異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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超重戦車VS超重戦車

 

「ブレスト要塞より、航空支援要請です」

 

「航空支援?」

 

 オペレーターからの報告を聞いた瞬間、違和感を感じた。

 

 ブレスト要塞にはタンプル搭よりも立派で”安全な”滑走路がある。タンプル搭のように、砲撃の際の衝撃波で設備に被害が出るほどの要塞砲を配備していないため、衝撃波による損害を考慮する必要がないのだ。そのため、ブレスト要塞の飛行場は地下ではなく地上に作られている。

 

 しかも地下にも航空機の格納庫があるため、航空隊の規模であればブレスト要塞の方が大きいのだ。タンプル搭を上回る規模の航空隊があるというのに、なぜ航空支援が必要なのだろうか。

 

 誤報だろうと思っていると、同じオペレーターが報告を続けた。

 

「敵の艦砲射撃により、滑走路が破壊された模様」

 

「艦砲射撃…………? 河に艦隊が侵入したのか!?」

 

 タンプル搭やブレスト要塞に、最寄りの海であるウィルバー海峡から砲撃を叩き込むのは、射程距離外であるため不可能である。けれどもウィルバー海峡へと続く河へと侵入し、そこから砲撃すればタンプル搭やブレスト要塞が射程距離内になるため、艦砲射撃をお見舞いすることは可能なのだ。

 

 だが、それを防ぐために河の周囲にはレーダーサイトが配備されており、敵艦が侵入すればすぐに対艦ミサイルを搭載したコルベットの群れが敵を迎撃することになっている。もし仮に敵艦が侵入しているのであれば、今頃コルベットたちが迎撃を開始している筈だ。

 

 なのに、レーダーには敵艦が侵入したという反応はないし、コルベットが出撃したという報告もない。

 

「ブレストが艦隊の派遣を要請していますが」

 

 艦隊と航空支援か。確かに滑走路が破壊されているのであれば、こっちが航空機を出す必要がある。それに敵が航空機を出撃させていたとしても、まだブレストの対空火器は生きている筈だ。味方の対空砲火による支援を受けながら、こっちの航空隊は敵を蹂躙できるだろう。

 

 それに艦隊を出撃させれば、河へと敵艦隊が侵入するのを防ぐことができるし、余裕があれば地上への艦砲射撃でブレストを支援できる筈だ。

 

「よし、艦隊を直ちに派遣する。航空隊も出撃させ、ブレストを全力で支援せよ」

 

「同志団長、ジャック・ド・モレーはどうしますか?」

 

「もちろん出撃だ。クソ野郎共に、テンプル騎士団の力を見せてやれ」

 

「はっ!」

 

 ジャック・ド・モレーは、テンプル騎士団が保有する最強の超弩級戦艦である。3連装40cm砲を3基搭載している上に、対艦ミサイルを装填した4連装キャニスターを合計で10基も搭載しているため、凄まじい攻撃力を誇る。さらに無数の対空機関砲や対空ミサイルでもしっかりと守られており、装甲も分厚いので、その気になればこの戦艦1隻で敵艦隊を相手にすることもできるだろう。

 

 ヴリシアの戦いでは、敵のモンタナ級戦艦と砲撃戦を行って勝利しているし、地上への艦砲射撃で大きな戦果をあげている。まさに、テンプル騎士団の”力の象徴”というわけだ。

 

 日本海軍で例えれば、戦艦大和のような存在である。

 

「お兄様、では砲手はわたくしが」

 

「頼む」

 

 ジャック・ド・モレーの砲手に立候補してくれたカノンは、真面目な表情で敬礼をすると、踵を返して中央指令室を後にする。

 

 ヴリシアの戦いで砲撃戦に勝利できたのは、あの艦の砲手をカノンと母親のカレンさんが担当していたからだろう。あの2人は地上戦では選抜射手(マークスマン)を担当することが多いが、戦車に乗った場合や戦艦に乗る場合は砲手を担当している。

 

