異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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銃声と粛清

 

 

 潮風からは、もう血と火薬の臭いはしなくなっていた。

 

 ファルリュー島の戦いは、凄まじい激戦だった。10000名以上の守備隊に戦いを挑んだたった260名の海兵隊が、何人も犠牲になりながらも勝利したのだから。

 

 作戦に参加したメンバーは総勢で420名。負傷したのはその中で76名で、戦死者は直掩部隊や駆逐艦の乗組員を含めると189名。海兵隊の隊員たちも100人以上も犠牲になっている。

 

 エミリアに肩を貸してもらいながら、やっとのことでファルリュー島の地下から外へと出る。エリクサーを摂取して傷を塞ぎ、ちゃんとフィオナに治療してもらったはずなのに、未だに身体から激痛が消える気配はない。銃弾で撃たれた場所や剣で貫かれた傷があった筈の場所には未だに激痛が居座っていて、先ほどからずっと俺を苦しめ続けている。

 

 けれどもこれで、やっと戦いは終わりだ。

 

 李風たちの活躍でミサイルの発射は阻止され、憎たらしい勇者はフィオナが魔術で生み出した異次元空間へと吸い込まれて封印された。この世界で核を使った最低最悪の愚か者は、この世界から隔離されてしまったのである。

 

 エンシェントドラゴンですら封印を自力で破るのに数万年かかってしまうほどの魔術なのだから、転生者では一生無理だろう。ずっと何もない異次元空間を彷徨い続けるしかない。殺してやりたいところだったが、誰もいない空間を彷徨う苦痛を与えるのも悪くない。

 

「エミリア、もういい。大丈夫だ」

 

「嘘をつくな。一番ボロボロなのはお前ではないか」

 

 そう言いながら微笑むエミリア。苦笑いしながらちらりと左を見てみると、俺が持っていたAK-47を背負っているエリスが、ボロボロになった迷彩服を身に纏いながら微笑んでくれる。

 

 これで、子供たちの元へと帰れる。

 

 家のドアを開けた瞬間に駆け寄ってくる愛おしい子供たちの顔を思い浮かべるが、島の外で奮戦していた海兵隊の兵士たちの姿を見た途端、俺たちは一斉に微笑むのを止めた。

 

 正確に言うならば、微笑んでいられるような状況ではなかった。

 

 地下への入り口を死守するために奮闘していた海兵隊の兵士たちの遺体が、いたるところに転がっているのである。中には辛うじて五体満足で済んでいる遺体もあるが、中には四肢のうちのどれかが欠けていたり、そもそも人間の死体なのかと思ってしまうほど木っ端微塵になっている遺体もあって、島の中に猛烈な血の臭いを巻き散らしている。

 

 その遺体を片付けているのも、ボロボロの兵士たちだ。身体中に血まみれの包帯を巻いたり、身体に敵兵の返り血や泥が付着した兵士たち。中には片足を失い、即席の松葉杖を使っているにも拘らず、何とか片手で戦友の手足を拾い集めている兵士もいる。

 

 勝利したとはいえ、無傷で済んだわけではない。

 

 この戦いで生じた”傷”を直視する羽目になった俺たちは、激戦が繰り広げられた基地の入り口を見渡しながら先へと進んだ。

 

「旦那」

 

「ギュンター…………」

 

 ここでの戦いに参加したモリガンの戦友も、無傷で済んだわけではない。

 

 きっと彼も傷を負っているのだろうなとは思っていたが―――――――何とか笑いながらやってきたハーフエルフの巨漢が負っていた傷は、俺たちの想像を超えていた。

 

 もう治療魔術師(ヒーラー)の治療のおかげでかなりの数の傷口が塞がっているのだろうが、それでも彼の身体には治療しきれなかった傷やまだ塞がっていない傷が残っていて、彼が身に纏う迷彩服を真っ赤な服に変貌させている。被弾した個所は主に肩や腹のようだが、どうやらそのうちの1発が彼の左目を抉ったらしく、ここで時間を稼ぐと言って海兵隊の兵士たちと共に残った時には開いていた筈の左目がずっと閉じたままになっている。瞼の周囲には血痕が残っており、その左目がどうなったのかを物語っている。

