火炎放射やばす~~~!!
三体の炎獣の火炎放射が御神、ホームズ、火龍人に向かって、解き放たれる。
炎の渦となり、一層威力が増した火炎放射。確実に浴びれば、天井に穴をあけてくれるかもしれないが、その代わりに自分達は焼かれて跡形もなく、焼け焦げて炭になる事はその火炎放射を見れば、分かる。
ここまで身体にダメージを受ける戦闘は最近はなかった。これが最高幹部の力なのか…。
落下しながら、部屋を見回すと、涙を流し、何かを叫ぶリテラの姿が目に入る。
…そうだ、こんなところで、負けられないぜ…!!
三人は今持てる相子で、可能な魔法を発動する。
しかし三人とも発動したのは、慣性制御の魔法で、床面との落下衝突を抑える魔法だった。
そんな事をすれば、火炎放射をまともに浴びてしまう。本人達が思ったとおり、炭になってしまう。
いったい、どうしたの言うのか…?
「くっ…、ハァ…、くろちゃん!!」
肋骨が数本折れていて、息を吸い込むのもきつい状態だったが、ホームズがくろちゃんの名を呼んだ途端、突然、熊の炎獣が体勢を崩し、猿の炎獣を巻き込んで倒れる。そして熊の火炎放射は猿に、猿の火炎放射は獅子に、と見事に仲間内でヒットし、爆炎が舞い上がる。
「よし!! 私を忘れてもらっちゃ、いけないよ!」
その声は、熊が倒れた方向と正反対の方から聞こえた。
そこに、右手でピースサインを作って、高々と上にあげて、満面の笑みを浮かべるくろちゃんがいた。
突き飛ばされる直前に、硬化魔法が何とか間に合い、壁に激突したくろちゃんは硬化魔法をかけていたとはいえ、すぐには立ち上がる事は出来なかった。そして起き上がった時には、熊の炎獣によって、天井にうちあげられた御神達が激突した時だった。
くろちゃんは次に火炎放射を放とうとしている炎獣たちの攻撃をホームズ達から逸らすため、耐熱性の障壁魔法を展開する。今のくろちゃんは炎獣たちに気づかれていない…。
今度はこっちが不意打ちを仕掛けて見せる…!!と闘志に燃えるくろちゃんにホームズが見つけ、視線でタイミングを計って、合図した。
そして、くろちゃんは障壁魔法を張ったまま、背中を向けた状態の熊の炎獣の膝下あたりに加速魔法を、障壁魔法を張ったままの自分自身に纏わせ、高速で突っ込んでいった。
そのため、ひざかっくんされた熊の炎獣はバランスを崩し、猿の炎獣へと倒れる。
その威力はトラックが厚さ15メートルのコンクリートに突っ込んでいったくらいの衝撃を感じさせるものだった。
「「「「「ええええええええ~~~~~~~~~~~!!!!!」」」」」
遠目で見ていた戦闘員たちの驚きの声が聞こえる。
彼らも今まで、炎獣たちが倒される場面を見た事はなかった。だってあの巨体の炎の身体の持ち主と正面切って闘おうとは誰もしなかったのだから。
だから同じく三体の炎獣たちに一撃返したくろちゃん達の連携に、ドレーナもほんの少しだけ感心する。
「うふふふふ。やるじゃない?」
観客向けの作り笑いから少し、妖艶な笑みが潤臨するのだった。
そんな中、熊の炎獣は膝かっくんされたショックと巻き込まれた猿の炎獣からの説教でなんだか落ち込んでいるように見えた。…正座していたし。
激昂している猿の炎獣に獅子の炎獣が肩に腕をポンポンと叩き、宥める。自分も猿の炎獣から火炎放射を受けていたはずだが、気にもしていないよう。
三体の炎獣のやり取りがなぜか行われていた…。
膝かっくん…、あんな恐ろしい物だったなんて…
あんないたずらに引っかかるお前のせいで、これは痛い目に遭った!!
もうその辺にしとけ、猿。
……なんて、炎獣たちに声帯があれば、こんな感じで話していただろうな~~~!!