異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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力也の拷問

 

 

 川の中に突っ込んだ餌に魚が喰らい付いたことに気付いた瞬間、ちょっとだけぞくりとする。後は思い切り釣り上げてやるだけなのだから。

 

 魚を釣り上げる瞬間にも似た感覚を感じながら照準器き込んでいると、その向こうでクロスボウを向けている黒服の男が目を見開いたのがはっきりと見えた。木箱しか積んでいなかった筈の荷台から、得体の知れない得物を構えた得体の知れない男が姿を現したのだから当たり前だろう。

 

 ―――――――獲物は釣り上げた。

 

 釣り上げられた哀れな魚は、あとはそのまま家に連れていかれて調理されるだけ。森に仕掛けた罠にかかってしまった哀れなウサギやキツネも同じだ。

 

 こいつらは、そいつらと同じだ。

 

 当たり前だが、この世界に重機関銃は存在しない。代わりにでっかい矢をぶっ放すバリスタは存在するが、このPM1910重機関銃はバリスタよりもはるかにコンパクトで、まだ軽い。

 

 とはいえ重量は60kgを超えるので、基本的に台車の上に設置して使用するのが鉄則だ。転生者ならば持ち運びながら連射するのも不可能ではないが、少なくとも馬車の上で発砲するのであればセオリー通りの運用が一番である。

 

「わ、罠だ! 全員反転―――――――」

 

「До свидания|(あばよ)!」

 

 偽物め。

 

 トリガーを押した瞬間、照準器の向こうが猛烈なマズルフラッシュで埋め尽くされた。右側から伸びるベルトが凄まじい勢いで機関銃に喰らいつくされていき、照準器の向こうに見えるマズルフラッシュの向こうでは慌てて逃げようとする黒服の男たちが蜂の巣にされていった。

 

 このPM1910が使用する弾薬は、モシン・ナガンやウィンチェスターM1895と同じ7.62×54R弾である。大口径のライフル弾をフルオートでぶっ放す代物なのだから、その弾幕の中に飛び込んでただで済むわけがない。

 

 男たちが乗っていた馬の頭を貫通した数発の弾丸が、ひしゃげた状態で乗っている男の頭を直撃。辛うじて成人男性の頭蓋骨を木っ端微塵にできるほどの運動エネルギーを維持していた弾丸たちが男の頭を食い破り、頭蓋骨と脳味噌を滅茶苦茶にしていく。

 

 もう1人の男へと照準を合わせ、そちらへと銃口を向ける。すでに1人の男を食い破っていた獰猛な機関銃を向けられた男は慌てて馬を左へと方向転換させつつクロスボウを放ってきたが、狙いを定める余裕はなかったのだろう。クロスボウから放たれた短い矢は俺たちの乗る馬車の上を通過して暗闇の中へと消えていく。

 

 容赦なくそいつも穴だらけにすることにした俺は、慌てて逃げていく男に弾丸をお見舞いする。

 

「がっ…………」

 

 モリガンの制服を模した黒服に覆われた背中から、鮮血と肉片が吹き上がる。

 

 瞬く間に背筋や肩甲骨を抉った弾丸の群れは、ついにそのまま背骨や脊髄まで木っ端微塵に粉砕すると、黒服どころか背骨の周囲を覆う肉の大半を引き剥がしてしまう。

 

 俺たちは依頼を引き受ける度に、当たり前のように命を奪ってきた。人間だけではなく、魔物やドラゴンの命もである。

 

 この世界では魔物と戦うのは当たり前の話だ。一番弱い魔物はゴブリンと言われており、ギルドによっては入団したばかりの新人の”見習い卒業試験”でゴブリンを討伐させるという。

 

 まだ魔物ならば、当たり前のように殺せる。けれどもこの世界で人間を殺すのは、前世の世界のように平和ではないとはいえ、魔物ほど”一般的”とは言えない。

 

 けれども俺は、もう今のように人を殺してもなんとも思わなくなった。数秒前までは武器をちらつかせて調子に乗っていた馬鹿が、今しがた放った弾丸でただの死体になるだけである。

