アポクリの公VSカルナさんを参考にしました。
なので、これ以降の戦闘は質が落ちるかもしれません。
追記
位置がおかしかったのであげ直しました
更に追記
間違って1章4話を消してしまいました。
今すぐは無理ですが、朝にはあげ直します。
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
「この中で軍を率いた経験は……どうやら俺とスラクシャだけらしいな」
「私というかカルナですね。戦場ではセットで扱われてましたから、一応兄が指示を出せない時は私がしてましたけど」
なんだろう。このお得感。
「俺とて、国という国を軍で攻め落とす、という絢爛な軍歴がある訳ではない。気にするな」
さりげないフォロー。絶対に生前モテたね、こいつ。
それはおいといて。
こちらは数こそ少ないが、実際に戦闘になったら圧倒的にこちらが強い、いわば少数精鋭状態なわけだ。
この場合正面突破か、後ろから不意打ちするかになる。
が、あっちにはサーヴァント探索能力を持つルーラーがいるのでこっちの居場所なんかバレバレ。必然的にとる手段は正面突破となる。
「ファヴニールは俺とマスターのグループが受け持とう。他のサーヴァントは敵のサーヴァントとワイバーンたちから、俺たちを守って欲しい」
マスターとマシュ、ジークフリートがファヴニールを倒せるか否かがこの戦争の分け目になるわけだ。
「……了解しました。未熟ですが、精いっぱい戦わせて戴きます」
「あ、子イヌ。アタシちょっと殴り合わなきゃならないヤツがいるの。アタシはそいつに専念してもいいかしら?」
「それでしたら私も。一度戦った以上、決着をつけないと気がすみません」
言わずもがな、私が戦いたいのはヴラド三世だ。決戦ともなると、邪魔されずに全力で戦うこともできるだろう。
「いいよ。でも、スラクシャは昨日倒れたばかりなんだから無理しないでね」
「もう回復してますよ」
父上の鎧マジありがたい。何度だって言おう。父上万歳。もし嫌われてたとしても私は大好きです。勿論カルナも大好き。
全員がお互いの戦うべき相手を、役目を確認する。
「つまり、全員問題ないという事か。では、マスター――我々に命令を」
マスターが令呪の宿った手を胸元に持って行き、こぶしを握る。
「――勝とう!」
オルレアンにつくと、まあ予想通りワイバーンがうじゃうじゃと。できるだけ迅速に終わらせないと数の少ないこっちはじり貧になってしまうので、ワイバーンに関してはちぎっては投げ、ちぎっては投げという表現がぴったりだった。
道中、強制的に狂化させられたアーチャーと出会った。本来ならば“竜の魔女”の下につくような性格ではないだろうアーチャーは、何故か私を見ると一瞬動きを止めた……またカルナの知り合いか? 多いな。
アーチャーを打ち破ると、消滅寸前に狂化が解けたのか安堵の表情で消えていった。
そして――。
「こんにちは、
ファヴニールと共に“竜の魔女”が降り立った。……ちっ、やっぱり翼の傷は癒したようだ。
「……いいえ。私は残骸でもないし、そもそも貴女でもありませんよ、“竜の魔女”」
「……? 貴女は私でしょう。何を言っているのです」
そもそも同じじゃない……ああ、なるほど。そういうことか。
本当になんでもありなんだな、聖杯ってのは。
「……今、何を言ったところで貴女に届くはずがない。この戦いが終わってから、存分に言いたいことを言わせてもらいます」
ジャンヌの言葉に“竜の魔女”は激高した。
「ほざくな……! この竜を見よ! この竜の群れを見るがいい!! いまや我らが故国は竜の巣となった! ありとあらゆるモノを喰らい、このフランスを不毛の土地とするだろう!
