「う…ううぅ……。………いっ……てぇ~…!!」
身体に激しい痛みが走り、意識が戻ってきたが、再び微睡みの世界へと旅しそうになった。しかし、再び全身に痛みが走り、簡単に意識を手放せなくなり、初めて自分の置かれている状態に気づいた…。
「…おお、やっとお目覚めですか? 最悪最低人間双子の片方の…、ウォン?」
ウォンの顔を覗き込むるーじゅちゃんは微笑みながら、話しかけた。微笑んでいると言っても、目は笑っていないし、眉間には血管が浮き上がっているし、逆に背後から身を焦がしかねないほどの怒りの炎が見える。
ウォンが水を操るスペシャリストだとしても、この炎は消せはしないだろう…。
ウォンは突然現れたるーじゅちゃんの顔に、内心は驚きつつも、表面上は無表情で受け流す。そして、目玉を動かし、自分の視界に映る周囲を観察し、状況を把握していく。それによって、自分が今、どんな状態なのかを目の当たりにし、冴えてなかった頭も復活し、重かった瞼も開き、目をまん丸くして、大声で突っ込む。
「何だ、これは~~~~~~~~~!!!!!!」
ウォンがそう叫んだのは、ウォンの心にまだ”羞恥”というものが残っているからだろう。顔が真っ赤になり、足をくねくねする。手足を縛られているから、身を反らすしかできないから。
あの人間を蔑むような視線と言動をしていたウォンからはこんな反応をされるとは想像できないほどの体験を今、ウォンは受けていた。
誰から?…と言われるまでもなく、ROSEから…。
今、ウォンは手足を丸太に繋がれた状態で縛られていて、完全に豚の丸焼きされる状態だった。しかし、普通の丸焼きなら、背中から火炙りされるのが定石だが、今回のROSEの豚の丸焼き制裁ショーは、かなり違っている。
丸太に背中を密着させ、胸や腹が露わになっている。そして、その下には身を焦がすほどの炎…ではなく、どこから持ち込んできたと言わんばかりの全長15M位する大きな鉄鍋がウォンが落ちてくるのを持っているかのように、身を溶かしてしまうほどの熱い熱湯?がプクプクっと泡立ち、沸騰していた。(熱湯にしては、もう色が有り得ないくらい、黒紫風に濁っていて、なぜか、変な顔が見えたり、魚の骨が浮いているからだ。魚の骨の空いた目からその熱湯?が流れ落ち、血の涙ならぬ、怨みの涙にも見え、ウォンの肝を冷やしていった。)
そして、ウォンを縛りつけている丸太は左右でロープにくぐりつけられ、天井からつるされていた。しかし、ナイフで斬り込みされているため、少しでも衝撃を与えれば、ロープが切れて、あっさりと気持ち悪い熱湯?の煮えたぎる鉄鍋の中にドボンっ!!…っていう寸法だ。
今まで、いかなる拷問や実験も受けてきたウォンだが、綺麗好きでもあるため、子の鉄鍋に入って、身を穢されるのは是が非でも逃れたいと思った。
「や、止めろ!! この俺様をこの中にぶち込んでみろ!!? お前達を地獄の果てまで追いかけて、殺してやる!!」
怒声を浴びせるウォンに、色々と準備していたROSEのみんなが一斉に目を向ける。ただ、見つけると言っても、呆れ感満載の眼だが。
「……今のこの状況で、そんな事言う?」
「”立場”って言う言葉、ちゃんとわかって使っているのかと思ってた…。」
「あなたは、私達に毒を吐けるような”立場”じゃないんだけどね~。」
「今、この場を支配しているのは、私たちROSEよ!!」
嫌味たっぷりに微笑み、”立場”や支配っていうワードを強めにアクセントをつけ、強調する。それを、憤怒で顔を真っ赤にして、歯を剥き出しにするウォン。
先ほどの戦闘では、自分達、ターンと一緒に優位に戦況を運んでいた時、同じように主張した事を思い出し、それを逆手に取られたことに腹が立ったからだ。
だが、ウォンはそのおかげで、もう一人の半身…、ターンの姿を探す。
辺りを見回し始めたウォンに、サガットと鳥になる日が上を指差して、話しかける。
「もしかして、探し人はあれかな?」
「意識はないけどな~。」
指摘された上に振り向けるギリギリまで首をひねって、見上げた天井には、氷柱のように尖った氷の中に、自分とまったく同じ顔の青年が伸びた状態でロープにぶら提げられていた。ただし、氷柱が今にも背中を貫通しそうな距離で待機している。
「ターン!!」
「話しかけても無駄だよ~。 しばらくは意識は回復しないし~。頭少し逝っているからね~。」
頬杖をついて、ウォンを見つめるさっちゃんが真顔でそう答える。
「自分の心配をしたらどうかな? あんたはいち早く先に地獄に行くんだし…?」
そんな所で、ミナホが鞭を持って、背後に龍を携えてウォンに近づく。もちろん、龍は幻影で、魔法も使っていないが、錯覚を起こすくらいの威力をミナホは放っていた。
そしてそれは、他のROSEメンバーも一緒。野性的な視線と笑みをして、ウォンを取り囲む。…toko以外は。
「……みんな、もう落ち着いて。 双子はもう動けないし、これ以上は…」
額に汗を掻いて、みんなを宥めようとするtokoだが、一斉に向けられた野性的な視線に出かかっていた言葉がのどに詰まる。
「……いいや、この双子だけは…、絶対に許さん!! 私の可愛いショウリンを投げ飛ばしたばかりか、毒薬を打ち込もうとしていたなんて!! その報いを今ここで…、受けさせてやるっ!!」
怒りで髪がゆらゆらと炎のように揺れる。
「tokoはいいじゃん!! 私達だっていいところ見せたかったよ!!」
「ほとんど、tokoにいいところ持っていかれてしまったから、せめて八つ当たり…、じゃなくて、後始末くらいはしないと!!」
「それに、この双子から新情報が手に入るかもしれないじゃない!?
