異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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巨大勢力の進軍

 

 モリガン・カンパニーの戦力は、全盛期のソ連軍を上回ると言われている。

 

 世界中に前哨基地や支社を持つ超巨大企業であり、様々な戦闘に兵士たちを派遣しているため、兵士たちの錬度は三大勢力の中でもトップクラスであるという。さすがに2回も勃発した転生者戦争の両方に参加した兵士が何人も所属している殲虎公司(ジェンフーコンスー)よりも兵士たちの錬度は低いものの、彼らと何度も合同演習を繰り返しているため、すでに異世界で最強の勢力であるにもかかわらず、未だに成長を続けている。

 

 そのモリガン・カンパニーの拠点から出撃した大艦隊が、大海原を埋め尽くしていた。

 

 巨大な空母の群れを護衛するために取り囲んでいるのは、漆黒に塗装されたソ連のソヴレメンヌイ級駆逐艦や、ウダロイ級駆逐艦の群れだ。艦橋の両脇に巨大なキャニスターを搭載したソヴレメンヌイ級とウダロイ級は、全ての三大勢力の海軍が採用しているソ連製の駆逐艦だが、さすがにイージスシステムを搭載したアメリカのアーレイ・バーク級には太刀打ちできないため、モリガン・カンパニーでは新しい駆逐艦を採用しながら少しずつ退役させていくことになっている。

 

 つまりこの戦いが、モリガン・カンパニーに所属する駆逐艦たちにとっては”最後の戦い”になるのだ。

 

 彼らと共に航行するのは、船体の両脇にずらりとキャニスターを搭載したスラヴァ級駆逐艦や、無数のミサイルを搭載したキーロフ級巡洋艦である。キーロフ級は本来ならば原子炉を搭載しているのだが、転生者の能力では原子炉や核兵器を生産することができないため、性能が低下する代わりに通常の機関部に変更して運用するのが当たり前であった。

 

 しかし、モリガン・カンパニーで運用されているキーロフ級たちに搭載されているのは、通常の機関部ではなく、殲虎公司(ジェンフーコンスー)が開発した原子炉である。

 

 殲虎公司(ジェンフーコンスー)の規模はモリガン・カンパニーよりもかなり小さいものの、彼らのメンバーの中には核兵器や原子炉を開発できる技術者たちが数多く所属しているため、そういった原子炉の開発はお手の物なのだ。もちろん同盟関係にあるモリガン・カンパニーにも殲虎公司(ジェンフーコンスー)製の原子炉や核弾頭が輸出されており、モリガン・カンパニー艦隊のキーロフ級や原子力潜水艦に搭載されている。

 

 通常の機関部ではなく、原子炉を搭載した”本来の”キーロフ級の数は30隻。彼らを護衛するソヴレメンヌイ級の数は、なんと2000隻を超えている。彼らが搭載したミサイルを一斉に解き放てば、いくらイージス艦でも迎撃しきれないほどの飽和攻撃が始まるだろう。

 

 しかし、あくまでもその大艦隊の主役は――――――――陣形の中心部を航行する、合計で30隻の大型空母たちであった。

 

 30隻のうちの20隻は、三大勢力でも艦隊の旗艦として運用されているアドミラル・クズネツォフ級空母である。

 

 しかし、残りの10隻は――――――――アドミラル・クズネツォフ級よりも更に巨大であり、より多くの艦載機を搭載する事が可能な、ソ連が建造した『ウリヤノフスク級』と呼ばれる”原子力空母”であった。

 

 スキージャンプ甲板とスチーム・カタパルトを併せ持つ空母だが、完成する前に建造が中止されてしまったため、一度も航海を経験したことがない。そのためテンプル騎士団艦隊旗艦の24号計画艦(ジャック・ド・モレー)と同じく、”生れ落ちることのなかった艦”と言える。

 

 モリガン・カンパニーではそのウリヤノフスク級原子力空母を10隻も運用しており、すでに転生者の討伐のために何度か実戦投入をしている。

 