 

 この世界を人間の身体に例えるならば、人々を虐げるようなクソ野郎は身体の中で増殖する忌々しい病原菌のようなものだ。そういう病原菌はとっとと摘出してしまった方がいい。この身体(世界)が死ぬ前に。

 

 病原菌が可哀そうだからという理由で、患者を治療しないバカな医者はどこにもいないだろう。

 

 だから俺たちはクソ野郎を殺す。

 

 奴らの命は塵よりも軽い。だから尊い命を守るために、塵よりも軽いクソ野郎の命を奪うのだ。

 

「信也!」

 

「分かってる!」

 

 機関銃の連射をいったん止め、ちらりと後ろを振り向きながら叫ぶ。手綱を握って馬を走らせている御者は頭にかぶっていた騎士団の鉄兜を脱ぎ捨てると、愛用の眼鏡をかけ直してから馬たちに前方の荷馬車の隣へと向かわせる。

 

 俺が乗る荷馬車の御者をやっていたのは、オルトバルカ王国騎士団から借りた制服と防具に身を包んだ弟の信也だ。さっきはどうやら襲撃してきた男たちに脅されて怯えている”演技”をしていたようだけど、今では楽しそうに笑っている。

 

 あいつが怯えているのを演技だと見抜くことができず、そのまま脅し続けている男たちの声を聴きながら俺も笑ってたよ。

 

 やがて荷馬車がもう1台の荷馬車の隣へと移動する。もう1台の荷台の上には剣やメイスを装備した騎士たちが何も言わずに座っており、襲撃してきた男たちと隠れていた俺が機関銃で交戦を始めたというのに微動だにしない。

 

 実は、そこに座っている騎士たちは人形の上に防具と制服を着せただけの囮なのだ。騎士団の騎士を輸送しているように見せかけるために用意した簡単な囮だが、敵には見破られなかったらしい。

 

 すると、その微動だにしない囮の騎士たちを荷台に乗せた荷馬車の御者が、隣へとやってきた馬車に気付いてこっちへと叫んだ。

 

「旦那ぁ! こいつらどうする!? 皆殺しか!?」

 

「いや、1人は生け捕りにしておく!」

 

 こいつらにこんなことをさせた”クライアント”にも、ちゃんと報復(お返し)をしてあげないとな。

 

 PM1910の残弾をちらりと確認しつつ、素早く周囲を確認する。荷馬車を襲撃してきた敵の数は3人。そのうち2人はもう既に機関銃で蜂の巣にしたから、残りは1人だな。こいつは殺さずに生け捕りにしてやろう。こいつらが自分たちで今回の事件を引き起こしたのならば、拷問して仕返しをしてから騎士団に引き渡してモリガンは何もしていなかったことを証明してもらうつもりだが、もしこいつらの裏に誰かがいればそいつの情報を聞き出し、こいつらのクライアントにもお返しをしなければならない。

 

 生き残った襲撃者は慌てて腰に下げていたランタンを消したらしい。こういう暗闇を移動する際はランタンは必須だが、こちらからすれば敵の居場所が分かるからかなりありがたかった。正しい判断だが―――――――残念ながら、蹄の音で位置は分かる。

 

 だんだん遠ざかっていくな。…………おそらく3時の方向。

 

 目を瞑りながら聞こえてくる蹄の音を頼りにし、機関銃をそちらへと旋回させ――――――トリガーを引いた。

 

 マズルフラッシュが一瞬だけ煌き、台車に取り付けられた機関銃が反動(リコイル)で震える。とはいえ台車に搭載されているのだから、ライフルを手に持ってぶっ放す時と比べると反動(リコイル)はほとんど感じない。

 

 そしてその弾丸が疾駆していった暗闇の向こうで―――――――遠ざかろうとしていた蹄の音が、途絶える。

 

 馬の鳴き声と、その馬から放り出される男の絶叫。人体が地面に叩きつけられる音をはっきりと聞いた俺は、御者を担当する信也に「回収頼む」と言ってから、身体中の皮膚を外殻で硬化させ、荷台の上から躍り出た。

