異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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ラウラの教え子

 

 ブレスト要塞からの通信が途絶えたという情報は、タンプル搭を出撃した艦隊も察知していた。

 

 広大な河の真っ只中に造られた軍港を出撃した艦隊の任務は、ブレスト要塞を攻撃する敵部隊を艦砲射撃で撃滅する事と、河の中か、ウィルバー海峡に展開している敵艦隊の殲滅である。ウィルバー海峡へと突入する前にブレスト要塞の近くを通過するのだから、まず最初に艦隊との砲撃戦よりも、味方の要塞を袋叩きにしている怨敵たちの掃除から始めることになる。

 

 そのため、まず味方の要塞に艦砲射撃を開始することを通達するために、CICでヘッドセットを身につけた乗組員の1人が要塞へと連絡しようとした際に、要塞が敵の攻撃によって陥落してしまったという事を知ったのだ。

 

「ブレスト要塞、応答せよ。こちら、戦艦ジャック・ド・モレー。ブレスト要塞、聞こえてるか?」

 

「くそ、応答なしか…………」

 

 拳を思い切り握りしめながら、ブルシーロフ大佐は呟いた。

 

 ブレスト要塞はまだ完成したばかりの要塞であり、守備隊はモリガン・カンパニーの兵士たちから見れば新兵としか言いようがない練度であったが、堅牢な防壁と強力な要塞砲を併せ持つ要塞である上に、虎の子のシャール2Cまで配備されていた。いくら敵が艦砲射撃を行いながら進撃してきたとしても、簡単に陥落するわけがない。

 

 それにブレスト要塞は、数分前までは敵の艦砲射撃に耐えながら応戦を続けていたのである。もし仮に運悪く砲弾が防壁や隔壁を貫通し、ブレスト要塞の地下にある中央指令室を直撃したのであれば応答がないのは当たり前だが、ブレスト要塞が艦砲射撃によって被害を受けたのは地上の格納庫や飛行場だけだ。いきなり飛来した砲弾が運よく隔壁を貫通し、中央指令室で爆発したのはありえない。

 

 さすがに大口径の砲弾を叩き込まれれば、要塞の地下にある戦術区画や居住区を守る分厚い装甲や隔壁は呆気なく貫かれてしまうだろう。だが、そんなことができる砲弾は、ブルシーロフ大佐たちが乗る戦艦ジャック・ド・モレーの主砲よりも巨大な代物でなければならない。いくら吸血鬼たちが強力な兵器を保有していると言っても、そのような巨大な砲弾を放つことができる代物を投入する可能性はかなり低かった。

 

 敵の切り札は、短時間でブレスト要塞の塹壕を突破したあの突撃歩兵たちなのだから。

 

「要塞の周囲に敵は?」

 

「一旦要塞から離脱した航空部隊が、進路を変更して再び要塞へと接近中。友軍の航空隊も応戦を開始します」

 

「味方の航空隊は無事か…………。要塞は?」

 

「分かりません。パイロットたちに確認してもらおうと思ったのですが、電波妨害を受けているのか、ノイズしか聞こえてきませんよ」

 

 舌打ちをしようとしたブルシーロフ大佐は、乗組員からの報告の中に”味方の航空隊が奮戦している”という情報が含まれていたことに気付き、舌打ちの代わりに溜息をついた。

 

 ブレスト要塞が大打撃を受けた可能性は高いが、少なくとも航空部隊まで”壊滅”したわけではないらしい。ブレストの上空で戦っているのは、スオミ支部とタンプル搭から派遣された航空部隊。その中の3名は、練度が低い上に経験が浅い兵士が大半を占めるテンプル騎士団の中では貴重なエースパイロットである。

 

 彼らが戦死していれば、テンプル騎士団はブレスト要塞を失う損害に匹敵する大打撃を受けていた事だろう。

 

 死者は、絶対に生き返らないのだから。

 

「敵の地上部隊は分かるか?」

 

