やはり俺がGUTSにいるのはまちがっている。   作:断空我

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やっとイルドの回です。

ここまできたんだなぁという気持ちです。


宇宙からの友

 

その朝、遠距離飛行を終えて宇宙船、ロムルス号が地球に戻ってこようとしていた。

 

「シンジョウ隊員、嬉しそうっすね」

 

「そりゃ、俺の親友が戻ってくるからな!」

 

「へぇ」

 

「ロムルス号と通信が繋がります」

 

ヤズミの言葉と共にスクリーンの前に立つシンジョウ隊員。

 

「一番遠い星へ行くのは誰だ!」

 

『『宇宙飛行士、イヌイキヨとキノサキシン!!帰ってきたぞ!帰ってきたぞ、二年ぶり~』』

 

「お前ら、全然変わってないな!!」

 

 嬉しそうに語るシンジョウ隊員。しかし、作戦室に響く声はかなりデカイ。

 

「あの三人は養成所時代の同期なの」

 

「イヌイ、キノサキって、いえば」

 

「宇宙線の遠距離記録を片っ端から塗り替えていっている、放っておいたらどこまでも行ってしまう。危ない二人組っていわれておるな」

 

 それは聞いたことがある。

 

 どこまでも遠い星へ向かう。

 

 宇宙を旅することを目指す宇宙飛行士なら誰もが目標にしようとする二人組。

 

 まさに宇宙バカだ。

 

『あぁ!!』

 

 突如、映像が途絶えて悲鳴が広がる。

 

 俺達はヤズミの方へ向かう。

 

「イヌイ!キノサキ!?どうした!イヌイ!キノサキ!」

 

「ロムルス号高速で予定コースを外れて、大気圏へ突入していきます!!」

 

「落下予想地点、出ます!」

 

「隊長!」

 

「どうしたの!」

 

「宇宙船ロムルス号で異生命体反応が出ました!」

 

「ロムルス号に異星人が紛れ込んどる」

 

 その言葉に俺達は衝撃を受ける。

 

 宇宙船にエイリアンがいたとすれば、二人の安否がどうなっているかわからない。

 

「イヌイキノサキ両名の安否と宇宙生命体の調査を」

 

「了解!」

 

「……了解!」

 

 俺達は作戦室を出てウィングに乗り込む。

 

「シンジョウ隊員」

 

「……大丈夫だ。あいつらは」

 

「そう、ですね」

 

 悪い予感が俺の中にあった。

 

 この時、外れてほしいとただただ、願った。

 

 ロムルス号が不時着したのは近くの山中だった。

 

 周囲の木々をなぎ倒して不時着したロムルス号は外見を見る限り爆発する危険はないだろう。

 

「あれか」

 

「……シンジョウ隊員!」

 

「待て!シンジョウ!」

 

 ロムルス号へ向かうシンジョウ隊員。

 

 俺達も後を追う。

 

 すると。

 

『シンジョウ、そこにいるのか?』

 

 ヘルメットの通信機に割り込む声。

 

「キノサキ、か?」

 

『一発で仕留めろよ』

 

 直後―-。

 

 茂みをかき分けて現れるのはどこかヤギを連想させる宇宙人。

 

 赤い瞳がこちらを捉えると走ってくる。

 

 そんなエイリアンを前にシンジョウ隊員はホルダーからハイパーガンを取り出し。

 

 エイリアンの心臓を一発で撃ちぬく。

 

 火花を散らして崩れ落ちるエイリアン。

 

 エイリアンを一瞥してシンジョウ隊員はロムルス号へ向かう。

 

「ホリイ隊員、エイリアンの方は頼みます。俺はシンジョウ隊員の方を!」

 

「任せたで!」

 

 少し遅れてシンジョウ隊員の後を追う。

 

 扉を開けてロムルス号の中に入る。

 

 ロムルス号は遠距離宇宙航行を目的としているから生活用品などの類も多い。

 

 散らばる機材をどけながら俺はイヌイ飛行士を抱えてやってくるシンジョウ隊員を見つける。

 

「シンジョウ隊員!」

 

「手伝ってくれ!」

 

「はい……っ!?」

 

 突如、外が眩い輝きに包まれる。

 

 なんだ!?

