異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

446 / 534
先制攻撃

 

『航空隊、離陸を許可する』

 

『了解。ブリッツ1、離陸する』

 

 崩れかけの防壁に囲まれた飛行場の滑走路から、次々にF-35Aの群れが飛び立っていく。仮設の管制塔を見上げてから飛び去っていくF-35AやF-22の群れを見つめてから、空になっているXM8のマガジンにクリップを使って6.8mm弾を装填した俺は、仲間から受け取った水筒の中の血を飲み干した。

 

 我々の橋頭保と化したブレスト要塞の飛行場は有効活用している。ラーテの砲撃で滑走路に開いた大穴を塞ぎ、倒壊した管制塔を撤去して仮設の管制塔を設置したことで、ブレスト要塞のボロボロの飛行場は再利用できるようになっていた。

 

 我々には2隻の空母があるものの、航空機を全て空母に任せるわけにはいかない。現代兵器である以上燃料を使って動くわけだから、戦場と空母が離れているほど戦闘機が戦闘できる時間が減少していくのだ。いくら燃料を搭載できると言っても、いつまでも飛んでいられるわけではないのだから。

 

 空になっていた全てのマガジンにクリップで弾丸を装填してから、ポーチに入れてテントを後にする。ブレスト要塞の上空ではすでに後方の空母から飛び立ったラファールたちとF-35Aたちが合流しており、編隊を組みながらタンプル搭へと向けて飛び去っていく。

 

 整列していた兵士たちと共に近くのレオパルト2の砲塔の上に乗り、装備の点検を始める。

 

 ラーテとドーラが撃破されてしまったため、タンプル搭を陥落させるための切り札は突撃歩兵だけになってしまった。艦隊が敵艦隊を突破してくれればドーラとラーテの代役をさせられるのだが、現時点ではまだ敵艦隊と交戦中らしく、タンプル搭を砲撃できる状態ではないらしい。

 

 突撃歩兵が敵の最終防衛ラインを突破してくれれば、主力部隊も防衛戦を突破できるようになるだろう。最終防衛ラインを突破したらタンプル搭へと突入し、要塞内部の残存部隊を撃滅するだけでいいのだから。

 

 とはいえ、敵の戦力はこっちの戦力の7倍だ。しかもこのブレスト要塞の生存者がタンプル搭へと脱出したという事は、俺たちがマスタードガスを攻撃に使ったことを知っている筈だ。あのマスタードガスは敵がガスによる攻撃を想定していなかったからこそ効果があったのである。それゆえに、最終防衛ラインにいる敵がマスタードガスの攻撃を想定して対策をしているのは火を見るよりも明らかだ。

 

 次の攻撃でも砲兵隊が毒ガスの入った砲弾を敵にお見舞いする予定だが、ブレスト要塞の時のように戦果はあげられないだろう。

 

 乗っていたレオパルト2がゆっくりと動き出し、崩れ落ちた防壁へと向かって進んでいく。がっちりしたキャタピラが防壁の破片を粉砕していく音を聞きながら、俺は夜空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天空へと向けられた”塔”にも似た巨大な砲身が、全長210mの長大な砲身から伸びる5つの支柱と共に旋回を始めた。

 

 ”塔”が1つもないにもかかわらず、テンプル騎士団の本部がタンプル”塔”と呼ばれている理由は、ここに搭載されている巨大な200cm多薬室ガンランチャーである『タンプル砲』と、副砲である36cm要塞砲の砲身が空へと向けられている姿が塔に見えるためである。

 

 タンプル砲に取り付けられている32基の薬室の中には、5回分の炸薬が内蔵されている。5発砲撃した後はその薬室を取り外し、クレーンを使って交換しなければならないのだが、逆に言えば5発までならば立て続けに砲撃できるのだ。

 

 ラーテと列車砲を始末するためにすでに2発も砲弾を放っていたが、まだ3発分の炸薬が残っていたのである。死に物狂いで攻撃してくる吸血鬼たちに大損害を与えるために、これから3発の砲弾で彼らに大打撃を与えるのだ。