 

 目を見開きながらギュンターの左目を見据えていると、彼は苦笑いしながら自分の左目を指差した。

 

「すまん、やられちまった。カレンに怒られる」

 

「そうだろうな…………」

 

 けれどもお前は生き残った。

 

 いつも以上にボロボロになっちまったが、生きてるじゃないか。

 

 死んでしまったら、もう娘は抱き上げられない。愛娘を産んだ妻にも再開できない。幽霊になって彼女たちの周囲を彷徨う羽目にならずに済んだのだから、良かったじゃないか。

 

 敵兵が放った理不尽な弾丸で頭を撃ち抜かれて死ぬよりも、まだ傷だらけになった彼の姿を見て涙を浮かべたカレンの平手打ちの方がいい。俺も、敵の弾丸で殺されるのとエミリアのドロップキックならば、エミリアのドロップキックの方がはるかにマシだ。

 

「でも、これでお前は明日からパパだ」

 

「そうだな…………じゃあ、次の目的は爺ちゃんかな」

 

「ははははっ。なら、孫が生まれるまでは死ぬなよ」

 

 というか、ギュンターはハーフエルフだから寿命長いんだよな? 下手したら孫が生まれる頃になってもまだ今の姿のままなんじゃないだろうか。

 

 年老いて杖を使いながら歩いているところに、今のままの容姿のギュンターが「旦那ー! 酒飲もうぜー!」とでっかい声で誘いにやって来る光景を想像して少しばかり笑ってから、俺はエミリアに手を放してもらい、少しばかりふらつきながら仲間たちと一緒に戦死者の遺体を回収することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勇者は封印し、核ミサイルも発射を阻止した。これで少なくともこの世界で核爆発が起こることはないだろう。

 

 しかし、だからと言ってこの島でやることがなくなったわけではない。まだやるべきことが残っている。

 

 ベークライト製のマガジンの中にクリップで7.62mm弾を装填し、次々にポーチの中へと押し込んでいく。勇者との戦いで使用した愛用のAK-47がまだちゃんと作動することを確認してから安全装置(セーフティ)をかけ、背中に背負う。

 

 勇者との戦闘で大活躍してくれたAK-47の表面にはいくつも傷がついており、あいつの元へとたどり着く途中の戦闘で付着した泥や血もまだ微かに残っている。けれどもソ連の生んだ頑丈なアサルトライフルは未だにしっかりと作動してくれる。俺はかなり無茶をする悪い癖があるため得物も無茶な使い方をしてしまうのだが、こういう頑丈な得物ならば壊れる心配をしなくていい。汎用性が低いのが玉に瑕だけど、この頑丈さは本当に頼りになる。

 

 もう既にファルリュー島の守備隊は壊滅していて、残党は辛うじて使えそうな塹壕やトーチカの中に立て籠もっている状態だ。数時間前前で繰り広げられていた死闘のような規模の戦闘は勃発していないものの、敗走した敵部隊を追撃した海兵隊との小競り合いや小規模な戦闘が未だに続いているらしく、島の中からは散発的に銃声が聞こえてくる。

 

 今から俺が赴くのは、その中でも比較的大規模な残党の立て籠もるトーチカや塹壕だ。もう既に勇者がいなくなって烏合の衆と化したとはいえ、死に物狂いで戦い抜いてくれた海兵隊の若い兵士たちをこれ以上危険に晒すわけにはいかない。

 

 それゆえに、俺は数名の兵士を引き連れてここへとやってきた。

 

 若い兵士が運転するハンヴィーのフロントガラスの向こうに、砲弾や爆弾の爆発で生じた様々なサイズのクレーターに支配された大地が広がっている。そのまま死体の墓穴に使えそうなほど深いクレーターの向こうには千切れかけの鉄条網に守られた埋まりかけの塹壕が残っており、その奥にはひときわ大きなトーチカが鎮座している。

