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