やはり俺がGUTSにいるのはまちがっている。   作:断空我

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八幡はロリコン……じゃないよ?


赤と青の戦い

 鶴見留美は東というおばあさんの家へ向かっていた。

 

 血の繋がりはないが一人で遅い時間、家へ帰ろうとしていた時に知り合った人で、少し前に旦那であるおじいさんをなくしていた事で人と会話することに飢えていた。

 

 留美はそんなおばあさんと少し会話をする程度の仲だった、それがいつの間にか家へあがりこむほど親しくなっている。

 

 両親もあのおばあさんは信頼できるという事と仕事が忙しくて家を空けていることが多いという理由から頼りにしてしまっていた。

 

 勿論、留美はおばあさんが大好きなので毎日会えるなら喜ぶ。

 

 表向きはそういう振りをみせようとしないだろうが。

 

 艶のある長い髪を揺らして扉を開ける。

 

 学校が終わってすぐに直行する予定だったのだがある問題があって遅くなってしまう。

 

――おばあちゃん、心配しているかな?

 

 いつもの時間に到着していないから温かいお茶を用意して待っているかもしれない。いや、待っているだろう。

 

 それをわかっているからより足早になる。

 

 都会のビルが並ぶ中心、そこにある一軒家。

 

 留美は笑みを浮かべて扉を叩く。

 

「はいはい、あら、留美ちゃん、遅かったねぇ」

 

「ごめんなさい。おばあちゃん」

 

「大丈夫よ」

 

 ニコニコと笑みを浮かべるおばあちゃんと共に留美は和室へ入る。

 

「留美ちゃんが来るよりも早く、困った人がいて、家へあげたんだけどねぇ、外国人みたいなのよねぇ」

 

「ふぅん」

 

 小さく頷いた留美は和室へ足を踏み入れる。

 

 そして、体が固まった。

 

 赤いイカのような形をした宇宙人が炬燵に入っていたのだ。

 

「おばあちゃん」

 

「なぁに?」

 

「この人がお客さん?」

 

「そうよ、なんでも、すたんでるせいじんという外国人らしいわ」

 

「…おばあちゃん、外国人じゃなくて、宇宙人だよ」

 

「へぇ、外国人に種類があったのねぇ」

 

 違うよ、と留美は心の中で呟いた。

 

 蒼い水晶のようなものが定期的に光っている宇宙人はこくん、と小さく頷いたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 連続失踪事件。

 

 GUTSである俺達が本来受け持つことがない、メトロポリス警察が担当するようなニュースにあがっていた失踪事件。

 

 それをGUTSが調査することになったのは新たに起こった事件、ボクサーとサポーターの女性が目撃した内容が原因だった。

 

「青と赤の宇宙人が現れたんです!」

 

「違うって、最初に現れたのが青い宇宙人で、次に現れたのが赤い宇宙人だよ」

 

「そ、そうだっけ?」

 

 俺とダイゴ隊員が目撃者に話を聞くためにやってきたのだが、どうも事故直後という事で少し混乱しているようだ。

 

「す、すいませんけど、お二人が見たという宇宙人の似顔絵、書いてくれます?」

 

 どもりながら俺は絵を描いてくれという。

 

「あまり、絵、うまくないんすけど」

 

「捜査の参考になればいいんで、協力お願いします」

 

 用意しておいたスケッチブックと色鉛筆セットを渡す。

 

 その人が書いている間、俺は少し離れる。

 

 GUTSが捜査するという事で周囲の封鎖は警務局の隊員達がやってくれていた。

 

 何か起こっているという事で興味が出ているのだろう、野次馬の姿がちらほらとある。

 

「もっと騒ぎが大きくなる前になんとかしねぇとなぁ」

 

「あれ、八幡?」

 

 聴こえた声に俺は驚いて振り返る。

 

 立ち入り禁止と書かれているテープの向こう。

 

 そこにいたのは高校時代のマイスィートエンジェルの、

 

「戸塚ァ!?」

 

「やっぱり!八幡だよね?久しぶり!」

 

 背中にテニスラケットの入った袋を背負っている戸塚だ。

 

 三年ぶりの再会だが、前とちっとも変っていない。

 

 むしろ、笑顔が眩しい!

