ある日、霧門岳が噴火を起こした。
その事態にTPCは住民の避難のため緊急出動した。
多くの住民達が霧門岳から離れていく中、TPCの隊員達は拠点としていた避難エリアから住民を退避させようとしていた。
「何で、俺らが避難しないといけないんだ!?」
「ここにくれば安全じゃないのか!」
「だから、ここへきたのに!」
多くの住民たちが青い制服のTPC隊員達へ詰め寄っていた。
「そう、なのですが!火山の活動が増してきているので!」
「ここも危険区域と認定されたのです!」
「そもそも、あんたらは天下のテーピーシーだろ!なぜ、火山を予知できなかったんだ!」
その質問にTPC隊員は答えず、避難する事を促すだけだった。
TPCの会議室。
そこでサワイをはじめとしたメンバーが緊急会議を開いていた。
議題は当然の事、活動をしている霧門岳について。
「ミヤザワ局長、霧門岳の火山の活動を予測することはできなかったのか?」
「……確かに、噴火山が活動をすることは稀にあります…ですが、問題はマグマの動きです。これは異常です」
ミヤザワ局長は映像を表示する。
「ミヤザワ局長は霧門岳にマグマを集める原因があると?」
「このように霧門岳に大量のマグマが集まっています。このままではさらなる噴火も起こり得る可能性があります」
「そうなっては大問題だ…誰が、責任を取る?」
ヨシオカ・テツジ長官の言葉に誰もが沈黙を保つ。
「一時的にマグマの動きを止めることはできないだろうか?」
活火山の活動を事前に察知できなかったことでTPCは世間から注目を集めている。その中で活火山の活動を阻止することができなければ、誰かの責任問題となるだろう。
「ピーパー、なら」
「ピーパー?」
カシムラ博士の言葉にナハラ・マサユキ参謀が訊ねる。
「地底探査タンクです」
「探査だと?事態は性急さを求めているんだぞ」
「……よし、ピーパー出動」
サワイ総監の言葉で話はひとまず決定した。
GUTSの作戦室で俺達の前にサワイ総監がいる。
サワイ総監はGUTSに地底タンクを使って霧門岳の活火山をなんとかできないかと相談を持ち掛けてきたのだ。
「リーダー、何か案はある?」
「ピーパーにコールドビームを搭載して、マグマを溶岩に変えることで流れをせき止めることが出来ます」
霧門岳の火山活動はより活発になってきている。
このままではあの区域で生活することは困難になってしまう。
故に早期解決をTPCは、GUTSは求められていた。
今回のピーパーによる地底探査の目的はそこだろう。
「それと現地の探索とは別に避難民の看病を手伝ってもらいたい」
「確か…看護の資格を八幡隊員は持っていたわね」
イルマ隊長の視線へ俺は頷く。
「八幡隊員に手伝いへ、ダイゴ隊員とシンジョウ隊員にピーパーへ乗り込んで調査へ向かってもらいます」
「GUTS、出動!」
リーダーの叫びと共に俺達はヘルメットを手にして作戦室を出る。
ガッツウィング二号に地底探査タンクピーパーを搭載、俺はウィング一号へ乗り込む。
後部座席に医療キットが置かれている。
「発進します」
管制室へ伝えてウィング一号、続いて二号が発進する。
霧門岳へ到着すると多くの輸送車が目に入った。
TPCの職員が多く行き交っている。
ウィング一号から降りて救護員が詰め寄っているテントへ向かう。
「すいません、GUTSから手伝いとしてやってきました、比企谷、八幡といいます」
「あ、ありがとうござい……ヒッキー!?」
「由比ヶ浜、こっちにきていたのか?」
「う、うん」
「何か手伝うことはあるか?」
「あっちで炊き出しをやっているんだけど、人手が足りないの、手伝って」
「わかった」
面倒だ、と口に出すことはしない。
外を出れば家を失った人や、これからの事に不安を感じている者達の姿がある。
今頃、二人はピーパーで霧門岳の地下へもぐっていることだろう。
GUTSの制服を着ていることから多くの視線を集めてしまうが、仕方のない事だ。
炊き出し班の所へ顔を出す。
「すいません、手伝いに来ました」
「あぁ、ありが……比企谷?」
炊き出しをしていた男は俺の知り合いだった。
「葉山、隼人……」
「その制服、GUTSなのか?」
「まぁ、お前は?」
「ボランティアだ。大学で霧門岳の炊き出し募集があって受けた」
「数日足らずなのによくこれたな」
「迅速な対応が求められるからね」
葉山隼人は小さく笑みを浮かべる。
相変わらずイケメンは様になることだ。
「手伝うことは?」
「あぁ」
葉山に言われて俺は手伝いに入る。
「それにしても、高校を卒業したキミがGUTSに入っていたなんて驚いた。普通に学生をしているものと」
「色々、あったんだよ」
「……あの林間学校の件が切欠なのか?」
「だったらなんだ?」
「いや、やっぱり、キミは凄いなと思って」
いきなりなに?
