やはり俺がGUTSにいるのはまちがっている。   作:断空我

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人間採集

一色いろはは夜の道を歩いていた。

 

普段ならこの時間帯に通りはしないのだが、用事と雑用などが重なってしまい、こんな時間になってしまったのだ。

 

「はぁ、早く帰らないと」

 

誰も利用しない自然公園の道を歩いていると仲睦まじく歩いているカップルの姿がある。

 

あまりに仲睦まじい姿に少し羨ましい気持ちがあった。

 

「(はぁ、こういう時に独り身が寂しいと思うんですよねぇ………時々、ですけど)」

 

場所も考えずいちゃいちゃしているなら邪魔だと思う。しかし、夜の公園の利用者は少ない。

 

故に、こんな場面に遭遇してしまうのだろう。

 

不幸だ。

 

「はぁ…帰ろ」

 

目の前のカップルを追い抜こうと足早になろうとした時だった。

 

彼らの前に鳥人間が降りてくる。

 

突然の事に一色は歩みを止めた。

 

「な、なんだ、てめぇ!」

 

 コスプレ人間の類と考えたのだろう、男が詰め寄ろうとした時、鳥人間が黒い機械を構えた。

 

 眩い光と共に“人間”が消える。

 

「っ!?」

 

 一色は咄嗟に隠れた。

 

 自分の姿が鳥人間に見つかったかわからない。

 

 武器を構えていた鳥人間は黄色い目を何度か瞬きすると歩き始めた。

 

「(そうだ、こんな時こそ)」

 

 一色いろははある人物に連絡を取る為に携帯電話を取り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジョウ隊員、シンイチ君という子から連絡が入っています」

 

「シンイチ?アイツ、こんなところにまでかけてきやがって」

 

 作戦室、そこで待機していた俺達の所に一通の電話がかかってくる。

 

 シンジョウ隊員が悪態をつきながら受話器を取る。

 

 同時に電話がもう一本鳴り出した。

 

 今日は電話がかかってくる日だな。

 

「八幡隊員…いろはちゃんって子から連絡がきています」

 

「人違いですと伝えてください。間違い電話です」

 

「そない、つれない反応したんなや」

 

 ホリイ隊員に窘められて渋々、電話へ出る。

 

「もしもし?」

 

『先輩ですか!?先輩ですよね!?』

 

「二回も連呼しなくても聴こえている」

 

『大変なんです。えっと、えっと』

 

「落ち着け、要点をまとめて短く」

 

『は、はい…あの、鳥人間が人を消しちゃったんです』

 

「……?」

 

 俺は受話器からの一色の話を聞いて、傍のシンジョウ隊員の話を聞く。

 

「まだ、そこに鳥人間はいるのか?」

 

『わかりません、姿は見えないです』

 

「……迎えに行くからそこを一歩も動くな。場所を伝えろ」

 

『は、はい』

 

 場所を聞いて受話器を置いて、隊長を見る。

 

 片手間に隣の話は聞いていた。シンジョウ隊員の親戚の子も鳥人間をみたという。

 

 これが偶然か、悪戯かはわからない。

 

 だが、放置するわけにいかなかった。

 

「B1地区の自然公園にいるらしいんです。シンイチという子はB2地区っすよね?俺一人でいってきます」

 

「待ちなさい…そうね、レナ隊員」

 

「はい」

 

「八幡隊員と同行しなさい」

 

「わかりました」

 

「いえ、あの」

 

「ほら、行くよ」

 

 レナ隊員に引っ張られる形で俺は外へ連れていかれる。

 

 基地からデ・ラ・ムで一色のいる公園へ向かう。

 

「八幡君の交友関係って、思ったけれど、女性が多くない?」

 

「そんなことありませんよ。俺にだって男の知り合いくらい」

 

 戸塚だろ?

 

 葉山…だろ、

 

 後は…、誰かいたような?