 

 キメラの外殻はサラマンダーの外殻に匹敵するほど堅牢で、一般的な銃弾ならばあっさりと弾いてしまう。しかもフィオナの検査では、キメラの外殻の表面は非常に硬く、その下に柔らかい部分があり、更にその下に硬い外殻が待ち受けているため、ちょっとした複合装甲として機能するのだ。

 

 さすがに対戦車用のAPFSDSや対戦車ミサイルには耐えられないものの、装甲車の機関砲やガトリングガンの掃射には耐えられる。

 

 荷馬車から落下するダメージをこの外殻で防ぎつつ、護身用にホルスターの中に入れておいたトカレフTT-33を引き抜いてから先ほど男が落馬した音が聞こえてきた方向へと走る。先ほどの戦闘は1分足らずだったとはいえ、少々派手に撃ち過ぎた。急がなければ夜行性の魔物がやってくる可能性がある。

 

 ライトで夜の草原を照らしながら進んでいると、先ほどの射撃を喰らった馬が横たわっていた。左の脇腹と首の部分に命中したらしく、皮膚と肉が抉れて絶命している。

 

 余裕があったらこの馬も回収して馬刺しにしよう。夜食に丁度良さそうだ。

 

 そしてその近くに、落馬した男が横たわっていた。落下した際に地面に頭を打ってしまったのか、モリガンの制服を模した黒い服に身を包んだ男は、地面に仰臥(ぎょうが)したまま微動だにしない。

 

「クソ野郎め」

 

 クライアントがいるのならば、絶対に聞き出してやる。

 

 俺とこいつを回収するためにUターンしてくる荷馬車の蹄の音を聞きながら、俺はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モリガンの屋敷の地下には、射撃訓練場がある。

 

 元々は騎士団が使用する弓矢用の設備だ。それを少しばかり改造して、銃の射撃訓練や試し撃ちに利用している。ただしそれほど広くはないため、マークスマンライフルやスナイパーライフルのような射程距離の長い武器の訓練をする際は、ここではなく外にある広大な草原を利用するようにしている。

 

 その射撃訓練場へと下りていく階段の扉にオルトバルカ語で『使用禁止!』と書かれた紙を貼りつけてから、射撃訓練場へと鼻歌を歌いながら向かう。

 

 数分前まで回収してきた馬を包丁で切って馬刺しを作ってたから、俺の服には血の臭いがこびりついている。家に帰る前に屋敷で洗濯してから持って帰った方が良さそうだ。子供たちにこんな臭いを嗅がせるわけにはいかない。

 

 馬刺しを楽しみにしつつ入口の扉を開け、中へと入る。目の前には見覚えのあるレーンがいくつか並び、その向こうには弾痕が刻まれた灰色の壁が広がっている。

 

 少しばかり武器の試し撃ちをしたくなったが、ここにやってきた理由はいつもの射撃訓練ではない。

 

 鼻歌を止めて右側をちらりと見てから、ため息をつく。

 

 射撃訓練場の脇には椅子が置かれており、その上には1人の男が腰を下ろしている。けれども気を失っているらしく、全く動く気配がない。

 

 その男が身に纏っているのは真っ黒なコートで、フードには一枚だけ深紅の羽根がついている。そう、昨日の夜に拘束した偽物のモリガンの1人だ。他にも2人ほど仲間がいたが、その2人は機関銃で射殺してしまっている。

 

 射撃訓練をするはずの場所に気を失った男が拘束されていて、しかも今からそこでちょっとした拷問が始まるのだ。できるだけ射撃訓練場が汚れないように気を付けるつもりだが、こいつが口をなかなか割らなかった場合はここを完璧に掃除して綺麗にする覚悟で拷問する予定である。

 

 殺すつもりはないが―――――――多分、五体満足では帰れないだろうな、こいつ。

 

