自分が言った事が返って来る…。
現実もそうだから、みんな!! 言霊となって自分に返って来るから、悪口はほどほどにね!!
最高幹部のドレーナ、ウォン、ターンを倒し、ついに敵ボスのカバルレが待つ最上階で、カバルレと対峙したROSE一行。
そのROSEの熱い視線を一身に受け、カバルレは恐れるどころか、逆に高笑いをし、ROSE一行に死亡フラグを立てた。
魔法を交える前のほんの挨拶がてらの視線のぶつかり合いで、場の空気に緊張感が漂い始めた頃…、最上階のすぐ下の最高幹部ウォン・ターン双子の水のフィールド部屋でも違う緊張感が漂っていた…。
「………はぁ~~~~…。何でこんな事になっているんだってぇ~の!!」
「ウォンがペラペラペラペラペラペラ…………ってカバルレ様の事を洗いざらいしゃべったからじゃないか~~!!」
「何だよ!!そうしないと、今頃、俺達はあいつら特製のドロドロ熱湯地獄にドボンされて、骨になってたんだぞ!!?
…というより、ペラペラ……でいいんだよっ!! 長い!!」
「骨にならなくてよかったけどね~、それくらいいいじゃんか!!?
こっちが悶絶している間に、勝手に決めちゃってさ!!? 俺は嬉しくないね!!」
「…!! ターン!!」
ウォンがターンの拗ねた顔を見て、ちょっぴり涙を流し、感動している。ターンもウォンに文句を言っているが、隣にウォンがいてくれて、嬉しいし、本心はこうなってよかったと思っている。
…ただし、二人の今の状況を抜きにすればの話だが。
二人は可愛らしいフリル付のパンティーに履き替えさせられていて、パンティー一丁になって、壁に仲良く並んで貼り付けられていた。そして顔には、乙女メイクが施されていた。乳首や腹にはリップで書かれた落書きが……。
ウォンからカバルレからの情報を入手したミナホ達は約束通り、鉄鍋に双子を突っ込むのは止めた。そして、その代わりに、双子のプライドを折る目的で、現状の双子の姿に曝したのだった。
ミナホ達は女性が多かったのに対し、双子は性格や言動は卑劣だが、顔は女の子と間違えやすいほど、可愛い部類に入る美形なのだ。しかもチビで可愛さが一層引き立つ。見た目が可愛いと、なぜか着飾らせたくなるのが、女の性!!
ポーチに入れていた、化粧道具や裁縫道具で可愛いパンティーとメイクを施し、自分達が満足すると、壁に張りつけて放置し、満面の笑みで、螺旋階段に繋がる連絡通路を渡っていった。
ウォンは去り際に「約束が違う!!」とミナホに怒声を浴びせたが、メイク道具をシャキッと見せながら、意味ありげな笑みをして振り向いたミナホに、ウォンはさっきの威勢はどこに行った!!?というくらい、身体を縮ませた。
「何を言っているのかな? 約束は果たしたけど?
『情報を吐いたら、鉄鍋の中に入れない』って言ってそれを守った…。
でも、その後の制裁の内容まではそっちは何も言っていないし、私達の好きにさせてもらったまで♥
何も間違っていないよ~~!! じゃ、そういう事で!!」
投げウィンクをして、足早に去っていくROSEの背中を憎らしげに見送るウォン。
この時、ウォンは女の勢いは恐ろしい…とその身で痛感した。
そしてこの出来事が今の双子の状況という訳だ。
「まぁ、事情は分かったけどな~、そろそろこの体勢も飽きちゃったから外そう?」
ターンは気絶していたため、その時の話をウォンから聞き、眠たそうにそう言った。ターンにとってはそんな事はどうでもいいのだ。それよりも…
「そうだな!! 早くこの鎖を解いて、あいつらの後を追って、肉片にしてやるっ!!
俺達をバカにしやがって…!!」
「ああ!! 俺達に止めを刺さなかった事を後悔させてやろうぜ!!ウォン!!」
自分達の身嗜みよりも、自分達のプライドを傷つけられ、バカにされた事でROSEに激しい怒りと復讐の炎を掻きたてていた。
「ターン!!だけど、あのガキだけは生かして、俺達のおもちゃとして飼ってやろうぜ!!?」
「それ賛成!! ウォン!! 俺もそう言おうと思ってたんだ!!」
唇を吊り上げ、企みを曝け出す双子は壁に張りつけられて固定された鎖を外そうと『アクアボール』が解除されて、部屋の床を浸水した水に向かって掌を翳す。
CADはミナホ達によって、取り上げられているが、双子にとって、今まで生きてきた中で水が一番操りやすい物質。CADがなくても、魔法を起動させるのは造作もない事だった。
魔法が発動し、床に浸水していた水が渦を巻いて、蛇のように動く。そして二つに分裂して、先を尖らせた。これで、双子の手足を固定する鎖を壊そうという算段だ。
双子はタイミングを合わせ、鎖を破壊しようと水蛇を突撃させようとした。
パシャン… パシャン…
だが、この部屋に訪れた来客によって、中断する事になる。
そしてその人物を双子は知っていた…。
「ああ~~、なんだ、お前か~~。
あいつらが戻ってきたかと思ったぜ!? まぁあいつ等なら、こいつを差し向けて喉元に齧り付いてやろうと思っていたけどな~~!!」
「お前がここに来るなんて珍しいな~~!!どうだ?俺達と手を組んで、あいつらを殺しに行かないか~~?」
からかい気味に笑みを浮かべる双子。
しかし、双子が次に浮かべた表情は、笑みに非ず。
驚愕……、痛み……、寒げ……、怒り…。
双子の口から血が洪水のように溢れ出る…。
そして、双子の胸には、来客の腕が刺し込まれていた…。
「………お、お前…!! い、一体…どういうつもりだ……!!」
「味方…に、よくも……!! 」
双子は今も信じられないという顔で来客の顔をじっと見つめる。それに反して、来客の表情は一切感情が出ていない。
言葉も発していない。
ただ、来客が漏らす怒気だけが心の中に激しく燃え滾る怒りを表していた。
「「お前…、覚えていろ…!!」」
睨みを効かせる双子はそう吐きつけるのを、来客が聞いた後、双子の胸に差し込んでいた腕を思い切り引き抜いた。その瞬間、双子の空いた胸から大量の血しぶきが飛び散り、来客の身体も顔も血がかかる。
双子は首を垂らし、そのまま何も恨み言も言わなくなった…。
そして、来客の両手には、双子の身体から取りだした、生温かく、わずかにまだ脈を打つ心臓が握られていた…。ゆっくり…ゆっくりと脈が刻まれ、とうとう鼓動を打たなくなった心臓を強く握りしめ、粉砕する。
変わり果ててしまった双子の最期を殺気にまみれた視線で見下した後、来客は部屋を後にした。
血がべったりついた服を脱ぎ捨て、去っていく来客から、血が零れ落ちる。
その血と、双子の身体から壁を伝って流れ落ちる血が、水浸しだった床を透明から生々しい赤へと変えていった…。
はい~~…、え~~と…。
双子、堕ちましたね。反省しなかったからこうなったんだよ!!…って言いたいけど、これは…ね~…。
少しやばい展開になった。 果たして、双子を殺した来客って誰だぁ~~!!
ズゴッ!!