 

「ほらぁ」

 

 途中で俺の手が止まったことでレナ隊員が肩をすくめる。

 

 むむむ。

 

 反論しようとしたが勝てる見込みがなさそうなため断念する。

 

 しばらくして、目的地の公園に到着した。

 

 俺一人でいくよりレナ隊員がいたほうが安心できるという隊長の考えがあったんだろうな。

 

 懐中電灯を片手に夜道を歩く。

 

 一色は公園の真ん中あたりにいるそうだ。

 

 これならシンジョウ隊員達に任せて、自分は閉じこもっていても。

 

「今、自分はでていかなくても大丈夫みたいなこと考えていたでしょ~」

 

「いえ、別に」

 

「八幡君、顔に出るからわかりやすいんだよねぇ」

 

 え、マジですか?

 

 驚きながらレナ隊員をみる。

 

 話しからして事実っぽいなぁ。

 

 はぁ。

 

「八幡君はもう少し、女の子の気持ちを理解してあげるべきよ?でないと、彼女達の方から色々とあるかも」

 

「理解?してなんかあります?」

 

「これは大変だ」

 

 どういう意味だ?

 

 レナ隊員の言葉の意味に首を傾げながら一色がいる場所へ急ぎ足で向かう。

 

「先輩!遅すぎです!私は怖くて怖くて体がとても冷たくなる思いでした。なので温めてください。あ、温めるといっても抱きしめてとかではありません、そういうのはまだ早いです、手をつなぐならいいんですけれど、というか、どうせなので今度、どこか食べに行きましょう。別に何か企んでいるわけではありません、勘違いしないでください。ごめんなさい」

 

「一人で帰れ」

 

 待っていた一色へ俺はばっさりと言い放つ。

 

 会話が長すぎる。何言っているのか半分もわからないから。

 

「いろはちゃん、鳥人間は?」

 

「それが…どこかいっちゃいました」

 

「このあたりにいるかどうかもわからないか……」

 

「とりあえず、家まで送る…道中でも構わないから鳥人間の特徴とかを教えてくれ」

 

「は、はい」

 

「戻りましょう、レナ隊員」

 

「うん」

 

 頷いてデ・ラ・ムが停車している場所まで歩く。

 

 あれ、一色さん、何、俺の腕を掴んでいるんですか?しかも、ぴったりとくっつかないでくれる。腕が重たいんだけど。

 

「失礼な!女の子に重たいなんて、禁句ですよ。死刑ですよ。火あぶりの刑です」

 

「こえぇよ!」

 

 さらりと死刑宣告してきた後輩を睨む。

 

「私は恐ろしい怪人にあって怖い目にあったんですよ?少しくらい、可愛い後輩を心配する姿を見せてくれもいいと思うんですけど」

 

「はいはい、もう大丈夫だよ」

 

「声に感情がこもってない!?」

 

「夜なのに元気だな。お前」

 

「先輩が元気なさすぎ何ですよ。そんなのでGUTSの隊員が務まるんですか?」

 

「務まっちゃうんだよねぇ…八幡君は優秀だから」

 

「やめてください」

 

 レナ隊員の言葉から半ば逃げるように足早となる。

 

 それでもついてくる一色、レナ隊員の傍行きなよ。

 

 デ・ラ・ムの扉へ手を伸ばした時だ。

 

「危ない!」

 

 レナ隊員の叫びに空を見る。

 

 いきなり黒い影が襲い掛かってきた。

 

 咄嗟の事で俺が出来たのは一色を突き飛ばす事。

 

 一色は小さな悲鳴を上げて地面へ倒れる。

 

 相手は奇声を上げて黒い機械の銃口を向けた。

 

 俺は素早くホルダーからハイパーガンを取り出す。

 

 体勢とかそういう場面で言うとかなり無理がある。

 

 しかし、俺の傍に一色がいる。

 

 相手がどんな手段を用いてくるかわからない以上、先手を打つ。

 

 光弾は鳥人間の肩を撃ちぬく。

 

 放たれた光線はあろうことか一色を吸い込んだ。

 

「なっ!?」

 

 息を飲んだ俺とレナ隊員の前で鳥人間がふらふらと逃げていく。

 

 追いかけようとした時、額からどろりとした何かが流れていた。

 

 そういえば、一色がうるさかったからヘルメットを外していたような?

