異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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ヴリシア侵攻作戦

 

 

 まるで中世のヨーロッパの騎士たちが拠点としていた城を彷彿とさせる建物の中には、巨大な会議室がある。アルファベットに似た文字で”会議室”と書かれたプレートの先に待ち受けている会議室は議会が開かれる議場のような広さがあるにもかかわらず、その割にはほとんど何も置かれていない。

 

 俺がここにやってくるのは、これで2回目だ。最初にやってきたのはラウラがレナを殺した際、懲罰部隊送りにされる処分を言い渡された時だろう。思い出したくないが、まるでこの光景が強引に俺の中の記憶をこじ開けようとしているかのように、あの時の光景がフラッシュバックする。

 

 実の息子にトカレフTT-33を向ける父親。そして実の父親に銃殺されそうになっている弟を庇う姉の後姿。この広い会議室に反響したラウラの涙声が、再び聞こえてくるような気がする。

 

 その会議室を訪れたのは、俺たちだけではなかった。テンプル騎士団のメンバーの中で会議への出席を許された”円卓の騎士”と呼ばれるメンバーだけが、ここに呼ばれたのだ。テンプル騎士団本隊のメンバーに加え、ヴリシアから生還したばかりのシュタージ全員と、ムジャヒディンのメンバーだったウラルとイリナの2人である。

 

 今回は処分を受けに来たのではない。シュタージや諜報部隊の隊員たちが命懸けで入手した情報で立てた作戦の説明を受けに来たのである。もう既にどのような作戦にするのかは決まっているらしく、俺たちにそれを説明し、こっちの意見を聞いて修正するような感じになるとシンヤ叔父さんから説明されているが、おそらく俺たちの意見で修正する部分は殆どないだろう。

 

 なぜならば、この作戦を立てたのは14年前の圧倒的に不利だった転生者戦争を勝利に導いた2人の名将なのだ。

 

 2人のうち片方は、当然ながら最強の傭兵ギルドであるモリガンのシンヤ・ハヤカワ。ノエルの父親で、転生者戦争勃発の原因となったネイリンゲン襲撃の際に片腕を失う重傷を負ったけれど、すぐに復帰し空母の艦橋で上陸した海兵隊の指揮を執ったという。それ以前の戦闘でも、他のメンバーと比べると戦闘力は低かったらしいけれど、そういった作戦の立案でギルドの勝利に大きく貢献しているらしい。

 

 ちなみに現時点でも、シンヤ叔父さんはモリガンのメンバーの中ではまだ”弱い方”だという。数多の転生者をワイヤーで瞬殺している猛者が”まだ弱い方”ということは、それほどモリガンのメンバーたちが強いという事だ。

 

 そしてもう1人の名将は、もう既に会議室の中に用意されたでっかいテーブルの席に腰を下ろし、俺たちがやってくるのを待っていた。

 

 額にある古傷と顎鬚が特徴的な男性である。年齢は親父やシンヤ叔父さんに近いだろうか。身長はやや低いけれどがっちりとしていて、目つきの鋭さはモリガンのメンバーたちに負けていない。

 

「お久しぶりです、李風(リーフェン)さん」

 

「やあ、タクヤ君。随分と大きくなったね」

 

 この人も、転生者戦争を勝利に導いた名将の1人だ。

 

 現代兵器で武装した大規模なPMCの殲虎公司(ジェンフーコンスー)を率いる、転生者の『張李風(チャン・リーフェン)』さんだ。珍しい中国出身の転生者で、親父たちと共に”勇者”と呼ばれていた転生者たちに反旗を翻し、まだレベルの低かった転生者の仲間たちと共にファルリュー島の熾烈な戦いを戦い抜いた英雄の1人である。

 

 俺たちが小さい頃はよく王都の家にやってきて、親父たちと当時の話をしながら酒を飲んだり、中華料理を振る舞ってくれた人だ。まだ小さかったラウラもよく遊び相手になってもらっていたから覚えている筈である。