 

 俺はシンジョウ隊員と共にイヌイ飛行士を連れて外に出る。

 

 すると光り輝く塔が街のはずれに存在していた。

 

 天辺は玉ねぎを連想させるようなまっすぐに伸びている塔。

 

 

「何だ、あれは?」

 

「リーダー、これを」

 

 ホリイ隊員がPDIをリーダーへ見せる。

 

 俺もPDIを開く。

 

 そこに映っていたのは先ほどシンジョウ隊員が狙撃した宇宙人が現れていた。

 

『我らはイルド、我らに攻撃の意思はない。我らは共に生きる者を求めてこの星へやってきた。我らの文明は高度な発展と共に悲しみや痛み、不安も存在しない。誰もが等しく同じ幸福を維持する。互いに競い合う事も比べ合う事もない。安らぎを求める者は正午、我らの塔へ集うのだ』

 

 イルドと名乗る連中は塔へ集えと訴える。

 

 リーダーは本部に連絡を取っているがどうやら応答がない様だ。

 

「シンジョウ、いいか?一度本部へ戻る。正午までまだ一時間ある。俺が本部の状況を確認するまで攻撃を控えろ。塔へ人を近づけるな」

 

「了解」

 

「レナ、発進準備だ。本部の確認へ向かう」

 

『了解』

 

 リーダーから指示を受けたシンジョウ隊員へホリイ隊員が呼ぶ。

 

「シンジョウ!」

 

「どうした?」

 

「妙なんや。こいつ、死んでからも体の細胞が変化している」

 

「……え?」

 

 俺はこと切れたエイリアンを見る。

 

 その時、シンジョウ隊員が見ているものに気付く。エイリアンの片腕。そこにつけられている時計型の通信機。

 

 まさか、これは。

 

「そう、なのか?」

 

 同じ答えにたどり着いたシンジョウ隊員はイヌイ飛行士へ訊ねる。

 

「あぁ……そいつはキノサキだ」

 

「えぇ、どういうことや?」

 

「何だって!?」

 

 俺はエイリアンを見る。

 

 その姿にかつてのキノサキ飛行士の面影は全く存在しない。

 

「イルド達は俺達の船に潜り込んで、キノサキを襲った。キノサキを使って試した。人間がイルドに変えられるかどうか」

 

「ほな、イルドのいうともに生きるっていうのは……」

 

「人間をイルドに変えてしまい、そうやって仲間を増やすのか」

 

「アンタ!科学者なんだろ!ソイツを調べて」

 

「これはキノサキ飛行士だったんですよ!いくらイルドに変えられたからって!」

 

「俺が撃ったんだ……俺が、この手で!」

 

「だからって、そこで泣いているのが仕事かよ?何のためにキノサキが地球に戻ってきたと思っているんだよ!」

 

「……ダイゴ、ホリイと一緒にウィング二号でキノサキを生化学研究所へ連れて行ってくれ。俺は街の人を避難させる」

 

 

「……」

 

「自分も同行します」

 

 俺、シンジョウ隊員、イヌイ飛行士が街へ向かっていく。

 

 シンジョウ隊員とそれなりの距離が開いたところで俺はホルダーからハイパーガンを抜いた。

 

「イヌイ飛行士」

 

「何だ?」

 

「アンタ、まだ、人間か?」

 

 俺の質問にぴたりとイヌイ飛行士は動きを止めて振り返る。

 

「……さっきから考えていた。イルドはキノサキ飛行士にイルド化の実験をした。だが、連中の事だ。一人だけに施してもう一人は何もしないなんて考えられない。もしかしたら」

 

「油断ならない目をしていると思ったら、お前、鋭いな」

 

 イヌイ飛行士は制服の上をめくる。

 

 そこにあったのは本来なら肌色。しかし、俺の目に映っているのは銀色の体の皮膚。

 

「キノサキは長時間奴らに体を弄られた。俺は少しの時間。だが、確実にイルド化は進む」

 

「……なら、アンタを一緒に同行させるわけにはいかないな」

 

「そうだろうな、だが、俺はまだ人間だ!」

 

 ぐぃっと距離を詰めてイヌイ飛行士がこちらをみる。

 

「信用していいんですね?」

 