 

「戸塚はどうしてここに?」

 

「大学の部活の帰り道でここを通っているんだ。八幡は…その恰好、GUTS!?え、八幡、GUTSなの」

 

 ぐふ、驚いた顔の戸塚、可愛いな。

 

 これで女の子なら結婚を申し込んでいる自信がある。

 

「八幡?」

 

「あ、あぁ、俺はGUTSだ」

 

「凄いね!」

 

「そ、そうか?」

 

「うん!同い年でGUTSがいるなんて、ぼくも嬉しいよ」

 

「おう」

 

 ヤバイ、戸塚のキラキラした目が眩しい。

 

 腐っている俺でも賞味期限ギリギリまで戻ってしまいそう。

 

 八幡、リフレーッシュ的な?

 

「八幡隊員、絵が出来上がった、いったん、基地へ……知り合い?」

 

 ダイゴ隊員がやってきた。

 

 くそう、なんてタイミングだ!?

 

「はい、戸塚彩加っていいます。八幡の友達です!」

 

「へぇ、こんなかわいい女の子が友達なんだ」

 

 ニコニコとからかう様な視線をこちらへ向けてくるダイゴ隊員、

 

「あのぉ、僕、男の子なんですけど」

 

「…………え?」

 

 ぽかんとした表情でこちらをみる。

 

 俺は静かに頷いた。

 

「どうも………すいません」

 

 ペコリとダイゴ隊員は謝罪した。

 

 戸塚と別れて俺達はダイブハンガーへ戻る。

 

 その途中、本当に男の子なの!?と何度もダイゴ隊員に聞かれた。俺も女の子なら絶対に告白していたよ。

 

 世の中、本当に理不尽だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦室では目撃者が描いた絵を見ていた。

 

 赤い宇宙人と青い宇宙人。

 

 ところどころ違いはあるが似通ったところが多い。

 

「目撃者の話によるとエイリアンは二体いる可能性があります」

 

「しかし、危機的状況下だ。混乱している可能性はある」

 

「リーダーのいう事に一理ありますけど、逆に危機的だからこそ、深い印象にあるということもないっすか?」

 

 人間というものは厄介な生き物だ。

 

 冷静なら間違えないようなものでも焦っていた時、パニックを起こしていれば大きな間違いを起こす。

 

 今回の件も襲われた際のものだから信憑性は低いとリーダーは言う。

 

 だが、俺は違うと思う。

 

 あの人ははっきりとエイリアンは二体いると話した。

 

 俺が思うにあの人の記憶に間違いはないだろう。

 

 だが、二体が敵対?していた理由がわからない。

 

 人を誘拐する理由はいくつかあげることはできる。だが、宇宙人同士が敵対する理由はでてこなかった。

 

「今までにあった宇宙人のデータを調べてみましたが」

 

「合致するものはあらへんねんやろ?」

 

「……はい」

 

「しかし、二体いるにしても、人間を誘拐する理由は何だ?しかもスポーツ選手やアクション俳優とかだろ?」

 

「……人間のデータ狙いとかも考えられるよね」

 

「とにかく、これ以上の犠牲者を出すわけにはいかない。夜間のパトロールを強化する」

 

『了解』

 

 俺達は立ち上がる。

 

 こういう事件の場合、夜間パトロール強化は基本。

 

 はぁ、安眠の日々は遠ざかる。

 

 小町に余計な心配をさせてしまうかもなぁ。

 

 肩をすくめながら俺はダイゴ隊員と夜間パトロールのためシャーロックが停車してある場所へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 留美はおばあちゃんと赤い宇宙人に挟まれる形で炬燵に入っていた。

 

 赤い宇宙人、スタンデル星人のレドルという名前らしい彼は傷ついていた所をおばあちゃんに助けてもらったらしい。

 

 らしいというのは口がなく、留美の頭へ直接語り掛けているからだ。

 

 どうやって頭に語り掛けているのかわからないがおばあちゃんは気にせず、レドルへ緑茶を差し出す。

 

「あぁ、そうそう、私は歯が弱くて食べられないのですが、留美ちゃんと一緒に食べて」

 

 おばあさんはそういうと棚からせんべいを取り出して机へ置く。

 

 留美はおずおずとそれを受け取る。

 

『警戒、している?』

 

 レドルが留美へ問いかけた。

 

「違う、緊張しているだけ……人間以外と会うなんて初めてだから」

 

『我々のような存在と遭遇したことは?』

 

