異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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灰色の大地と大きな戦果

 

『観測データ、現在50%…………ッ!』

 

「くそったれッ!」

 

 急旋回で地対空ミサイルを必死に回避しながら、ユージーンは悪態をつく。急旋回をするために胴体の下部に搭載されたポッドを砲撃目標であるラーテへと向けられなくなるため、回避する度に観測データの送信を一時的に中断せざるを得なくなる。だからと言って回避しないまま飛んでいればミサイルに吹っ飛ばされる羽目になるため、必死に回避するしかない。

 

 自分たちが撃墜されてしまったら、敵の頭上で観測データを送信するという危険な仕事を、一緒に出撃したタクヤたちに押し付ける羽目になってしまうのだから。

 

 それに、ヴリシアで戦友や肉親を失ったユージーンとエドワードにとっては、この戦闘は弔い合戦でもあった。吸血鬼の兵士たちに殺されていった仲間たちを弔うために、眼下の砂漠を進撃するラーテを絶対に撃破しなければならない。

 

 そのために、是が非でもこの観測データを送信する必要があった。

 

 圧倒的な射程距離を誇るタンプル砲の命中精度は、送信されてくる観測データに左右される。この異世界に人工衛星が存在しない上に、人工衛星を運用するための技術を持つ人員も存在しないため、誘導砲弾などのミサイルを使用する際には観測データ送信用の特殊なポッドを搭載した偵察機が目標を観測しつつ誘導する必要があるのだ。

 

 つまり、特殊なポッドを搭載した航空機が人工衛星の代わりを務めている状態なのである。

 

 80cm列車砲(カイザー・レリエル砲)の破壊に使用されたMOAB弾頭や、スオミ支部の切り札である”スオミの槍”の砲弾も、命中精度を少しでも高めるために誘導砲弾を採用している。

 

『データ送信再開――――――――くそ、またミサイルだ! 6時の方向から中距離空対空ミサイルが3発!』

 

「くそ、また敵機か!!」

 

 観測を続けるためにポッドをラーテへと向けた瞬間に、また別の敵からミサイルで狙われてしまうため、なかなか観測データの送信が進まない。平常心を蝕もうとする焦燥を引き剥がしつつ、操縦桿を横に倒して再び急旋回。フレアを放出しつつ旋回し、ミサイルを必死に回避する。

 

 操縦桿を元に戻した直後、ユージーンとエドワードを仕留め損ねた2機の灰色のラファールたちが、機体を加速させながらすぐ近くを通過していった。

 

 もし仮にラーテからの対空砲火だけだったのであれば、とっくに観測データは最低限の60%に達していた筈である。しかし、CIWSや地対空ミサイルの弾幕だけではなく、ブレスト要塞から飛び立った合計で6機のラファールたちによるミサイル攻撃は、列車砲の観測へと向かったタクヤたちが味わった猛烈な弾幕に匹敵するほど濃密な障壁と言っても過言ではない。

 

 観測データの送信を続けるために、胴体下部のポッドに搭載された目玉にも似た球体状のセンサーをラーテへと向けながら飛ぶ。センサーがまるでラーテを見つめるかのように自動的に旋回したかと思うと、そのラーテの位置などの情報を凄まじい勢いでタンプル搭へと送信し始める。

 

『観測データ送信再開…………ッ! 頼むぞ、ユージーン!』

 

「分かってる!」

 

『こちらタンプル搭管制室。徹甲弾装填完了』

 

『了解! …………現在、63%! 頼んだぞ!』

 

『―――――――了解(ダー)、砲撃要請を受諾した。これより秒読みに入る。引き続き観測データの送信を頼む』

 

「分かった!」

 

 列車砲への砲撃に使用されたのは圧倒的な破壊力を持つMOAB弾頭だが、今度の砲撃に使用されるのは200cm徹甲弾。命中すれば分厚い装甲や防壁を容易く突き破り、地下にある敵の設備を木っ端微塵に粉砕してしまうほどの貫通力と破壊力を兼ね備えた恐るべき砲弾である。