 無数の駆逐艦と空母を運用しているものの、現時点では戦艦は1隻も運用していないため、三大勢力の中で超弩級戦艦を運用し続けているのはテンプル騎士団のみという事になっている。モリガン・カンパニーの物量ならば、圧倒的な数の航空隊で強引に制空権を確保し、そのまま自由に空爆できるため、艦砲射撃が無用の長物となったためである。ヴリシアの戦いに参加した超弩級戦艦たちと、このウリヤノフスク級たちがバトンタッチしたのだ。

 

 2000隻以上の大艦隊の中心を航行するのは、モリガン・カンパニー艦隊旗艦『ウリヤノフスク』である。ウリヤノフスク級の一番艦であり、建造されてからすぐに改修を受けている。艦首側の左右にスポンソンを増設し、それの上にコールチクを1基ずつと、連装型の速射砲であるAK-130を2基ずつ搭載しているため、航空機やミサイルが接近してきても単独で迎撃する事が可能となっていた。

 

 他の同型艦にも、同じ装備が追加されている。

 

 甲板の上を埋め尽くしている艦載機を見下ろしながら、リキヤは乗組員から渡されたティーカップを口元へと運んだ。

 

 ウィルバー海峡に到着したら、対艦ミサイルをこれでもかというほど搭載された航空隊が全ての空母から一斉に発艦することになっている。あと3時間後には殲虎公司(ジェンフーコンスー)の主力艦隊と合流することになるため、凄まじい数の艦載機が敵艦隊に襲い掛かることになるだろう。

 

 2000隻を超える艦隊からの対艦ミサイル攻撃と、出撃した無数の艦載機による対艦ミサイルの群れが、敵艦隊に牙を剥くのである。過激派の吸血鬼たちの艦隊は超弩級戦艦4隻、イージス艦10隻、重巡洋艦2隻、空母2隻のみであるという。いくらイージス艦がいるとはいえ、この大艦隊の飽和攻撃を防ぎ切れるわけがなかった。

 

 吸血鬼たちは、モリガン・カンパニーにこれほどの大艦隊を出撃させてしまうほど、彼らを激怒させた。

 

 何の罪もないオルトバルカ人たちが乗っていた豪華客船『グランバルカ号』を、輸送船と誤認して撃沈してしまったのだから。

 

 犠牲者の大半は貴族であったものの、一部の犠牲者の中にはモリガン・カンパニーの社員や家族も含まれていた。この戦いに参加した兵士たちの中にも、その事件で愛娘や妻を失った兵士たちが何人もいるのである。

 

 事件が勃発した直後に、リキヤを疎ましく思っている貴族たちが「グランバルカ号を撃沈したのはあの”魔王”である」と言い出したが、実際に撃沈していない上に、王室と太いパイプを持っていたリキヤがその嘘の情報で処分を受けるわけがなかった。

 

 あっさりとその貴族たちを黙らせてから、犠牲者たちの弔い合戦のために、この大艦隊を出撃させたのである。

 

(ヴリシアであいつらを殲滅しなかったのが間違いかもしれないな…………)

 

 そう思いながら、彼は溜息をついた。ヴリシアの戦いで吸血鬼たちに大打撃を与えることに成功したものの、完全に”殲滅”することはできなかったのである。そのため生き残った吸血鬼たちの憎悪は更に肥大化し、この攻撃を誘発してしまったのだ。

 

「同志、ハーレム・ヘルファイターズがエイナ・ドルレアンから出撃しました」

 

 艦橋に上がってきた乗組員の報告を聞いたリキヤは、頷きながらティーカップを近くの小さなテーブルの上に置いた。

 

 ギュンターが率いるハーレム・ヘルファイターズと、ドルレアン家の私兵たちもこの戦闘に参加する予定となっている。大半の地上部隊は艦隊の後方を航行する強襲揚陸艦に乗っているが、彼らは強襲揚陸艦ではなく大型の輸送機で現地へと向かうことになっているため、到着するのは主力艦隊よりも早くなる予定であった。

 

 ヴリシアの戦いで、ハーレム・ヘルファイターズは極めて大きな戦果をあげている。元は奴隷だった屈強なハーフエルフやオークのみで構成された歩兵部隊であり、ヴリシアで勃発した第二次転生者戦争では敵の塹壕をいくつも陥落させていた。