「はい、同志艦長。要塞の周囲には敵の主力戦車(MBT)や超重戦車(マウス)共が何両もいます。おそらく、歩兵の群れもいるでしょう」

 

「砲撃しますか?」

 

 別の乗組員が問いかけてくるが、ブルシーロフ大佐はすぐに砲撃命令を下すことができなかった。

 

 タンプル搭を出撃したのは、20隻のソヴレメンヌイ級駆逐艦と16隻のウダロイ級駆逐艦に護衛された艦隊である。ミサイルをこれでもかというほど搭載したスラヴァ級5隻とキーロフ級2隻もいる上に、対艦ミサイルを搭載したキャニスターだけではなく、大口径の主砲を搭載した戦艦が12隻もいるのだ。普通の司令官であれば、すぐに砲撃命令を下していた事だろう。

 

 しかし、要塞の味方に艦砲射撃を開始することを通達できないせいで、いきなり始まった艦砲射撃を敵の砲撃と誤認し、まだ生き残っている守備隊が混乱する可能性があった。

 

 要塞と通信ができるのであれば、砲撃前に要塞の中央指令室に艦砲射撃が始まることを通達し、兵士たちを退避させることもできる。しかし今は要塞だけではなく、最前線で戦っている航空部隊とも連絡が取れない状況だ。いきなり砲撃を始めれば、味方を混乱させて”止め”を刺すことになりかねない。

 

 対艦ミサイルを使えば、砲弾による攻撃よりも正確に敵を撃破することができるだろう。しかし、河の外に敵艦隊が展開している可能性もあるため、キャニスターの中の対艦ミサイルたちは温存しておく必要がある。近代化改修を受けた戦艦が12隻もいるとはいえ、現代戦の主役は砲弾ではなくミサイルなのだから。

 

 通信兵を乗せたヘリを派遣するべきだろうかと考えたその時だった。

 

「同志艦長、12時方向から敵艦のレーダー照射です!」

 

「敵艦隊は駆逐艦10隻、超弩級戦艦3隻! 駆逐艦はアーレイ・バーク級の模様!」

 

「くっ、敵艦隊に狙われたか……………! やむを得ん。ガングート級の4隻と護衛にソヴレメンヌイ級を6隻残し、それ以外の艦で敵艦隊を撃滅する! 残る艦は艦砲射撃で敵部隊を殲滅せよ!」

 

 この海戦に投入された戦艦で、ヘリの格納庫を搭載しているのはガングート級のみである。その代わりに搭載している主砲の数は他の戦艦と比べると少なくなってしまっているものの、4隻の同型艦での艦砲射撃ならば敵部隊に大打撃を与えられるだろう。

 

 目の前のモニターに投影されているガングート級の反応が少しずつ遠ざかっていくのを見つめながら、ブルシーロフ大佐は息を呑んだ。

 

 先ほどの乗組員の報告では、敵の駆逐艦はアメリカの”アーレイ・バーク級”と呼ばれるイージス艦だという。高性能なレーダーと強力なミサイルを併せ持つ世界最強の駆逐艦であり、ミサイルや速射砲による攻撃はほぼ百発百中。こちらが数多のミサイルを立て続けに放ち続けたとしても、アーレイ・バーク級ならば瞬く間にそのミサイルを次々に叩き落してしまうだろう。

 

 航空機で攻撃しようとしても、その航空機は迎撃されていくミサイルと同じ運命を辿ることになる。

 

 それに対し、テンプル騎士団は1隻もイージス艦を保有していない。駆逐艦はアーレイ・バーク級から見れば旧式のソヴレメンヌイ級やウダロイ級となっており、近代化改修を受けた戦艦たちもその駆逐艦の装備を旧式の戦艦に移植し、改良して性能を底上げした程度である。

 

 数ではこちらが上だが、敵艦は最強のイージス艦を10隻も投入している。こちらの対艦ミサイルが敵艦を直撃するよりも先に、敵から放たれた対艦ミサイルが、こちらの艦隊を海の藻屑に変えることになるのは想像に難くない。