 

 もちろん、分厚い超弩級戦艦も一撃で轟沈できるほどの破壊力があるが、MOAB弾頭のような大爆発を起こす砲弾ではない。そのため、不十分な観測データや誘導では命中しない。

 

 戦車砲を防ぐことが可能なほど分厚いラーテに徹甲弾をお見舞いするためには、あの対空砲火を躱しながら更に観測と誘導を続けなければならないのである。

 

10(ツェーン)(ノイン)(アハト)(ズィーベン)(ゼクス)(フュンフ)(フィーア)(ドライ)(ツヴァイ)(アインス)――――――発射(フォイア)』

 

『砲身の冷却を開始。冷却液、注入』

 

『各薬室第三層炸薬、起爆位置へ』

 

『次弾装填急げ』

 

『各所の被害報告を急げ!』

 

 無線機の向こうから、管制室の中にいるオペレーターたちの声が聞こえてくる。無事にタンプル砲から200cm徹甲弾が発射され、砲身の冷却が始まったらしい。

 

 タンプル砲の薬室の中には、5発分の炸薬が内蔵されている。1発発射する度に炸薬を1層ずつ消費していくというわけだ。つまり、5発までならば薬室内部の炸薬を起爆位置へと移動させ、砲身を冷却しつつ砲弾を装填するだけで連続砲撃が可能なのである。

 

 逆に言えば、5発砲撃してしまえば32基の薬室を全て取り外し、炸薬が内蔵された予備の薬室をクレーンで取り付ける必要があるため、実質的に5発発射してしまえば弾切れに等しいのだ。

 

 まだ3発も砲撃が可能だが、次の砲弾の装填が完了し、2人が命懸けで送信し続けた観測データをもとに照準を合わせた砲手たちが次の砲弾を解き放つまで、回避を続けるのは至難の業と言えた。ただ単に回避するだけならば容易いが、可能な限り機体の下に搭載されたポッドをラーテに向けるようにしながら、超重戦車に搭載された地対空ミサイルと、ラーテを護衛する6機のラファールから逃げ回らなければならないのである。

 

 重りを身につけたまま、7人の鬼と鬼ごっこをするようなものであった。

 

『観測データ、70%を突破!』

 

「よし、このまま続けるぞ…………ッ!」

 

『…………またレーダー照射! 今度は7時方向と2時方向!』

 

「くっ…………!」

 

 先ほどラ・ピュセル2を仕留め損ねた2機のラファールと、その反対側から回り込んだ4機のラファールたちによる挟撃であった。ミサイルは高速で飛び回る戦闘機に喰らい付くことができるほどの機動性と加速力を誇る現代戦の主役である。1つの方向からのミサイル攻撃ならば急旋回で躱せるかもしれないが、複数の方向からのミサイルを急旋回や急加速のみで回避するのは困難だ。

 

 躊躇わずにフレアをばら撒きつつ、ユージーンは急旋回を開始する。左へと操縦桿を倒しつつ高度を落とし、灰色の大地へと向かって突進する。置き去りにされたフレアの群れへと向かってミサイルが飛んで行ったのを確認したユージーンは、息を吐きながら操縦桿を元の位置に戻そうとした。

 

 キャノピーの左側で、灰色の大地を進んでいたラーテの巨大な砲塔がゆっくりと旋回を始める。突き出た2本の巨大な砲身が段々と上を向き始めたのを目にしたユージーンは、我が目を疑いながらラーテの巨大な砲塔を見下ろす。

 

 対空砲火や地対空ミサイルでなかなかPAK-FAを撃墜できないため、あのラーテを指揮する車長が痺れを切らしたのかもしれない。ラーテに搭載された28cm連装砲を発射するつもりだという事を理解したユージーンは、操縦桿を倒しながら肩をすくめた。

 

 戦闘機を落とすための武装はミサイルや機関砲などだ。もちろん砲弾が無用の長物というわけではないが、戦闘機を撃墜できるような代物は、イージス艦や駆逐艦の主砲に採用されているような速射砲である。

