でも、まずはドレーナを活躍させてみるかな?
下っ端戦闘員たちのガンマ・オクタゴンによる一斉攻撃を受けたくろちゃん達一行。
そのくろちゃん達がいた場所には、今まさに爆炎と黒煙が立ち上っていた。そして床面には衝撃のため、亀裂が円形状に広がっていた。その激しい衝撃の痕が、ガンマ・オクタゴンの魔法の威力を物語っている。
下っ端戦闘員たちは、目の前の光景に対し、歓喜に満ちる。まさか自分達がこれまでの仕掛けで倒れなかった敵を、たった一撃で一掃したのだから。小躍りして喜び合った。…酸素マスクと防火ツナギを着ていて、表情は見られないが。
そもそも部屋が広い空間とはいえ、窓もなければ、消火栓もない。
こんな場所で爆発なんかしたら、下っ端戦闘員たちもとばっちりを喰らうだけだ。……普通は。
炎……、それは、ここにいる最高幹部、ドレーナの最も得意とするもの…。彼女はいつも最低一匹は身辺に従わせているため、常に彼女に就く下っ端戦闘員たちは防火装備を携帯しているのだ。それに、彼女が赴く建物内は全て耐熱素材で作られている。もちろん、この部屋も。だから、炎がどんなに部屋中に広がろうが、問題ないのだ。
フィールドの条件では、明らかにドレーナの方が有利。
したがって、これで全て片が付いたと下っ端戦闘員の誰もが歓喜していたのだが、この部屋の主…、ドレーナだけは、無表情を貫き、浮かれまくる部下達に愛用の鞭を振り下ろす。
「あい~~~~~~~!!!」
「きゃふ~~~~~~ん!!!」
「…あんた達の眼は節穴みたいわね。よく見なさいな。まだ闘いは終わっていなくってよ…?」
冷たい目と言葉で、部下達を黙らせるドレーナに部下達は狼狽える。
「で、ですが! 先ほどの攻撃は確かに直撃… ひぃっ!!」
「…あら、私に意見を言うのかしら? 困ったわね~。
…では、私のお願いを聞いてくださいますよね?」
「…はいっ!! ドレーナ様なら、どんなご命令もお受けいたします!!」
ドレーナは網タイツに、胸元を大きく開けた黒革の半袖ジャケットを着て、足の付け根が見えるくらいの同じ黒革のショートパンツを履いていた。燃えるような橙色のくせっ毛がある長髪はポニーテールで一纏めにしている。そして、豊かな胸には、銀色のペンダントがかけられていた。
肌に密着した黒革の服が妖艶な身体の曲線を引き立たせる。
一見、20歳後半に見える絶世の美女だが、実は実年齢は35歳という驚きの若さ。
そんな彼女のお願いされたら、断らない異性はまずいないだろう…。
故に、ドレーナに口出しした部下の一人の運命は必然であり…
「そう…。よかったわ。 実は、この子…、さっきからお腹すかせていて…。機嫌が悪いのよ。あなた…、よろしくね?」
「はい?」
すると、ドレーナの炎の翼が大きくなり、ドレーナから離れるようにして、姿を見せたのは、鷹の姿をした炎鳥。ドレーナは華麗に宙返りをし、床面に着地する。そして、背中を見せるドレーナの後ろでは、炎鳥による”お食事”が行われたのだった…。
それをドレーナは振り返って、他の部下達が巻き込まれなかったか、確認する事はなかった…。
「ちょうどいいお肉が手に入ってよかったわね、ファル…。美味しかった?
………そう。まずまずだったのね。 やっぱり下っ端では、美食家のファルには満足できなかった…ということですわね。」
頬に片手を当てて、ため息交じりに、困った顔をするドレーナは実年齢よりすごく若く見える。しかし、言っている事とやっている事はグロいが。
ドレーナの命令を聞き、他の戦闘員がガンマを構えて、先程、攻撃した場所に目を必死に細めて、見つめる。黒煙も消えていき、煙で見えなかった光景が戦闘員たちに驚きを与える。
そこには、何重にも連なった『ファランクス』の壁に守られた、五体満足のくろちゃん達の姿があった。そして、新たに、もう二人…。
「…危なかったね。危機一髪だったよ…。ボリボリ。」
「まったく…、もう戦闘なんだから、いつまでもお気楽ではいられないよ。…今回は特に。
でも、間に合ってよかった。
大丈夫。私がここに来たからだ。
何があっても、この独身人生を貫いている、おじいさんの私が!! みんなを守る壁になって見せるっ!!」
「「「「「「ワイズマ~~~~~~~ン!!!!!」」」」」」
グッドタイミングで火龍人とワイズさんが合流した。
「………少しは楽しませていただけるのかしら…?うふふふふふ。」
そして、この展開を面白そうに迎えるドレーナといよいよ魔法対戦を始めるのだった。
いやあ~~!! タイトルではなんだか、ワイズさんっぽいのに、なぜかドレーナの悪が目立ってしまった…。
しかし、悪が際立ってこその正義の登場!! お約束だよね~。