 あの2人の技術のおかげで、モンタナ級戦艦に勝利できたと言っても過言ではない。

 

 今回はカレンさんがいないが、娘であるカノンもしっかりと母親から技術や才能を受け継いでいる。彼女が砲手を担当するならば問題はないだろう。

 

「タクヤ、ブレストに砲撃をしたのはあの超重戦車じゃないかしら」

 

「ラーテか」

 

 ラウラにそう言われた俺は、目の前の魔法陣に投影されているタンプル搭の周囲の地図を見ながら息を吐いた。確かに、ラーテの主砲はドイツのシャルンホルスト級戦艦の主砲を改造したものだ。破壊力や射程距離は、通常の戦車とは別格である。

 

 河からの砲撃ではなく、砂漠に配備されたラーテからの超遠距離砲撃であったのならば、確かに要塞を砲撃することは可能だろう。同志ラフチェンコは、おそらくラーテの砲撃と艦砲射撃を間違えたのかもしれない。

 

 あの戦いに投入されたラーテは壊滅した筈だが、生き残った車両が投入されている可能性も高い。もし生き残ったラーテの仕業ならば、早いうちに潰した方が良さそうだ。そのまま進撃されれば、いくら虎の子のシャール2Cを配備しているテンプル騎士団でも粉砕されかねないのだから。

 

 とはいえ、もし仮にあのヴリシアで戦ったラーテと同型なのであれば――――――――イージス艦と同等の対空火器を搭載している可能性がある。最終的には航空機によるミサイル攻撃で撃破することができたのだが、それは殲虎公司(ジェンフーコンスー)の戦車部隊が犠牲を出しながら対空火器を潰してくれたから成功したのである。

 

 いきなり航空機で攻撃を仕掛ければ、返り討ちに遭うだろう。

 

 しかし、戦車部隊を派遣して対空火器を潰させる時間はない。時間がかかれば、ブレスト要塞が砲撃だけで壊滅してしまいかねない。

 

「…………偵察機を派遣し、ラーテを探させろ。発見次第36cm要塞砲をぶち込む」

 

「了解(ダー)」

 

「それと、アーサー隊も航空支援に向かわせるんだ。可能であればニパとイッルの2人も呼び出してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発反応装甲が張り付けられた砲塔が、車体から千切れ飛んだ。鉄の溶ける臭いと熱気をばら撒きながらぐるぐると回転した金属の塊は、やがて砂漠の真っ只中へと墜落すると、風によって抉られ続けていた砂漠の砂を一気に抉り、砂で形成された波を生み出す。

 

 乗組員もろとも砲塔を吹っ飛ばされたT-90の車体は、もう二度と動かなくなった。

 

「敵戦車に命中! はははっ、これで5両目!」

 

「よし、次は2時の方向にいる奴を狙え。今の奴より旧式だ」

 

 近代化改修型のマウスの車長は、敵の戦車を一撃で撃破してはしゃぐ砲手に向かって冷静な声で言った。

 

 敵の戦車の主砲は125mm滑腔砲。通常の砲弾だけではなく、対戦車ミサイルも発射可能な攻撃的な戦車である。しかし、彼らの乗る戦車は圧倒的な火力と分厚い複合装甲を併せ持つ、極めて強力な”超重戦車”である。さすがに航空機による攻撃には弱いが、相手が地上戦力なのであれば無敵と言っていいほどの戦闘力がある。

 

 まるでライオンがウサギを蹴散らすように、近代化改修を受けたマウスたちが砂漠を前進していく。

 

 巨大な砲塔の中で、大型化された自動装填装置が金属音を奏でながら砲弾を装填していく。装填されたのは、砲身と共に大型化されて破壊力を大幅に強化された、160cm砲専用のAPFSDSだ。いくら主力戦車(MBT)の複合装甲とはいえ、これが直撃すればあっさりと風穴が開いてしまう。

 