 

 しかも、5.56mm弾が被弾したにもかかわらず、屈強なオークやハーフエルフの兵士たちはそのまま雄叫びを上げながら突っ込んで行ったという。アサルトライフルを装備した兵士たちが弾幕を張っても、彼らを止めることはできなかったのである。

 

「彼らが突っ込んでくるのを見たら、吸血鬼たちは震え上がるだろうな」

 

「全くです」

 

 もちろん、リキヤや妻のエミリアたちも最前線で戦う予定である。

 

 彼らの到着前に吸血鬼たちがタンプル搭へと総攻撃を始める可能性があったが、タクヤたちがその総攻撃を防いでくれれば、テンプル騎士団と合流して吸血鬼たちを根絶やしにすることができるだろう。

 

(持ちこたえてくれよ…………。お前たちを本当の父親に会わせてやるのが、”私”の役割なのだからな)

 

 リキヤ(ガルゴニス)の目的は、メサイアの天秤を使って本物のリキヤ・ハヤカワを蘇生させる事。たった6年間しか子供たちと過ごせなかった哀れな男を家族と再会させるために、天秤を欲している。

 

 彼に会わせるための家族が戦死したら、あの世にいるリキヤが悲しむ羽目になるだろう。

 

 艦橋の中で祈りながら、彼は海を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、タクヤ」

 

「よう。差し入れ持ってきたよ」

 

 医務室のベッドの上で、ラウラは前に俺が持って行ったラノベを読んでいるようだった。右手だけで読んでいたラノベを一旦枕元に置いた彼女は、ニコニコと笑いながら俺を出迎えてくれる。

 

 手作りのクッキーが入った籠を彼女の枕元にある小さなテーブルの上に置き、近くの椅子を引っ張ってから腰を下ろす。

 

 もしかしたら落ち込んでるんじゃないだろうかと思ったから、励ます練習をしてきたんだけど、多分練習したことが日の目を見ることはないだろう。最愛のお姉ちゃんは予想以上に元気だったのだから。

 

 とはいえ、さすがに利き手ではない方の腕だけで生活しなければならないのは大変だろう。ラノベを読むためにページを捲るのにも苦労しているに違いない。もう既に義手と義足の手配はしたから、移植とリハビリはこの戦いが終わってからになる筈だ。

 

 籠の中からクッキーを1枚手に取り、彼女の口元へと運ぶ。さっき部屋で作ってきたばかりだから、まだクッキーは熱を纏っていた。

 

「いただきまーすっ♪」

 

 美味しそうにクッキーを食べるラウラの頭を撫でながら、俺は安心した。

 

 少なくとも義手と義足のリハビリが終わるまで、彼女を最前線に派遣せずに済む。おそらく今日の夜には、吸血鬼たちは最後の総攻撃を始めるだろう。ブレスト要塞を陥落させた切り札を失ったとはいえ、要塞への攻撃よりも更に激しい攻撃になるのは想像に難くない。

 

 昨日の夜に、モリガン・カンパニーと殲虎公司(ジェンフーコンスー)が吸血鬼たちに宣戦布告をしたのだ。

 

 おそらく吸血鬼たちは、三大勢力の中で最も規模が小さく、兵士たちの錬度も低いテンプル騎士団に狙いを絞ったのだろう。そうすればヴリシアの敗残兵で構成された彼らでも勝ち目があるし、勝利すれば天秤の鍵を3つとも奪うことができるのだから。

 

 しかし、動く筈のなかった二大勢力が一斉に宣戦布告をしたため、吸血鬼たちは不利になってしまった。

 

 モリガン・カンパニーと殲虎公司(ジェンフーコンスー)の大部隊がカルガニスタンに到着する前に、テンプル騎士団を壊滅させて鍵を奪わなければならなくなったからだ。次の攻撃では、吸血鬼たちは死に物狂いで総攻撃を仕掛けてくるに違いない。

 

 なんとしても、最終防衛ラインで吸血鬼たちを迎え撃たなければならない。

 

 タンプル搭には負傷兵や兵士たちの家族もいるのだから。

 

