重傷を負っているというのに、諦める意思を見せず、逆に闘志を突きつけてくるROSEにドレーナはここにきて、初めて嫌悪感を露わにした。
ホームズは冷たい表情をしたドレーナに言葉にはできない何かを感じる。それが何かは分からない。しかし、嫌悪感と同じくらいの強い意思を感じるのだった。
それでも、この場の空気を変える為、それには触れず、喧嘩を売るような口調で話す。ドレーナにだけでなく、戦闘員たちにも。
「さすが、あんたが使役する炎獣たちだ。今まで戦ってきた人よりも、強かった…。でも、それだけだ。倒せない訳じゃない。
さっき…、お前達は言ってたな。『炎獣たちがそう簡単に倒されるものか!!』って…。
その傲慢な自信が敗因だ。」
「何だと!!」
「”一度も倒されたことがない”…。これで得た自らの力の強さ、自信が圧倒的勝利を積む事によって、絶大な力になる。それと同時に、倒されれば、それは簡単に崩れる。
あの三体の炎獣…、ずっと勝ち続けて、攻撃パターン、ずっと同じだったんじゃないか?獅子の炎獣が突撃隊長、猿の炎獣が錯乱担当、そして熊の炎獣が止めを決める。
ワイズさんとオドリーの時も、俺達の時も同じ順番だった。勝ち進んでいると、その方法が一番効率よく思えてくる…。あの炎獣たちはあれが一番じっくり来るやり方だったんだろうな~。だから、次にどの炎獣がどんな攻撃をしてくるのか、2回でよく理解できた。それに、くろちゃんが見出してくれた攻撃魔法の手段も掴めた。
おいら達はずっと炎には、水で対抗しないといけないと思い込んでいた。しかし、熊の炎獣が猿を巻き込んで火炎放射を当てた時、炎同士、吸収するのかとも思ったが、結構効いているのを見て、思ったんだ。
炎獣だからと言って、自分以外の炎をコントロールできないのではないか?
だとしたら、炎を吸収されずに済むなら、話は簡単。目には目を、歯には歯を、炎には炎をってな。水が手に入らないこの部屋では、有効な攻撃魔法だ。
ここまでくれば、あとは、炎獣たちの攻撃パターンに合わせて、そのタイミングに合わせて、攻撃するだけだ。
思ったとおり、動いてくれたんで、最後は楽だったぜ。」
ホームズの観察眼からの作戦の全容が語られ、戦闘員たちは後ずさる。たった2回だけで炎獣たちの攻撃パターンを読み込み、全て計算に入れるとは信じられずに、恐怖を感じ始めたからだ。
それだけの攻撃を見ただけで、全ての動きを予測するのは難しい。
それでも、ホームズがそれを実現した現状とが交わり、力押しでは敵わないのではという疑念を戦闘員たちに抱かせたのだ。
そんな恐怖を抱く戦闘員たちとは違って、冷たい視線で見つめるドレーナは恐怖を感じているようには見えず、ただ淡々とホームズの話を聞いて、気怠そうにため息を吐いた。
「それで…? これ以上は戦えない深手を負っているROSEの皆さん。
そんな虚勢を張って、どうするというの? 結局は私の手に掛かって御終いよ?」
「いえ、もう大丈夫だぜ。 」
「そう、これからが本番…。ボリボリ…。」
「…………」
強き佇まいを崩さずに立ち尽くすホームズと火龍人の反応に、ドレーナは冷たい視線をさらに強める。
そして、はっと何かに気づいた顔をする。
「そのとおり。時間稼ぎはさせてもらったよ。」
「やっと来たにゃ。」
「来るのが遅い…!」
くろちゃん、ちゃにゃん、御神が愚痴をこぼし、後ろに振り返る。そこには、ワイズさんとオドリーが落とされた大きな穴がある。そこに目を向け続けていると、穴から勢いよく真っ直ぐに飛び出してきた人影がくろちゃん達の近くで着地した。
突然の乱入者に戦闘員たちが戸惑いを見せる中、乱入者は言葉を紡ぐ。
「待たせたみたいだな、みんな。 ここからは俺が相手になるよ…。
…俺にしかできないから。」
最後に現れたROSEメンバーって誰~~~~!!