 

 額へ手を伸ばす。

 

 指の腹にべっとりと赤い血がついていた。

 

「やべっ」

 

 体を崩して俺の意識は闇の中へ消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますとメディカルルームの天井が映った。

 

「っぅ」

 

 額に走った痛みへ手を伸ばすと包帯がまかれている。

 

 部屋に入ってきたマユミさんの話によると運び込まれて既に日が変わっていた。

 

 由比ヶ浜が心配して一日中付き添っていたらしいが今は寝かせているらしい。申し訳ない。

 

「作戦室へ行きます」

 

 置かれている制服を手に取る。

 

「まだ、安静にした方が」

 

「大丈夫です」

 

 心配するマユミさんへそういって俺は作戦室へ向かう。

 

 まだ、頭が少し痛むが大丈夫だ。

 

 作戦室へ足を踏み入れるとダイゴ隊員がやってくる。

 

「八幡、大丈夫か?」

 

「はい、すいません、自分のミスで、一色が」

 

「貴方の責任じゃないわ…今、シンジョウ隊員のPDIに反応があったの。リーダー達をこれから向かわせる」

 

「自分も行きます」

 

「ダメよ。まだ安静にしていなさい」

 

「……大丈夫です」

 

「鏡で自分の顔を視なさい。冷静さを欠いている今の貴方を行かせることはできない。」

 

 冷静さを欠いている?

 

 俺は焦っているのか?

 

 そんな疑問が浮かぶ。

 

 わからない。

 

「落ち着け、必ずお前の友達は助ける……」

 

 リーダーが俺の肩を強くたたいた。

 

「しかし、人手不足なのも現状だ。落ち着いたらすぐに来い」

 

 そういってリーダー、ダイゴ隊員、レナ隊員達が出ていく。

 

 残された俺はばしっと両手で頬を叩いた。

 

「すんません、出動してきます」

 

 作戦室を出た時にちょっとした頭痛が俺を襲ったのは仕方のない事だろう。

 

 ヘルメットを被り、待機していたダイゴ隊員、レナ隊員、リーダーと共にデ・ラ・ムへ乗り込む。

 

「大丈夫?」

 

「落ち着いています…しいて言うならマッカン飲みたいくらいっす」

 

「余裕があるようなら問題ない、行くぞ」

 

 リーダーの言葉に返事をして俺達は出動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンジョウ隊員のPDI反応は市街地から離れた廃墟にあった。

 

「ここは三十年前に閉鎖されて機能停止しています」

 

「反応はあの建物からあります…」

 

「リーダー!建物の奥に動力反応です」

 

「そんな、馬鹿な!」

 

「ここまで近づかないとわからない。敵の隠蔽技術は厄介とみるべきっすね」

 

 八幡の言葉には不意打ちを受けたことを思い出している節がある。

 

「でも、今、あっちはこちらに気付いていない。チャンスでもある」

 

「……うす」

 

 ダイゴの言葉に八幡は頷く。

 

「突入…しますか?」

 

「敵の機械が厄介だ、対抗策がくるまで待つ」

 

 リーダーの言葉に待機しているとバイクに乗ったホリイ隊員がやってくる。

 

「お待たせ!バイク便の到着です!」

 

 やってきた彼の手の中にあるアタッシュケース。

 

 それを開けて中身をみせる。

 

「バリアカートリッジ!これで奴らの光線を乱反射させます」

 

「よし」

 

「隊長、これより突入します」

 

『気を付けて、人質の保護を最優先として』

 

 イルマからの言葉に全員が頷く。

 

 ホリイとレナがカートリッジを入れ替える。

 

 ダイゴとムナカタがハイパーガンを、八幡がDUNKショットを取り出す。

 

 廃墟へ向かう。

 

 建物の中を慎重に進むメンバー。

 

「二手に別れる。八幡はこっちだ」

 

「了解」

 

 ダイゴ、レナと別れて二人の後へ続く。

 

 しばらくして、彼らの前にクロウ人が現れる。

 

 縮小武器から光線が放たれる。

 

 そこをホリイ隊員のハイパーガンから放たれたシールドが防ぐ。

 

「っ!」

 

 DUNKショットから放たれた光線がクロウ人を貫いた。

 

「よっしゃあ!」

 

 駆け寄ったホリイが縮小機を手に取る。

 

 周囲を警戒する八幡。

 

「行くぞ!」

 

