魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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やっぱり、何事にも戦略はいるもんだな~~。


ミスディレクション!!

 

 

 

 

 「私達の顔を拝ませてあげますよ? ……ああ、でもせっかくの対面をダウンしていたら、見れないですね。」

 

 

 

 ウォンの腕から解放されたショウリンは喉を抑え、咳き込みながら、声のする方を目を細めて見た。聞き覚えのある声に、警戒よりも、安心感で一杯になり、力が抜けて、眠らないように必死に踏ん張りながら、期待を込めて…。

 

 

 「大丈夫!? ………ごめんね!? よく頑張ったよ、ショウリン…!!」

 

 

 そして、ショウリンに急ぎ足で駆け寄り、力強く抱きしめたその人影に、ショウリンは身体の骨がビシビシいっているのを聞きながら、苦しい表情をする。だけど、その表情には、同時に嬉しさも感じられた。

 ショウリンは自分を抱きしめてくれる暖かさに涙があふれ、背中に腕を回して、抱きしめ返す。

 

 

 「ううん……。助けてくれてありがとう…! …tokoさん!!」

 

 

 ショウリンはついに、緊張の糸が解れたのか、号泣しだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ショウリンがtokoの胸で泣きじゃくっている間、tokoの後ろから次々と、双子の不意打ち爆発に巻き込まれたと思っていたミナホ達が現れ、ショウリンやサガット達に駆け寄って、無事を確認すると、ミナホも涙を浮かべ、ショウリンとtokoに覆いかぶさるようにして、抱きしめた。

 サガット達もいつの間にか『アクアボール』から解放されていて、駆け寄ってきたみんなから、心配された後、一斉に抱きしめられ、今度は締め付けによる呼吸困難に陥ることになった。

 

 

 全員がこうして、助かったのは、tokoの活躍に他ならない。

 

 

 

 

 双子たちが人質交換を要求している間、tokoは最高秘術レベルの存在の薄さを発揮し、姿を消した。そして、異様に漂った夥しい数の『アクアボール』を目にして、これで何かを仕掛けてくると推理したtokoは、無音フィールドを張って、みんなの周りの『アクアボール』を蒸発させて回っていた。双子はミナホ達に、特にショウリンに気を回していたので、気付かなかった。『マルチ・スコープ』を展開していれば、少なくとも、『アクアボール』が少なくなっていっていることは理解できただろう。しかし、あいにく『マルチスコープ』はショウリンが知覚系魔法を使っていないと分かった双子がそれに対抗する必要はないと判断して、発動されていなかった。

 

 それも相まって、確実に『アクアボール』を封じに掛かっていったが、そろそろ『アクアボール』に捕らわれたサガット達を助けようとした時、ショウリンがまさかの人質に名乗り出たことで、意識がそっちに移ってしまった。

 tokoもショウリンを止めに入ろうとしたが、ミナホと目が合い、アイコンタクトで来るな!!っと制止させられた。

 ミナホには、事前に空気と同化し、『アクアボール』とサガット達を何とかすると告げていたので、ミナホはtokoにこの状況を打破するための瞬間にすべてを託していたのだった。

 

 それを、ミナホの一瞬の視線で察したtokoは内心、苦しい決断だったが、自分を信頼してくれて任せてくれたミナホに答えるため、サガット達の救出に回った。

 

 tokoは小銃型携帯のCADを三人の口と鼻の回りに照準をセットし、拳一つ分ほどの大きさに圧縮した空気玉を一つずつ打ち込む。『アクアボール』を潜り抜け、三人の口先の手前で止まった空気玉が三人の顔に接触し、三人に新たな空気を与えた。

 

 tokoはあくまで時間を稼ぐためにそうした。

 

 今、三人の『アクアボール』を壊せば、双子の意識がそっちに移り、せっかくミナホ達がひきつけてくれているのに、三人に更なる電撃を与え、感電死させてしまう場合があるからだ。自分の発動している魔法には敏感に反応する…。