「ニュースで宇宙人の事は知っている…でも、ほとんどが侵略者…この星を狙う奴らばっかりだから……」

 

『私も侵略者だと思うかね?』

 

「思わない」

 

 問いを留美は否定する。

 

 何故、とレドルは問いかける。私も宇宙人だという質問へ留美は強く、はっきりという。

 

「おばあちゃんが貴方を疑わなかった。あと、私から見ても貴方は良い人」

 

『なぜ?私はキミ達と異なる姿をしている。見た目で判断することは難しい筈だ』

 

「そうだね」

 

 留美は小さく頷く。

 

 だが、その目は真っすぐにレドルをみていた。

 

「でも、私はわかるよ。レドルはとっても暖かくて優しい人だ」

 

『なぜ、そう言い切れる』

 

「ある人の言葉を借りれば」

 

 留美は“彼”を思い出す。

 

 ぶっきらぼうでどこか孤高を気取りながらも全くそうじゃない。

 

 しかも、自分の為に奮闘してくれた“彼”。

 

 彼の言葉を借りるなら。

 

「ぼっちはみただけで人を判断するの」

 

『ぼっち?…とは』

 

「…なんだろうね」

 

 留美は小さく笑う。

 

 レドルは首をこてんと動かした。

 

「あぁ、私は久しぶりに人と沢山、話をして疲れちゃったよ。今日は寝ます……あ、電気は」

 

『ま、待ってくれ!』

 

 慌てて立ち上がったレドルに驚いておばあちゃんは後ろへ倒れそうになる。

 

「おばあちゃん…レドル!」

 

 留美がレドルを怒ろうとするがおばあちゃんが止める。

 

「大丈夫、だよ。暗いのが嫌いなんだね?わかったから乱暴はおよし!」

 

 おばあちゃんに怒られてレドルはしゅんと体を小さくした。

 

 感情表現豊かな宇宙人だなぁと留美はそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、おばあちゃんがレドルの様子を見に行くと彼の姿はなかった。

 

「……」

 

 湯呑を優しく握りしめて外を見る。

 

 その顔は寂しさの色が濃かった。

 

「言葉が通じなくてもいいじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回の事件はB地区からR地区に集中、事件は夜間に起こっています」

 

 作戦室のスクリーン、

 

 目の前に表示されたマップには行方不明になった人達のマークが表示されていた。

 

 これだけみるとかなりの数の人が拉致されているようだ。しかも、この地区に集中している。

 

「全て、夜に行われているのね」

 

「夜行性の生命体」

 

「対して昼に拉致されているなどの事件はなし…」

 

「よし!夜は活動していて昼はごろごろしている奴を捕まえたらいいんですね!」

 

 ブッ!

 

 俺は吹き出しそうになるのを堪える。

 

 そういう奴を捕まえるって、ニートを徹底的に捕まえないといけないじゃん。

 

「ふざけるのはそこまでよ」

 

「はい」

 

 隊長に言われてホリイ隊員は静かに座る。

 

 うん、冗談だよね。安心したよ。

 

「B地区からR地区を重点的に調査する」

 

「念のためっすけど、夜間外出の規制はまだしない方がいいと思います」

 

「なんでだよ?宇宙人がうろついているかもしれないんだぞ?」

 

「だからですよ。相手はまだこっちに気付いていないかもしれない。けれど、先手として規制してしまえば、別の地区へ行くかもしれません」

 

「成る程」

 

「B地区からR地区のパトロールに出動!」

 

『了解!』

 

 ダイゴ隊員とレナ隊員、ホリイ隊員とリーダーがウィング一号で空から。

 

 俺とシンジョウ隊員はデ・ラ・ムでカバーできない部分をパトロールする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 留美は学校の裏手に男子生徒から呼び出されていた。

 

「鶴見さん、好きです。俺と付き合ってください」

 

「今、そういうことに興味ないので断ります」

 

 ばっさりとイケメン男子生徒の告白を留美は断る。

 

 尚も食いつかれる前に彼女は足早に裏手から抜け出して校門へ走った。

 

 これで十回目だ。

 

 中学生になってから留美は時々、男子生徒から告白されることがある。

 

 理由はわからない。

 

 留美は溜息を零しながら角を曲がろうとして動きを止めた。

 

「レドル……おばあちゃん?」

 