 

「お母さんにそっくりですね、同志」

 

「ああ。エミリアにそっくりだよ」

 

 李風さんが俺と母さんを見比べ始めると、席に座っていた母さんは恥ずかしそうに親父の方を見ながら苦笑いした。確かに母さんにそっくりだとよく言われるけど、性格は全然違いますからね。母さんは正々堂々と戦うようなタイプの人だけど、俺は汚い手を使うからな。

 

 普段ならばこのまま雑談が始まりそうだが、今回は雑談をしている場合ではない。これから始まるのは作戦会議だ。

 

「よし、席につけ」

 

「失礼します」

 

 作戦会議のために用意されたでっかいテーブルの椅子に腰を下ろすと、代わりに親父が立ち上がり、話を始めた。

 

「――――――同志諸君、今日は集まってくれて感謝する。では、作戦会議を始める」

 

 親父が挨拶をした直後、彼の背後の壁にいきなり巨大な蒼い魔法陣が生成されたかと思うと、複雑な記号や古代文字で囲まれた円の中に地図が表示される。壁に出現した魔法陣に投影された地図のほぼ中心にはオルトバルカ語で『ホワイト・クロック』と表示されている。

 

 ヴリシア帝国の帝都サン・クヴァントの地図だ。サン・クヴァントは海に面した大都市で、海の近くにはヴリシア帝国騎士団の本部がある。反対側は分厚い防壁に守られており、中心部には帝都の象徴とも言われているホワイト・クロックと宮殿が屹立している。

 

 ヴリシア帝国の象徴であるホワイト・クロックは、21年前の親父たちとレリエルの戦いの際に倒壊している。今では復元されているんだが、倒壊される前とは違って内部は公開されておらず、メンテナンスのために中へと入っていく作業員以外は立ち入り禁止になっているという。

 

 これからその帝都が、もう一度火の海になるのだ。

 

「先ほどヴリシア帝国のオルトバルカ大使館が、帝国に住民の避難を通告した。―――――――いよいよ、ヴリシア侵攻作戦が始まる」

 

 オルトバルカ王国を敵視している者も多いと言われているヴリシア帝国の貴族たちが、よくオルトバルカ人による侵攻作戦を承認したな。いくら目的がヴリシアの侵略ではなく、帝都内の吸血鬼の撃滅とはいえ、普通ならば承認して住民を避難させることはありえない。

 

 正確に言うならば吸血鬼の撃滅は、”奴らが持っているメサイアの天秤の鍵を強奪する”という本来の目的の”ついで”だ。奴らも天秤を手に入れようとしているならば、いずれにせよ撃滅する必要がある。

 

 それに親父たちも天秤を狙っている。この戦いが終われば、この最強の傭兵たちとの共闘は終わりだ。殺し合いにはならないとは思うが、再び倭国の時のような争奪戦になるに違いない。

 

「作戦は基本的に、ファルリュー島攻略作戦をベースとする。まず水上艦艇からの攻撃と爆撃機による大規模な空爆によって敵の地上戦力を削ぎ、上陸用舟艇及びヘリからの降下で歩兵部隊を上陸させる。……………しかし、今回はファルリューとは違う。シンヤ、説明を」

 

 ファルリュー島の時の作戦は、親父が今説明したような作戦だったという。爆撃機による空爆でこれでもかというほど爆弾を投下した後に歩兵部隊が島に上陸し、そのまま進撃していったのだ。

 

 しかし、今回の相手は吸血鬼だ。それにあの作戦はこの異世界で勃発した転生者同士の戦いの中でも最も規模の大きな現代兵器同士のぶつかり合いとなったから、吸血鬼たちも俺たちの戦法を知っているに違いない。

 

 親父の代わりに魔法陣の前に立ったシンヤ叔父さんが、目の前に投影された小さな魔法陣を何度かタッチした。すると壁の大きな魔法陣の地図がスライドしていき、代わりに今度は何の変哲もない海面が映し出される。

