異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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最後の攻撃

 

「弾薬庫への注水は!?」

 

「な、何とか間に合いました………」

 

 幸い、弾薬庫の中の砲弾が誘爆し、この戦艦モンタナもろとも海の藻屑になる羽目にはならなかった。敵艦の砲弾が立て続けに命中したことによる火災が弾薬庫まで及んだ時はここで海の藻屑となり、モンタナの残骸と共にウィルバー海峡に沈む運命を覚悟したが、乗組員たちが必死に注水してくれたおかげで、爆沈するという結末を回避できた。

 

 胸を撫で下ろしたいところだが、あくまでも弾薬庫の爆発を回避しただけだ。敵艦には大損害を与えたとはいえ、未だに敵の超弩級戦艦は2基の主砲で砲撃を続行している。それに対してこちらは度重なる被弾で火災が鎮火しきれず、艦もやや左舷に傾斜している。傾斜は反対側への注水で対応できるが、一番深刻なのは戦闘力である。

 

 第三砲塔は同航戦の前に潰され、第二砲塔と第一砲塔も破壊された。辛うじて砲撃を続行できるのは後部甲板の第四砲塔しかない。

 

 傷ついた乗組員を乗せたまま、満身創痍の戦艦で、まだこちらを撃沈した後に艦砲射撃ができるほどの余力を残した敵の戦艦に勝利するのは絶望的である。命中してくれれば勝機はあるが、敵がこちらに余裕を与えてくれるわけがないし、3門の主砲しか使えないモンタナと、6門も主砲を残しているジャック・ド・モレーではどちらが有利なのかは火を見るよりも明らかだった。

 

 冷や汗を浮かべながら、思わず軍帽を頭上から取ってしまう。CICの中で作業を続ける乗組員たちが固唾を呑みながら俺を見つめ、次に出す命令を待っている。

 

 真っ先に「総員退艦」という指示を下すべきだと思ってしまった俺は、自分の顔面を思い切り殴りつけたくなった。確かに何度も被弾し、主砲もほとんど使えなくなるまで損害を被り、更に浸水まで発生しているのだから艦を棄てて逃げるのも正論だ。高性能な艦を失うのは痛手だが、それを運用するノウハウを身につけた乗組員たちを殺すよりは、彼らを生かして次に乗る艦で奮戦すればいい。

 

 だが、ここで逃げ出したことが吸血鬼たちにバレれば―――――――俺たちは間違いなく粛清されるし、帝都の収容所で待つ家族や恋人たちも殺されるに違いない。そう、この艦に乗っている乗組員たちは、親しい人々をあの吸血鬼共に人質に取られているのだ。無事に助け出すためにはここで戦い、奴らを撃退しなければならない。

 

 だから「総員退艦」と言うわけにはいかない。もしそう言ってここにいる乗組員たちを海へと放り出せば、強制収容所に残してきた恋人(アリサ)がどうなるのかは想像に難くない。

 

 最後まで、戦うしかないのだ。

 

 CICの外からは、相変わらず敵の砲弾が海面に着弾する音が聞こえてくる。このモンタナに大損害を与えた敵艦の砲手はかなり優秀らしく、外から聞こえてくる音も段々と大きくなりつつある。あと数回の砲撃で、またモンタナに着弾するだろう。

 

 大切な人々を人質に取られた乗組員たちの視線と、外から聞こえてくる砲撃の音に急かされながら、頭の中に浮かんでくる選択肢を拾い上げ、次々に投げ捨てていく。一体どれが正しい決断なのか分からない。このまま乗組員たちを道連れにして敵艦に最後の攻撃を仕掛けるべきなのか、それともここで乗組員たちを退艦させ、吸血鬼たちに反旗を翻すべきなのか判断できない。

 