「あ、留美ちゃん」

 

 数分後。

 

 留美はレドルに前で抱えられ、後ろにおばあちゃんを連れて走っていた。

 

 途轍もない速度、というわけではないが風が気持ちいい。

 

「凄いね!レドル」

 

 顔の傍でレドルに微笑む。

 

 突如、レドル達の前に一台の車が停車する。

 

 車の側面にあるGUTSをみて留美の顔が青くなる。

 

 GUTS、

 

 それは怪獣や侵略者を撃退するエキスパート。

 

 レドルは宇宙人。

 

 撃退の対象に入っているかもしれない。

 

 

「止まれ!」

 

 デ・ラ・ムから降りて武器を向ける。

 

 俺達の目の前に現れたのは赤い宇宙人。

 

 確かにイカといわれても仕方ないよな。

 

 レドルは慌てて向きを変えようとするが別の隊員が現れた。

 

「なんや!今度はおばあさんかよ!?」

 

 ホリイ隊員が驚くのは仕方がない。

 

 赤い宇宙人が背負っていたのは高齢のおばあさん。

 

 しかも、前には……あれ?

 

「……やめて!」

 

 赤い宇宙人から降りた小さな女の子が両手を広げた。

 

 同じようにおばあちゃんも前に立つ。

 

「この子は悪い子じゃないよ!少し、乱暴したけれど、悪い子じゃないよぉ!」

 

 全員が武器を構えている中、俺はヘルメットを外す。

 

「八幡隊員!?何をして」

 

「……八幡?」

 

 両手を広げている少女が驚いた顔をしている。

 

 その横でダイゴ隊員が構えながら近づいてきた。

 

「その子は知り合い、なの?」

 

「そんなところです……その宇宙人は」

 

「レドルは悪い奴じゃない!だからそれを下して」

 

 今もハイパーガンを構えている俺へ留美は叫ぶ。

 

 留美の目を見てから、俺はハイパーガンをホルダーにしまう。

 

「……このエイリアン、いや、レドルは話ができるのか?」

 

『可能だ』

 

「…今の」

 

「……テレパシーや」

 

 ホリイ隊員がヘルメットに手を当てながら呟いた。

 

「アンタがレドルだな?俺は比企谷八幡……GUTSの隊員だ、詳しい話が聴きたい。同行してもらえるか?」

 

「レドルをどこへ連れていくの!?」

 

「この子は何も悪いことをしていないんだからね!」

 

 俺がいうと留美とおばあちゃんが警戒し始めた。

 

 リーダーが小さく。

 

「場所を変えましょう。ここは少し人目がつく」

 

「そうですね……留美たちは」

 

「私達も行く!いいよね?」

 

 留美は俺の腕を掴む。

 

 かなり強い。了承しなかったらずっとついてくる気がした。

 

「いいでしょう。二人にも事情を聴きたいですから」

 

 リーダーが大人な対応をとることで場所を近くの公園へ移す。

 

 レドルが話をしている横で俺はなぜか留美と話をしていた。

 

 おかしいな、俺はGUTSとしてレドルの話を。

 

「ちゃんと聞く!」

 

「あ、はい」

 

 バンと留美が床を足で叩く。

 

 俺は静かに頷いた。

 

 なんとなくだが、留美の奴、雪ノ下に似てきていないか?

 

 そんなことを考えている間に、ダイゴ隊員達はアボルバスとかいうエイリアンを捕まえるための作戦を、俺とホリイ隊員は留美が親しくしているおばあちゃんの家へ向かうことになりました。

 

 あれ?こういう時にぼっちになるってどうなんだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦室へ戻らずに俺は留美と道を歩いていた。

 

 おばあちゃんとレドルを先にホリイ隊員がデ・ラ・ムで送り届けて、その間に買い物のやり直しをすることとなったのだ。

 

「……八幡、GUTSなんだね」

 

「まぁな」

 

「危険な仕事じゃないの?」

 

「まぁ、危険だ」

 

「なんで、やっているの?」

 

「……色々、あったんだよ」

 

「あの日の事が原因?じゃあ」

 

「確かに、あの日が原因といわれても仕方ないが、お前が気にすることじゃない。何より、お前の為に俺がGUTSに入るなんてことは絶対にない、だから安心しろ」

 

「そこは気にするな、でしょ」

 

「知らん」

 

