異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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倭国支部

 

 

 俺は今、凄まじい光景を目にしている。

 

 こっちの異世界に生まれ変わってからは凄い光景を何度も見てきた。空を自由に舞うドラゴンや、街中でちょっと変わった魔術を披露する魔術師。個人的に一番びっくりしたのは、やはり”魔王”と呼ばれている最強の転生者が、妻のドロップキックで吹っ飛ばされた瞬間だろうか。もしかしたら親父より母さんの方が魔王にふさわしいのかもしれない。

 

 そういう光景を何度も目にしてきたから、こっちの世界ではそのようなことが起こるのが当たり前だと思っていた。文化が似ている部分はあるものの、常識は違う。もちろん科学よりも魔術の方が発達しているから、文明も違う。

 

 けれどもこの光景は、きっと前世の世界で生まれ育った人間や、こっちの異世界の住人が目にしたとしても確実に驚くだろう。

 

「…………」

 

 タンプル搭の地下には、食料となる野菜や薬品に使う薬草を栽培するための畑がある。当たり前だが地下には日光が届かないため、天井を”メモリークォーツ”と呼ばれる特殊な鉱石で覆い、疑似的に青空と日光を再現することで、植物の栽培に利用している。

 

 メモリークォーツは、”魔力を流し込みながら想像すると、想像した光景が鉱石に映し出される”という特徴を持つ。そのため大昔の戦争では伝令がこれを携帯し、目にした敵の陣形や配置を思い浮かべて味方に見せることで偵察を行っていたという。

 

 今ではあらゆる国家に採掘され尽くして枯渇している希少な鉱石だが、幸いなことにタンプル搭の周囲にある鉱脈にはこのメモリークォーツもごく少量ではあるものの存在するようなので、使い過ぎないようにしつつ活用しているというわけだ。

 

 疑似的に再現された青空と日光。地下とは思えないほど開放的な空間の中に並ぶ畝たち。もしここが普通の畑ならば、鍬を持って畑を耕す農民たちの姿を見ることができただろう。

 

 けれども、目の前の畑には鍬を持つ農民など1人もいない。

 

 その代わりに居座っているのは―――――――でっかい車輪だ。

 

 きっと、馬車についてる車輪よりも一回りでかいんじゃないだろうか。その車輪の縁の部分には小型のフィオナ機関がいくつか取り付けられており、後端部から魔力の残滓を放出しながら、まるで畑を耕すかのようにゆっくりと転がっている。

 

 ヴリシアの戦いでも目にしたが、モリガン・カンパニーが誇る天才技術者(マッドサイエンティスト)のフィオナちゃんは、この世界の技術でパンジャンドラムを量産することに成功している。だからモリガン・カンパニーでは魔力で動く”異世界版パンジャンドラム”がごく普通の兵器として運用されているんだが―――――――そのパンジャンドラムを、普通は農業に使おうとは思わないだろう。

 

 傍らで魔力を供給する男性と一緒に、ごろごろと転がりながら畑を耕すパンジャンドラム。進む度に農民たちが歓声を上げるが、俺は黙ってそれを見つめていた。

 

「便利ですねぇー」

 

 そう言いながら水を飲むのは、数日前までここで畑の栽培を担当していた農民のうちの1人である。元々は奴隷だったのだが、テンプル騎士団が保護してからは、ここでアルラウネのシルヴィアと一緒に農業を担当してもらっているのだ。

 

「私も歳をとりましたから大助かりですよ。団長さん、ありがとうございます」

 

「ああ、いえ…………お役に立ててよかったです。あははっ」

 

 お礼を言ってくれた農民にそう言いながら、俺は苦笑いする。

 

 兵士たちとは違って、農民たちの中には高齢者が多い。中には若者もいるが、やはり訓練を受けた兵士たちとは違って体力があるわけでもないので、やはりこのような作業はかなり大変なのだ。

 

 先週の会議でも、円卓の騎士の1人から「両親の仕事が大変そうなので、少しでも楽になるように対策をしてほしい」と言われたので、農業のための予算をいつもよりも多めにし、モリガン・カンパニーから色々と農業用の道具を購入したのだが―――――――農業用のパンジャンドラムを購入するなどと予想できるわけがない。

 

 何だこれ。設計したの誰だよ。

 

 もちろん、畑の真っ只中でごろごろと転がるあのパンジャンドラムはモリガン・カンパニー製。同志たちからは「パンジャンドラムをタンプル搭でもライセンス生産してほしい」という要望も出ているのだが、承認するべきなのだろうか…………?