 そんなことを考えながら左手を握り締め、気を失っている男の腹に思い切りボディブローをお見舞いする。左手は変異の影響なのか常に外殻で覆われている状態であり、もう二度と人間の左手に戻ることはない。そんな堅牢な左手で腹を思い切りぶん殴られた男は、いきなり目を見開きながら体内の空気をすべて吐き出すと、床に涎を巻き散らしながら呻き声を上げ始めた。

 

「おはよう。元気か?」

 

 無表情でそう言いながら、ポケットの中からカランビットナイフを取り出す。

 

 拷問に使うのはこれだけだ。

 

「ゲホッ、ゲホッ…………て、てめえ、よくも…………」

 

「よくも? …………ギルドの評判を落とす真似をして、よくそんなことが言えるな」

 

 もう一発ぶん殴ってやろうかと思ったが、やめておこう。時間が長引いてしまう。

 

 カランビットナイフをくるりと回しながら男に近づきつつ、俺は低い声で問いかける。

 

「教えてくれないか? 今回の一件は、お前らの意志でやったのか? それともクライアントか?」

 

「誰が言うか!」

 

「ああ、そう」

 

 じゃあ、痛めつけないとな。

 

 わざとらしくカランビットナイフを振り上げ、その切っ先を椅子に縛り付けられている男の右手の小指のすぐ近くに突き立てる。それを目にしていた男の顔に瞬く間に脂汗が浮かび、ぶるぶると震え始めた。

 

 簡単に吐いてくれれば助かるよ。少なくとも足が両方ついてれば、自分で騎士団に出頭できるからな…………。

 

「…………で、クライアントはいるの?」

 

「…………ッ!」

 

 吐くつもりはないのか、震えながら首を横に振る男。やはり指が数本なくなるか、それとも腕が切り落とされない限り答えるつもりはないのかもしれない。

 

 じゃあ遠慮なく切り落とさせてもらおう。突き立てていたカランビットナイフを勢いよく指のある方向へと倒しつつ手前へと引っ張った瞬間、震えていた男が目を瞑りながら絶叫を始めた。

 

 一般的なナイフよりもはるかに小さいナイフの刀身が小指の皮膚にめり込み、肉を切断して骨に触れたのだ。このまま力を込めて骨を切断すれば、もう小指はあっさりと零れ落ちる。男が何か言おうとしたが、俺はお構いなしにそのまま右手に力を込め続けた。

 

 次の瞬間、男の絶叫が一気に大きくなった。みしり、と骨が金属の刃に断ち切られる感触を感じながら静かにカランビットナイフを引き抜くと、血まみれになった小指の第二関節から先がころりと椅子の上から転がり落ちてきて、床の上に小さな赤い模様を描く。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ああっ…………あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ついさっき、馬刺し作ってきたんだよね」

 

 カランビットナイフの血を指先で拭き取りながら男に言うが、きっと指を切り落とされた激痛に耐えることしかできないだろうから俺の言葉は聞こえていないのだろう。

 

 床に転がり落ちた男の小指を拾い上げ、もう一度床に落としてからブーツで思い切り踏みつぶす。小指がブーツの裏であっさりと潰れる感触を感じた瞬間、俺は少しばかり後悔した。ここはギルドの仲間たちが使う射撃訓練場だから、汚したら責任持って掃除する必要がある。

 

 つまり、ブーツの裏で潰れた小指の残骸も掃除しなければならないのである。仕事が増えるから、もちろんバラバラに切り裂いたらとんでもないことになる。

 

 潰れた小指の上からそっとブーツを退け、ぐちゃぐちゃになった小指の残骸を目の当たりにしながら息を吐く。

 

「馬刺しは好きだけど、人間で刺身は作りたくないんだ。分かるよな? そもそも俺はちゃんとした料理人じゃないから、お前をちゃんと”調理”する自信もない」

 

 男のフードを取り、その下から伸びる金髪を左手で思い切り掴みながら、俺は低い声で言った。

 