 

 何の説明が始まるのかと思いつつ海面を見つめていると、そこに赤いマークがいくつか投影された。

 

「諜報部隊やシュタージの報告にはなかったけれど、敵がレオパルトやF-16までシュタージの追撃に投入してきたという事は―――――――イージス艦のような海上戦力も用意されている可能性が高い」

 

「イージス艦……………」

 

 高性能なミサイルと様々なセンサーを搭載した、強力な艦である。テンプル騎士団ではポイントの多さのせいでイージス艦は採用しておらず、やや性能の劣るソヴレメンヌイ級を主力の駆逐艦にする予定だ。イージス艦を配備できなかったのは俺の持っていたポイントが少なかったことと、戦力を少しでも増やすために生産に必要なポイントが少しでも少ない艦を選ぶことにしたのが原因なんだが、もし吸血鬼たちに協力している転生者や奴隷にされている転生者たちがポイントを大量に使ってイージス艦を生産しているのだとしたら、上陸した後の作戦だけ考えて出撃すれば大損害を被ることは明らかだ。

 

 確かに、F-16やレオパルト2A7+まで配備されていたのならば、イージス艦がウィルバー海峡で俺たちを待ち受けている可能性も高い。もしかするとイージス艦どころか大型の空母まで待ち受けている可能性がある。もし空母まで配備されていたら、敵のミサイルと航空機による攻撃で壊滅する恐れがある。

 

 いくら俺たちが艦隊の配備を始めたとはいえ、現時点で投入できるのはソヴレメンヌイ級が2隻とウダロイ級が1隻とキーロフ級が1隻。そしてその小規模な艦隊の旗艦となるのは、近代化改修を受けた24号計画艦。合計でたった5隻の艦隊である。

 

 いくら破壊力の大きな対艦ミサイルと迎撃用の対空ミサイルを搭載しているとはいえ、高性能なイージス艦が何隻も配備されている海域を突破するのは不可能だ。しかもテンプル騎士団の艦隊には、艦載機を出撃させるための空母が存在しない。

 

 空母を含む艦隊と空母を含まない艦隊ならばどちらが有利なのかは明らかである。しかも俺たちは艦隊の規模が小さすぎる。

 

 魔法陣の中の海面を睨みつけながら俺が黙り込んだのを見ていた親父が、ニヤリと笑いながら言った。

 

「安心しろ。敵の艦隊が待ち構えていても粉砕できるように、海上戦力はこれでもかというほど用意しておいた」

 

『あ、ちなみにこちらが作戦に参加する艦艇です』

 

 ニヤリと笑いながら説明した親父の後ろからいきなり姿を現したのは、真っ白な白衣に身を包んだ天才技術者のフィオナちゃんだった。この異世界に魔力で動くフィオナ機関という動力機関を普及させて産業革命を起こした技術者が、12歳くらいの白髪の美少女だと知っている人はきっと少ないだろう。

 

 しかもただの少女ではなく、100年以上前からずっとこの世を彷徨っている幽霊の少女だという事を知っている人も少ない筈だ。フィオナちゃんが幽霊だと知っているのはモリガンの関係者くらいだろう。

 

 彼女が持ってきたのは、分厚い辞書を更に6冊くらい束ねたような厚さのでっかい本だった。ふわふわと宙に浮きながら俺たちの側へとやってきた彼女からその本を受け取った俺は、予想以上の重さにびっくりしながらテーブルの上に置き、ページを開く。

 

 その中に記載されていたのは、無数の艦の名前だった。

 

「これは…………モリガン・カンパニーの保有する艦艇の名前か?」

 

「さ、さすが世界規模の企業ね…………こんなに保有してるなんて」

 

「ふにゃあ…………!」

 

 モリガン・カンパニーは世界中に支社を持つ大企業だからな。海に面した国には必ず軍港があるほどだし、開拓されていないような場所にも前哨基地を建設しているという。だからこれほどの数の鑑定を保有していてもおかしくはない。

 

 そう思いながらページをめくっていると、親父と目配せをしていたフィオナちゃんが楽しそうに笑いながらとんでもないことを言った。

 

『いえ、それは今回の作戦に参加する艦艇の一覧ですよ』

 

「えっ?」

 

『ちなみに保有する艦艇の一覧になりますと、それが更に21冊分になりますね』

 

「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」

 

 お、多過ぎ! なにそれ!?