 前者はほぼ確実に生還することはできないだろう。浸水の影響で航行速度が落ち、攻撃力も殆ど引き剥がされた満身創痍のモンタナで、まだ余力を残している超弩級戦艦に挑むのは自殺行為だ。その特攻で敵艦を撃沈できる可能性も低い。せめて一矢報いる程度が限界だろう。

 

 後者も、無事に彼らを助け出せる可能性は低い。吸血鬼たちに知られずに強制収容所へとたどり着くのは難しいだろうし、もし仮に俺たちが反乱を起こしたことがバレれば、間違いなく人質たちは悲惨な運命を辿る。

 

 一瞬だけ、俺はあの収容所の中にいるアリサの顔を思い浮かべた。収容所で彼女と面会した後に、もう彼女と会うことはないと覚悟を決めたつもりだったのに、彼女に会いたいという気持ちが急激に肥大化し、覚悟を崩壊させていく。

 

 せめて死ぬならば、もう一度だけ彼女に会ってから死にたい。

 

 胸ポケットの中から写真を取り出し、愛おしい彼女の顔を見下ろした。もしここで俺が海の藻屑になったら、彼女は泣くだろうか?

 

「艦長…………」

 

「…………第四砲塔は、まだ砲撃を継続できるか?」

 

 問いかけると、乗組員は冷や汗を浮かべたまま首を縦に振った。

 

「――――――悔しいな」

 

 結局、吸血鬼たちに捨て駒にされて海の藻屑になるのが悔しい。もしもアリサが人質に取られていなかったならば、俺は大喜びで吸血鬼たちに反旗を翻していたことだろう。

 

 胸ポケットに写真をしまうと同時に、俺の中からもう片方の選択肢が――――――消えた。

 

 愚かでもいい。せめて、最後に胸を張れるような立派な戦果が欲しい。そうすればきっとアリサも喜んでくれるはずだ。

 

「――――――本艦は戦闘を継続する」

 

 乗組員たちの顔を見渡しながら、俺はそう言った。

 

 俺と同じように家族や恋人を人質に取られている乗組員たちは、今の俺の命令に満足してくれたようだった。

 

 反旗を翻せば、間違いなく人質たちは無残に殺される。大切な人たちの命を賭けるよりも、自分の命を賭けることを選んでくれたのだ。自分の命を賭けて敵艦に最後の攻撃を仕掛けて撃沈し、人質に取られている恋人や家族と再会する方がまだ現実的な選択肢だ。可能性はかなり低いが、こちらを選ぶしかない。

 

「ほら、早く戦闘準備だ!」

 

「第四砲塔、砲撃続行だ! そのまま撃て! 敵艦にぶちかましてやろうぜ!!」

 

「機関室、最大出力だ。とにかく全力を出せ!」

 

 ここで戦い抜き、一緒に燃え尽きることを選んでくれた乗組員たちに感謝しつつ、俺は再び軍帽をかぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 敵艦からの砲撃は、未だに続いている。激しい同航戦での徹甲弾の応酬で傷つき、主砲が殆ど使い物にならなくなったモンタナだが、使えるのが後部甲板の1基だけになってもまだ砲撃を続けてくる敵艦の執念に、俺はCICの中で恐怖を感じていた。

 

 浸水も発生し、武装もほとんど使えなくなった状態で袋叩きにされ、ダメージコントロールで対処しきれないほどのダメージを負っていれば、戦線離脱か総員退艦を選択するのが普通だ。敵艦の中で乗組員たちが必死に応急処置を繰り返して艦を支えているならば戦闘の継続を選んだ敵艦の艦長の判断は理解できる。だが、もしダメージコントロールが追いついていないにもかかわらず戦闘の続行を選択しているのだとすれば、正気の沙汰とは思えない。

 

 こちらにはまだ帝都を艦砲射撃できるほどの余力があるし、主砲も前部甲板の2基は健在だ。立て続けに被弾して満身創痍の戦艦で攻撃を継続するのは自殺行為でしかない。

 

「敵艦、進路を変えました」

 