 

 ラーテが搭載している主砲は敵の戦車や要塞を砲撃する際には重宝するだろうが、戦闘機に対しては無用の長物としか言いようがない。しかも、彼らが狙おうとしているのはロシアで開発された最新型のステルス戦闘機。圧倒的な機動力を誇る最新の戦闘機を、要塞や戦車を砲撃するための鈍重な主砲で撃墜できるわけがない。

 

 無視していいだろうと思ったユージーンは、そのまま高度を上げつつセンサーをラーテへと向け、観測データの送信を続けようとした。

 

『嘘だろ? 戦闘機にあんなでっかい主砲を?』

 

「当たるわけがないだろ。あいつら、バカなんじゃないか?」

 

 ニヤリと笑いながら旋回しようとした直後、ラーテの主砲が火を噴いた。

 

 テンプル騎士団で採用されている戦車砲を遥かに上回る猛烈な爆風と衝撃波が、砲口の真下にある砂たちを舞い上げる。シャルンホルスト級戦艦の主砲を改造したラーテの主砲の破壊力は圧倒的と言えるが、戦闘機を撃墜するのであれば、搭載されているミサイルやCIWSで弾幕を張った方がまだ撃墜できる可能性は高かっただろう。その”高い可能性”をかなぐり捨ててまで、対空兵器としては無用の長物と言える主砲での砲撃を行った理由を全く理解できなかったユージーンは、炎を纏いながら飛翔するラーテの砲弾を目にした瞬間、目を見開く羽目になる。

 

 確かに、巨大な主砲の砲弾は対空兵器としては無用の長物だ。圧倒的な機動性で飛び回る航空機に砲弾を直撃させるのは不可能と言える。

 

 しかし、旧日本軍が開発した砲弾の中に――――――――航空機を撃墜するための特殊な砲弾があった。

 

 ユージーンとエドワードは、その砲弾を知らなかった。

 

 旧日本軍が開発した、『三式弾』と呼ばれる砲弾を。

 

 PAK-FAへと放たれた砲弾が、PAK-FAに命中するよりも先に爆発する。近接信管によって起爆した砲弾の爆炎と衝撃波がすぐ近くで膨れ上がったが、すぐ近くとはいえ、その爆風と衝撃波で撃墜されるような距離ではなかった。灼熱の爆炎が装甲を照らし、凄まじい衝撃波の残滓が装甲の表面を駆け抜けていくだけである。

 

(炸裂弾…………!?)

 

 被害はなかったとはいえ、すぐ近くで爆発した砲弾の残滓を見つめながらヒヤリとするユージーン。しかし、もう既に生れ落ちた無数の矛の群れが、爆炎を突き破り、PAK-FAに牙を剥こうとしていた。

 

 ガツン、と何かが装甲の表面に突き刺さったような音がしたことに2人が気付いた頃には、無数の金属音がコクピットの外を包み込み、解き放たれた無数の小さな炎を纏った金属の塊たちが、PAK-FAの装甲に風穴を穿っていた。尾翼に風穴が開き、右側の垂直尾翼の先端部が削り取られる。左側のエンジンノズルが小型の弾丸に殴打されたことによってひしゃげ、弾丸が掠めたせいで主翼のフラップが歪む。

 

 反射的に操縦桿を倒して回避しようとしたユージーンの鼓膜に、凄まじい金属音の中で、ビキッ、とガラスに亀裂が入るような音と、後部座席に座っている相棒(エドワード)の呻き声が流れ込んだ気がした。

 

「エドワードッ!」

 

 操縦桿を握ったまま、後ろを振り向く。

 

 キャノピーの向こうに、ボロボロになった主翼が見えた。錆び付いてしまった薄い鉄板のように穴だらけになってしまった主翼と、手で引っ張るだけでぽろりと外れてしまいそうなズタズタのフラップ。上半分が抉り取られた垂直尾翼の手前に、小さな風穴と亀裂が刻み込まれたキャノピーが見える。

