魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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純情な思いを乗せて…。




僕にできる唯一…!!

 

 

 

 

 

 「ごめんね…。 ぼく、行ってくるよ…。」

 

 

 

 そう言って、一歩ずつ歩いて、ROSEのみんなから離れていく小さな背中……。

 

 その背中に大声で名前を呼んで、引き留める。

 

 

 「待って!! ショウリン!!」

 

 

 「行くなっ!!」

 

 

 ミナホとRDCが小さな背中を震わせるショウリンを呼び止める。

 

 ミナホ達はショウリンが自ら敵の元に行くとは思っていなくて、目を離してしまっていた事に悔いた。そして、なんとしても双子に行く事を阻止しようと必死に呼びかける。しかし、ショウリンは足を止めたものの、ミナホ達には背中を向けたままだった。

 

 

 「ショウリン…、双子のいう事を真に受けてはいけないよ。」

 

 

 「そうだよ、ショウリン!! ショウリンも見たでしょ?あの双子の化けの皮が外れた場面を…。ショウリンと交換でサガット達が解放されるなんて、虫が良すぎるし、私達だってそんな方法で、要求を呑む事は出来ない!!」

 

 

 「ショウリンは、私達の大事な仲間なのよ!! あなたをあんな最低なクズ人間に引き渡すなんて絶対に許さないんだから!! 」

 

 

 huka、し~ちゃん、さっちゃんが続いて、ショウリンを説得しにかかる。

 

 

 「…さぁ、ショウリン…、戻って来て? 大丈夫…。 私達が守ってみせるから…。」

 

 

 ミナホが優しく語るような口調でショウリンに手を差し伸ばす。

 

 みんなもこれでショウリンは引き戻ってくると思っていた。ショウリンは、ROSEに入ってから、ミナホに懐いていたから。ミナホの言葉には耳を傾け、聞いてくれるだろうと思っていた。

 

 

 「………ごめんなさい!! 僕はそれでも……、行きます!!」

 

 

 だから、泣きながらもミナホの手を受け取らないショウリンの言動にみんな、驚きを隠せなかった。

 ミナホなんて、嫌われたとまではいかないけど、何が悪かったかとミナホにしてはオロオロした態度でショウリンの言葉を理解しようとあたふたし出した。

 

 

 

 「僕は…、このままじゃだめなんだ……!!

  いつまでもみんなの背中だけを見続ける弱いままの僕で、居たくないんだ!!」

 

 

ショウリンが本音を爆発させた。

 

 それをみんなは黙って、ショウリンの背中をじっと見つめる。

 

 

 ショウリンも、もちろん双子の元へは行きたくないと思っている。

 

 しかし、自分がみんなのためにできる事といったら、もうこれしかないとも思っている。

 

 『精霊の眼』が双子にバレて、使いづらくなって、しかも自分を捉えるために、催眠をかけられたり、庇ってもらった所為で、サガットと鳥になる日、るーじゅちゃんが人質に捕えられてしまった。

 ショウリンは、自分が浅はかに『精霊の眼』を露見させてしまって、相手に興味を持たれてしまったから…。だから、みんなを巻き込んでしまったんだと子供でありながら、人一倍の罪悪感と歯がゆさを感じていた。

 そんな矢先に双子から自分と三人との人質交換の取引が持ちかけられたのだ。

 

 

 (これが、みんなのために、僕が唯一出来る事……!!)

 

 

 ショウリンはみんなが双子に自分を庇う言葉を聞きながら、心の中で決心を固めていた。そして、ついに双子の元へと歩み出したのだ。

 

 

 

 

 無言で語るショウリンの背中に、みんなはショウリンが何を考え、何を想っているのか……聞かなくても理解した。しかし、理解と納得は別問題だ…。

 

 

 「ショウリンの気持ちもわかるよ!!でも、だからと言って、『はい、そうですか』で済む問題じゃないんだよ!!」

 

 

 「もしショウリンの身に何があれば、私達だって傷つくよ!!」

 

 

 必死にショウリンを引き戻そうとするみんなの顔には、悲痛の叫びと涙が流れ落ちている。

 

 みんなが自分を想ってくれている喜びを噛み締めるショウリン。

 

 だけど、それを胸に秘め、歩き出す。

 

 ミナホとさっちゃんがショウリンの後を追おうと駆けだす。

 

 

 

 

 その瞬間、ミナホ達の周りで爆発が起き、連鎖反応で次々と爆発が起きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふふふふふははははははは!!!! や~~い!!吹き飛んだ!!

  ざま~見ろ!! 跡形もなく、消えろ!! 」

 

 

 「子供は俺達が手にしたぜ!! もうお前達は用済みだ!! 

  ざま~見ろ!! 肉片となって、果てな!!」

 

 

 薄気味悪い高笑いをして、連鎖爆発に巻き込まれたROSEを冷やかしながら笑う双子。その傍らに、一発目の爆発で吹き飛ばされたショウリンが意識を取り戻し、今もなお続く爆発を目にして、絶叫を上げる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「みんな~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょ、えええ~~~~~~!!

仲間の感動シーンで、殺しにかかるとか…!! お前達、鬼か~~~!!あの双子め~~!!


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