 乗組員に言われた俺は、モニターを見上げて敵艦の反応を凝視する。

 

 進路を大きく変えたわけではないものの、やや左に進路を変えたらしく、まだ悪足掻きを続けるモンタナがジャック・ド・モレーに接近してくる。少しでも砲弾の命中率を上げる小細工だろう。だが、距離を縮めればこちらも命中率は上がる。このまま被弾を続けていけば、先に海の藻屑になるのは向こうの方だ。

 

 返り討ちになるのが目に見えているというのに、敵はなぜ距離を詰めて喰らい付こうとするのだろうか。何か逆転できるような秘策を隠しているのか? それとも特攻のつもりか?

 

 前者ならば警戒するべきだが、後者ならば全力で迎え撃つまでだ。

 

「ラウラ、火災は?」

 

『後部はもう鎮火したよ! 今から艦首の火災の対処に行ってくる!』

 

 さすがお姉ちゃんだ。

 

 ちらりと隣を見てみると、今のラウラの報告を聞いた数名の乗組員たちは唖然としていた。彼女が火災を鎮火するためにCICを出て行ったのは10分前。ダメージコントロールのために飛び出していった乗組員が対処しきれないと言ったというのに、たった数分で彼女は艦内の火災を鎮火してしまったのである。

 

 おそらく、艦首の火災もすぐに鎮火するだろう。

 

 唖然とする乗組員たちの隣では、ナタリアが腕を組みながら苦笑いしていた。最初の頃は驚くことが多かったナタリアはもう慣れてしまったらしく、「期待以上ね」と言いながら再びモニターを見つめた。

 

「敵艦との距離、27000m!」

 

 仲間の報告を聞いた直後、またCICの外から砲弾が海面に落下する音が聞こえてきた。距離が近くなったからなのか、段々と命中精度が上がり始めている。敵が満身創痍だからと高を括っていれば、下手をすればその満身創痍の敵に撃沈されかねない。

 

 死に物狂いで攻撃を仕掛けてくるからこそ、徹底的に叩き潰さなければならない。

 

「撃ちまくれ! 速射砲も投入するんだ!」

 

 敵艦はもうAK-130の射程距離に入っている。こちらは主砲と比べると破壊力や貫通力はかなり落ちているが、その分連速度が非常に高く、命中精度も優れている。敵に致命丁を与えるのは不可能だが、敵の装甲を削り取ることはできるかもしれない。

 

 とにかく、全ての火力を投入して迎え撃つ。

 

 本来の副砲の代わりに搭載された無数のAK-130が、一斉に右舷のモンタナ級へと向けられる。戦車砲並みの口径を持つ速射砲に集中砲火されれば敵艦は瞬く間に火達磨になるだろうが、いくら戦車を吹っ飛ばすほどの威力があっても戦艦に致命傷を与えるのは不可能だ。だからあくまでも止めを刺すのは、前部甲板で敵艦に狙いを定める2基の3連装40cm砲である。

 

 モニターを見上げた直後、薄暗いCICの天井の向こうから轟音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その集中砲火は、満身創痍の戦艦を撃沈するために投入するにしては過剰すぎるようにも見えた。

 

 前部甲板で稼働する健在な2基の3連装40cm砲と、艦橋の周囲にまるで高角砲や機銃のようにずらりと装備されたAK-130が、一斉に火を噴いたのである。海面を抉るほどの衝撃波を発する主砲の砲撃に続き、船体にこれでもかというほど搭載されたAK-130が一斉に火を噴く。主砲から放たれた虎の子の徹甲弾は抵抗を続けるモンタナに命中することはなかったが、徹甲弾が生み出した水柱を次々と貫通した130mm弾の群れは正確にモンタナへと喰らい付くと、瞬く間にモンタナの巨体を炎で包み込んでしまう。

 

 搭載されていたCIWSがAK-130からの砲撃を受けて千切れ飛び、センサーが木っ端微塵に吹き飛ばされる。モンタナに搭載されている装備を滅茶滅茶にする程度だろうと思われた速射砲の集中砲火は、モンタナに予想外の大損害を与えることになった。