 

 そのため、tokoは必要最低限の空気玉を三人に与えたのだった。現に、異変に気付いたウォンが三人に振り向いた時には、空気玉から新たな空気をもらっていて、息絶えそうになっている風に装った。ウォンも三人が無駄なあがきをしていると思い、気にも留めずに、再びショウリンに目を凝らす。

 

 

 (後は、双子が完全に油断した時を狙って、三人を解放し、双子を撃沈すれば…)

 

 

 tokoは頭の中でシュミレーションして、作戦を練り、音の振動波を作り出し、それでミナホ達に作戦を伝えようと、魔法を発動しようとした時、双子が『アクアボール』を使った水蒸気爆発を連鎖させ、爆発させていった。

 みんなの周りのすぐ近くにあった『アクアボール』は消していたので、直撃は免れたが、それでも衝撃波は凄まじいものだ。

 tokoも慌てて、『能動空中機雷』をアクティブシールドとしてみんなを守ることで、連鎖による水蒸気爆発からみんなを守った。ちょうど、振動系統魔法を発動しようとしていたため、同じ振動系統魔法をすぐには発動することができ、間に合った。

 

 

 tokoが『能動空中機雷』をしたおかげで、最初の爆発の爆風によるダメージで済んだみんなは爆発による煙で双子の視界から自分たちが見えないことを知ったミナホが自分たちの床面に加重系統魔法『アンダーホール』で空洞を作り、下の階に退かれ、そのまま、下の階から双子たちの後ろへと掻い潜り、今度は『地割れ』で割れ目を作って、そこから這い上がったという訳だ。

 

 tokoはさっちゃんからその事を超音波に乗った暗号で知って、胸を撫で下ろした。

 

 

 

 そして、双子に捕らわれた三人を視界が悪くなった今のうちに、解放しようとした時、ショウリンが双子に飛び掛かって、投げ飛ばされる場面を視界に捉えた。

 

 tokoは沸き起こる怒りを抱き、場に溶け込んでいた空気に淀みが生まれた。

 

 しかし、幸いにも、狂喜に逸した双子には、同じ空気に染まっている所為か、気付かれることはなかった。

 

 

 tokoの頭の中には、サガット達に電撃を浴びせて、更には幼いショウリンの首を絞め、注射を打とうとする双子を懲らしめる事しか考えられなくなっていた。

 そしてついに、ショウリンの胸に向けて振り下ろされたターンの腕を目にして、tokoは三人が捕らわれていた『アクアボール』を双子の上空に移動させ、収束系統魔法を無効化した。球体を解かれた水はそのまま重力に従って、双子の頭上に降り注がれる。びしょ濡れになったところをすかさず、放出系魔法『スパーク』を発動し、ターンを感電させた。

 サガット達が味わった苦しみを受ければいいと、電撃を浴びせたtokoは相棒が突然倒れたことで動揺したウォンに、ターンの持っていた注射を移動・加速系統魔法『アクセル』でショウリンの首を絞めるウォンの腕に突き刺した。

 毒が回りだし、苦しむウォンにtokoの得意な放出系統魔法『イレギュラー・レイ』…、前方に物理的なものを屈折させる魔法を展開しておき、そこにレーザーを発射することで予測不可能な軌道に変化させる魔法…。

 その魔法をループキャストして、ウォンを死角から撃ち抜いた。

 

 

 

 

 そのあと、ミナホ達が下から回り込んで、這い上がった時にはすでにtokoが決着をつけた後だった…。

 

 

 

 

 

 

 こうして、tokoは双子を撃破し、攻略したのだった…。

 

 

 

 見事な”ミスディレクション”を駆使して…。

 

 

 

 




tokoっち!!かっこいい~~~!!

自分の得な分野を駆使して、勝利を得るなんてすごいな~~!!

最後は怒りに身を任せていたけど。なんだかんだでサガットたちを救えたし、ショウリンも助けたし~、tokoはスーパーマンだね!!

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