「えへへっ、やっぱりタクヤはお料理が上手だね♪」

 

「ラウラだって上手じゃないか。俺はラウラの料理が一番大好きかな」

 

 そう言いながら頭を撫でると、ラウラの顔が少しだけ赤くなった。いつもなら微笑みながら喜んでくれる筈なんだけど、ラウラが照れるのは珍しいんじゃないだろうか。

 

「…………じゃ、じゃあ、リハビリが終わったらいっぱい作ってあげるね」

 

「うん、楽しみにしてる。…………それじゃ、俺は指令室に戻るよ」

 

 そろそろ指令室に戻って、作戦会議をしなければならない。

 

 吸血鬼が総攻撃を仕掛けるのは間違いなく今夜だからだ。日光という弱点が存在しないのは夜だけだから、彼らが日光に邪魔されずに自由に進軍できる時間なのである。しかもモリガン・カンパニーと殲虎公司(ジェンフーコンスー)の大部隊が接近しているため、彼らが到着する前に攻撃できるタイミングは今夜だけなのだ。

 

 明日になれば、大部隊が砂漠を埋め尽くすことになるのだから。

 

 ラウラを抱きしめてから、静かに頬にキスをする。そっと手を離して椅子から立ち上がろうとすると、黒いコートの袖に、ラウラの柔らかい尻尾が絡みついてきた。

 

「ラウラ?」

 

「…………死なないでね、タクヤ」

 

 俺は彼女が戦死してしまうのが心配だったからこそ、彼女を”退役”させようと思っていた。

 

 けれども――――――――ラウラも、俺を心配してくれていたのだ。

 

 いつも隣にいた腹違いの姉弟が、いなくなるのが怖かったんだろうか。

 

「…………」

 

 俺には、無茶をしてしまう悪癖がある。親父も同じ悪癖を持っていたらしく、いつも母さんを心配させてしまっていたという。

 

 父親と同じように、姉を心配させてしまっていたのだ。

 

「ああ」

 

 踵を返し、ベッドの近くでしゃがむ。ベッドの上に横になっていたラウラの顔を見上げながら微笑み、彼女の右手をぎゅっと握る。

 

 彼女の手足を奪った忌々しいメイドには復讐をした。あとはあの吸血鬼共を返り討ちにして彼女のリハビリに付き合えば、俺たちはまたいつも通りの生活ができるようになるだろう。仲間と一緒に天秤を見つけて、それを消し去ってからこの世界を守り続けるのだ。

 

 二十歳になったら結婚して、子育てもしなければならない。老衰で死ぬまでは彼女の隣にいるつもりだ。

 

 ラウラの事を、愛しているのだから。

 

 そっと左手を伸ばして、彼女の目に浮かんでいた涙を拭い去る。涙目になっていたラウラの瞳を見つめてから立ち上がり、もう一度彼女の頭を撫でた。

 

「俺が死んだら、可愛いラウラと結婚できなくなっちまうからな」

 

「ふふっ…………私もタクヤと結婚できないのは嫌だよ」

 

「大丈夫だよ、ちゃんと生きて帰る。約束しよう」

 

「うんっ」

 

 大丈夫だよ、ラウラ。俺は絶対に生きて帰る。

 

 彼女の頭を撫でてから手を離し、今度こそ踵を返す。彼女の甘い香りとクッキーのバターの香りが段々と薄れていくにつれて、火薬と血の臭いが強烈になっていく。

 

 何度も戦闘を経験したから、俺は理解していた。この血と火薬の臭いが混ざり合った強烈な臭いが、”戦場の臭い”なのだと。

 

 治療魔術師(ヒーラー)に「お姉ちゃんをよろしくお願いします」と言ってから、医務室を後にした。

 

 医務室のドアを閉めた瞬間、その”戦場の臭い”が身体を包み込む。太いパイプが剥き出しになった通路の中を、ボディアーマーを身につけてAK-12を装備した兵士たちが走っていく。おそらく彼らもこれから最終防衛ラインへと向かうのだろう。

 