 

 そしてそのキャノピーの反対側が、真っ赤な飛沫で染め上げられていた。

 

「おい、エドワード!」

 

『…………わ、悪い………相棒、先に…………ジェイ……コブ………の………ところに………逝く…………よ…………』

 

「エドワード…………?」

 

 無線機から聞こえてくるのは、いつも後部座席でサポートしてくれる相棒の弱々しい声。冷静に目標を観測しつつアドバイスしてくれるエドワードとは思えない。

 

『観測………デー……タ………100……%…………。頼んだ…………相………棒…………』

 

「―――――――バカ野郎」

 

 操縦桿を握り締めながら、唇を思い切り噛み締める。

 

 目の周囲を占領する涙を拭い去るよりも先に、機体の状況を素早く確認。先ほどの三式弾に被弾してしまったせいでフラップや垂直尾翼が台無しになり、主翼も蜂の巣と化してしまっている。しかし、三式弾から飛び出した無数の弾丸たちは思ったよりも命中していなかったらしく、PAK-FAは未だにドッグファイトができるだけの機動性を維持していたのである。

 

 たった1人のパイロットが乗るコクピットの中に、電子音が鳴り響く。

 

 レーダー照射を受けている事を意味する電子音だったが、小さな風穴から凄まじい勢いで入り込んでくる空気の音のせいで、まるで今しがた後部座席で命を落としたエドワードの呻き声のようにも聞こえた。

 

「団長に…………死ぬなって言われただろうがぁッ!!」

 

 操縦桿を右へと倒しつつ減速し、残っていたフレアを全て発射。血涙にも似た赤いフレアたちが、大空の中で輝き続ける。

 

 ミサイルがそのフレアの方へと飛んで行ったのを確認しつつ、そのミサイルを放ったラファールをロックオン。ミサイルを発射するために発射スイッチへと手を伸ばすが、目の前のモニターに『エラー』と表示されていることに気付いた彼は、舌打ちをしながら機関砲の発射スイッチを押した。

 

 先ほどの被弾でウェポン・ベイが歪み、ミサイルが発射できなくなってしまったのである。

 

「―――――――うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 立て続けにコクピットに30mm弾が牙を剥く。大口径の砲弾がキャノピーを叩き割り、中に座っていたパイロットの肉体を瞬く間に木っ端微塵にすると、そのままエアインテークの後部に大穴を穿つ。その大穴から小さな火柱が吹き上がったと思った頃には、右側の主翼を捥がれたラファールがぐるぐると回転を始め、大地へと向かって落ちていった。

 

『こちらタンプル搭管制室。着弾まであと70秒』

 

『こちらラ・ピュセル1。無事か?』

 

「ああ、同志…………大丈夫ですよ、こっちは」

 

 減速しつつ、操縦桿を思い切り手前に引いて機首を天空へと向ける。背後に回り込んでいたラファールが大慌てで回避し、PAK-FAの目の前に躍り出て”しまった”タイミングで機首を下げる。すぐさま機体を加速させつつ、回避しようとするラファールのエンジンノズルにレティクルを合わせ、機関砲の発射スイッチを押す。

 

 30mm弾が2基のエンジン音を吹き飛ばし、大きな主翼に風穴を開ける。ユージーンは火達磨になったラファールを回避して次の標的へと機首を向けながら、一瞬だけ唇を噛み締めた。

 

「―――――――”俺たち”が終わらせます」

 

『了解した。こっちも急いで向かう』

 

 返事をするよりも先に、またしても電子音が響き渡る。

 

 地上に鎮座するラーテが、巨大な砲身をPAK-FAへと向けたまま、地対空ミサイルを一気に6発も発射したのだ。車体に搭載されたミサイルのキャニスターから、純白の矛が立て続けに躍り出る。あれでラーテは対空ミサイルを使い果たしただろうが、それよりも先にユージーンはフレアを使い果たしている。6発も発射されたミサイルを、全て回避しなければならない。