「もし、アンタからみて俺がイルドだと思えるなら撃てばいい。これ以上――」

 

「わかっています。シンジョウ隊員に重たいものを背負わせません」

 

「……アイツ、慕われているんだな」

 

「そうですね、お節介で、涙腺脆くて、妹が大事な兄貴で、とっても頼りになる兄貴分ですよ」

 

 俺の言葉にイヌイ飛行士は小さく笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達は街の人たちを避難させる。

 

 突然、現れた塔に混乱しながらもGUTSの指示に従っていく。

 

「何!塔へだと!?」

 

「シンジョウ隊員!?」

 

「子供たちが何人か塔へ向かったらしい!」

 

 シンジョウ隊員は走る。

 

 俺も少し遅れて続く。

 

 しばらくするとイルドの塔を目指す人たちを見つけた。

 

 やはり――、という言葉を俺は飲み込む。

 

 イルドの誘いを受ける人間が少なからず現れるだろうと想像していた。

 

 俺達はイルドの正体を知っている。だが、何も知らない人からすればイルドの提案は素晴らしいものだ。

 

 特に今の世界にうんざりしている人間なんかは喜んで飛びつくだろう。

 

「待て!お前ら!!塔へなんか行ってどうするつもりだ!」

 

 追いついたシンジョウ隊員は止めるように叫ぶ。

 

 しかし、彼らは耳を貸さない。それどころか。

 

「アンタなんかに関係ないだろ!どけよぉ!」

 

「イルドと共に生きるっていうのは!イルドに変えられてしまうんだぞ!」

 

「俺はいいよ」

 

 やはり、出てきた。

 

 イルドの生き方に同意するような、今の人生に色がない。灰色の。まさに生きている実感をしていない。人達だ。

 

「人間をやめてしまうんだぞ!」

 

「イルドの言う様な幸せがあるなら、人間なんかやめたってかまわない!」

 

「何だと!」

 

「何だよ!イルドになったら俺を撃つのかよ!」

 

「撃つさ」

 

 シンジョウ隊員を押しのけて俺はハイパーガンを茶髪の派手な服を着た少年に向ける。

 

「できもしねぇこといってんじゃねぇよ!」

 

 俺の目を見てびびるが。すぐに叫ぶ。

 

 少し照準をずらして撃つ。

 

 光弾が少年のすぐ横のコンクリートに突き刺さる。

 

「ひっ!?」

 

「イルドになりたければ行けばいいさ。なったら、今度は外さない。慈悲を与えない。容赦なく撃つぞ。ほら、行けよ!」

 

 悲鳴を上げて彼らは逃げていく。

 

「おい!八幡、なんてことを!」

 

「あぁしなかったら連中は塔へ行っていましたよ」

 

「だからって!」

 

「こいつのいう通りだ。なんで止めなかった?止めるのがお前の仕事だろうが!」

 

 イヌイ飛行士がシンジョウ隊員の胸倉を掴む。

 

「仕事?仕事、仕事って、お前に一体、何がわかるんだよ!」

 

「じゃあ、お前には何がわかるんだよ!」

 

「キノサキを撃ったのは俺だってことだよ!お前じゃなくてな!」

 

「そんなこと、わかっている……わかって――」

 

 ガクン!と膝をついてイヌイ飛行士が崩れ落ちる。

 

「そこにはもはや、悲しみも苦しみもない痛みもない。誰もが同じ一つの幸福を」

 

「イヌイ……」

 

「始まったみたいですね」

 

「八幡!まさか!?」

 

「イヌイ飛行士はイルドに体を弄られています。おそらく、放っておけば……」

 

「イヌイ!俺がわかるか!?イヌイ!」

 

「……メロン、メロンパン」

 

「え?」

 

「メロンパンだ」

 

「何言っているんだ!?しっかりしろよ!」

 

「キノサキ、すっげぇ好きだったよな。メロンパン。学食の奴、毎日食っていたよな……何もしてやれなかった。アイツがどんどんイルドになっていくのに、俺は傍にいたのに!」

 

 後悔の言葉。

 

 ロムルス号の中で、イヌイ飛行士はどんな気持ちだったのだろう。

 

 隣で親友が怪物になっていく様をみせられて、自分もいずれそうなってしまうのではないかと恐怖したのだろうか?やはり、友達を救えなかったことを後悔していたのだろうか?