 

「すごいねぇー。ああやってごろごろ転がってもらうだけで大助かりですよ。私、最近腰が痛くて…………」

 

「そ、そうですか…………や、やっぱりあれを購入したのは正解みたいですね」

 

 本当に正解なの…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しっかりと重傷を肩に当て、アサルトライフルの上に搭載されたホロサイトを覗き込む。中央にあるレティクルを向こうに見える人型の的の頭に合わせ、トリガーを引く。

 

 マズルフラッシュが一瞬だけ煌き、エジェクション・ポートが熱を纏った空の薬莢を吐き出す。カキン、と空の薬莢が床に落下する綺麗な音が銃声の荒々しい音と混ざり合い、不思議な音色となってレーンの向こうへと消えていく。

 

 もちろん今の一撃は命中。人型の的の頭は眉間から上が吹っ飛んでおり、もし仮にあれが普通の人間だったのならば確実に即死している。

 

 でも、あまり想像したくないな…………弾丸で頭を抉られた人間の死体は。一度も目にしたことはないが、きっとヴリシアに行ってきた奴らはそういう惨劇を何度も目にしてきたに違いない。

 

 そう思いながら息を吐き、今度は胴体に照準を合わせる。

 

 俺も仲間たちと共にテンプル騎士団の一員となったが、まだレベルも低い上に練度も低く、団長であるタクヤにヴリシアの戦いへと連れて行くのは危険だと判断されたため、仲間たちと共にここに残って訓練を続けていたのだ。俺たちも力になりたかったが、足手まといになれば仲間を全滅させてしまう恐れもある。

 

 だが、俺のレベルはもう90だ。ポイントも溜まったし、少なくとも仲間たちに武器を支給する事ならばできるだろう。それをやった後のポイントの量は想像したくないけど。

 

「お、弾切れか」

 

 7.62mm弾のマガジンはもう空っぽだ。

 

 64式小銃からマガジンを取り外し、傍らに置いてあるベークライト製のマガジンを装着する。通常の弾薬が入っているのはごく普通の黒いマガジンだが、炸薬の量を増やした強装弾はベークライト製のマガジンに入れるようにしている。こうした方が分かりやすいからな。

 

 7.62mm弾でも十分な破壊力があるが、転生者と戦う場合、自分の攻撃力のステータスが相手の防御力を下回っている場合、こちらの攻撃は弾かれてしまう恐れがある。そのため少しでも攻撃力を底上げするために強装弾も用意してあるのだ。これは主に”対転生者用”である。

 

 でもこれ、反動が強いんだよなぁ。タクヤたちは当たり前のように片手でぶっ放したりしてるが、俺には無理だ。

 

 というか、あんな華奢な腕で片手で撃てるのかよ…………。

 

「よう、柊」

 

「おう、タクヤ」

 

「こんにちわー♪」

 

 強装弾の入ったベークライト製のマガジンを装着し、コッキングレバーを引いていると、後ろのドアからタクヤとラウラがやってきた。射撃訓練に来たのか、2人の手にはもう既に得物がある。

 

 それにしても、この2人っていつも一緒にいるよな…………。毎日甘えん坊のお姉ちゃんに甘えられているタクヤが羨ましいんだが、この2人って腹違いとはいえ”姉弟”なんだよね? 大丈夫か?

 

 タクヤの腕に絡みつきながら堂々と頬ずりしているラウラ。タクヤが「お姉ちゃん、そろそろ離れてくれる?」と頼むけど、彼女はむしろがっちりとしがみつきながら未だに頬ずりを続けている。

 

 いいよなぁ…………。俺も美少女に頬ずりされたい。

 

「調子はどうだ?」

 

「結構当たるようになった」

 

「それはよかった。…………ねえ、お姉ちゃん? もう離れてくれる?」

 

「やだやだ! もっと甘えてたいのっ!!」

 

 容姿は大人びてるのに、なんでラウラの性格は幼いんだろうか。

 

 ちなみに彼女はテンプル騎士団の誇る最強のスナイパーだという。今まで彼女は狙撃で凄まじい戦果をあげており、転生者の討伐数だけならばもう既にタクヤを上回っているらしい。しかもヴリシアの戦いでは、敵の装甲車や戦車の砲塔の軸を狙撃して砲塔を旋回不能にしたり、飛んでいるヘリのコクピットを真横から狙撃して撃墜したという。

 

 それほどの戦果をあげる狙撃手とは思えない…………。

 

「こ、今夜はいっぱい甘えていいからさ」

 

 今夜ぁ!? お前ら何する気だ!?