 

 艦橋の両脇に搭載されているミサイル発射用のキャニスターを、数発の砲弾が直撃したのである。ジャック・ド・モレーも同じ被害を被り、対艦ミサイルによる攻撃力が半減する羽目になったが、キャニスターの中にミサイルが残っていなかったことが功を奏し、対艦ミサイルの誘爆で大損害を被ることにはならなかった。

 

 しかし、ミサイルを温存していたモンタナは、キャニスターへの被弾で大きなダメージを負うことになる。

 

 よりにもよって砲弾が着弾したキャニスターの中に、ジャック・ド・モレーへと放たれるはずだったハープーンが残っていたのである。本来ならばそれも発射して砲撃戦へと移行する筈だったが、艦長がミサイルによる攻撃は効果が薄いと判断して砲撃戦に早めに移行してしまったため、発射されることなくキャニスターの中に取り残されていたのだ。

 

 一撃で駆逐艦や巡洋艦を叩き折り、空母に大損害を与えかねない対艦ミサイルの誘爆は、装甲の厚い戦艦にも痛手となった。

 

 後部甲板の残された最後の主砲が必死に火を噴き続けるが、ジャック・ド・モレーからひっきりなしに放たれる130mm弾の群れと40cm徹甲弾の水柱が、たちまちモンタナの主砲の咆哮をかき消してしまう。甲板が水飛沫と130mm弾の爆発で染まっていき、徐々に40cm徹甲弾が着弾する位置が近くなっていく。

 

 モンタナの砲撃が、容赦のない砲撃を続けるジャック・ド・モレーの前部甲板に着弾した。満身創痍の艦で戦いを続けた彼らの執念が、最後の最後に牙を剥いた。前部甲板に着弾した2発の徹甲弾はジャック・ド・モレーの第一砲塔の前に広がる甲板を貫通して大穴を開け、艦内を滅茶苦茶に食い破っていったが、モンタナがその砲弾をジャック・ド・モレーに叩き込むと同時に、ジャック・ド・モレーの放った6発の徹甲弾のうちの4発が、前部甲板と艦橋へと突き刺さっていたのである。

 

 すでに沈黙していた砲塔の脇に2発の徹甲弾が突き刺さり、残った2発がモンタナの艦橋を蹂躙する。艦橋の窓ガラスが一瞬で吹き飛び、ひしゃげた艦橋の風穴から黒煙と火柱が吹き上がる。中で双眼鏡を覗き込みながらジャック・ド・モレーを睨みつけていた乗組員や、舵輪を握っていた乗組員たちが一瞬で木っ端微塵になり、ひしゃげた艦橋と共に崩れ落ちていく。

 

 煙突からは煙の代わりに火柱が吹き上がり、至る所に浮き上がった亀裂からは小さな火柱が吹き上がる。辛うじて浸水を食い止めていた乗組員たちも今の被弾の影響で激化した浸水まで食い止めることはできなくなり、次々に叫び声をあげながら激流に押し流されていった。

 

 船体が軋む音が、ウィルバー海峡の響き渡る。鯨の鳴き声を彷彿とさせるその音は、モンタナがついに力尽きたという事を意味していた。

 

 産み落とされることなく、一度も航海を経験しないまま葬られた戦艦同士の一騎討ちは―――――――ジャック・ド・モレーの勝利で終わったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 下半身を飲み込んだ海水を見つめながら、内ポケットの中から一枚の写真を取り出す。急激に増えつつある海水に完全に飲み込まれる前に、せめて最愛の彼女の顔を見てから逝こうと考えた俺は、写真を見下ろす前に、瓦礫と海水に支配されたCICの中を見渡した。

 