 

 辞書6冊分の厚さの本に記載されている艦艇だけでまだ氷山の一角なの!? 親父、軍拡し過ぎじゃない!? こんな大艦隊を展開したら海が駆逐艦と空母で埋め尽くされるぞ!?

 

「あ、あの、リキヤ叔父さん」

 

「ん? ノエルちゃん、どうしたのかな?」

 

「そ、そんなにいっぱい艦があるなら、全部投入すればいいじゃないですか」

 

「そうしたいんだけど…………全部投入したら指揮を執り切れないんだよね。練度も支社とか拠点ごとにばらつきがあるし」

 

 そんなに生産したのかよ……………。

 

 指揮を執り切れないくらい生産して配備してるってことなのか。レベルが違い過ぎる…………。

 

「もし敵の艦隊が待ち構えていたら、遠距離から対艦ミサイルの飽和攻撃と艦載機の攻撃によって撃滅する。いくら高性能な対空ミサイルとレーダーを搭載する駆逐艦でも粉砕できるさ」

 

「もちろん慢心はしないよ。でも艦隊が出てきたなら、こっちはミサイルをひたすら撃ち続けるだけで勝てるさ」

 

 もし仮に海戦が始まったら、テンプル騎士団の艦隊に出番はあるのだろうか。

 

 そんな心配をしながら、俺は作戦の説明を聞き続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モリガン・カンパニーの本社があるラガヴァンビウスから、タンプル搭のあるカルガニスタンまで再びヘリで移動してから、俺はこの大規模な侵攻作戦に参加することになった団員たちに作戦を説明することになった。親父たちから渡された分厚い資料を機内で何度も読み、親父たちから聞いた情報を思い出しながら資料の端にメモしている間に、いつの間にかヘリの窓の外に見慣れた巨大な要塞砲が屹立していて、俺はぎょっとしてしまった。

 

 ヘリポートで出迎えてくれた兵士に挨拶し、この侵攻作戦に参加する兵士たちを会議室に集めるようにと指示を出してから、一足先に会議室へと向かう。いつも会議に使っているやたらと大きなテーブルを撤去しなければ、兵士たち全員に作戦の説明ができないからだ。

 

 ラウラやステラたちに手伝ってもらい、兵士たちがやってくる前にテーブルの撤去を済ませた俺は、でっかい帝都の地図を壁に貼り付け、兵士たちがやってくるのを待った。

 

 今度の作戦は、シンヤ叔父さんや李風さんの予測では、間違いなく転生者戦争を上回る大規模な戦争になるという。ファルリュー島の戦いはモリガンの猛攻のおかげで1日で終わったというが、サン・クヴァントはファルリュー島よりも大きい上に、今度の敵な吸血鬼だ。下手をすれば泥沼化する可能性もある。

 

 それに――――――――戦死者が出ることも予想される。

 

 これから会議室へとやってくる兵士たちの誰かが倒れるかもしれないし、もしかしたらラウラやナタリアたちの中からも戦死者が出るかもしれない。それに、俺だって命を落とす可能性がある。敵がぶっ放した榴弾砲でバラバラにされたり、銃弾で撃ち抜かれるかもしれないのだ。

 

 テンプル騎士団団長として、怖がっている場合ではない。

 

 深呼吸して待っていると、しっかりと整列した兵士たちが真っ黒な制服に身を包み、会議室の中へとやってきた。他の部隊に所属している兵士たちもぞろぞろと会議室の中へとやってきて、瞬く間に会議室の中に大勢の兵士が集合する。