俺は炊き出しを子供へ渡しながら横を見る。
子供はGUTSの制服をみて目を丸くしていた。
GUTSは炊き出しをしないと思ったら大間違いだよ。
「こんな状況でもいつも通りでいられるんだ」
「……何度か経験しているからな」
GUTSになる前も一度だけ災害救助で駆け付けたことがある。
その時の空気は今でも忘れられない。
途方に暮れている人、
家族を失って泣いている子供。
明日を生きようと足掻いている人。
いろんな人の感情がそこにあった。
慣れたといえば、嘘だ。
だが、この場で一番、冷静に平然としていなければならないことを俺は知っている。
俺は――。
炊き出しを手伝っていた時、PDIからゴルザ発見の報告が入った。
霧門岳へ向かったピーパーがゴルザを発見したという事だった。
ゴルザが地底でマグマのエネルギーを吸収していたことで霧門岳の火山が活動を起こしたのかもしれない。
ゴルザにケリをつけるということをサワイ総監は決定。
対策として用意されていた追従式ドリルビームの使用が決定されたばかりか現地でサワイ総監とイルマ隊長が指揮を執る。
『八幡隊員は周辺の避難を優先して』
「了解、です」
「どうしたんだ?」
「今からこの周辺が戦場になる。葉山、職員の誘導に従ってくれ」
俺の言葉の直後、TPC職員が避難誘導をかけ始めた。
「何か、起こるのか?」
「戦闘だ」
「比企谷、キミも?」
「あぁ」
葉山の問いに迷わず応えた。
「俺はGUTSだ」
「ヒッキー!」
ウィング一号へ戻り戦闘準備に入ろうとしていた時、慌てた様子で由比ヶ浜がやってくる。
「何やってんだ?」
「それはこっちのセリフだし」
「いや、こっちだろ?」
救護班も避難指示が出ていたはずだ。
「戦場になる。すぐに避難しろ」
「……これから戦うんだよね」
「あぁ」
ゴルザとの戦闘。
TPCは総力戦で奴に挑む。
前と比べてTPCは戦う力を得ている。
ゴルザとどこまで戦えるか……ただし、覚悟しないといけない。
相手は怪獣。
どんな力を秘めているかわからないのだ。
拳を握りしめる。
「無茶……しないよね?」
「さぁな」
「そこははっきりいってよ!」
今にも泣きそうな顔で由比ヶ浜はこちらをみる。
その目をみていると、
「はじめて怪獣を見たけど……あんな怖いものだって思わなかった。そんな相手とヒッキーが戦っていると思うと、怖くて怖くて……も、もし、戻ってこなかったらって」
アオキ・タクマの事を思い出したのだろう。
あの人は怪獣の被害者……だ。
由比ヶ浜は気づいたんだ。
人は簡単に死ぬ。
怪獣などという未知の脅威と戦う以上、それはありうること、
自分の知っている人間が戦っていると知ったらそれが怖いと感じる。
由比ヶ浜は知り合いが死ぬことが怖いのだ。
「あたしは……怖い」
「それは当たり前の感情だ。だけど、俺は逃げない」
「……なんで!?死ぬかもしれないんだよ、死んだら、何もできない……」
「そうだな、でも、俺達の後ろにはお前らがいる」
由比ヶ浜が驚いた顔でこっちをみる。
受け売りだが、この言葉であっているはずだ。
「お前らを守る為に俺達は戦うんだ。お前達が普通の生活を送る為に……な」
ポン、と由比ヶ浜の頭を叩く。