 

「敵艦、ミサイル発射! トマホークです!」

 

「グブカ、コールチク、迎撃開始! ECMも忘れるな!」

 

 ジャック・ド・モレーは、強力な主砲と40発もの対艦ミサイルだけではなく、対空ミサイルの”3M47グブカ”に加え、対空用の機関砲と対空ミサイルを併せ持つ”コールチク”をこれでもかというほど搭載している。イージスシステムは搭載されていないものの、凄まじい弾幕を張ることが可能だ。

 

 更に副砲を全て撤去し、その副砲の代わりに連装型の”AK-130”と呼ばれる速射砲も搭載している。

 

 接近中のトマホークの群れへと、ジャック・ド・モレーに搭載されている迎撃用の対空ミサイルが発射されていく。甲板の上にずらりと並ぶAK-130の群れが旋回し、砲身を夜空へと向けて迎撃態勢を整える頃には、真っ白な煙を夜空に刻み付けて飛翔していったミサイルたちが、三日月と星空の光の中で、新たな光を生み出していた。

 

 ミサイルとミサイルが激突して産声を上げる、人工的な煌き。

 

 後方の艦隊からも発射された対空ミサイルが飛翔していき、先頭を進むジャック・ド・モレーへと襲い掛かっていくミサイルの群れを、次々に焼き払っていく。

 

 星の光と爆炎が煌く方向へと、ジャック・ド・モレーが率いるテンプル騎士団艦隊は進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スーパーハインドの兵員室に腰を下ろすのは久しぶりかもしれない。

 

 サイドアームのPL-14の点検をしながら、俺はそう思った。最近はヘリに乗ることが少なかったし、こうやって兵員室の中に座るのではなく、ターレットの機関砲とロケットポッドから放たれるロケット弾で敵を蹴散らす戦闘ヘリを、AK-12を持ちながら見上げている事の方が多かった。

 

 なんだか、実家に戻ってきたような気分だ。

 

 自室やシャワールームはない。リビングよりも狭い上にメインローターの音が轟く兵員室の中にあるのは、兵士たちを座らせるための座席と頑丈なハッチのみ。ハッチの窓から覗くのは、強力な武装をこれでもかというほどぶら下げたスーパーハインドのがっちりしたスタブウイング。

 

 ライトが装着されたPL-14をホルスターの中に戻してから、兵員室の中に乗っている兵士たちを見渡す。もしこれが普通の作戦だったのならば、テンプル騎士団の黒い制服に身を包み、AK-12を装備した兵士たちが兵員室の中に座っている事だろう。

 

 けれども、俺の周囲に腰を下ろしている兵士たちが身につけているのはテンプル騎士団の制服ではなく、カーキ色の制服だった。肩や背中は同じくカーキ色のマントに覆われており、そのマントにはフードもついている。

 

 手にしているスナイパーライフルも、従来の塗装ではなくカーキ色に塗装されていた。

 

 この兵員室にいるのは、ラウラの教え子たちだ。ヴリシアの戦いから生還したベテランの狙撃手もいるし、ラウラの訓練を受けて何度か実戦を経験した兵士たちもいる。テンプル騎士団の兵士たちの錬度は低いけれど、この部隊とスペツナズの錬度だけは高い。

 

 彼らの任務は、通信が途絶えたブレスト要塞の様子を確認する事と、進撃してくる敵部隊を足止めする事。もしブレスト要塞が壊滅していたのであれば、生存者を救出して敵部隊を攻撃し、タンプル搭の周囲で最終防衛ラインが構築されるまでの時間稼ぎをする。まだ要塞が健在であったのならばそのまま敵部隊を攻撃し、要塞の守備隊を支援しつつ後方の最終防衛ラインまで後退。守備隊と本隊を合流させ、最終防衛ラインで吸血鬼たちを迎え撃つ。

 

 ブレスト要塞を放棄する羽目になるが、大打撃を被った要塞の守備隊をそのまま戦わせるわけにはいかない。仲間を見殺しにするわけにはいかないのだから。

 