 

 とはいえ、さすがにまだ入団してからそれほど実戦を経験していない柊たちはここにはいない。彼らはまだレベルが低い転生者だし、実戦の経験も殆どないためサン・クヴァントへと行かせるのは危険だと判断したのだ。だから彼らは不参加にさせ、代わりにこのタンプル搭の警備をお願いすることにしている。

 

「――――――諸君、いよいよヴリシア侵攻作戦が開始される」

 

 大声でそう言った直後、兵士たちが息を呑んだ。

 

「海上戦力による迎撃も予測されるが、こちらには圧倒的な数の味方の艦隊がいる。問題は上陸した後だ」

 

 海戦はおそらく、問題はない。あんな分厚い本に記録する必要があるほどの数の艦隊が参加するのだから、おそらく俺たちの出番はない筈だ。

 

「本隊と共に上陸した後、俺たちは真正面から進撃する本隊を側面から支援することになる。そのため、圧倒的な兵力を持つ本隊とは別行動だ」

 

 テンプル騎士団に与えられた役割は、敵の本拠地であるホワイト・クロック及びサン・クヴァント宮殿へと進撃するモリガン・カンパニーと殲虎公司(ジェンフーコンスー)の連合軍の支援である。本隊を迎え撃つために配備されている敵の戦車部隊や砲兵部隊を側面から攻撃して攪乱し、本体の進撃をサポートするのだ。

 

 そして、まず最初に橋頭保(きょうとうほ)を確保する。戦死した諜報部隊のブレンダン・ウォルコット氏が残した情報によると、一番最初の橋頭保に適しているのは騎士団本部の近くにある図書館。まずここを占拠し、それから進撃する必要がある。

 

「本隊を支援しつつ進撃し、この地点にある図書館を俺たちが占拠する。この作戦にはスオミ支部の精鋭部隊も参加予定だ。図書館を占拠した後の防衛には、防衛戦闘を最も得意とするスオミ支部の精鋭部隊に任せることにする」

 

 この作戦には、アールネやイッルたちも参加することになっている。とはいえスオミ支部が得意とするのはあくまでも敵を迎え撃つ防衛戦闘で、逆に自分たちから攻撃を仕掛けるような戦い方は苦手なのだ。だから彼らには拠点の守備隊を担当してもらうことになっている。

 

「そして俺たちも本隊と合流し、宮殿を占拠する。ホワイト・クロックも敵の本拠とされているが、そちらには同志リキノフたちが突入することになっている。だから俺たちは宮殿を襲撃し、ここを占拠する。……………陸軍だけじゃない。海軍や空軍も参加する、極めて大規模な作戦だ。しかも、敵も俺たちと同じく銃や戦車を持っている」

 

 この中で銃撃戦を経験したのはごく少数だ。しかもその経験した数も、俺や親父と比べればはるかに少ない。

 

 銃で狙われた経験がほとんどない団員たちは、表情を変えていない。しかし不安に思っている仲間もいる筈だ。

 

「……………安心してくれ。俺たちも最前線で戦う。……………絶対に、仲間(同志)は見捨てない」

 

 俺も、この戦いに参加するのは不安だ。俺も戦死する可能性があるし、大切な仲間たちが死ぬ可能性もあるのだから。

 

 けれど、この戦いに勝利する必要がある。この戦いに勝利して吸血鬼たちから鍵を奪い取らなければ、俺たちの理想が実現することはない。

 

 人々が虐げられることのない世界は、絶対に実現しない。

 

 だからこそ、俺は最前線で戦う。AK-12を構えて敵を撃ち、銃剣で貫き、返り血を浴びながら血の海に向けて全力で進む。

 

「作戦開始は5日後だ。……………同志諸君、一緒に戦おう」

 

 そう言った直後、兵士たちが一斉に雄叫びを上げた。

 

 彼らの勇ましい雄叫びを聴きながら、俺も右手の拳を思い切り振り上げた。

 

 

 


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