 

「ふにゅー…………うん、分かったっ♪」

 

 やっとタクヤから離れるラウラ。彼女は嬉しそうに笑いながら持っていたハンドガンを構え、ニヤニヤと笑いながら適当に連射し始める。

 

 彼女が持っているハンドガンは、チェコ製の”Cz75SP-01”というハンドガンらしい。極めて高い命中精度を誇る銃らしいのだが、彼女の持つハンドガンにはどういうわけなのか銃剣が装着されている。彼女の任務は狙撃の筈だが、ある程度は白兵戦も想定しているという事なのだろうか。

 

 今夜”甘える”ことを考えているのか、やけにニヤニヤと笑いながらハンドガンを乱射する赤毛の少女。照準器すら覗かずに連射しているのでどうせ当たっていないんだろうと思いながらちらりとそっちの方を見てみるが…………信じ難いことに、ハンドガンから放たれる9mm弾はむしろ当たり前のように的に命中し、もう既に人型の的の急所全てに風穴を開けていた。

 

 な、なんだこのお姉ちゃんは…………!

 

 そしてその隣に立つシスコンの弟も―――――――ロシア製のPL-14を連射し、凄まじい勢いで連射している。数秒前まで腹違いの姉とイチャイチャしていた弟とは思えないほど真面目な表情で的に風穴を開け、あっという間に空になったマガジンを交換。俺が狙いをつけている間に5発くらいは連射しているのではないだろうか。

 

 や、やっぱり練度の差なのかなぁ…………。この2人はもう何度も実戦を経験してるみたいだし。

 

「そういえばさ。柊に話があるんだ」

 

「話?」

 

 早くも最後のマガジンを装着しながらそういうタクヤ。彼はハンドガンをいつでも撃てる状態にしてから目の前に置くと、いきなりそんなことを言われて顔を上げているこっちを見ながらニヤリと笑った。

 

「お前たちも随分と練度が上がってるみたいだからさ、そろそろ…………新しい支部を作ろうと思うんだ」

 

「新しい支部?」

 

「そう」

 

 現時点で、テンプル騎士団の支部はスオミ支部のみ。大昔から専守防衛が得意なスオミの里の戦士たちで構成されている支部で、人数は少ないものの、大昔から培われてきた経験や戦術で今でも里を守り続けているという。

 

 ヴリシアの戦いでも橋頭保となった図書館の防衛のために出撃しており、度重なる吸血鬼たちの襲撃を撃退し続けた猛者たちらしい。

 

「それで、新しい支部はどこに作るんだ?」

 

「倭国だ」

 

「倭国…………たしか、東洋にある島国だろ?」

 

「そうそう。日本みたいな国だ」

 

 カルガニスタンの砂漠をひたすら東へと進むと、ジャングオ民国という中国のような国がある。そこから船で海を渡ると、”倭国”という小さな島国がある。

 

 大昔から倭国の周囲は危険な魔物が生息するダンジョンだったらしく、そのせいで迂闊に近づくことができず、ちょっとした鎖国状態だったという。しかし今では船もより頑丈になり、強力な武装も搭載されるようになったため積極的に交易も行われており、今ではオルトバルカから様々な技術を導入して列強諸国に追いつこうと努力をしている頃らしい。

 

 日本で例えると明治時代辺りだろうか。

 

「ということは、倭国支部か?」

 

「そういうことだ。―――――――できれば、そこの支部長をお前に任せたい」

 

「はっ?」

 

 お、俺…………?

 

 ちょっと待て。俺に任せて大丈夫なのか? お前たちほど練度は高くないし、頼りないだろ?