「だから、お前らは安全なところに避難しろ、いいな」
「……ケーキ」
「は?」
「今度、ケーキのバイキングがあるの、一緒に付き合って」
「断る」
「行くの!!」
「わかった、わかった」
由比ヶ浜の言葉に渋々頷く。
彼女は「約束だよ」と大きく手を振って去っていった。
「さて、行きますか」
俺はウィング一号へ向かう。
作戦は追従式ドリルビームでゴルザを攻撃。
ポイント01にいたゴルザへビームを発射する。
地上へ出てきたところで一斉攻撃。
周辺に展開している戦車、ハイパーレールガン、ウィング二号のデキサスビームがスタンバイ状態。
俺の乗っているウィング一号もHEATの発射体制だ。
地面が揺れて、ビームを受けたゴルザが姿を見せる。
前と異なり、岩みたいな皮膚がさらに硬く、胸部辺りは血管のようなものが沢山浮き出ていた。
凶悪そうな顔は変わらずだ。
「リベンジだ」
現れたゴルザへ一斉攻撃。
これである程度のダメージは受ける…と思っていた。
「無傷……!?」
「なんて奴だ」
TPC1で指揮を執っている隊長とサワイ総監が息を飲む。
暴れるゴルザへ俺達は攻撃を続ける。
その頃、ゴルザにモンスターキャッチャーを撃ち込んで刺激してしまい、地下から脱出しようとしたピーパーだが、間に合わず瓦礫などによって壊れていた。
ピーパー修理のため外に出ていたダイゴは音が近づいてくることに気付く。
「何の、音だ?」
ダイゴが目を凝らしていると大量の炎が近づいてくるのが見えた。
「ダイゴ!戻れ!」
異変に気付いたシンジョウが中へ戻るよう促す。
ピーパーの中ならまだ、大丈夫の筈。
シンジョウの叫びの中、ダイゴは懐からスパークレンスを取り出す。
眩い閃光と共にウルトラマンティガはピーパーを抱えて外へ出る。
ピーパーを地面に下してティガはゴルザと戦闘を始めた。
ティガがゴルザへ攻めようとするが前よりも強化された一撃で後ろへ吹き飛ばされる。
ティガを援護しようとウィング一号がレーザー攻撃をするが、痒みを感じる程度でしかないようだ。
苛立ちを覚えながらHEATをゴルザへ撃ち込みながら八幡のウィング一号は上昇する。
パワータイプになったティガはゴルザとぶつかりあう。
必殺のデラシウム光流を放った。
放った光線をゴルザは吸収して自らの力に変える。
ティガは驚きながらも電撃を纏った拳を放つ。
攻撃を受けたゴルザは大きくのけ反る。
「ウィング二号!もう一度、デキサスビームを!」
『おっしゃあ、任せろ』
ウィング一号、二号のビームがゴルザに直撃、マルチタイプへ戻ったティガはトドメのゼぺリオン光線を放った。
光線を受けてゴルザは地面へ倒れる。
倒れたゴルザを抱えてティガは空を飛ぶ。
そして、遺体を霧門岳の噴火口へ落とした。
ウィング一号を着陸させると既にGUTSメンバーが集結していた。
シンジョウ隊員達はティガによって助け出されたらしい。
「ゴルザは強かった……だが、ティガはもっと強かった」
「人類が戦うから、ティガも頑張れるんですよ」
「……どうせなら、ティガからききたかったなぁ」
「そうっすね。俺もティガと話をしてみたいっす」
「せやな!」
俺達は小さく笑ってダイブハンガーへ帰る準備を始める。