やはり俺がGUTSにいるのはまちがっている。   作:断空我

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THEFINALODYSSEY

 

「ところで結衣はヒキオと結婚しないの?」

 

優美子の言葉に由比ヶ浜結衣は飲んでいたジュースを吹き出す。

 

「げ、げほ!ゆ、優美子、何を言い出すの!?」

 

「だって、あーしらもそろそろ結婚を考えてもいい年齢じゃん。ヒキオと付き合っている結衣なら結婚を考えてもおかしくはないじゃん」

 

「そうなのかなぁ?」

 

「うーむ、納得できない。どうしてはちはやはすたれてしまったのか」

 

「姫菜は変わらないねぇ」

 

海老名と優美子、結衣の三人は久しぶりにカフェテリアに来ていた。

 

「それで実際のところ、どうなの?」

 

海老名に尋ねられて由比ヶ浜は顔を赤くしながら答える。

 

「そりゃ、ハッチーと結婚は考えているけれど、向こうはいろいろと忙しくて」

 

「仕事を言い訳にしているだけじゃん」

 

「最近はいろいろと忙しいの。このまえも訓練学校で指導をするから会えないっていわれて」

 

「ふぅん、ま、結婚するならあーしらを呼んでよね」

 

そういわれて由比ヶ浜は苦笑することしかできなかった。

 

八幡と由比ヶ浜がつきあっていることは暗黒の支配者“ガタノゾーア”を倒した後に知人、友人たち、全員へ発表された。というか由比ヶ浜が伝えたのだ。

 

八幡争奪戦が水面下で行われようとしておりそれをなくすためという話もあったがその真意ははっきりとしていない。

 

「結婚かぁ……ダイゴさんとレナさんが結婚するけれど……不安とかないのかなぁ?」

 

「なになに?もうマリッジブルー?」

 

「気が早いし」

 

由比ヶ浜の言葉に海老名と優美子が溜息を吐く。

 

「私はともかく、みんなはどうなの?優美子は」

 

「あーしは、まだそんな相手いないし!というか、隼人が逃げているのが悪いんだから!」

 

「隼人君、ボランティアで各地を回っているんだっけ?」

 

「メールをしてもすぐに帰って来ることが少ないし……あーしとしては浮気されていないか心配で」

 

「ないない、あの隼人君だよ?そんな裏切りはないと思うなぁ」

 

「……そう、そうだよね。はぁ」

 

ちらりと由比ヶ浜は隣の海老名をみる。

 

真意ははっきりしていないが海老名は同じ学校のメンバーだった戸部と良い雰囲気になったりしているらしい。

 

らしいというのは本人たちがはっきりといわないからであった。

 

「結衣さぁ、ちゃんとヒキヲと話をした方がいいんじゃない?」

 

「え?」

 

「だって、向こうが仕事とかで言い訳して逃げようとしているなら、早めになんとかしておくべきってことだし」

 

「そんなことはないと……」

 

「油断は禁物だよ~、TPCは宇宙開拓の話もあるってきくし、もしかしたら、宇宙へ行ってそのまま帰ってこないとか」

 

「ちょっと、それを言うの、早かったかも」

 

 ちょいちょいと海老名に肩を叩かれて優美子は結衣をみる。

 

「……」

 

「駄目だ、気絶している」

 

  海老名は動かない由比ヶ浜をみて、ぽつりとつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やっと会えたわね』

 

「……お前は?」

 

 ダイゴはレナとヤズミ、マユミらと共に噴水広場でデートをしていた。

 

 そんなやり取りをしていたダイゴ達の前に一人の女性が現れる。

 

 黒衣に身を包んだ女性が浮いていた。

 

『私のことを忘れたの?あの女と同じね』

 

 闇を孕んだ声で女性は微笑む。

 

『長い間、闇の中、ずぅっと貴方のことを思ってきたわ』

 

 直後、街中を大量の異形が襲撃する。

 

 異形は次々とビルを破壊。

 

 上空から降り注ぐ瓦礫から住民たちは悲鳴を上げて逃げ惑う。

 

 人ごみの中をダイゴは走る。

 

 いつの間にかヤズミやレナ達の姿はない。

 

 やがて、ダイゴは誰もいない瓦礫の街中に立っていた。

 

 異形達の襲撃によって街は破壊されつくしている。

 

 至る所から黒煙があがり、悲鳴や怒号、空を黒い影が覆いつくそうとしていた。

 

「戦いは終わっていなかった……」

 

 ダイゴは呟く。

 

 戦いは終わっていない。

 

 あの日に終わったと思っていた戦いがまた起こったのだ。

 

「でも、僕には……」

 

 邪神ガタノゾーアとの戦いでダイゴは巨人に変身する力を失った。

 

 今のダイゴに目の前の脅威と立ち向かえる力は存在しない。

 

『力が欲しいのね?巨人の力が』

 

 どこからか女性の声が響く。

 

 そして、ダイゴの前にスパークレンスが現れる。

 

 彼の前に転がってきたスパークレンス。それがあればウルトラマンへ変身できる。だが――

 黒いスパークレンス。

 

 彼が使っていたものと異なるスパークレンスにダイゴは臆する。

 

 掴んでしまえば、何か取り返しのつかないことが起こってしまうのではないかと。

 

『何をしているの?』

 

 臆しているダイゴへ女性の声が尋ねる。

 

『早くそれを使って巨人になりなさい!』

 

 ダイゴは転がっているスパークレンスを掴む。

 

「僕は!」

 

 手の中のスパークレンスを握り締めて、ダイゴは空へ掲げる。

 

 輝きと共にダイゴは巨人、ウルトラマンティガに変身する。

 

 眩い輝き、だが、それも一瞬のことで黒い雷撃が起こった。

 