 とはいえ、敵はブレスト要塞の塹壕を瞬く間に突破し、要塞に大打撃を与えてしまうほどの強敵である。要塞の様子を偵察する必要があったとはいえ、要塞を攻撃している敵の足止めをするために派遣されたのは8名の狙撃手のみ。彼らを掩護するのは、1両のチョールヌイ・オリョールと、天空を舞う1機のスーパーハインドだけだ。

 

 力不足に見えるかもしれないが、狙撃手による足止めは非常に効果的な戦術の1つである。

 

 実際に、ベトナム戦争の際にアメリカ軍の狙撃手が、観測手と共に敵の大部隊を狙撃して足止めしたことがある。いくらアサルトライフルや機関銃で武装した大部隊でも、姿を消して射程距離外から狙撃してくる狙撃手を倒すのは至難の業というわけだ。

 

 もしかしたら狙撃される可能性があるため、迂闊に突撃できないのである。

 

 だから今回の作戦は、ラウラの教え子たちの中から選抜された8人と、彼らに狙撃を教えた教官(ラウラ)に参加してもらう。俺はこのままヘリの兵員室のハッチを開け、スーパーハインドと共に空を飛んで上空から狙撃する予定だ。

 

 ラウラは観測手(スポッター)がいなくてもエコーロケーションで索敵できるし、視覚は俺よりも発達しているから1人でも大丈夫だ。彼女以外の隊員たちは、観測手(スポッター)と狙撃手(スナイパー)で二人一組になって狙撃を行うことになっているらしい。

 

 テンプル騎士団の観測手(スポッター)には、共に行動する狙撃手(スナイパー)を護衛するという任務もあるため、こちらのメインアームは狙撃用の得物ではなくアサルトライフルとなっている。

 

 狙撃手たちが使用しているのは、ロシア製ボルトアクション式スナイパーライフルのSV-98。使用する弾薬は、命中精度が極めて高い.338ラプア・マグナム弾だ。けれども狙撃手の1人は、新型ライフルのSV-98ではなく、スコープとバイポットを装着した古めかしいモシン・ナガンを装備していた。

 

 ボルトハンドルを引き、.338ラプア・マグナム弾を装填していく狙撃手。どうやらモシン・ナガンで使用する弾薬を.338ラプア・マグナム弾に変更した代物らしい。

 

 少しばかりびっくりしたけど、ラウラの教え子の中にはSV-98よりもモシン・ナガンを好む狙撃手も多い。実戦でもスコープ付きのモシン・ナガンを使って大きな戦果をあげた狙撃手が何人もいるため、SV-98を使うように指示を出してはいなかった。

 

 でも使う弾薬が仲間と違うものだと不便なので、せめて弾薬だけは変えてもらっている。

 

 スコープの確認をし始めたその狙撃手を見守ってから、ハッチの外を見つめる。スーパーハインドは予想よりも高度を下げているらしく、いつの間にか窓の外に見えていた星空は消え失せつつあった。舞い上がった砂塵を纏いながら飛行していくスーパーハインドが徐々に速度を落とし始めたのを感じた俺は、兵員室の椅子から立ち上がり、ハッチを開ける準備をする。

 

『まもなく降下地点です。準備をお願いします』

 

 今のところ、まだ敵には発見されていないらしい。狙撃手たちを降下させる前にスティンガーをプレゼントしてもらえるんじゃないかと思ってたんだが、相変わらず兵員室の中を支配しているのはハッチの外から流れ込んでくるメインローターの音だけだ。

 

 やがて、スーパーハインドがゆっくりと空中で停止する。空中とは言っても、何も使わずに飛び降りられる程度の高さだ。兵員室のハッチを開け、砂塵が舞い上がる大地を見下ろしながら後ろを振り返る。

 