 

 きっとタクヤは、テンプル騎士団の一員になる前まで俺が仲間たちを率いて行動していた経験があるのを知っているから、俺を支部長に選ぼうとしているのだろう。確かに第三者が見れば、小規模とはいえ仲間を引き連れて行動していた俺が適任だと判断するに違いない。

 

 だが――――――はっきり言うと、俺は向いていないかもしれない。

 

 仲間たちをちゃんと指揮する自信がない。もしかしたら間違った判断を下し、仲間を死なせてしまうかもしれない。

 

 それに、仲間を守るために敵を殺す覚悟を決めたとはいえ、正直言うとまだその覚悟を決めたまま引き金を引く自信はまだない。

 

 こんな奴で、本当に大丈夫なのか?

 

 顔を上げると、隣のレーンに立つ少女のような容姿の少年が「お前に任せたいんだ」と言わんばかりに、炎のような紅い瞳でじっとこっちを見つめていた。

 

「…………本気なのか?」

 

「ああ。俺はお前に任せたい」

 

「…………そうか」

 

 信頼してくれているのか。

 

 それほど長くはないとはいえ、彼らと一緒に訓練をしたし、ヴリシアから帰ってきた彼らと共に魔物の討伐にも出撃した。相変わらず以前から戦い続けている彼らとの練度の差を目の当たりにして自信を無くすのが当たり前だったけど―――――――それでも、信頼しているという事なのだろうか。

 

 だったら―――――――それに応えないと。

 

 そう思うと同時に、俺は反射的に首を縦に振っていた。

 

「分かった、任せてくれ」

 

「ありがとう、同志」

 

 倭国支部か…………。

 

 ちょっと自信はないが、やってやる。俺も彼らのように強くなって、虐げられている人々を救うんだ。

 

 きっと、それが転生者の力の正しい使い道に違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで支部は2つか…………」

 

 執務室の壁に貼り付けられている異世界の世界地図を見つめつつ、倭国に紅い印をつける。

 

 モリガン・カンパニーの社員から聞いた話だが、倭国で繰り広げられていたボシン戦争が終結してからは、2つ目の鍵が保管されていた九稜城(くりょうじょう)はそのまま放置されている状態らしい。もしかしたら、そこを倭国支部として再利用できるかもしれない。

 

 そう思いながらデスクの上に書類にサインしつつ、先ほどステラが持ってきてくれた差し入れのリンゴを口へと運ぶ。心地よい歯応えとやけに強い甘みに癒されつつ、書類にサインをしてから次の書類をデスクの上に置いていく。

 

 それにしても、団長の仕事は大変だ。毎日訓練をしたり、各拠点の視察も行わなければならない。志願兵の訓練の指導をするときもあるし、転生者が人々を虐げているという情報が入れば討伐に向かう必要がある。

 

 そして時間が空けば、基本的にこのようなデスクワーク。各部署から送られてくる要望に目を通したり、予算の額を確認してサインする仕事がいつまでも続くため、最近の睡眠時間は3時間か4時間程度。おかげで目の下にはクマが浮かぶようになってしまっている。

 

 けれども今日の書類は少なめ。今夜はラウラに搾り取られる羽目になりそうだが、何とかぐっすり眠れそうだ。

 

 それにしても、やけにこのリンゴは甘いな…………。

 

 まさか、ウィッチアップルじゃないよね…………?

 

 以前にそれを食べて幼児の姿になってしまったことを思い出した瞬間、俺は口へと運ぼうとしていたリンゴを静かに皿の上へと戻し、ぞっとした。もう既にいくつか食べてしまったので手遅れかもしれないが、たっぷりと食べるよりはまだマシかもしれない。

 

 それに、普通のリンゴかもしれないし。

 

 ウィッチアップルはダンジョンの中でしか育たない希少なリンゴだから、そう簡単には手に入らないだろう。きっとこれも普通のリンゴに違いない。

 

 だ、大丈夫だよね…………?

