向かい合う暁彰とドレーナ…。
そのお互いを見る目には、何か試しているような、観察しているようなものだった。
二人から漂う重苦しい雰囲気に凍りついたように、動けずに立ち尽くして二人を見守る戦闘員たちは、額に汗を流し、この状況を静かに静観するしかない。
「……私があなたに鍵を差し出すと? なかなか面白い事を言うのね、暁彰さん?予見なんて口にして。」
「いや、これは予見じゃない。絶対に起きる嘘偽りない”結果”だ。」
「まるで、先の事が分かっているような言い草ですわね。」
「その通り。君を直接見て、確信した…。 」
「あら…、そう………。」
含み笑いをして、会話する二人だが、二人が放つオーラは腹黒くて、既に対峙している。
「なら、その”結果”とやらを燃やしてあげるわ、あなたと一緒に…!!」
ドレーナは背中に控えさせていた鷹の炎の翼を大きく広げ、翼から無数の炎の羽を矢の如く、高速で暁彰に発射する。無数の炎の刃となった羽を暁彰は難なく躱す。その動きはまるで、どこから飛んでくるか分かっているかのようなものだ。
そして、暁彰も水の魔法で応戦する。この部屋に到達する前に、各部屋や廊下に配置された水道管から水を手に入れ、球体状にして圧縮し、持ってきていたから、水での攻撃魔法を使う事が出来た。
『水鉄砲』を散弾化し、ドレーナに放った攻撃魔法は、暁彰と同じく、右…、左…、とこれまた少しの動きだけで簡単に躱していく。
二人とも、まったく互いの攻撃に当たらない。それどころか、躱し方も攻撃手段もまるで同じ…。
一向に勝負がつかない。隅で見守る戦闘員たちもまさかの強者登場で、ドレーナがピンチになるかもしれないと焦りを持つ。
激しい攻防が続き、いつの間にか、魔法剣での空中戦となっていた暁彰とドレーナは互いの剣を交え、大幅に距離を取った。
「想像していたが、やはり時間がかかるもんだな。はあ…。」
「久しぶりに手応えありそうな方と戦えて、この子も満足みたいよ?
でも…、私、もう疲れたの…。この辺りで終わりにしたいのだけど…、いいかしら?」
「炎獣でか?」
「ええ…、そうよ。 私はこの子達の力を最大限に引き立てる事が出来るから…。便利な道具でしてよ。」
・・・・
「……その炎獣たちを造りだすなら、俺は君を許す訳にはいかない…。」
「別に、あなたに許されたいとは思っていないから、大丈夫よ。」
嫌悪感を隠さない暁彰を、無表情で受け止めたドレーナは指を鳴らす。振動系魔法で指を鳴らした音を増幅させ、部屋中に響かせる。
その音に、突然静観していた戦闘員たちが苦しみ出し、悲鳴を上げ始める。
「あ、熱い……。体が熱い…。」
「燃える…!! 苦しい………!!」
戦闘員たちは次々に倒れだし、悶え、苦しみ、身体から炎が沸き起こり、その炎が身体を侵食していく。
「俺の身体…、が…、燃えていく…!! ドレーナ様~~~~!!」
「意識が……薄れ…、ていく…。 うううぅぅ~~~!!」
「御、御助けを~~~!! ドレーナ様~~~~~~~~!!!!!」
「「「「「ドレーナ様~~~~~~~~!!!!!」」」」」
助けを求める戦闘員たちに、一切目を向けずに当然というべき態度で彼らが炎に包まれていくのを平然と待つ。
暁彰は穴から溜めていた水を洪水のような流れで戦闘員たちに発動し、火を消そうとする。しかし、彼らが発する炎の凄まじい勢いで水は蒸発する。
そして、戦闘員たちは人の姿を失くし、その代わりに炎が大きくなっていき、次々と炎獣が現れた。その炎獣たちの数は炎に包まれていった戦闘員たちの数と同じ…。
「どう…? 面白いショーだったでしょ?」
自慢のショーが成功したかのように微笑むドレーナの問いかけに暁彰は……
「………俺はやはり君が嫌いだよ、ドレーナ。たとえどんな理由があろうと…。」
「…それは私もよ。私もあなたは嫌い…。」
憎悪の視線を向ける暁彰は、怒りに満ち溢れる。その怒りをさらりと受け止め、挑発的な視線で見つめ返すドレーナ。
二人の闘いはまだ終わらない…。
そして再び、現れた炎獣たちの脅威に、暁彰は一人で立ち向かう事になる…!
はいはい…、実は炎獣は元人間でした。
それを暁彰は知っていて…。 何で知ってるんだろう…?