 吸血鬼たちが死に物狂いで攻撃してくるのであれば、こっちは死に物狂いで食い止めるしかないのだ。

 

 父親と思われる人間の兵士が、娘と妻に別れを告げてからエレベーターへと走っていく。その別の部屋の入り口では恋人と思われるエルフの女性に自分のペンダントを託し、踵を返して戦場へと向かうエルフの兵士もいた。

 

 俺もついさっき、誓ったのだ。絶対に生きて帰ってくると。

 

 同じように、何人もの兵士たちが家族や恋人に誓っている。

 

 ならば俺も、彼らを死なせないように戦うしかない。

 

 すれ違っていく兵士たちに敬礼しながら、指令室へと向かう。エレベーターに乗って別の階へと移動し、警備をしている警備班の兵士たちに敬礼をしてから指令室の扉を開けると、巨大なモニターの前にシュタージのメンバーやナタリアたちが集まっていた。

 

「すまん、遅くなった」

 

「大丈夫よ」

 

 ナタリアに謝ってから、俺もモニターの前に立つ。大きなモニターには構築が終わった最終防衛ラインの様子が映し出されていて、12両のシャール2Cや虎の子のチョールヌイ・オリョールたちがずらりと整列しているところだった。

 

 他の前哨基地から合流した戦車部隊も並んでおり、砲口を吸血鬼たちの橋頭保と化したブレスト要塞方面へと向けている。

 

「戦力差は7対1よ」

 

「もちろん、こっちが7なんだろうな?」

 

「当たり前よ」

 

 敵はこのタンプル搭を攻撃するための切り札を2つも失っているが、だからと言って簡単に勝てる相手と化したわけではない。むしろ逆に、彼らの執念が剥き出しになったため、恐ろしい敵と化しているに違いない。

 

 それに、吸血鬼たちの切り札である”突撃歩兵”にはほとんど損害が出ていないのだ。このタンプル搭攻撃でも、突撃歩兵を投入して浸透戦術を使ってくる可能性が高いだろう。

 

 生存者の話では、ブレスト要塞への攻撃ではマスタードガスも投入されていたという。そのため全ての兵士には防護服とガスマスクを支給している。戦闘が始まれば居住区へと繋がる通路の隔壁はすべて閉鎖する予定であるため、もしタンプル搭に毒ガスが流れ込んでも、居住区にマスタードガスが達することはないだろう。

 

 まずは、突撃歩兵を撃破しなければならない。

 

「…………ナタリア、悪いが以前に選抜した兵士たちを集めてもらえるか?」

 

「あの兵士たちを投入するの?」

 

「ああ」

 

 以前に、テンプル騎士団に所属する陸軍の兵士たちの中から、屈強な身体を持つ兵士たちを50名ほど選抜しておいたのだ。その50名のうちの1人はもちろん俺である。

 

 この異世界には、前世の世界に住んでいる人間よりもはるかに強靭な身体を持つ種族が住んでいる。特にハーフエルフやオークの身体は強靭であり、予備の弾薬やボディアーマーを装備した状態で、重機関銃を抱えたままアサルトライフルを手にした兵士のように動き回ることができるほどだという。

 

 そこで、重装備でも身軽な動きを維持できる兵士たちを選抜し、敵に大打撃を与えるための精鋭部隊を編成することにしたのだ。

 

 まだ数回しか訓練していないが、トレーニングモードで実施した訓練では、たった50名の兵士たちだけで進撃してきた戦車部隊を食い止めるどころか、逆に敵陣まで押し返すことに成功している。更に塹壕の突破を想定して実施した訓練では、塹壕を突破するどころかその後方にある敵の拠点まで進撃し、敵部隊を壊滅させてしまっていた。

 

 実戦経験はないものの、この戦いでも猛威を振るうのは想像に難くない。

 

「―――――――”強襲殲滅兵”を、この戦いに投入する」

 

 

 

 第十六章 完

 

 第十七章『ブラスベルグ攻勢』へ続く

 

 




このまま反撃開始まで書いたらとんでもなく長くなってしまうので、今回の春季攻勢は2つの章に分けることにしました。
次の章からは本格的な反撃が始まりますので、お楽しみに!

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