それではどうぞー
辺りを見渡す限り一面の荒野。これ、なんだっけ、なんかカウボーイみたいな人たちが銃撃つやつ……の映画とかで見た事ある光景だ。
あ、思い出した。西部劇だ。
うん。
あのさ。
「誰もいねえ……!」
side:master
「ロマンこれどういうこと」
《いやあの僕にもよくわからな――ごめんって!》
「どうしましょう……! まさかスラクシャさんとはぐれてしまうなんて!」
5つ目の特異点であるアメリカ。
ブリーフィングを終えてすぐにマシュとスラクシャ、そしていつも勝手についてくるフォウと一緒にレイシフトをした。
そしたらスラクシャがどこにもいなかった。
ちょっとした用事でのレイシフト程度ならともかく、聖杯探索で逸れるなんてシャレにならない。最悪周りが敵だらけかもしれない状態なんだし。
それに、もしこれで彼……もとい、彼女に何かあったらオレは夢で出会ったあの2人に呪われかねない。ヤバい。
《申し訳ないけど、現時点で彼……じゃなかった。彼女の居場所は分からない。近づいてくれれば反応で分かるんだけど……》
「……仕方ない。スラクシャには戦車もあるし大丈夫……だと、思う……きっと、多分」
「先輩、もっと自信を持ってください。こっちも不安になってしまいます!」
いやだって特異点に行くたびに大なり小なり怪我するんだよ!? 前の特異点なんか本気で消滅しかけてたくらいだし……。
《って、すまない緊急事態だ! その先の荒野で、大規模な戦闘が発生している! これはちょっと、普通の戦いじゃないぞ!?》
「了解しました。スラクシャさんのことは心配ですが、マスター、今は」
「そうだね、行こう!」
たどり着いた荒野では銃を持った兵士と機械が、槍を持った野性的な兵士たちと戦っていた。
「あ、あれは……バベッジさん!? 先輩、バベッジさんです!」
「落ち着いてマシュ。なんでもないよ」
オレもちょっと思ったけど。
と、機械兵士の銃口がこっちに……どうやら野生兵士たちの仲間と勘違いされたようだ。
「先輩!」
「ともかく応戦だ……!」
いつもは2人のところを、今日は1人だから少し苦戦してしまった。なんとか両方の兵士を撤退させることができたけど……さっき銃を持った人が言ってたサーヴァント型っていうのが気になるな。誰かが教えたんだろう。
「マスター! なるべく後方に退がって――ダメ、逃げてください!!」
「フォーーーーーーウ!!」
「はい?」
ドゴォッ!!
物凄い衝撃が走り、一瞬の浮遊感。そして全身を叩きつけられるような感覚。
「先輩!? 先輩!! ドクター! 先輩が! キリモミ回転しました!!」
《はい!? ええと、マシュ。君は何を言ってるんだ!?》
「ですからキリモミ回転です! こう、ジャンプと同時にくるくる回って……! 先輩! しっかりしてください! 先輩、せんぱい……!」
オレを覗き込んでくるマシュを認識してオレの意識はブッツリ途絶えた。
「こんな機会はまたとない。私も参加させてもらう事にしよう」
「………………………………」
「…………」
誰かが歩いてきた。すぐ近くにいるのはわかるけど、まだ寝ていたい。
「患者ナンバー99、重傷。右腕の負傷は激しく、切断が望ましい」
「…………」
「ここも……駄目でしょうね。左大腿部損壊。生きているのが奇跡的です。やはり切断しかないでしょう」
「!?」
切っ!? 切断ってなに!? オレそんな大怪我してるの!?
「右脇腹が抉れていますが、これは負傷した臓器を摘出して、縫合すれば問題ないはず」
「!?!?!?!?!?」
いや、臓器傷ついてたらもっと痛いはずなんだけど……ていうか取り出したら死ぬから!!
ていうかこの声どっかで聞いた事が……!
「さて、では切断のお時間です」
「ちょっと待って待って待って!!」
慌てて身を起こすと、赤い軍服に桃色の髪の毛……メルセデス!?
「歯を食い縛って下さい。多分ちょっと痛いです。そうですね、喩えるなら……。腕をズバッとやってしまうくらいに痛いです」
「語彙少ないんですね!?」
「我儘を言ってはダメです。少なくとも、死ぬよりはマシでしょう」
「縫合! せめて縫合でお願いします!!」
本当にメルセデスか!? シャトー・ディフと全然キャラ違うんだけど、記憶喪失だったことを考えても変わりすぎでしょ!
確かに痛いけど、打撲か少しひどい擦り傷くらいしかないというのにあくまで切断したいらしいメルセデスに押されているオレに救いの手が差し伸べられた。
「待ってくださーい! ストップ! その人は違うんです!」
マシュ……!
テントに入って止めてきたマシュに、メルセデスは素っ気なく返す。
言っていることは立派だ。誰であろうが可能な限り救う。うん、軍医とか言ってたしメルセデスは医者? の英霊、もしくは今の時代の人間なんだろう。
でもそこまで酷くない怪我を切断するのはなんか違うと思う!
「その為には、衛生観念をただすことが必要なのです。いいですね? そこを一歩でも踏み込めば撃ちますから」
パァン!
踏み込んでないじゃん!
「ふ、踏み込んではいませんが!?」
「踏み込みそうな目をしました」
やだ、この人怖すぎ……!
「じゃなくて! オレは大丈夫だから!!」
「先輩……! 良かった、意識が……!」
ああ。マシュに心配かけちゃったなあ。意識が飛ぶ前の会話だとキリモミ回転したらしいし。マシュ可愛いし。癒される……。
「何が大丈夫なものですか。砲弾と榴弾の直撃を喰らって、手足が繋がっている方が奇跡です」
それは……本当かどうかはさておき、たしかに奇跡だ……。
こういう時に何だけどスラクシャがいなくて良かったあ。だって絶対に盾になるんだもん。いや、英霊だしそこまでダメージはないと思うんだけど。それでも庇われる方からしたら心臓に悪いなんてレベルじゃないし。
って、いまはそうじゃない! この赤い軍医の暴走を止めないと!!
「安心してください。私は
しばらくぐだ男視点が続きます。
夜中テンションで書いたので誤字が多くないことを祈ります。
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