 

 もう既に、砲弾は装填されている。

 

「冷却液、準備よし!」

 

「逆流防止弁、作動正常!」

 

「全薬室オールグリーン!」

 

「よし、警報鳴らせ!! 全ての作業員は直ちに地下へ退避!!」

 

 中央指令室の中で、モニターを確認しながらオペレーターたちが砲兵たちに指示を出す。

 

「作業員の避難完了!」

 

「隔壁閉鎖開始!」

 

 タンプル砲の衝撃波は、36cm要塞砲どころか戦艦大和の46cm砲の比ではない。下手をすればその衝撃波だけで地下の設備にも被害が出るほどであるため、砲撃する際は必ず隔壁を閉鎖し、各所の検問所にあるゲートを開放する必要があるのだ。ゲートを開放しなければ、衝撃波でゲートが吹っ飛んでしまうのだから。

 

 中央指令室の中に設置された巨大なモニターを睨みつけていたクランは、腕を組みながら息を吐いた。

 

 タンプル砲はすでに何度か実戦投入しており、装填された砲弾が解き放たれる度に大きな戦果をあげている。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射にも成功しており、圧倒的な射程距離と火力で吸血鬼たちを何度も苦しめている。

 

 しかし、装填されている次の砲弾が牙を剥く相手は、地上にある拠点や巨大な超重戦車ではない。

 

「攻撃目標を確認。―――――――ロックオン完了」

 

 正面のモニターに、何機もの航空機の反応が表示される。タンプル搭の周囲や前哨基地に設置されたレーダーサイトが捉えた、吸血鬼たちの航空部隊であった。

 

 大半の機体がステルス機で構成されているためなのか、敵機が接近してくる度に段々と反応が増え、レーダーに映っていなかった機体の反応があらわになっていく。

 

 タンプル砲で誘導砲弾を発射する際は、特殊なポッドを装備した偵察機が攻撃目標を観測して観測データを送信し、発射された誘導砲弾を誘導しなければならない。そのため観測と誘導を行う偵察機は攻撃が着弾するまで敵の対空砲火をひたすら回避し続けなければならない。

 

 だが――――――――敵機がタンプル搭や他の拠点のレーダーサイトで捕捉可能な範囲に入ってくれたのであれば、偵察機は不要である。

 

 敵の観測と誘導は、レーダーサイトでも代用できるのだから。

 

 あくまでも偵察機が必要になるのは、そのレーダーサイトの索敵範囲外を攻撃する場合のみである。ブレスト要塞や周辺の前哨基地も本来ならばその範囲内であるため、ラーテや列車砲を砲撃する際は偵察機を派遣する必要はなかったのだが、敵の攻撃でブレスト要塞の周囲のレーダーサイトが機能を停止していたため、観測と誘導をしなければならなかったのだ。

 

 モニターに映った敵機が少しばかり散開する。ミサイル攻撃を警戒しているようだが、これから飛来するのはどんな地対空ミサイルよりも凶悪で、圧倒的な破壊力を誇る代物である。

 

「同志クラン、砲撃準備が完了しました」

 

「分かったわ。…………秒読み開始」

 

「はい、秒読みを開始します」

 

「―――――――10(ツェーン)(ノイン)(アハト)(ズィーベン)(ゼクス)(フュンフ)(フィーア)(ドライ)(ツヴァイ)(アインス)

 

「―――――――発射(フォイア)」

 

 クランの目の前にいるオペレーターが席にある赤いスイッチを押した瞬間、5つの支柱と33基の薬室を持つ怪物が、モニターの向こうで咆哮した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちら”レーゲン2”。ミサイル攻撃は確認できない』

 

『了解。…………くそ、それじゃあさっきのはなんだったんだ?』

 

 編隊を元に戻しながら、吸血鬼たちのパイロットは悪態をつき始めた。

 