 

 俺にはわからない。

 

 親友なんていうものがない。俺にはわからない気持ちだ。

 

「俺に銃があれば、お前に撃たすなんてことをしなかった」

 

「俺は……俺は」

 

「よし、合言葉はメロンパンだ。お前がメロンで、俺がパンだ。俺が答えなかったら俺はイルドだからな!いいな!」

 

 確認するように俺を見るイヌイ飛行士。

 

 イルドになれば自分を撃てということだろう。

 

 俺は小さく頷く。

 

「馬鹿なこというなよ!八幡も」

 

「よし、街の人を避難させるぞ」

 

「……シンジョウ隊員、すいません。俺はイヌイ飛行士の意思を尊重したいです……今回ばかりは」

 

「俺は……」

 

 シンジョウ隊員のPDIが鳴り出す。

 

「ホリイ、イヌイにイルド化がはじまった」

 

『なんやて、ええか、シンジョウ。あの塔はただの塔やない。塔のてっぺんに巨大な脳がある。あいつらは一つの脳を共有しているんや……』

 

 街の人たちを避難させていた俺達は塔の天辺が発光していることに気付いた。

 

「何が、始まるんだ?」

 

「……正午、人が集っていること……まさか!」

 

「くそっ、アイツら!!」

 

 シンジョウ隊員は追い払った連中がイルドの塔へ向かっていることに気付く。

 

 こちらの姿に気付くと連中は塔へ走り出す。

 

「よせ!戻れ!」

 

 俺が叫んだ時だ。

 

 塔の側面から爪のついた触手のようなものが飛び出して次々と近くにいた人達を捕まえていく。

 

「奴ら、本性を現したな!」

 

 俺やシンジョウ隊員はハイパーガンで次々と触手を狙う。

 

「メロン!」

 

「……パン!」

 

 その間もシンジョウ隊員はイヌイ飛行士に向かって叫び続ける。

 

 叫びにイヌイ飛行士も答え続けていた。

 

 俺はハイパーガンで触手を撃ちぬきながら逃げ惑う人たちを少しでも塔から遠ざけていく。

 

 塔をスキャンしていたウィング二号がデキサスビームを撃つ。

 

 しかし、塔はデキサスビームを受けても傷がついていなかった。

 

「デキサスビームが効かないって、マジかよ」

 

 塔の反撃を受けてウィング二号が煙を散らして不時着していく。

 

「うわぁ!」

 

 聴こえた悲鳴に顔を向けるとイヌイ飛行士の前にイルドが立っていた。

 

「イヌイ!」

 

 シンジョウ隊員が咄嗟にハイパーガンを構えていた。

 

 しかし、すぐにトリガーを引かない。

 

 おそらく、

 

「シンジョウ隊員!撃てぇえええええええ!」

 

 咄嗟に叫んだ。

 

 後になっても叫んだ理由はわからない。

 

 だが、叫ばずにいられなかった何かがあった。

 

 シンジョウ隊員はイルドに向かって発砲する。

 

 イルドは悲鳴を上げて崩れ落ちた。

 

「……」

 

「シンジョウ……」

 

 イルドを撃ったことでキノサキ飛行士を思い出したのだろう。

 

 シンジョウ隊員はその場に崩れ落ちながらも目の前のイヌイ飛行士を見る。

 

「メロン」

 

 しかし、続けての言葉がない。

 

 俺は嫌な予感がして振り返る。

 

 膝をついて荒い息を吐いているイヌイ飛行士の姿があった。

 

「イヌイィィィィィィ!」

 

「シンジョウ隊員、後ろ!」

 

 俺の叫びに反応するも少し遅く、シンジョウ隊員は触手に捕まって塔へ連れていかれる。

 

「シンジョウ!」

 

「うわぁあああ!」

 

「くそっ」

 

 俺は舌打ちをして悲鳴の方へ走る。

 

『イルドと共に生きるのだ!』

 

 逃げた二人を包囲するように現れたイルド達。

 

「お前達、離れるなよ!」

 

「くそっ!」

 