 続けて、ゆっくりと巨大な砲塔が旋回していく。車内に搭載されたモニターに表示されるのは、前進するマウスの群れを食い止めるために奮戦する、ロシア製戦車のT-72B3の群れだ。向こうも近代化改修を受けて性能が上がっているとはいえ、125mm砲のAPFSDSではマウスの後部以外の装甲は貫通できない。

 

撃て(フォイア)

 

「発射(フォイア)」

 

 砲手が発射スイッチを押した瞬間、艦砲射撃のようにも思えるほどの轟音と爆風が、巨大な砲身の中で産声を上げた。

 

 車内のモニターが爆炎で埋め尽くされる。それが砂漠の冷たい風でかき消された頃には、もう既に発射されたAPFSDSは自分が纏っていた外殻を脱ぎ捨てており、銛や槍にも見える本来の姿をあらわにしながら、標的に向かって疾走していた。

 

 そして、その獰猛な一撃が、奮戦を続けるT-72B3に牙を剥く。

 

 モニターの向こうで火花が散ったかと思うと、ぐらりとT-72B3の車体が揺れた。先ほどのT-90と同じように砲塔が千切れ飛び、ぐるぐると縦に回転しながら砂漠へと落下していく。取り残された車体は黒煙を吹き上げながら、砂漠の真っ只中で残骸と化した。

 

「6両目!」

 

「よし、前進! 敵の歩兵は75mm砲で薙ぎ払え!」

 

「了解(ヤヴォール)!!」

 

 突撃歩兵たちが既に突破してくれたおかげで、塹壕の制圧はかなり容易であった。通信設備や司令部を失ったテンプル騎士団の守備隊は烏合の衆としか言いようがないほど弱体化しており、塹壕から飛び出して逃亡しようとする敵兵も見受けられる。

 

 砲手が主砲同軸に搭載された75mm速射砲の発射スイッチを押すと、敵の塹壕の周囲に無数の火柱が生まれた。まるで機関銃の連射のように、装填された榴弾が立て続けに放たれ、必死に反撃しようとする敵兵たちを木っ端微塵にしていく。

 

 塹壕から顔を出し、必死に重機関銃でマウスに少しでも損傷を与えようと奮戦する勇敢なハーフエルフの兵士の身体が千切れ飛び、肉片の雨と化す。錯乱して塹壕の中から飛び出した若い兵士が爆風に呑み込まれ、左肩や脇腹を抉り取られてのたうち回る。

 

 ヴリシアでも、こういう光景は何度も目にした。しかし、彼らが目にしたのは敵が苦しむ姿ではなく、重傷を負った味方の兵士たちが苦しむ姿だ。

 

 敵兵たちは、あのヴリシアで命を落とした同胞たちのように苦しんでいるのである。

 

 マウスよりも機動力の高いレオパルトが、多目的対戦車榴弾(HEAT-MP)で塹壕の中の敵を蹂躙していく。キューポラからその光景を見ていた車長は、塹壕の中を埋め尽くす敵兵の死体を一瞥してから息を吐いた。

 

 敵の戦車を始末するために標的を探し始めたその時、今しがた塹壕に砲弾を撃ち込んでいたレオパルト2の砲塔が、塹壕の向こうから飛来した1発の砲弾によって捥ぎ取られた。

 

「…………ッ!?」

 

 直撃した砲弾によって抉り取られたレオパルトの砲塔が、金属の溶ける悪臭を放ちながら転がり落ちる。車内からはいまの直撃で腕を引き千切られた乗組員たちが絶叫しながら逃げ出そうとするが、立て続けに飛来したもう1発の砲弾―――――――おそらく多目的対戦車榴弾(HEAT-MP)だろう―――――――によって肉体もろとも残った車体を木っ端微塵に吹き飛ばされた。水銀が内蔵されていたらしく、衝撃波に押し出されることによって斬撃と化した水銀に切り刻まれた乗組員の死体は、再生する様子がない。

 

(バカな………レオパルトが一撃でやられただと!?)