「………八幡」

 

 買い物袋を抱えている留美がくぃっと俺の袖を掴む。

 

「相談、したいことがあるの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鶴見留美と比企谷八幡の関係は何か?これを問われるといつも回答に悩む。

 

 中学生とGUTS隊員。

 

 この二つの組み合わせは奇怪に思うだろう。

 

 少し前なら高校生と小学生という関係だ。

 

 どちらにしても謎だ。

 

 そんな関係だが、俺と留美は友人?知り合い?よくわからない関係で落ち着いている。

 

 そもそも、留美と会ったのは二回程度。

 

 今回を含めたら三回目になるのか。

 

「私、告白されるの」

 

「告白?」

 

「自分でいうのもなんだけど、モテルみたいなの」

 

「ルミルミ大変だな?」

 

「ルミルミっていわないで、キモイ!」

 

 プンプンと頬を膨らませる。

 

 本人は自分が稀有な存在だと理解していないのだろう。

 

 美しさと可愛さ、その両方が見事に組み合わさっているのだ。

 

 サラサラのロングは触るととても柔らかそうだ。

 

 肌は染み一つない。細い手足だが芸術品のような美しさを持っている。

 

 告白されるのは仕方のない事だろう。

 

 しかし、本人としてはたまった物じゃない。

 

「大変だな……」

 

「うん、それで、八幡に相談があるの」

 

「俺に?」

 

 留美の話によると告白してきた男子達は誰もが人気者、加えてイケメンの男子達だという。

 

 それはそれで厄介だというのがわかる。

 

 他の女子達からすれば、調子に乗っている、気に入らないと留美を批判する。

 

 留美はそういうのに興味がないから断っているだけ。

 

 人間関係とは厄介で仕方がないものだ。

 

 わかっていても、面倒というのは消えない。

 

「頑張れ」

 

「最後まで聞く!」

 

 はいはい。

 

「今日も野球部の先輩から告白されたの」

 

「ふむ」

 

「いい加減、断るのもめんどくさいから、彼氏がいることにしようと思う。その役、八幡、よろしく」

 

「いやだよ、面倒だ」

 

「即答なんてひどい」

 

「いや、困っているなら助けてやりたいが、そういう方法じゃなくてもいいだろ?第一、彼氏いるとかいうなら、いるだけにしておけばいいじゃねぇか」

 

「そう、仕方ないね」

 

「あっさり引き下がるんだな」

 

 もう少し抵抗すると思っていたぞ。

 

「私の事で八幡を困らせたくないし…ただ、面倒なことになったって、小町先輩にそうだんするだけだから」

 

「ちょっと待て、そこで小町の名前がなぜでてくる?」

 

 警戒せよ。

 

「この前、街で知り合って仲良くなった」

 

「ほぉ」

 

「その時に相談して、八幡の事、認めてもらった」

 

「俺の人権、どこにいったんだ?」

 

「今日の夜にでも、相談するよ。八幡はダメだったって、他の方法を探しますって」

 

「うぐっ!?」

 

 ここで、小町の名前を出すなんて。

 

 しかも、上目遣いになりながら心細そうに裾を掴んでくる。

 

 ボッチにはきついぞ。

 

「好きな人がいるじゃダメなのかよ」

 

「恋人がいる方がより意味があるって……断る時に色々といえるから……なによりGUTSだもん」

 

「それって、問題にならないか」

 

 中学生と付き合うGUTS、ヤズミ辺りならまだセーフ……いや、アウトだな。

 

「わかった……困っているなら仕方ない。可能な限り力を貸してやる」

 

「八幡ならそう言ってくれると思った」

 

 嬉しそうに留美が俺の腕へ抱き付く。

 

 ちょっと、荷物もあるからバランス悪いって!