 

 壁面に穿たれた長方形の穴の中から覗くのは―――――――機関銃よりも太い砲身。おそらく榴弾砲か対戦車砲だろう。ここでハンヴィーから兵士たちを下すべきだろうかと思ってぞくりとしたが、もう二度とその砲台が動けないことを理解すると、息を吐いてからハンヴィーを減速させ始める。

 

 よく見ると、その砲身の付け根には大穴が開いていた。こちらへと向けられている砲身もよく見ると裂けていて、砲撃ができる状態ではない。

 

 ハンヴィーがクレーターの群れに突っ込んでバウンドする羽目になる前に停車させ、エンジンを止めてからドアを開ける。後ろと助手席に乗っていた兵士たちも95式自動歩槍を手にしてハンヴィーから降りると、疲労でふらつきながらも銃を構え、周囲に敵がいないか警戒し始める。

 

「敵影なし」

 

「よし」

 

 クレーターの中に滑り降り、頭を上げた瞬間にヘッドショットされないことを祈りながら向こうを覗き込む。後ろで警戒を続ける新兵たちにも「クレーターに潜れ」と目配せすると、激戦を終えたばかりの兵士たちも慌ててクレーターの中へと滑り込んだ。

 

 きっと彼らはかなり疲れ果てている筈だ。ふかふかの毛布とベッドが目の前にあったのならば、脇目も振らずにベッドに飛びかかるに違いない。

 

 彼らが睡眠を欲しているのは理解できる。もちろん、”永眠”はごめんだという事も分かる。

 

 だから彼らは疲れ果てた身体に鞭を打ち、砲弾や爆弾が形成したクレーターの中に転がり込んだ。泥まみれのクレーターの中には細かい砲弾の破片や人骨の一部と思われる白い小さな欠片が転がっていて、ブーツで踏みつけるとあっさりと砕けてしまう。

 

 クレーターから顔を出し、敵がいないのを確認してから穴の中から飛び出す。そして目の前のクレーターの中へと転がり込み、後続の兵士たちが這い出すのを見守りつつ、泥で汚れたAK-47をトーチカへと向ける。

 

 無人である筈がない。必ず敵の残党が潜んでいる筈だ。

 

 もし本当に残党がいたのならば、もちろん始末する。絶対に捕虜にはしない。負傷兵であっても、命乞いをしてくる兵士でも絶対殺す。

 

 だから実弾を装填してきた。殺す気がないなら実弾なんて装填しない。

 

 そうやってクレーターからクレーターへと転がり込む”引っ越し”を繰り返しているうちに、敵が使っていた筈の塹壕へとたどり着いた。兵士たちが懸命にスコップで掘った塹壕の中には細かい石やバラバラになった人間の死体が散らばっていて、いたるところに粉々になったライフルや、空になった薬莢が転がっている。

 

 息を呑んでから、後方をついてくる兵士たちに目配せする。

 

 崩れかけの塹壕の奥へと進むにつれて、地面がちょっとした斜面になっている。そのまま先に進むと鉄製の扉のようなものが鎮座していて、あのトーチカの中へと通じているようだった。

 

 爆発物が仕掛けられている恐れがある。全く警戒せずに扉を開け、敵の思惑通りに吹っ飛ばされてあげるのは本物の愚者でしかない。せっかく戦いを生き延びたのに、残党の掃討で命を落とすわけにはいかない。

 

 新兵たちにその場で待機するように指示を出し、外殻で全身を覆いつつ扉へと素早く近づく。防御力のステータスが高いならば爆発物の爆発に巻き込まれたとしても死ぬことはないだろうが、その爆発物を設置した相手の攻撃力がこっちの防御力を上回っていれば、転生者でもこんがりと焼けたぐちゃぐちゃのミンチになる。

 