それでこの世界は完結する。それでこの世界は破綻する。そして竜同士が際限なく争い始める。無限の戦争、無限の捕食。それこそが、真の百年戦争――。邪竜百年戦争だ!」
“竜の魔女”から発せられるのは狂気と憎悪。触れるだけで焼き尽くされそうなそれに、しかしジャンヌは顔色を変えなかった。
“竜の魔女”に応えるようにファヴニールが雄たけびを上げたその時、砲弾が邪竜とワイバーンたちに撃ち込まれた。
「何……!?」
「……ジル……!」
「撃て! ここがフランスを守れるかどうかの瀬戸際だ! 全砲弾を撃って撃って撃ちまくれ! 恐れるな! 嘆くな! 退くな! 人間であるならば、ここでその命を捨てろ!
もう一度言う! 恐れることは決してない! 何故なら我らには――
ある意味歴史的瞬間に立ち会った気がする。ジャンヌ・ダルクの汚名が撤回されたっていう歴史的瞬間に。
おっと。ふざけてる場合じゃなかった。フランス軍がワイバーンをひきつけている今がチャンスだ。
「お久しぶりです、ヴラド三世。……あの時の続きをしましょう」
「……いいだろう、守護の、いや犠牲の英雄。サーヴァントという名の2度目の人生で、貴様が人理のために犠牲になるのか見届けようではないか」
「犠牲? 冗談はやめてください……今あなた方に立ち向かう全員が、生きてフランスを救う。私が代わりになる必要なんて――ない!!」
ヴラド三世がわずかに指を動かした瞬間、無数の杭が殺到してくる。反射的に空中へ跳躍することで避けるが、杭は落下する体を突き刺そうと次から次へと飛び出してくる。
矢を放って杭を破壊するも、その間を縫うようにして新しい杭が現れる。
――わかってたけど壊しても意味ないか。
咄嗟に片手で杭を掴むとさらに杭が襲ってくる。ちょっとビビったけど、落ち着いて対処する。大丈夫、大丈夫。この鎧の回復力なら少しくらい怪我してもいける。
「なるほど……その鎧、赤のランサーの物とは違い、回復重視のようだな」
「っ!?」
いつの間に接近したのか、ヴラド三世が首筋に槍を突き付けていた。
「杭に気を取られすぎたな、ライダー」
「チッ……」
一つの事に集中しすぎて他の事が吹っ飛ぶのは前世からの悪い癖だ。ていうか鎧の事までばれたし。
私の鎧はカルナのものに比べれば些か耐久というか、防御力が低い。その代り回復が速い。
例えるならカルナに100の攻撃が来たとして、鎧の効果で本人が受けるダメージは10とか20に軽減される。
私は100の攻撃で最低でも50は喰らうけど、すぐに受けたダメージ分回復する。ただし致命傷や呪いで修復不可能な傷はのぞく。
それにしてもばれるとは思わなかった。前に出るのは主にカルナで、最初に目にするのがその鎧だから、みんな私の鎧も同じものだと騙されてくれるのに。
「だが、いくら回復が早かろうが首を落とせば終わりだ」
他の仲間はそれぞれサーヴァントやファヴニールの相手をしており助けは求められない。杭によって動く事もできず、首には槍が付きつけられたまま。傍から見れば絶体絶命の状態だが、まだ何とかできる状況だ。
ヴラド三世が槍を突きたてようとした瞬間、魔力放出使って杭を燃やし尽くす。体を拘束していた杭が燃えるとすぐに飛び退いた。
「ほう……。対処の方法まで兄と同じか」
「彼を見て戦いを学んだようなものですからね」
しかし面倒くさい宝具だ。一騎当千って言葉があるけど、それでも数の暴力は凄まじい。それに私が本調子でないことを差し引いても強い。知名度補正は殆どないのにあそこまで強いのはやっぱり聖杯か。そりゃあ、莫大な魔力が無限にあるようなもんだしね。カルデアもなかなかのもんだけど、やっぱり聖杯には届かないのだろう。
そう考えている間にも杭は襲ってくる。
うん。一騎当千とか数の暴力って言ったけど、これそんなレベルじゃないわ! だって全然尽きないし、兵士は倒したらそこで終了だし!