「了解」

 

「了解っす」

 

 

 

 

 

 

 ダイゴはウルトラマンティガとなる。

 

 今までの巨大な姿ではなく、人型サイズだ。

 

 ティガの姿にクロウ人、レイビーク星人が周りを囲む。

 

 回転しながらレイビーク星人を薙ぎ払う。

 

 彼を脅威と感じたのか人間を保管してあるケースがある空間を閉じる。

 

 それをみたウルトラマンティガは地面を蹴り、飛行しながら壁を壊す。

 

 ぽっかりと空いた穴、そこに置かれていたケースを担いで出ていく。

 

「……ティガ」

 

 ムナカタは目の前に現れたウルトラマンティガに驚く。

 

 それはホリイや八幡も同様で、ホリイに至っては天井に穴が開いていないか調べてしまったくらいだ。

 

「…ホリイ!」

 

「はい」

 

「八幡、先行しろ」

 

「了解」

 

 DUNKショットを構えて八幡が先へ、続いてムナカタ、ホリイは建物から離脱する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、全部か?」

 

 俺はヘルメットの通信システムで作戦室にいるヤズミへ数の確認をとる。

 

『報告にある数と一致、間違いありません』

 

「よし、シンジョウ隊員、少し揺れますけれど、我慢してください」

 

『お手柔らかに頼む』

 

 返事に苦笑していると地面が揺れだす。

 

 なんだ?

 

 突如、目の前の建物が大きな音を立てて爆発した。

 

 爆風で体が揺れながらも前を見る。

 

 崩壊した建物から丸い円盤が現れた。

 

 丸く、先端には丸いアンテナのようなものがついている。

 

『奴を逃がすな!逃せば、この星へ大隊を率いて、人間を狩りにやってくる!』

 

「あの円盤を攻撃する、迎撃準備!」

 

「了解!」

 

「ホリイ隊員、これ運ぶの、手伝って」

 

「お、おう!」

 

 レナ隊員とリーダーがシャーロックとデ・ラ・ムに乗り込む。

 

 パトロールや調査で使われるこの二台は怪獣迎撃のため武器が搭載されている。

 

 攻撃をするという事は此処が危ない。

 

 本来ならデ・ラ・ムに人が閉じ込められているケージをのせるべきなのだが、そんな時間はなかった。

 

 スクロール砲、ラグナー砲が円盤を狙う。

 

 攻撃を放つが円盤は少しバランスを崩すのみだ。

 

「くそっ」

 

 車両の武装でこれなら手元の武器じゃどうしょうもできないだろう。

 

 円盤から光弾が放たれる。

 

「うわっ!?」

 

「だ、っ!」

 

 爆風が二台や周囲広がる。

 

 一発の光弾が車に迫った。

 

「しまっ」

 

 光弾が車両に迫る。

 

 光波バリアを展開する暇もない。

 

 来る爆発に身構えた時、ウルトラマンティガが身をもって光弾を受け止める。

 

「ティガ…」

 

 円盤は空の向こうへ逃げてようとする。

 

 ウルトラマンティガは赤色から紫色へ姿を変えると空へ飛んでいく。

 

 円盤を追いかけに行った。

 

 こんな言い方をするのは卑怯かもしれないがウルトラマンティガなら確実に敵を倒してくれるだろう。

 

 ……いつの間にか、ここまでウルトラマンティガを信じることになっていた俺に驚きが隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、助かったぜ、ホント」

 

 作戦室でシンジョウが体をほぐす。

 

 レイビーク星人によって縮小されていたがホリイが縮小機を解析して、元に戻すことが出来た。

 

「ほんま、感謝しろよ。俺が解析せんかったらあのままやったんやぞ…………もう少し、あのままの方がよかったかも」

 

 身長差に冷や汗を流しているホリイをみてレナ達が苦笑する。

 

「そういや、八幡はどうしたんだ?アイツにも感謝の言葉いいたいんだけど」

 

「八幡君なら、シャーロックで、外だよ」

 

「え?」

 

「騎士としてお姫様を送り届けているところ」

 

「あぁ」

 

 ポンとシンジョウは手を叩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩が免許を持っているなんて驚きですよ」

 

「GUTSに入る以上、必要なんだよ」

 

 シャーロックで俺は一色を家まで送っていた。

 

 本来なら警務局の人がやってくれるはずだったのだが、他の人を送り届けるので手が一杯という事らしく、白羽の矢が当たった。

 

 何で、俺なの?