「だからさ、牛や豚の死体と一緒に捨てられたくなかったら―――――――とっとと全部話すんだ、クソッタレ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 個人的に、ティータイムは質素な空間で楽しむ方が好きだ。今までに何度か貴族のお茶会やパーティーに招待されたが、過剰に装飾された部屋の中や広すぎる庭が一望できるパラソルの下では、はっきり言うとかなり落ち着かない。

 

 だからもし家を購入するならば、一般的で質素な家にしようと決めていた。貴族出身の妻たちには申し訳ないような気がしてしまうが、どうやらエリスとエミリアも気に入ってくれているらしい。

 

 今日も朝食に最愛の妻が焼いてくれた最高の焼き加減のトーストと手作りのジャムを楽しんでから、食後に新聞を読みつつ紅茶を飲む。個人的に好きなのはオルトバルカ産の紅茶だな。ヴリシア産ほど香りは強くないものの、さっぱりしていて飲みやすい。

 

「なあ、力也」

 

「ん?」

 

 キッチンの向こうで皿を洗っていたエミリアに声をかけられた俺は、記事を読むのを止めて顔を上げる。今まで一緒に戦ってきた戦友でもあるエミリアに一番似合うのは腰に剣を下げて制服を身に纏っている姿だと思っていたんだが、こうして私服の上からエプロンを身につけている姿も可愛らしい。

 

「ところで、例の一件はどうなったのだ?」

 

「ああ、記事載ってるよ」

 

 彼女を手招きしてから新聞を広げると、モリガンの偽物たちに関する記事が載っていた。

 

≪モリガンは無罪! 黒幕は偽物!?≫

 

「おお、良かったじゃないか」

 

「まあな」

 

 あの後、生け捕りにした男は全てを吐いた。

 

 男は元々盗賊団の構成員の1人だったらしく、数年前にモリガンが壊滅させた大規模な盗賊団の生き残りだったという。殺された仲間の敵討ちのためにモリガンになりすまして事件を起こし、俺たちの仕業にしてからモリガンを罪人にするつもりだったようだ。

 

 俺たちと戦っても勝ち目がないと分かっていたからこそそういう手段を選んだのだろう。

 

 賢い部分は認めるが、それ以外はすべて否定する。そもそも仲間を失う羽目になったのは仲間と一緒に略奪を繰り返していたからだ。それの復讐と言われても、こちらからすれば自業自得としか言いようがない。

 

 結局その男は自力で近隣の騎士団の駐屯地に出頭したというが、受け入れた騎士の話では”両腕の指が欠損しており、身体中に火傷の痕があった”という。

 

 男の身柄を拘束した騎士たちは、そのままその男を王都の裁判所へと移送。村を襲撃して何人も村人を殺した挙句、それをモリガンの仕業にしようとしたという事でその男には死刑が言い渡され、今日の午後3時に執行されるという。

 

 襲撃を受けた村の生き残りはエイナ・ドルレアンで受け入れることが確定しており、移送する馬車の護衛をするという依頼を既にモリガンが受けている。もちろんそれには俺も参加予定だ。男たちの仕業とはいえ、汚名を着せかけられたモリガンが誠実なギルドであるという事をアピールする機会になるしな。

 

 そしてその記事を書いた新聞社は、その男たちの仕業だったことを知らずに記事を書いたという事でお咎めなし。編集長からはモリガンに賠償金を支払うという打診があったものの、『我々は気にしておりませんので、賠償の必要はありません。今後も記事を楽しみにしてますよ』というメッセージを伝え、賠償の方は断った。

 

「これで一件落着だな」

 

「そうだな」

 

 すぐ後ろにやってきていたエミリアの頬を撫でてから、静かに唇を奪う。

 

「これで可愛い妻とイチャイチャできる」

 

「ばっ、馬鹿者…………!」

 

「な、なんだよ、いいじゃないか!」

 

 顔を赤くするエミリアにそう言いながら、俺は笑う。

 

 異世界に転生する羽目になった時は絶望していたけど―――――――こうして妻たちや子供たちと生活できるのは、とても幸せだった。

 

 

 


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