 すでに狙撃手たちは降下する準備を終えており、得物を背負ったまますぐにハッチの近くへとやって来ると、息を呑んでからあっさりと飛び降り、砂漠の上に着地した。一緒に行動する観測手(スポッター)も「援護は頼みましたよ」と俺に言ってからジャンプし、狙撃手の傍らに着地する。

 

 十分足止めしたら、必ず彼らを回収して離脱する。当たり前だが捨て駒にするつもりはない。

 

 素早くヘリから降りていく狙撃手と観測手たち。一番最後にラウラも立ち上がり、得物を持ったまま飛び降りる準備をする。

 

 いつもの黒い制服とベレー帽を身につけていないせいなのか、マントとフードのついたカーキ色の制服に身を包んでいるラウラを見る度に違和感を感じてしまう。俺に甘えてくるときの優しいラウラではなく、親父とエリスさんから受け継いだ獰猛さを纏うラウラは予想以上に大人びており、同い年だというのに年上の姉のように見える。

 

 真面目なラウラも魅力的だ。

 

 そんなことを考えているうちに、ラウラは右手でフードを掴み、それをかぶって赤毛とキメラの角を隠した。そしてちらりと俺の方を見ると、微笑みながら唇を近づけてくる。

 

 いつもみたいにイチャイチャするわけにはいかないので、キスは短めにしておこう。そう思いながらラウラの唇を奪い、舌を絡ませながら優しく抱きしめる。普段ならラウラが満足するまでずっとキスをしているんだけど、今はイチャイチャしている場合じゃないからキスは短めだ。

 

 でも、ラウラは満足してくれたらしい。

 

「――――――行ってくるわね」

 

「行ってらっしゃい、お姉ちゃん」

 

 微笑みながら頷き、ラウラは兵員室からジャンプした。

 

 仲間たちの傍らに着地し、すぐに味方に指示を出すラウラ。教え子たちは彼女に敬礼してから観測手と共にブレスト要塞へと移動を開始する。

 

 頼もしい9人の狙撃手と観測手たちが移動を始めたのを見守りつつ、俺も兵員室の壁に立てかけておいた得物の準備を始めた。兵員室のハッチを開けたまま、折り畳まれていた長大な銃身を展開し、先端部にT字型のマズルブレーキが装着されたでっかいライフルを外へと向ける。

 

 それは、かつて親父がネイリンゲンにある屋敷で傭兵をやっていた頃から愛用していた、ロシア製アンチマテリアルライフルのOSV-96だった。一時期は親父と同じようにロケットランチャーを取り付けて使っていたが、今ではロケットランチャーを取り外し、折り畳み式のバイポッドやパームレストを装着して運用している。

 

 使用する弾薬は12.7mm弾から、対戦車ライフルの弾薬としても使われていた14.5mm弾へと変更しておいた。ライフル本体の左側にはマガジンのホルダーが用意されており、そこにはすでに深紅のラインが刻まれたマガジンが用意してあるが、それに入っている弾薬は14.5mm徹甲弾だ。

 

 ライフル本体の左斜め上には、中距離での狙撃で使うためにソ連製のPEスコープを装備。ライフルの上部には長距離狙撃用のスコープを装備しており、そのスコープの上には近距離の敵を狙うためのドットサイトがある。

 

 銃床には伏せて狙撃する際に展開するモノポッドを搭載し、でかいマズルブレーキの下には白兵戦用の折り畳み式スパイク型銃剣を装備している。こいつで白兵戦をすることはないと思うが、使用するポイントの寮がかなり少なかったので、念のため装着しておいたのだ。

 

 スコープの蓋を開け、狙撃準備に入る。こいつはボルトアクション式ではなくセミオートマチック式であるため、ラウラが持って行ったゲパードM1と比べると命中精度は劣る。けれども、旅を始めた頃からずっと使っている代物だからかなり使い慣れている。

 

 よろしく頼むぜ、相棒。

 

 再びヘリが移動を始めたのを確認した俺は、左手をライフルのキャリングハンドルへと伸ばし、ハッチの向こうに見える要塞を見つめた。

 

 

 


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