 

 他の人がやってくれてもいいじゃない?

 

「先輩が運転できるのって、車だけなんですか?」

 

「いいや、飛行機の免許ありだ」

 

「うわっ!凄いじゃないですか!今度、飛行機乗ってみたいです」

「はいはい、今度な…」

 

「冷たいです!もう少し、暖かい言葉をかけて欲しいですよ!」

 

「肩を揺らすな、運転中だ」

 

「ぶー」

 

 はいはい、あざといね。

 

 俺よりもそういうことは葉山とかが向いているだろう。

 

 そういや、アイツはどこにいったんだろうな。ま、どうでもいいか。

 

「………先輩は、私の事、心配してくれましたか?」

 

「いきなりなんだよ?」

 

「私の事はそこら辺の有象無象と一緒でみていましたか?それとも」

 

「……」

 

 一色の言葉に俺はなんと返したらいいのか、わからない。

 

 あの時、俺は冷静さを欠いていた。

 

 常に冷静であれ、そう決めていたのに、あの時、一色がクロウ人に捕えられた時、どろりとした物に包まれたような気がする。

 

 はっきりいって、焦っていた。

 

 一色が目の前でクロウ人に捕まえられたのか。

 

 対応できなかった自分に、なのか?

 

「先輩は相変わらず…いえ、前よりも明るくなりましたね」

 

「はい?」

 

 何言っているの?この子は。

 

「目は変わらずですけれど、雰囲気が違います」

 

「……おい、さりげなくディスるな」

 

「だから、ですかね~前よりも先輩の事、好きになったの」

 

 危うく変な声を出すところだった。

 

 俺は全力で冷静さを保つ。

 

 少し前の俺なら慌てて、語彙がおかしくなっていただろう。

 

 八幡、偉い、よく堪えた。

 

「スルーですか?さりげなく、告白もどきみたいなことしたんですけど」

 

「こ、こくひゃくもどき!?」

 

 あ、ダメだ。

 

「動揺していますね。可愛いです」

 

 しまったぁ、

 

 一色の顔に笑みが浮かんでいる。

 

 失敗したぁ。

 

 運転していなかったらもだえていただろう。

 

 俺の黒歴史は今も刻まれていく。

 

「もうそろそろ着くぞ」

 

「………返事はすぐにもらいません」

 

 一色はこちらをみている。

 

 俺は横を視ることができない。

 

 運転をしていることが救いだと思うのは卑怯だろうか?

 

「先輩のいう本物に私はなります。ライバルは多いですけれど」

 

「俺は……」

 

「こういう気持ちに先輩が疑惑を持つのはわかっています、だから」

 

――長期戦でも頑張る。

 

 この宣言に俺はなんともいえない顔をしているだろう。

 

 恋なんて一時の迷い。

 

 いずれ、目が覚めて、つまらないことをしたと考える。

 

 そうに決まっている。

 

「――な~んて、先輩は考えているんでしょ、残念ながらそこらの偽物や気の迷いと一緒にしないでください。私も何年前からずっと抱いている想いなんですから」

 

 車を停止させた時、チュッと俺の頬に音がした。

 

 ギョッとした表情で俺は一色をみる。

 

 真剣な顔で一色はこっちをみて、最後に一言。

 

「大好きです!先輩、じゃ、また!」

 

 そういってシャーロックの扉を閉めて一色は家の中へ入っていく。

 

「…………夢なら覚めてほしい」

 

 俺は静かに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、俺のラブコメは再び始まった………のかもしれない。

 

 




本来ならこの話は飛ばして別の話を書く予定でした。

ただ、いい加減、他の俺がいるキャラも話に絡ませていきたかったのでところどころ追加して書き足しました。

一色のあざとさはこれでいいのか自信がない。

次は幻の疾走を予定しています。

尚、まだ予定ですけれど、ティガ外伝も書こうかなと考えています。

まずはGUTS宇宙へまで話を書かないといけませんが…。


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