 死ぬならば老衰がいい。家族に看取ってもらえれば最高だ。

 

 だから俺は、老衰以外の死に方は認めない。

 

 AK-47を背中に背負い、腰のホルスターの中から漆黒のトカレフを引き抜く。室内戦では少しでも取り回しの良い得物の方が望ましいのだ。例えばSMG(サブマシンガン)やPDWのように銃身が見近く扱い易い得物が室内戦の王者と呼べる存在だが、今の俺が装備しているのは7.62mm弾を連射可能で、なおかつ壊れにくいAK-47と、安全装置(セーフティ)が存在しないトカレフのみ。殺傷力では大幅に落ちるものの、取り回しがいいのは後者だ。

 

 呼吸を整え、目を瞑りながら左手をドアノブへと伸ばす。

 

 いや、ご丁寧に開ける必要はない。今の俺はいつもの紳士ではなく、戦場で荒れ狂う獣なのだ。

 

 知識がない獣は礼儀正しくドアを開けることはない。荒々しい剛腕で叩き壊すか、別の出入り口から狡猾に潜り込むものだ。だから俺もそうする。

 

 左手を更に分厚い外殻で覆う。変異を起こしてキメラになってからは常に外殻に覆われている状態の左腕が肥大化したかと思うと、表面を覆っている外殻が隆起と増殖を繰り返して急激に分厚くなり、瞬く間にゴーレムみたいな腕に変貌する。

 

 キメラの外殻は、慣れればこのように分厚く生成することもできるのだ。もちろん防御力は爆発的に跳ね上がるし、攻撃力も大幅に増幅される。とはいえ瞬間的にここまで硬化するのは不可能なので、習得するのには時間がかかった。

 

 こっちを見て驚く新兵たちに向かってニヤリと笑ってから、俺は思い切りその左腕をドアへと叩きつけた。爆風や潮風の影響でかなり劣化していたドアに激突した俺の左腕はあっさりとめり込み、潮風と爆風に耐え続けていたトーチカのドアを容易く室内へと吹っ飛ばしてしまう。

 

 豪快な金属音と、その音と引き換えに漏れ出してくる猛烈な血の臭い。ハンドガンを構えながらトーチカの中を覗き込むよりも先にどのような光景が広がっているのか察してしまいつつ、素早くハンドガンをトーチカの中へと向ける。

 

 腕を硬化させた段階で、微かにトーチカの中から何人もの男性の呻き声が聞こえてきていた。呻き声と血の臭いがセットになれば、目の前に広がる筈の光景は容易く想像できるのだ。

 

 案の定、トーチカの中に広がっていた光景は―――――――未来予知でも身につけてしまったのだろうかと思ってしまうほど、予想通りだった。

 

 コンクリートや装甲で守られた壁に寄り掛かる何人もの若い兵士たち。よく見てみるとその兵士たちが身に纏う迷彩服は血が滲んでいて、腕や足が途中で千切れている。中には顔に火傷を負った兵士や身体中に包帯を巻いて苦しんでいる兵士もいて、いきなりドアをぶん殴って銃を向けている俺を見つめながら怯えていた。

 

 武装している兵士は1人もいない。殆どの兵士が負傷兵で、軽傷で済んでいる兵士や五体満足で済んだおかげで動ける兵士たちが、なけなしのエリクサーを分け合いながら何とか看護している。

 

「て、敵…………?」

 

「嘘だろ…………? おい、頼む…………見逃してくれぇ…………」

 

「殺さないで…………」

 

 殺さないで…………?

 

 数年前の俺だったら―――――――多分見逃していた事だろう。銃をホルスターに戻して踵を返し、後方で待機している新兵たちに「誰もいなかった」と噓をついて、彼らを見逃していたに違いない。

 

 きっとここにいる兵士たちも、勇者の理想のために必死に戦ったのだろう。俺たちのように、死に物狂いで。

 

 だが、それが何だ?