 

(エドワード…………悪い、俺もすぐにそっちに逝きそうだ)

 

 加速しつつ高度を上げ、操縦桿を左側へと倒す。ぐるりと回転した機体をそのまま旋回させ、ミサイルを回避するために飛び回る。

 

 ひしゃげたエンジンノズルが炎を吐き出し、満身創痍のPAK-FAが飛翔する。ボロボロの主翼から歪んだフラップが零れ落ち、ウェポン・ベイのカバーが剥がれ落ちる。墜落してしまうほどの損傷だったが、大空の中で足掻き続ける機体の下部にぶら下がったポッドのセンサーは、じっと眼下のラーテを見下ろしていた。

 

『着弾まで30秒』

 

 数発のミサイルがボロボロのPAK-FAを掠める。近接信管によって起爆したミサイルの爆風と破片が、満身創痍のステルス機に容赦なく突き刺さっていく。

 

 抉られた垂直尾翼が更に歪み、ミサイルの破片がキャノピーを貫く。キャノピーを貫通したその小さな破片は、満身創痍の機体を操っていたユージーンの胸板を貫いた。

 

 パイロットスーツが真っ赤に染まっていき、酸素マスクの隙間から吐き出した鮮血が流れ落ちる。左上から右斜め下へと貫通した破片をちらりと見つめてから、ユージーンは空を見上げた。

 

 ヴリシアで戦死した戦友たちの元へと、そろそろ行かなければならない。

 

 天空からゆっくりと落ちてくる黒い塊に気付いたユージーンは、息を吐きながら微笑んだ。

 

 ―――――――仲間たちの所へ逝く前に、立派な戦果をあげられるのだから。

 

『着弾まで10秒』

 

 天空から落下してくる漆黒の砲弾が、ついに忌々しいラーテの装甲を貫くのだ。

 

『5、4、3、2、1…………弾着、今!』

 

 無線機の向こうでオペレーターが告げると同時に――――――――シャルンホルスト級の主砲を改造したラーテの砲塔に、巨大な穴が開いた。

 

 落下してきた200cm徹甲弾を受け止める羽目になった分厚い装甲が、運動エネルギーと貫通力に耐えきれずにへこむ。そのままへこんだ部分が風穴と化した瞬間には、キャノピーに穿たれた小さな風穴の向こうから、分厚い装甲がひしゃげる轟音が聞こえてきた。

 

 砲塔の内部にあった自動装填装置をあっという間に乗組員もろとも押し潰した徹甲弾が、そのまま車体の内部を貫通していく。ついにラーテの巨大な車体の”床”に大穴を開けた徹甲弾は、先端部が大地に触れると同時に起爆し、今しがた自分が開けた巨大な風穴を火柱で蹂躙する。

 

 流れ込んできた火柱が吸血鬼の乗組員たちを包み込み、すぐに焼き尽くしてしまう。自動装填装置の周囲に置かれていた砲弾や、もう既に砲身に装填されていた砲弾も立て続けに誘爆を起こしたかと思うと、砲身の根元で誘爆した砲弾が、ラーテの巨大な砲身を叩き折った。

 

 金属音を奏でながら、2本の砲身が崩壊していく。

 

「やっ……た…………」

 

『こちらタンプル搭管制室。ラ・ピュセル2、砲弾は? ラーテは撃破したのか?』

 

 操縦桿から手を離したユージーンは、そっと両手を大空へと向けた。

 

「みん……な…………………勝った………ぞ………………」

 

 戦死していった仲間たちも、喜んでくれるに違いない。

 

 ボロボロになった1機のPAK-FAが、ゆっくりと落ちていく。

 

 タンプル砲の砲撃で撃破されたラーテの敵討ちと言わんばかりにラファールたちが機関砲を放ったが、1発も命中はしなかった。

 

 2人の力尽きたパイロットを乗せたPAK-FAは、そのまま砂塵の舞う灰色の大地へと落ちていった。

 

 

 


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