 いきなり地上からレーダー照射を受けたため、地対空ミサイルを警戒して回避を始めたのだが、結局ミサイルのようなものはなにも飛来してこなかったのである。敵の本拠地からの熾烈な対空砲火を警戒していたパイロットたちは、全員悪態をつきながら操縦桿を倒し、再び元の編隊へと戻っていく。

 

 未だにコクピットの中ではレーダー照射を受けている事を意味する電子音が鳴り響いている。しかし、もうこの電子音が大騒ぎを始めてから15分以上も経過しているというのに、彼らをロックオンしたミサイルが飛んでくる気配がない。

 

 もちろん、レーダーにもミサイルの反応はなかった。

 

 編隊の先頭を進むF-22のパイロットは、溜息をつきながらもう一度レーダーを確認する。もしミサイルが接近しているのであれば素早く回避しなければならないのだが、やはりレーダーにミサイルの反応はない。機体が故障したのだろうかと思いながら舌打ちをし、空を見上げた彼は――――――――紅い光を纏った流星にも似た何かが地上へと落下してきていることに気付いた。

 

 ミサイルかと思ったが、その紅い光を纏った流星は白煙ではなく炎の残滓と陽炎を置き去りにしながら、編隊の上空へと落下してくる。

 

『レーゲン1より各機へ。上空に流星みたいなのが――――――――』

 

 報告しつつ、先ほどレーダー照射を受けていた原因はあの流星なのだろうかと思った瞬間、航空部隊の頭上へと落下していたその流星にも似た1発の砲弾が、何の前触れもなく弾け飛んだ。

 

 起爆した砲弾が爆炎の塊と化し、搭載されていた無数の小型炸裂弾たちが、一斉に爆炎を纏いながら躍り出る。

 

 200cm砲の砲弾から生れ落ちたのは、これでもかというほど搭載された無数の炸裂弾であった。従来の戦艦の主砲の口径を遥かに上回る大きさの砲弾から解き放たれた無数の炸裂弾の群れは、まるで噴火した火山の下降から躍り出るマグマの飛沫のようにステルス機の編隊へと降り注ぐと――――――――その炸裂弾の一発一発が立て続けに起爆し、星空を爆炎の壁で覆い尽くした。

 

 無数の炸裂弾の内部にも、小型の近接信管が内蔵されていたのである。

 

 立て続けに起爆した炸裂弾の爆炎に呑み込まれた航空部隊は、瞬く間に粉砕されていった。小型の炸裂弾とはいえ、命中すれば戦闘機の主翼やフラップを粉々にするほどの破壊力を秘めていた炸裂弾の爆風と破片が主翼に風穴を開け、キャノピーを貫通して吸血鬼のパイロットたちの肉体を両断してしまう。

 

 片方の主翼を捥ぎ取られて回転を始めたF-22が、そのF-22の編隊の下を飛んでいたF-35Aに激突して木っ端微塵になる。操縦不能になったラファールからパイロットが大慌てで脱出するが、飛来した炸裂弾の爆発に巻き込まれてミンチと化し、戦闘機の残骸と一緒に砂漠へと落下していった。

 

 近接信管によって起爆した数発の炸裂弾がF-35Aの機首をパイロットもろとも捥ぎ取る。辛うじて炸裂弾と爆炎の嵐の中から離脱することができた戦闘機もいたが、主翼のフラップやエンジンノズルを炸裂弾で既に吹き飛ばされ、操縦不能となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「”地対空キャニスター弾”、着弾を確認。敵航空部隊の30%を撃墜!」

 

 オペレーターが報告した瞬間、モニターを見つめていた他のオペレーターたちが歓声を上げた。

 

 仲間たちの歓声を聞きながら、腕を組んでモニターを見つめていたクランも微笑みながら息を吐く。

 

 先ほどタンプル砲の砲口から躍り出ていった砲弾は、タンプル搭へと接近してくる敵の航空隊を迎撃するために開発された”地対空キャニスター弾”である。巨大な200cm砲の砲弾の中にこれでもかというほど小型の炸裂弾を搭載し、敵航空部隊の上空でその砲弾を起爆させ、近接信管を搭載した無数の小型炸裂弾を航空部隊の頭上にばら撒くという恐ろしい砲弾である。