…あくまでついでだけど。」
…このように、ROSEは先刻の闘いでの鬱憤が相当溜まっているらしく、双子への制裁を決定したのだった。
「よし!!じゃ、もう十分堪能したから、さっさと鍋に突き落とそう!!」
ミナホがそう掛け声すると、RDCとし~ちゃんが左右のそれぞれのロープに、ナイフで完全に切りにかかる。
「待て!! やめろ!! 俺を誰だと思っているんだ!!?
落とすんじゃねぇ~!!」
「だれ?ただのくそ人間のウォンだよね?」
し~ちゃんがけろっとした表情であっさりとナイフでロープを切った。
片方が外れた丸太は勢いよく、鉄鍋に落ちていき、丸太の先が鍋に浸かる。そして使った先から鼻が曲るようなにおいが炊き込み、丸太の先が侵食されていく。
(な!! なんだあれは!? 身が穢されるレベルを超えている!!
明らかに落ちたら最期!! 身が熔けて終わりだ!!)
丸太が腐っていっているのを視界の端で捉えたウォンは、頭に血が上りながら、何とか逃れようと必死に身をよじる。しかし、頑固に縛られているため、よじるどころか、びくともしない。逆さま状態になっているため、余計血が回るウォン。
「あれ?先に行くのは嫌なのかな?ウォン?だったら、もう片方に飛び込んで行ってもらいましょうかね?はいっと!!」
ミナホがボタンを押すと、天井で意識を失くしてぶら下がっていたターンが支えているロープが急激に伸び、鉄鍋へとダイブしていく。
「やめろぉぉぉ~~~~~~~~!!!!!」
ウォンが叫んで、ターンが落下していくのを目の前でみる。
ターンの身体が落ちて、落ちて落ちて…………
鉄鍋にドボンするわずか数十センチで止まった。
ターンの無事を見て、安堵の表情をするウォンにミナホが取引を持ち掛ける。
「さぁ、どっちが先にこの中に入りたい?あなたか…、こっちの片割れか…。
選ばせてあげる♥」
「お、俺は…」
ウォンは意識がないターンを見て、昔の事を思いだす…。
何があっても、いつも一緒にいて、横を見ると、いつも隣にいて笑っていてくれたターン…。ずっとこれからも一緒。何があっても…。
その苦しむウォンに、ミナホが提案する。
「二人とも助かりたかったら、カバルレの弱点だったり、あいつの所まで行くルート等のカバルレに関する情報を知っている限り、吐きなさい!!
……そうすれば、この鉄鍋の中に落とすのは止めてあげる。」
「本当か?」
「うん、私達は、あんたみたいな取引を持ち掛けておいて、用が済んだら、爆発させて、殺しにかかるほど、卑怯な人間じゃないからね!!」
ウォンの頬を勢いよく、抓るミナホ。
……ウォンはその後、知る限りのカバルレの情報を告げた後、自分達が持つ螺旋階段の扉の鍵をミナホに渡した。その後は、再び身体に激しい痛みが走り、そのまま暗闇へと意識が沈んだのだった…。
ミナホ達はこうして、双子から螺旋階段までのルートと鍵をゲットして、向かい、とうとう仲間全員との合流を果たす。
そして、円陣を組んで、気負いを入れた後、螺旋階段を上り、ついに敵の親玉、カバルレが待つ最上階へと到達した…!!
「……ここまで来た事は褒めてやるぞ…!!だが、お前達の最期のステージになるのは、決定だ!!
ROSEよ!!
カババババババ!!!!」
ついに…、ついに、敵ボスと相まみえ、決戦へと赴く事になる…!!
なんだか、正義のギルドのROSEなのに、悪の結社みたいになってる~~!!
違うよ!!?みんな、本当はいい人ばかりだよ!!?
多分、双子の礼儀を重んじない態度に、苛立ちを溜め込んだ結果だよ!!?うん!!