 現れたのは銀、赤、紫のウルトラマンティガ。

 

 人類を邪悪な闇の支配者から守り抜いた光の戦士。

 

 それも一瞬のことで、黒いスパークと共にウルトラマンティガが漆黒の姿になる。

 

 銀だった部分も黒銀となり、唯一変わっていないのは胸元のカラータイマーのみ。

 

「!?」

 

 ティガは自身の体を触る。

 

 自らの体の姿に驚いていた。

 

『何を驚いているの?』

 

 黒いスパークと共にティガの前へ三体の巨人が姿を見せる。

 

 赤くパワーに優れていそうな巨人。

 

 紫色の俊敏そうな巨人。

 

 二人の間に立つ、金と銀の女性の巨人。

 

 女性の巨人がゆっくりとティガを指さす。

 

 

『それが本来の貴方よ。三千万年前、私達と共にすべての文明を滅ぼした最強の戦士の姿』

 

 女性の巨人の言葉を前にティガは構える。

 

 その時、女の子の悲鳴が聞こえてきた。

 

 ティガが視線を下すと女の子が座り込んでいる。

 

 母親とはぐれてしまったのだろう。先ほどから母親の名前を呼んでいた。

 

 ティガは少女へ手を伸ばそうとした。

 

 突如、おぞましい悲鳴がティガを襲う。

 

 頭を押さえながら苦しむティガは悲鳴の根元を絶とうと拳を作る。

 

 迷わずに目の前の少女へ振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダイゴ?」

 

 レナに声をかけられて、ハッとダイゴは周りを見る。

 

 場所は彼らがいるカフェテラス。

 

 周りでは楽しそうに団らんする人達。

 

 つい先ほどまでダイゴがみていた凄惨な光景はどこにも存在していない。

 

「ちょっと、ダイゴ、大丈夫?」

 

「ああ、何でもない」

 

「でも、顔色が」

 

「何でもないったら!」

 

 大きな声を上げるダイゴにレナ達はなんともいえない表情を浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゾイガーか」

 

 TPCの参謀会議。

 

 中央スクリーンに拡大されるのは調査班の輸送船の周りを飛び交うゾイガー。

 

 かつて超古代の遺跡から姿を現し、世界中の文明を破壊しつくした邪神ガタノゾーアの配下の怪獣。

 

 

「ルルイエはいまやゾイガーの巣窟と化しております」

 

 本来なら参加することを許されない参謀会議にムナカタが同席しているのは行方不明のイルマ隊長に代わってのことである。

 

「調査隊はこの怪物たちに襲われたと考えるべきか」

 

「自分はF計画の全貌を知りません。今回の調査が原因で超古代の封印を解いたというのなら」

 

「ティガは消滅した!」

 

 机をたたいて一人の男が立ちあがる。

 

「人類は未知なる敵に対抗しうる力を失ったのだ。あなた方は本当にそのことを理解しているのか?光の巨人の謎を解明し、絶対的戦力として利用する。それがTPCの、いや、人類にとって必要であるか、ティガなき今、人類は変わる防衛兵器、新たなウルトラマンが必要なのです」

 

「ナグモ、総監の前だ、言葉を控えろ」

 

 ヨシオカ長官の言葉にナグモという人物は下がらない。

 

「控えません、我々は多少の犠牲を払いながらも新たな力を手にしなければならないのです」

 

 彼の言葉にムナカタは険しい表情を浮かべていた。

 

 ナグモの言葉に誰も強く反論しなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達は総監室へ呼び出された。

 

 作戦室で待機していた俺、ホリイ隊員、シンジョウ隊員はムナカタリーダーと共に足を運ぶ。

 

「単刀直入に聞く、イルマ隊長の生存の可能性は」

 

「わかりません……ですが、自分は隊長が生きていると信じております」

 

「早急に遺跡に巣くう怪物を倒さねばならん、先制攻撃して」

 

「ヨシオカ長官!!」

 

 シンジョウ隊員がヨシオカ長官を非難する。

 

 まだ隊長が生きているはず、そこへ先制攻撃すればイルマ隊長の命はないものと等しい。それを認められないのだ。

 

「あの、わしらは最後まで隊長のことを」

 

 ホリイ隊員が意見をするも、その言葉は弱弱しい。

 

「ティガはもういない、それはナグモのいうとおりだ」

 

「長官の言うとおり、ウルトラマンティガはもういません。でも、俺達はできることをやり抜く……そうして、勝ち取った平和だと記憶しています」

 

「今回の件は我々、TPCがまいた種だ。だから、犠牲は最小限にとどめなければならなん」

 

「それは総監としてのお言葉ですか?」

 

 俺の問いかけに総監は答えない。

 

 いや、答えられないのだろう。

 

 この場にダイゴ隊員がいれば、何と言っただろうか?

 

 いや、彼がいたとしても今の状況を変えることはできない。

 

 何せ、ダイゴ隊員は“普通の人”なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「納得できるか!隊長は絶対に生きている!」

 

「せやけど!」

 

「何だよ!隊長のこと、諦めろというつもりか!?」

 

「二人とも喧嘩しないでください」

 

「八幡!なんで冷静なんだよ!」

 

「違いますよ。さっきからずっとプランを練っているんですけど……」

 

「お前でもダメか?」

 

「今のGUTSの装備であれだけのゾイガーを相手とることは不可能に近い」

 

「だからって、だからって諦められるかよ!!」

 

 バンとシンジョウ隊員の拳が作戦司令室内に響く。

 

 人間の力ではここまでなのだろうか?

 

 俺はもう一度、作戦を練る。

 

 その間、ダイゴ隊員に脅威が迫っていたことなど、俺達は知らなかった。

 

 

 


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