 

 しかもその炸裂弾は1発で主翼に風穴を容易く開けてしまうほどの破壊力があるため、その炸裂弾の雨の中に飛び込めば、航空機が瞬く間に鉄屑と化すのは想像に難くない。

 

 旧日本軍が開発した三式弾を発展させた砲弾である。

 

 さらに、タンプル搭周辺のレーダーサイトさえ無事であれば偵察機を派遣して観測させる必要もないため、超遠距離砲撃の際とは違って偵察機を敵の対空砲火で失う恐れもない。

 

 一度も実戦投入したことがない上に、高速で飛翔するステルス機に効果があるのかは不明であったが、むしろ敵に大損害を与えられたことを知ったクランは、腕を組むのをやめてかぶっていた略帽を取り、敵機の反応が一気に減ったモニターを見つめながらニヤリと笑った。

 

 吸血鬼たちは制空権を確保するために、高性能なステルス機を投入していた。観測のために出撃していたタクヤとステラの報告では、ブレスト要塞に接近した2人を迎撃するために出撃したのは、アメリカ製ステルス戦闘機のF-35AやYF-23であったという。

 

 今しがた地対空キャニスター弾で先制攻撃される羽目になった編隊の中にも、その虎の子のステルス機は含まれていた事だろう。ただでさえ戦力がテンプル騎士団に劣っている吸血鬼たちにとって、虎の子のステルス戦闘機を失うのはかなりの大打撃になる。

 

 しかもその戦闘機の群れを木っ端微塵にしてしまったのは、高性能な地対空ミサイルではなく、時代遅れとしか言いようのない超大型の多薬室砲の”砲弾”だ。

 

「第二射、間に合いそう?」

 

「同志クラン、それは少し難しいですね。向こうは戦闘機ですので、装填中に接近されてしまいます」

 

 タンプル砲は超遠距離の標的を砲撃できるほど長い射程距離を誇る決戦兵器である。発射する砲弾も従来の砲弾を遥かに上回る大きさの砲弾であるため、破壊力も圧倒的としか言いようがない。しかしその砲弾を発射する際に設備が損傷してしまうほどの衝撃波を発するという大きな欠点がある兵器である。

 

 更に、”距離が近過ぎる標的には攻撃できない”という欠点もあるのだ。砲弾の破壊力が大きすぎるため、標的がタンプル搭に接近し過ぎていればその爆風が要塞に牙を剥いてしまうのである。

 

 そのため、接近してきた敵の航空機には他の対空砲やミサイルで応戦するか、航空隊を出撃させて迎撃するしかないのだ。

 

 現時点では敵の航空部隊との距離は離れているものの、次の発射準備を終えて発射した砲弾が着弾する頃には、もう航空隊はタンプル搭に接近している事だろう。航空隊はすでに出撃準備に入っているため、今すぐに出撃させれば接近してくる敵の航空機を迎撃する事が可能だ。

 

「分かったわ。では、タンプル砲にはMOAB弾頭を装填。他の要塞砲にもMOAB弾頭を装填し、敵の地上部隊を砲撃するわ。航空隊と一緒に出撃する偵察機には観測をお願いして」

 

「了解(ダー)!」

 

「第二射、MOAB弾頭! 他の要塞砲にも同じくMOAB弾頭を装填! 装填後は観測データ受信まで待機せよ!」

 

 オペレーターたちの命令を聞きながら、クランは自分の略帽を握り締めた。

 

 先制攻撃は成功した。地対空キャニスター弾で敵の航空機を30%も撃墜できたのだから、こちらの航空隊が有利になるのは想像に難くない。しかも、地上にある最終防衛ラインで待機しているのは士気の高い兵士たちと、虎の子のシャール2Cたちである。

 

