異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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プロローグ2

 

 段々とクラスメイト達の絶叫が聞こえなくなっていく。そろそろ飛行機が地面に叩き付けられる頃だろうか。

 

 そう思いながらしばらく目を瞑っていたんだが、全く何も聞こえない。地面に叩き付けられた機体がへし折れる大きな音も、爆音も何も聞こえない。

 

「・・・・・・?」

 

 違和感を感じながら、俺はそっと目を開けた。

 

 目の前にあった筈の小さな窓も、その向こうに見えていた飛行機の千切れた翼も見当たらない。それに、俺が腰を下ろしていた筈の座席もない。

 

 目を開けているのにまだ目を閉じたままではないのかと思ってしまうほど真っ暗な場所に、俺はたった1人で突っ立っていたんだ。

 

 おかしいぞ・・・・・・。俺は確かに、あの墜落していく飛行機の中に乗っていた筈だ。あのまま飛行機と一緒に墜落して死んでいる筈なのに、俺は何でこんな真っ暗な場所にいる?

 

 もしかして、助かったのか? それともここがあの世なのか?

 

 全く明かりがない真っ暗な空間を見渡していると、いきなり俺の目の前の何もない空間が蒼白い光を放ち始めた。火の粉のような小さな光は凄まじい勢いで成長すると、俺の目の前で形を変え、文字の群れへと変貌する。

 

「なんだこれ・・・・・・?」

 

 それは、日本語で書かれたメッセージのようだった。

 

《水無月永人様、異世界へようこそ!》

 

「は?」

 

 え? 異世界? どういうこと?

 

 首を傾げながらそのメッセージを凝視していると、いきなりそのメッセージが弾け飛び、蒼白い光が今度はまるで俺がよく友達とプレイしていたゲームのようなメニューを形成し始める。

 

 メニューの中に並んでいたのは、『生産』、『装備』、『自分のステータス』、『仲間のステータス』、『好感度』、『トレーニングモード』、『アイテム』、『交換』の8つだ。何でいきなりこんなメニューが並び始めたのかと思っていると、再びそのメニュー画面の前に説明文が蒼白い文字で描かれ始めた。

 

《このメニューを開くには、メニューを開くように命令しながら片手を目の前に突き出してください。異世界で生き残るには、この能力は必須となります》

 

 異世界で生き残るには必須の能力だって? 異世界ってそんなに危ないところなのか?

 

 その説明文が消えるまでメニュー画面をじっと見つめていた俺は、恐る恐る右手を伸ばすと、一番上に表示されている『生産』と書かれているメニューをタッチした。

 

 すると、今度は『武器』、『兵器』、『能力』、『スキル』、『必殺技』、『カウンター』、『服装』の7つの項目が表示される。

 

《このメニューでは、様々な武器や能力を生産する事ができます。生産するには基本的にレベルアップの際に手に入るポイントを消費しますが、中には魔物や敵からドロップするものや、特定の条件を満たさなければアンロックされないものもあります》

 

 なんだこれ。まるでゲームじゃないか。

 

 そう思いながら、とりあえず武器をタッチすることにした。ミリオタである俺としては、出来るならば真っ先に銃を生産してみたいところだ。スキルとか能力は後回しで良いだろう。兵器も後にしておこう。本当にポイントを使って生産する必要があるならば、何だか大量のポイントを使いそうだ。それに俺1人では動かせないだろうからな。

 

 初期装備でいきなり戦車とかヘリを生産するのは愚の骨頂だぜ。そんな馬鹿なことをやった奴っているんだろうか?

 

 とりあえず、俺は武器をタッチした。すると今度は剣や槍などいろんな武器の種類が表示され始める。銃は生産できるんだろうか?

 

 そう思いながら画面の下を見てみると、無数の武器の項目の中にちゃんと『銃』と書かれている項目があった。本当に生産できるんだな。

 

 大喜びで銃をタッチすると、今度は銃の種類が表示される。なんと、最新式のアサルトライフルなどだけではなく、第二次世界大戦や第一次世界大戦の際に使われていたような旧式の銃まで生産できるようになっているらしい。すごいな。しかも、マスケットや火縄銃まで用意されてるぞ・・・・・・。

 

 とりあえず、リボルバーをタッチ。俺はリボルバーが好きなんだよね。

 

「何にしようかな・・・・・・」

 

 色んなリボルバーがある。コルト・パイソンやコルト・アナコンダも用意されてるのか。どちらも優秀なリボルバーだが、どうやらレベル5にならないと生産できないらしい。十中八九今の俺のレベルは1だろうからなぁ・・・・・・。レベル1で生産できるリボルバーってあるのか?

 

 そう思いながら下の方を見てみると、なんと巨大なリボルバーのプファイファー・ツェリスカが項目の中に並んでいた。.600ニトロエクスプレス弾という強烈な大口径の弾丸を使用するかなり強力なリボルバーなんだが、普通のリボルバーよりも巨大だ。

 

 もちろん、レベル1で生産できるような装備ではない。こいつを生産するにはレベルを20まで上げ、更にもう一つの条件を満たさなければならないらしい。

 

 もう一つの条件って何だ? 個人的には是非ともこいつにスコープを搭載してぶっ放してみたいんだが。

 

《アンロック条件『シングルアクション式のリボルバーを使い、ファニングショットで敵を50体倒す』》

 

「ファニングショット・・・・・・!?」

 

 ファニングショットまで出来るのか! 凄いな!!