それに相手は指一本動かすだけで何百何千という杭が一斉に召喚されるが、こっちは弓と短剣だ。どうやっても手が足りない。魔力放出で燃やしたりして凌いでるが微妙に押され気味だ。
「……貴様は赤のランサーの身代わりになって死んだのだったな」
「? それがなにか」
「なに。紛い物とはいえ神すら騙すほど兄を演じた――すなわち、見目だけでなく技術すら完全とは言わなくとも兄と同等の物を誇るということだ」
「…………」
「それでだな、ライダー。貴様はどこまで兄と同じなのかな?」
瞬間
ぞわり、と背筋が凍った。咄嗟に避けようとするが、これは避ける避けないの問題ではなかった。
体内で何かが膨れ上がる感覚――硬く、鋭利で冷たいこれは――!
「杭か……!」
体を内側から突き破ったそれを認識した。一瞬の衝撃の後に襲い掛かる激痛に悲鳴を上げないように、膝をつかないように歯を食いしばる。
「…………っ!」
「ふむ。痛みの耐性は赤のランサーよりないのか」
あれは耐性云々より精神的な問題だと思う。
「どうする犠牲の英雄。どうにもできないのなら……此処で死ね」
襲い掛かる無数の杭、槍を持って突撃してくるヴラド三世。杭の総量はわからないが、どれだけ壊しても聖杯から魔力の供給がある限り尽きることはないだろう。
つまり、私は四方を敵に包囲されている状態も同然という訳だ。
「…………」
ラ・シャリテで会った時、ヴラド三世が言った言葉。聖杯大戦の記録。兄は自ら内側から杭を焼き尽くしたと。
私にはできないだろう、兄だからこそできたそれ。
――カルナだから、できた。
「【
宝具を開放する。炎が私を中心に渦を巻く。炎は体の内側から杭も焼き尽くす。
その感覚は昔、寒さに震えていた私をカルナが包み込んだ感覚によく似ていた。
炎の向こう側、ヴラド三世が目を見開くのが見えた。
「赤の……ランサー……!?」
「……ちがいます」
杭を焼き尽くすにはこの数秒で十分。すぐに宝具の発動を止めた。
自覚はないけど、彼の目には私がカルナになり、また私に戻ったように見えているはず。
「ライダーですよ?」
「……それが貴様の宝具か」
【
私が兄に変装して戦ったことから生まれたのだろうこの宝具は、相手を知っているほど本人に近づける。
仮にも双子だ。カルナになら、本人が召喚されているのとほぼ同じステータスになれる。
「さて、そろそろ終わりにしましょうか……【
召喚されてからお世話になりっぱなしの戦車を呼び出す。ほかのサーヴァントたちの戦闘も終盤に差し掛かっているのだろう、周囲からすさまじい魔力を感じる。
「いいだろう、犠牲の英雄。……貴様を杭で貫き、その血で祝杯を挙げてやろう!!」
「【
「【
2つの宝具がぶつかり合い、土煙が晴れたとき――ヴラド三世は既に消滅しかけていた。
「――ここで、終わりか。余の夢も、野望も、またも潰えるか……。ふん。そして此度もまた“竜殺し”とインドの大英霊が関わるとはな。皮肉なものよ」
先の大戦で何があったのか詳しく問い詰めたい衝動に駆られた。
「良い、許す。……次は狂気ではなく槍を持って貴様と闘いたいものだ」
「……ええ、私もです」
その言葉を最後にヴラド三世は消えた。
「ふう……」
命がけの戦いには、一度それで死んだのにもかかわらず、いつまでたっても慣れないらしい。
戦っている最中は冷静でも、終わるとふいに体が震えてくる。
それは、戦ってすぐの時もある。何度か戦闘を繰り返し、ふとした拍子に来る時もある。
恐怖はない。ただ震えるだけだった。
「…………」
振るえる手を固く握り、目を閉じて一呼吸置く。
次に目を開いた時には震えは収まっていた。
「よし」
踵を返してマスターの下へ向かう。
もしこの震えが無意識の恐怖からくるものだとしても、私がそれを認識していないのなら問題ない。
そもそも、カルナを、マスターを守ることが出来るのなら私の恐怖なんてどうでもよかった。
一緒にバレンタインイベントの話も投稿しました。よければどうぞ。
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