 

「車長、味方の戦車がやられた!」

 

「分かってる! …………くそ、どこから飛んできた!?」

 

『こちら操縦手! 12時方向にでっかい戦車がいる!!』

 

「でかい戦車だと………ッ!? テンプル騎士団の連中も、マウスを配備して――――――――」

 

 次の瞬間、今度は隣を並走していた味方のマウスが餌食となった。

 

 撃破されたT-90やT-72B3の残骸が吹き上げる黒煙を突き破って飛来した”2発の”APFSDSがほぼ同時に外殻を脱ぎ捨てたかと思うと、隣で応戦するために砲塔を旋回させていたマウスの車体と砲塔の付け根の部分に正確に突き刺さったのである。

 

 砲塔と車体の付け根から一瞬だけ凄まじい火花が散ったかと思うと、隣を並走していた友軍のマウスがぴたりと動かなくなった。

 

「おい、今度はマウスが!」

 

「くそ、何なんだ!?」

 

 砲手が悪態をついた瞬間、砂漠の向こうから駆け抜けてきた冷たい風が、戦車の残骸たちが吐き出す黒煙を吹き飛ばしていく。

 

 その向こうに――――――――怪物がいた。

 

 キャタピラが装着された巨大な車体の上に、同じく巨大な砲塔が装備されているのが分かる。通常の戦車よりもかなり大型だが、その怪物の正体は間違いなく戦車である。

 

 だが、明らかにサイズと装備が異様であった。

 

 車高はマウスとほぼ同等である。半分に切り取った円盤の後部に従来の戦車の砲塔を張り付けたような形状の巨大な砲塔からは、太い2本の砲身が縦に並んだ状態で突き出ており、砲塔には機関砲を搭載したターレットや、アクティブ防御システムと思われる装備も搭載されている。

 

 主砲の口径は、マウスの主砲に匹敵するくらいだろうか。

 

 車体の両脇からは、主砲と比べるとかなり小さな砲塔が突き出ているのが分かる。明らかに対戦車用ではなく、歩兵の殲滅用だろう。小口径の戦車砲と対人用の機銃が装備されているのが見える。

 

 そして車体の後部には、一般的な戦車砲に匹敵する口径の低圧砲と30mm機関砲を装備した砲塔が装備されており、後方へと回り込もうとする敵を迎撃する準備をしていた。

 

 巨大な車体の上に、一撃で戦車を葬ることが可能なほどの重火器をこれでもかというほど搭載した怪物が、主砲の砲身をマウスたちへと向けて鎮座していたのである。

 

 砲塔の脇には、オルトバルカ語で”ピカルディー”と書かれているのが見える。

 

「な、なんだありゃ…………ッ!?」

 

「おい、あんなでっかい戦車がテンプル騎士団に配備されてたのか!? 報告にはなかったぞ!?」

 

「くそ、撃て! 相手はたった1両だ! 袋叩きにすれば勝てる!!」

 

 他の塹壕を蹂躙しているマウスはまだ損害は出ていない。目の前に現れた怪物と出くわす羽目になった部隊にも、まだ3両のマウスと8両のレオパルトが残っている。

 

 圧倒的な火力を持つとはいえ、その戦車たちで集中攻撃をかければ倒せる相手だ。

 

 味方のレオパルト2が砲撃を開始し、APFSDSを砂漠の向こうにいる怪物(シャール2C)へと放つ。他のレオパルトたちやマウスも砲撃を開始し、鎮座しているシャール2Cへと集中砲火をお見舞いし始めた。

 

 正確な砲撃は次々にシャール2Cの車体や砲塔へと突き刺さり、巨大な怪物の車体を無数の火花で覆う。普通の戦車が喰らえばとっくに木っ端微塵になっているほどの数の、APFSDSによる集中砲火。モニターの向こうで敵の超重戦車が袋叩きにされている光景を見守っていた車長は、安堵しながらその光景を見つめていたが――――――――火花の向こうから飛来した一撃が、その安堵を木っ端微塵に粉砕する。

 