 

 では、最初にシングルアクション式のリボルバーを生産してファニングショットの練習でもしておくとしよう。そう思った俺は、あるリボルバーの名前を探し始める。

 

「これだ・・・・・・!」

 

 こいつを生産しよう。俺はにやりと笑うと、人差し指でそのリボルバーをタッチした。

 

 俺が再生することにしたリボルバーは、アメリカ製シングルアクション式リボルバーのコルト・シングルアクションアーミーだ。西部開拓時代に大活躍したリボルバーで、ガンマンや保安官たちだけではなく、アメリカ軍でも採用されていた優秀な銃だ。

 

 初期装備にしては強力過ぎるんじゃないか?

 

 そう思いながら俺はシングルアクションアーミーを生産する。すると、今度は『カスタマイズ』と書かれたメニューが目の前に出現した。

 

《生産した武器はポイントを消費してカスタマイズする事ができます。様々なカスタマイズが出来るので、是非試してみてください》

 

「へえ・・・・・・!」

 

 メニューを確認してみると、スコープやドットサイトも装着できるようになっているらしかった。

 

 でも、ポイントも少ないしカスタマイズする必要はないだろう。特にカスタマイズはせずに画面を閉じると、再び蒼白い光が説明文を俺の目の前に形成した。

 

《では、これより異世界に向かいます》

 

「え?」

 

 ちょっと待ってよ。まだ初期装備を1つしか生産してないんだけど!?

 

 シングルアクションアーミー1丁で異世界に行けって事か!? 

 

《水無月永人様、頑張ってください!》

 

「頑張ってくださいじゃねーよッ! ちょっと待てよ――――――」

 

 せめてもう1丁生産して2丁拳銃で戦ってみたかったなぁ・・・・・・。

 

 他にもいろんな疑問が浮かんできたが、突然現れた真っ白な光が真っ黒な空間を呑み込み始め、俺が浮かべた疑問を薙ぎ払うように、黒い空間もろとも俺を呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 産声が聞こえてくる。近くで赤ん坊でも泣いているんだろうか?

 

 血と薬品の臭いがする中で、俺は静かに目を開いた。そう言えば、俺は何で目を瞑っていたんだろうか?

 

 あ、そうだ。あの真っ黒な空間で初期装備を1つ生産したと思ったら、真っ白な光に呑み込まれて、びっくりして目を瞑ってたんだ。

 

 ここはどこだ・・・・・・? 

 

『無事に生まれましたよ、力也さん』

 

 周囲を見渡そうとしていると、少し幼い少女の声が聞こえてきた。声の聞こえた方向に頭を向けてみようと思うんだが、首があまり動かない。

 

 何とかして首を動かそうと思いながら足掻いていると、俺の目の前に真っ白な長い髪の少女がやってきて、微笑みながら俺の顔を覗き込み始めた。顔つきは少し幼いような感じがするけど、冷静で大人びているような感じがする。見た目は12歳くらいだろうか。

 

 すると、その少女の後ろからやって来た赤毛の男性が、嬉しそうに微笑みながら同じように俺の顔を覗き込み始めた。随分と若い男性だな。20代前半くらいだろうか。瞳の色は炎のように真っ赤で、よく見ると頭の左側からはまるでダガーの刀身のような角が生えている。

 

 何だ、この男は? 人間じゃないのか?

 

「この子たちが・・・・・・俺たちの子供か」

 

 え? 子供?

 

 一体何を言ってるんだ? 俺は17歳の高校生だぞ? 確かに子供だが、俺はあんたの子供じゃないぜ?

 

「それにしても可愛らしいのう・・・・・・。こいつら、きっと大きくなったら立派なドラゴンになるぞ」

 

 え? ドラゴン?

 

 ちょっと待って。俺は人間だよ?

 

「ふふっ・・・・・・。何を言っているのだ。この子たちは・・・・・・人間とドラゴンの血を受け継いでいるんだぞ・・・・・・」

 

 すると、俺の顔を覗き込んでいる男性の反対側から、今度から蒼い髪の女性が俺の顔を見下ろし始めた。

 

 何だか疲れているようだが、それでも凛々しい雰囲気を放つ綺麗な女の人だった。その女性は俺を見下ろしながら嬉しそうに微笑むと、痙攣する手を伸ばし、優しく俺の頭を撫で始める。

 

 その時、俺はその女性に抱き上げられているということに気が付いた。

 

 おかしいぞ。俺は柔道部に所属していて、身体を鍛えているから体重は重い筈だ。いくら大人の女性でもこんな感じに微笑みながら片手で抱き上げ、頭を撫でるのは不可能だろう。

 

『それにしても、この赤ちゃんはエミリアさんにそっくりですねぇ・・・・・・』

 

 は? 赤ちゃん?

 

 嘘だろ?

 

 その時、一瞬だけ自分の右手が見えた。その手は今まで柔道で鍛えてきたがっちりしている見慣れた右手ではなく、本当に赤ん坊のように小さな、弱々しい右手だった。

 

 まさか、今の俺は赤ん坊になってるのか・・・・・・!?

 

 


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