 

「ただ、俺もGUTSとしての仕事がある。連絡できない時もあるから、それだけは我慢してくれ」

 

 毎日のように連絡を取ることはできないと釘をさして、俺と留美はおばあさんの家へ入る。

 

 そこでは制服の上を脱いで鉢巻をしたホリイ隊員がいた。

 

「何やって……んすか?」

 

「風呂の準備や、なんや、旧式やから、あつぅて、あつぅて……って、どないしたん?」

 

「何がですか?」

 

「いや、そこのお嬢ちゃん、随分と上機嫌やから」

 

「え?」

 

 俺は隣を見る。

 

 しかし、留美は顔をみせずにキッチンへ向かっていった。

 

「何か……あったの?」

 

「語ると少し面倒…なことが」

 

 手短にホリイ隊員へ話す。

 

「…なんや、頼りにされてんねんなぁ」

 

「でも、歳の差がかなりありますよ」

 

「俺がいうのもなんやけど、愛さえあればって言葉があるやろ?」

 

「いやいやいや、無理がありますって」

 

「ま、今は助けると思って頑張り」

 

 ぽんぽんとホリイ隊員は風呂のお湯のチェックへ戻る。

 

 俺は溜息を零しながら和室へ入った。

 

 そこでは待っていたようにレドルが立っている。

 

『話がある』

 

「…お前もかよ。とりあえず、座れよ」

 

『うむ』

 

 レドルと向かい合う形で炬燵へ入る。

 

『私はアボルバスの目的を阻みに行く』

 

「敵の宇宙船の場所を知っているのか?」

 

 コクン、とレドルは頷いた。

 

「どうして、教えなかった?」

 

『……教えたとして信用されるかわからなかった……というのもある。しかし、これは私の星の問題だ。決着は私がつける』

 

「夜はアボルバスとかいう奴の領域だろ?お前……死ぬつもりか?」

 

『私は元々、アボルバスと同じように夜でも戦える戦士を探すために来ていた。しかし、此処の人達…留美たちとかかわりを持って知った。使命より大事なものがあると!だから、私は』

 

「………一つ、条件がある」

 

『なんだ?』

 

「アボルバスとかいう奴の計画を潰したら、ここに必ず帰ってこい。一度だけでいい。あの二人へちゃんと顔を見せてやれ」

 

『それは』

 

「宇宙人とか、そういう問題じゃない。お世話になった感謝を伝えろ。そうでないと俺は宇宙の果てだろうとお前を追いかけるからな」

 

『わかった』

 

 レドルは立ち上がる。

 

『留美の話した通り、キミは優しい人間だ』

 

「は?」

 

 言葉の意味を尋ねようとした時、レドルの体から光が放たれて、姿が見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おばあちゃん、良い湯加減で出来上がり……」

 

 ホリイは中へ入った時、炬燵にレドルがいないことに気付く。

 

「おばあちゃん、アイツは!?」

 

「あの子は、使命を果たしに行きました」

 

「なにしてんのぉ!僕の信頼がた落ちですわぁ」

 

「あの子は良い子です」

 

「おばあちゃんの子供?あのな」

 

『乱暴はいけない』

 

 おばあちゃんの肩を揺らそうとしたところでレドルの制止がかかる。

 

『私は、アボルバス同様、夜に戦える戦士を探す使命が与えられていた。だが、この人達と触れ合って知った!使命よりも大事なものがあると!』

 

「……おばあさん、アイツを行かせたんですね?」

 

 ホリイ隊員は確信した。

 

「アイツは昼の種族で、暗い世界だとなんも力を発揮しないんです。それでも……いかせたん、ですか?」

 

 レドルの“やらなければならないこと”を察していかせたのだろうと。

 

 おばあちゃんは頷く。

 

 その目はとても強いものだった。

 

「八幡、お前も、わかっていたんやな?」

 

「……少しの時間ですが、話をしました」

 

 炬燵に入っている八幡へホリイが問いかける。

 

 静かに頷いたことでそうか、とホリイは頷いた。

 

「これ以上はなんもいわへん!飯にでもしよ!」

 

「……そう、っすね」

 

「八幡!手伝って!」

 

「……うす」

 

 台所から留美の叫びが響いて八幡は立ち上がる。

 

「既に……尻に敷かれとる」

 

 ホリイ隊員の呟きにおばあちゃんは苦笑するのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 GUTSによる外出規制によって外へ出ている者はいない。

 

 その中で作戦は実行された。

 

 GUTS隊員による乱闘騒ぎ。

 

 これをみたアボルバスが戦士を求めて現れることを待つ。

 

「ぐっ!でてこねぇなぁ、アボルバス!」

 

 胸倉を掴んで顔を寄せてシンジョウとダイゴが話し合う。

 

「行くぞ!」

 

 鉄パイプを手にしたムナカタが二人へ迫る。

 

 二人はそれを躱してダイゴがリーダーを殴ろうとする。

 