 

 ネイリンゲンで核を使い、何の罪もない人々を虐殺しておいて―――――――「殺さないで」だと?

 

 トカレフのグリップを握り締めている右腕に、無意識のうちに力が入る。漆黒のスライドが震えてガチガチと音を奏で、トーチカの中へと反響させていく。

 

 ネイリンゲンで死んでいった人々の姿がフラッシュバックする。上顎から上を吹っ飛ばされたサラや、カウンターの裏で血まみれになりながら、最後の最後までサラの事を心配していたピエール。倒壊した建物の下敷きになった市民や、街中に転がっていた無残な焼死体。

 

 勇者のクソ野郎のくだらない理想が、何千人もの命を奪った。

 

 何の罪もない人々の、”尊い”命を。

 

「ま、待ってくれ、話を聞いてくれないか? ここにいるのはまだ若い兵士たちばかりだ。頼む、見逃してくれたら―――――――」

 

 その話を最後まで聞いたら、きっと気が狂ってしまう。

 

 だから俺は最後まで聞かなかった。

 

 ズドン、と聞き慣れた火薬の咆哮がトーチカの中で反響する。俺の目の前に立ちはだかり、負傷兵たちを庇うために必死に喋っていた兵士の身体が、びくん、と震えたかと思うと、唇の間からゆっくりと鮮血が溢れ始めた。

 

 ゆっくりと自分の腹を見下ろす兵士。あの咆哮が轟くまでは存在しなかった筈の、腹に開いた小さな風穴を見つけた彼は、目を見開きながら俺の顔を見つめ―――――――そのまま後ろへと崩れ落ちる。

 

「しょ、少尉!?」

 

「…………ふざけんじゃねえ」

 

 トカレフから飛び出したばかりの薬莢が、コンクリートの床を転がる。

 

 床に転がった男の死体を見ていた負傷兵たちが、次々にブルブルと震え始めた。

 

 やっと理解したのだ。俺は最前線で負傷して苦しんでいる彼らを救いにやってきた”救世主”ではなく、魔の前に立ち塞がる者たちを蹂躙し、全てを焼け野原にする”魔王”だという事を。

 

 そしてその魔王が、目の前にいるのだという事を。

 

「い、いやだ…………いやだ、やめてくれ! 誰か助けて! お母さんっ…………お母さんっ!!」

 

 両足のない負傷兵が、目を見開いて怯えながらトーチカの壁へと向かって這い、機関銃が外へと向けて設置されている穴へと必死に手を伸ばす。ちゃんと両足がくっついていたのであれば届く筈の高さだが、もし仮に足がついていたとしても、機関銃の銃身が出せる程度の大きさの穴から兵士が逃げ出すのは無理だろう。

 

 それに、彼にはもう”お母さん”はいない。

 

 ここには、お前1人だ。

 

 安心しろ。お前だけだ。

 

 ゆっくりとその兵士に歩み寄り、血の滲んだ迷彩服を鷲掴みにする。涙を浮かべる兵士が腕を振り回して必死に抵抗するが、その腕に頬を打ち据えられても無視してそのまま兵士の眉間にトカレフの銃口を押し付ける。

 

 そして―――――――何も言わずに、そのままトリガーを引いた。

 

 いつものようにスライドが後ろへとブローバックして、熱を纏う空の薬莢を吐き出す。くるくると回転しながら落下した薬莢が、物騒な銃弾の一部だったとは思えないほど美しい金属音を奏でて、全ての音を黙らせる。

 

 静かになった。

 

 もう、この兵士は暴れない。周囲でこの兵士が殺されるのを目の当たりにした兵士たちも、完全に怯えて震えているだけだ。

 

 トカレフを静かにホルスターに戻し、背中のAK-47を引っ張り出す。安全装置(セーフティ)を解除してセレクターレバーを解除し、怯える負傷兵たちへと銃口を向けた俺は―――――――血まみれになった状態で、笑っていた。

 

「―――――――お前ら、全員粛清だ」

 

 

 

 

 


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