 

 とりあえず、書類を片付けよう。多分これは普通のリンゴだから、大丈夫だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、いつも甘い香りがする。

 

 石鹸と花の香りを混ぜたような甘い香りの中で眠っているのは、私の可愛い腹違いの弟。いつもテンプル騎士団に所属する兵士たちや住民たちのために頑張ってる時の表情はエミリアさんみたいに凛々しいんだけど、眠っている時の寝顔はとても可愛らしい。

 

 えへへへっ。やっぱりこの子は女の子みたい。

 

 すぐ傍らで寝息を立てている最愛の弟を抱きしめると、甘い香りがより濃密になる。

 

 前まではあまりこの子の役には立てなかったけど、最近はナタリアちゃんのおかげで料理もできるようになったし、少しずつ役に立てるようになってると思う。やっぱり料理ができないお嫁さんよりも、美味しい料理が作れるお嫁さんの方が嬉しいよね。

 

 そうだ、今度は他の家事にも挑戦してみようかな。できることが増えれば、きっとこの子も喜んでくれると思うの。

 

 彼の頬にキスをしようと思って、顔を近づけようとしたその時だった。

 

 左手の肘の辺りが、柔らかいものに触れたような気がしたの。彼の肌は普通の男の子の肌と比べると確かに女の子みたいに柔らかいけど、それよりもはるかに柔らかい。

 

「…………?」

 

 違和感を感じた私は、そっとタクヤの身体に絡みつかせていた左腕を退けた。いつもならばタクヤの引き締まった胸板の上に乗っている筈の毛布はいつもよりも膨らんでいて、眠っている彼が動く度に揺れている。

 

 おかしいな。隣に寝てるのはタクヤだよね?

 

 まるで女の子の胸みたい…………。

 

 恐る恐る毛布をそっと退けてみると、毛布の下から可愛らしい弟の寝顔が顔を出す。顔つきがエミリアさんに似ている上に蒼い髪を伸ばしているせいで、やっぱり女の子にしか見えない。

 

 そしてその可愛らしい寝顔の弟の身体の方を見た私は―――――――彼が身につけているパジャマの胸の辺りが膨らんでいるのを見て、凍り付いてしまった。

 

「あ、あれ…………?」

 

 男の子って、こんなに胸は大きくならないよね…………?

 

 よく見てみるけど、やっぱりタクヤの身体だった。小さい頃から一緒にお風呂に入っているから、彼の体格はよく知っている。一見すると貧乳の女の子に見えてしまうけれど、ちゃんと筋肉もついている。胸板もちゃんと胸筋がついて引き締まっている筈なのに、どうして膨らんでるの…………?

 

「んっ…………」

 

 毛布を退けたせいで目が覚めてしまったのか、隣で眠っていたタクヤが瞼を擦りながらゆっくりと起き上がる。しかも彼が発する声もいつもよりも高くて、ちょっとだけびっくりしてしまう。

 

 なんだか、私にそっくりな声だよ…………?

 

「ああ、お姉ちゃん…………おはよう」

 

「え、えっ…………たっ、た、た、タクヤ…………?」

 

「ん?」

 

「そ、そ、そ、そっ…………その身体…………」

 

「え?」

 

 狼狽する私を見て違和感を感じたのか、自分の身体を見下ろすタクヤ。やっぱり彼も膨らんでいる大きな胸に気付いたみたいで、目を見開きながら恐る恐るその大きな胸を見下ろす。

 

 そしてその胸が自分の胸だという事を気付いた彼は―――――――目を丸くしながら、叫んだ。

 

「―――――――はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 信じられない。

 

 私の弟が―――――――女の子になっちゃったのだから。

 

 

 

 

 おまけ

 

 声までそっくり

 

ナタリア「そういえば、タクヤって髪を下すとやけにラウラに似てるわよね」

 

タクヤ「そりゃ姉弟だからな」

 

ラウラ「えへへっ♪」

 

タクヤ「ちなみに声も似てると思うぞ?」

 

ナタリア「何で?」

 

タクヤ「この声さ、少しでも男子だと思ってもらえるようにわざと低くなるようにして喋ってるんだよ…………」

 

ナタリア「え? …………ほ、本当の声じゃないの?」

 

タクヤ「うん」

 

ナタリア「じゃあ、本当の声は?」

 

タクヤ「…………ふにゅっ?」

 

ナタリア(ラウラ!?)

 

 

 おまけ2

 

 声までそっくり その2

 

ラウラ「ちなみに私もタクヤの声にそっくりだよっ♪」

 

ナタリア「え?」

 

ラウラ「―――――――クソ野郎は、狩るッ!」

 

ナタリア(タクヤぁ!?)

 

 完

 

 

 


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