 威嚇するようにハイパーガンを向けた時だ。

 

 上空から飛行音がした。

 

「……あれは」

 

 空を飛ぶのはガッツウィング、ただし、俺達が普段使っていたガッツウィングではない。

 

 その名もガッツウィングEX-J。

 

 このガッツウィングを表現するならより攻撃的になったガッツウィングというのが正しいかもしれない。

 

 激化する戦い。その状況下でより戦力を求められたことで開発されたガッツウィングEX-Jはアルファ機とベータ機に分離することが可能だ。

 

 分離した二機のガッツウィングは塔に向かってハイパーコールドビームとハイパーメルトガンによってデキサスビームで破壊できなかった塔の表面が壊されて中身がむき出しになる。

 

「凄い……」

 

 突如、目の前にいた四体のイルドが姿を消す。

 

 彼等は一つになると巨大な姿になった。

 

「ここまでできるのかよ!」

 

 巨大化したイルドが手を伸ばそうとした時、眩い光と共にウルトラマンティガが現れる。

 

「お前ら、今のうちに遠くへ逃げろ」

 

 俺の言葉で二人は走るように逃げていく。

 

「ついてきてくれ」

 

 イヌイ飛行士にいわれて俺は後に続く。

 

「メロン……」

 

「え?」

 

「メロン!」

 

「……パン!」

 

「まだ撃たなくていいようですね」

 

「信じてくれて助かる」

 

 俺達はイルドの塔の近くまでやってくる。

 

 連中が気付いているのかわからないが慎重に動かないといけない。

 

 塔へ到着する頃に戦いは激変していた。

 

 イルドの塔が中にいる人たちを人質に使ったのだ。

 

 電撃で中の人達を苦しめてティガの攻撃を半ば抑えつけている。

 

「何をするつもりですか?」

 

「俺たちだと連中に気付かれる……だから、中からイルドの脳にダメージを与えてもらう」

 

「……一応、まだイヌイ飛行士なんすよね?」

 

「そうだ」

 

「もし、怪しいと俺が判断したら」

 

「迷わずに撃て」

 

 強い瞳と俺の瞳が交差する。

 

 ハイパーガンを構えながら俺はイヌイ飛行士の横に立つ。

 

 イヌイ飛行士は通信機をONにして塔の中にいるシンジョウ隊員にいう。

 

「今から俺の言うことを繰り返せ……我々は、イルドと共に生きる」

 

『なに?』

 

「繰り返せ、我々はイルドと共に生きる」

 

 シンジョウ隊員の動揺を知りながらイヌイ飛行士は繰り返すように促す。

 

 しばらくして、彼の言葉を信じたのか、シンジョウ隊員が復唱する。

 

 一人が復唱すれば、もう一人、さらに一人と。

 

 やがて塔の中で全員が復唱を始めた。

 

「リーダー」

 

 PDIを開いて俺はリーダーを呼び出す。

 

「塔、もしくはティガと戦っているイルドに異変が起きたら攻撃を続けてください」

 

『どういうことだ?』

 

「今、塔の中で戦いが起こっています。人とイルドの戦いです。それの決着がまもなくつきます」

 

『……わかった』

 

 リーダーの通信を切った直後、塔に異変が起きた。

 

 同時に待機していたガッツウィングEX-Jのアルファ機とベータ機が同時に攻撃する。

 

 放たれた光線によってイルドの脳は大爆発を起こした。

 

 そして、イルドの巨人もティガによって倒される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一人で、行くんだな」

 

「あぁ」

 

 イヌイ飛行士は結果的に言えばホリイ隊員の作った特効薬で一命をとりとめた。

 

 検査の結果、異状はなし。

 

 もし、一歩遅かったらイヌイ飛行士もイルドの仲間入りをしていただろう。

 

 回収されたロムルス号の修理が終わり、イヌイ飛行士は再び宇宙に旅立つこととなった。

 

「シンジョウ隊員……その」

 

「八幡、いろいろと迷惑かけたな」

 

 ポンとシンジョウ隊員が俺の頭に手を置く。

 

「子ども扱いしないでください」

 

「悪い」

 

 飛び立っていくロムルス号をみながら俺たちはしばらくそこから動けなかった。

 


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