 さらに、タクヤが指揮を執る”強襲殲滅兵”たちも最終防衛ラインで待機している。要塞砲や砲兵隊の砲撃が終わり、パンジャンドラムたちが一斉に突撃すれば、強靭な強襲殲滅兵たちも同じように突撃するだろう。

 

 強襲殲滅兵たちの役割は、装備した重火器で敵部隊を蹂躙する事だ。通常の兵士が身につける装備よりもはるかに思い装備を身に纏い、重火器をこれでもかというほど装備した兵士たちが敵部隊へと突撃し、砲撃とパンジャンドラムの突撃で大打撃を受けたばかりの敵を襲撃するのだ。

 

 簡単に言えば、重装備の突撃歩兵のような存在である。

 

 地上部隊と航空部隊は、現時点では有利だ。軍港から出撃した艦隊は敵艦隊の攻撃で損害を受けているものの、まだ奮戦し続けているという。このままモリガン・カンパニーと殲虎公司が参戦するまで持ちこたえてくれれば、敵艦隊を味方の艦隊と共に包囲することができるだろう。

 

「クラン」

 

「どうしたの?」

 

 モリガン・カンパニー艦隊が到着するまでどれくらいかかるか考えていたクランの後ろから声をかけたのは、彼女と同じくシュタージの制服に身を包み、真っ黒な略帽をかぶったケーターだった。前世の世界に住んでいた頃から彼女の恋人だった男であり、異世界に転生した後も彼女と共にデートに行くことも多い。

 

 そういう時の彼の目つきは前世の世界の頃のケーターと変わらないのだが、やはり戦闘中になると目つきが急激に鋭くなっている。

 

「さっき連絡があった。倭国支部からも艦隊を派遣するらしい」

 

「規模はどのくらいなのかしら?」

 

「超弩級戦艦1隻、イージス艦1隻、強襲揚陸艦1隻だけらしい。…………断わっておくか?」

 

 もう少し艦隊の規模が大きければ、クランはすぐに首を縦に振っていた。しかし、いくらモリガン・カンパニーと殲虎公司が参戦する事で海軍も有利になるとはいえ、たった3隻の艦隊を派遣してもすぐに返り討ちにされてしまうだろう。しかも倭国支部はまだ設立されたばかりの支部であり、練度はただでさえ練度の低いテンプル騎士団の中でも最低クラスである。

 

 戦艦やイージス艦を生産するためのコストが高い上に、乗組員たちも必要になるため、転生者が生産できる兵器の中で一番運用し辛いのが艦艇だ。逆に言えば、やっと倭国支部も艦艇を運用できる規模になったことを意味するのだが、練度が低ければすぐに全滅してしまうのは火を見るよりも明らかであった。

 

 だが、このままモリガン・カンパニー艦隊が海域に到着するのを待ち続けていれば、合流前に戦艦ジャック・ド・モレーが撃沈されてしまう恐れがある。艦隊の旗艦が撃沈されてしまえば、テンプル騎士団が大損害を被る羽目になるのは想像に難くない。

 

 しかし、倭国支部艦隊ならばモリガン・カンパニー艦隊よりも先にウィルバー海峡に到着できるだろう。練度が低いとはいえ、敵艦隊の後方から対艦ミサイルで攻撃すれば、敵艦隊を攪乱することはできるかもしれない。それに敵艦隊はテンプル騎士団艦隊の飽和攻撃を迎撃するために無数のミサイルを発射しているため、そろそろ”弾切れ”している筈だ。

 

 それに、河の中にはまだ空母『ノヴゴロド』も待機しており、艦載機を出撃させているという。対艦ミサイルを搭載した艦載機を使って攻撃すれば、ミサイルを使い果たした敵を蹂躙することができるだろう。

 

「―――――――艦隊の派遣を要請して」

 

「了解(ヤヴォール)」

 

 ケーターに指示を出したクランは、握り締めていた自分の軍帽をもう一度かぶると、溜息をついてからもう一度モニターを見つめるのだった。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。