「すいません!」

 

「よし、こい!」

 

 仮にも上官を殴る。恐れ多い事のため謝りながらダイゴは拳を放つ。

 

「足らんぞ!」

 

「うぉおおおおおお!」

 

 ムナカタに怒鳴られながらも投げ飛ばす。

 

 本気で投げ飛ばされてゴロゴロと転がる。

 

「くそっ、本気で投げる奴があるか……」

 

 悪態をつきながらムナカタへレナが駆け寄る。

 

 小さな閃光が起こった後、いたはずのシンジョウとダイゴが消えていた。

 

「リーダー、本当だ!」

 

 レナは驚いてムナカタの肩を叩く。

 

「くそっ、俺を連れて行かなかったのはどういうつもりだ!」

 

 男の中で一人、はぶられてしまったことで悪態をつく。

 

 その横でレナは小さく苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダイゴは暗闇の世界にいた。

 

 薄暗く、肌寒い空間、

 

 周りを見ていた彼は柱を見て駆け寄る。

 

「シンジョウさん!」

 

 柱にはシンジョウ隊員の顔があった。

 

「お前は他の人間どもと違う」

 

 ダイゴの前にアボルバスが現れる。

 

「お前には自らの意思で協力をしてもらいたい。そうすれば、奴隷扱いはなしにしてやろう。さぁ、我々に忠誠を誓え!」

 

「断る!」

 

「……やはり、地球人は愚かだ。貴様も」

 

 アボルバスが何かを言おうとした時、背中に爆発が起こる。

 

 振り返るとレドルが現れた。

 

 レドルが赤い光線を放つ。

 

 しかし、アボルバスに大したダメージはなかった。

 

 アボルバスは青い電撃を放つ。

 

 それはレドルに大きなダメージを与えたようで膝をついた。

 

「やめろ!」

 

 満身創痍のレドルへダイゴが駆け寄る。

 

 アボルバスは姿を消した。

 

 倒れているレドルへダイゴが抱き起す。

 

『……アボルバスを倒せ……囚われの地球人は私が解放する』

 

 レドルの言葉にダイゴは懐からスパークレンスを取り出す。

 

 眩い光と共にダイゴはウルトラマンティガとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アボルバスはウルトラマンティガがレドルの助言を受けて倒した、

 

 レドルは言葉通り、囚われた人達を助けた。

 

 そして、最後に躱した約束を果たした。

 

 留美とおばあちゃんの下へ姿を見せた。

 

 もう一度、会うことを約束して彼は故郷へ帰っていく。

 

 数少ない人類へ敵対しない宇宙人として俺はレポートを残す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホリイから聞いたぞ~、八幡、あの小さな子と付き合うことになったんだって?」

 

「違います。偽装するだけです。アイツが普通に生活を送れるようになるまで」

 

「でも、デートするんでしょ?」

 

 シンジョウ隊員とヤズミが俺の両肩を揺らす。

 

 あぁ、字が歪む。

 

「そういう風に見せる必要があるんだよ……周りにそうみせるために」

 

「いいけれど、大丈夫ぅ?」

 

 レナ隊員が不安の表情を浮かべて俺の所へやってくる。

 

「何が、ですか?」

 

 質問の意図を尋ねようとした時、作戦室の扉が開いてやかましい声と共に誰かが入ってきた。

 

「ヒッキー~~~~~~~!」

 

 乱入者は由比ヶ浜だった。

 

 逃げる暇もなく、シンジョウ隊員とヤズミから両肩を奪って凄い勢いで揺らしていく。

 

 八幡残像の出来上がりである。

 

「……八幡君、さっき結衣ちゃんが凄い形相で探していたけど……あぁ」

 

 遅れてやってきたダイゴ隊員。

 

 もう少し、早く来てくれたら、こうならなかったのに。

 

 酔ってしばらくマッカンを飲めなかったのが悲しかった。

 

 




戸塚と鶴見さん、登場です。

まさかの八幡彼氏です。ニセコイです。果たしてこれがどうなるのか、作者も苦笑しながら書いています。

何か、SSみているとルミルミ、可愛い話が多かったんですよね。どうせだからといれてみました。
近々、ルミルミの番外編がでるでしょう。

次の話はしばらく時間が掛ると思います。

出来上がり次第、投稿していきます。

それでは!

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