 倒壊してきたモニターと床の間から片腕だけを覗かせ、その周囲の海水を赤く染めている乗組員の死体がある。その隣にはモニターから飛び散った大きなガラスの破片で身体中を串刺しにされながら、流れ込んでくる海水に押し流されていく死体もある。確かあの死体は、最後まで俺に報告を続けてくれた乗組員だった筈だ。俺よりも少しばかり若い彼の生真面目な顔を思い出しながら、自分の両足を見下ろす。

 

 前世では水泳部に所属していたから、泳ぐことならば得意だ。だからその気になればこの地獄と化したCICから泳いで逃げ出し、そのまま岸まで泳いでいくこともできる筈だった。けれども水泳に欠かせない両足は数分前に倒壊してきた鉄骨の下敷きとなっており、膝から下がほぼ完全に潰れていた。鮮血が次々に押し流されていくせいで、潰れた足の皮膚から飛び出た自分の筋肉と骨がはっきり見える。

 

「さようなら、アリサ…………」

 

 俺がここで海の藻屑になったら、彼女は悲しむだろうか?

 

 けれども、俺たちはここで吸血鬼共の要求通りに最後まで戦ったのだから、収容所から解放される可能性もあるだろう。俺の命と引き換えにアリサが自由になるというのならば、俺はここでモンタナと共に沈んでも構わない。

 

 モンタナの船体が軋む音を聞きながら、俺はニヤリと笑った。

 

 ゲイボルグⅡへの攻撃で疲弊していたというのに、敵の戦艦はこのモンタナを撃沈したのだ。そして捨て駒にされた艦隊が壊滅したのだから、今度は帝都で待つ陸軍が同じ運命を辿る番だ。こんなに強い奴らに、お前たちも同じように蹂躙されるんだ。銀の弾丸で貫かれて消えちまえ、吸血鬼共め。

 

 俺たちにこんな戦いをさせた吸血鬼たちが苦しむ姿を想像しながら、白黒の写真をぎゅっと握りしめながら目を瞑る。もう既に海水は首の高さまで上がっていて、息を吸い込んでから止めた頃には、もう既に俺の頭を飲み込んでいた。

 

 息を止め続けることができなくなり、すぐに水を飲み込んでしまう。自分の両足からあふれる鮮血で真っ赤に染まった海水の中から天井を見上げながら、俺は両目をそっと閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総員、敬礼!」

 

 モンタナが沈黙し、沈み始めたという報告を聞いた俺たちは、すぐにCICを出て、いたるところにモンタナの砲弾が開けた大穴が開いている甲板へと上がっていた。

 

 甲板の向こうには、火達磨になったモンタナが浮かんでいた。左舷に大きく傾斜しながら、そのままゆっくりと左側へ転覆していく。ひしゃげた砲塔や艦橋が瞬く間に海水の中へと飲み込まれていき、代わりに真っ赤に塗装された部分があらわになる。

 

 やがて、砲弾が開けた穴から浸水が始まったのか、モンタナの艦首が段々と海の中へと沈み始めた。超弩級戦艦を動かしていた巨大なスクリューと舵が取り付けられた艦尾がゆっくりと天空へと向けられ始めたかと思いきや、30度ほど持ち上げられたところで、そのまま海の中へと沈んでいった。

 

 まだ砲撃できると言わんばかりに、沈んでいく後部甲板で第四砲塔がこちらを睨みつけている。やがてその第四砲塔も海面へと消えていき、巨大なヒレにも見える舵がついた艦尾が沈んでいく。

 

 モンタナが沈んでいった海域の近くには、船体の残骸や乗組員の死体がびっしりと浮かんでいた。

 

 けれども―――――――生存者は、1人もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、連合艦隊の本格的な飽和攻撃と潜水艦の雷撃によって、吸血鬼たちが配備した艦隊は壊滅することになった。

 

 こうして第二次転生者戦争の最初に勃発した『ヴリシア沖海戦』は連合艦隊の勝利に終わり、市街地戦の幕が上がろうとしていた。

 

 


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