 無数の戦車砲を叩き込まれているにも拘らず放たれたその一撃が、APFSDSを装填するために一旦砲撃を中止した味方のレオパルトの車体を直撃し、装甲が厚い筈の正面装甲に大穴を開けたのである。

 

「!?」

 

「て、敵戦車の反撃です!」

 

 今の集中砲火の中には、レオパルトの120mm滑腔砲だけでなく、マウスの160mm滑腔砲による砲撃も混じっていた。レオパルトの砲撃が通用していなかったとしても、マウスの砲撃が直撃すれば致命傷にはなる筈である。

 

 しかし、無数の火花と煙の中から姿を現したのは、正面装甲がいくらかひしゃげ、いたるところが窪んだ程度の損傷で済んだ、シャール2Cであった。

 

「ば、バカな…………何なんだ、あの装甲は…………ッ!」

 

 テンプル騎士団でもたった10両しか配備されていないシャール2Cは、まさに切り札と言える存在である。

 

 当初は152mmガンランチャーを装備し、歩兵と共に進撃しながら敵の戦車を撃滅する役割を担当する予定であった。しかし、円卓の騎士の1人であるステラ・クセルクセスが「火力が足りないため、火力と装甲の大幅な強化が必要」と提案したことにより、圧倒的な暑さの装甲と火力を兼ね備えた怪物として生まれ変わったのである。

 

 歩兵の支援ではなく、圧倒的な火力を誇るマウスに対抗するための戦車と言っても過言ではない。

 

 しかし、さすがに分厚い複合装甲を全体に搭載するのは不可能であったため、正面装甲のみを徹底的に厚い複合装甲で覆うこととなった。マウスとの砲撃戦を想定しており、実際に160mm滑腔砲によるAPFSDSの直撃にも耐えられるほどの厚さとなっている。

 

 その代わりに機動性がかなり大幅に低下しており、たった20km/hのみとなった。

 

 テンプル騎士団には、このピカルディーと同じカスタマイズを施された怪物が10両も配備されているのである。

 

「つ、通用してないのか!?」

 

「正面装甲はダメだ! 側面か後ろにぶち込め!」

 

 再びシャール2Cの砲身が旋回し、回り込もうとしたマウスを狙う。車体まで旋回させて貧弱な側面の装甲を攻撃されないようにしつつ、マウスに照準を合わせる。

 

 その直後、チョールヌイ・オリョールの砲塔を大型化したような形状の砲塔に装備された連装滑腔砲が、またしても火を噴いた。

 

 艦砲射撃なのではないかと思ってしまうほどの衝撃波と爆炎を吐き出した砲身から、2発のAPFSDSが解き放たれる。爆炎を纏いながら外殻を分離したその2発の砲弾は、砲塔をシャール2Cへと向けながら回り込もうとしていたマウスの車体へと飛び込む。

 

 直撃した2発のAPFSDSは、マウスを覆っていた装甲をあっさりと貫通すると、そのまま車内を蹂躙してエンジンを直撃し、シャール2Cの側面へと回り込もうとしていたマウスを容易く擱座させてしまう。

 

 吸血鬼たちのマウスは、圧倒的な防御力と火力を誇る怪物である。しかし、あくまでも防御力は従来の120mm砲や125mm砲による攻撃を想定している程度であり、近代化改修型マウスと同等の火力を誇る超重戦車との砲撃戦は想定しないないのだ。

 

 それに対し、シャール2Cはヴリシアで超重戦車の圧倒的な戦闘力を見せつけられたテンプル騎士団が、その超重戦車を”狩る”ために計画を変更して改造した超重戦車。当たり前だが、有利なのはマウスとの戦闘を想定しているシャール2Cである。

 

「おい、またマウスがやられた!」

 

「は、反則だろ…………ッ」

 

 モニターの向こうで擱座したマウスを見つめていた車長は、いつの間にか震えていた。

 

 敵が恐れていた”怪物(マウス)”の目の前に、それよりも強力な”怪物(シャール2C)”が姿を現したのだから。

 

 

 

 


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