異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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タクヤの騙し討ち

 

 7.62mm弾の群れが、標的を食い破ることなく掠めていく。すぐに照準を合わせてトリガーを引くが、やはり弾丸の群れは標的には命中せず、地面を抉るか庭の花壇に着弾してレンガの破片を舞い上げる。

 

 マガジンが空になったことに気付いた俺は、舌打ちしながらAK-47のマガジンを取り外した。3つ目のマガジンを装着して右側面のコッキングレバーを引き、再び銃を構えてアイアンサイトを睨みつけるが、その照準器の向こうでは先ほどからこちらの射撃を躱し続けている強敵が、反撃の準備をしているところだった。

 

 今、トリガーを引けばあの蒼い髪の少女に当たるだろうか。

 

 エリスの持つハルバードの表面が、まるでドラゴンの外殻を思わせる氷の外殻に覆われているのを見ながら、俺は瞬時にそう思った。いくら魔力で形成したとはいえ、ハルバードを覆っているのはあくまでも氷である。剣戟を弾き飛ばすほどの防御力を発揮することはできても、歩兵が携行する一般的なライフル弾の中でもトップクラスの運動エネルギーと破壊力を誇る7.62mm弾のフルオート射撃を、たかが氷で覆った程度の金属性の武器で防ぎ切れるわけがない。仮に防いだとしても、得物が破損するか、損傷によって強度が著しく低下するのは目に見えている。

 

 彼女に接近されることなく、このまま銃撃を続けていれば隙を見つけて銃弾をぶち込むことは可能だろう。命中すれば風穴が開き、肉が千切れ飛ぶ。運が良くても致命傷である。

 

 しかし―――――――彼女はただの敵ではない。俺の大切な仲間の1人であるエミリアの実の姉だという。

 

 敵とはいえ、肉親だ。もしここで彼女を殺したら――――――――エミリアは悲しむだろうか。

 

 それとも、俺を恨むだろうか―――――――。

 

 余計な事を考えてしまったせいで、結局俺はトリガーを引く事ができなかった。その隙にエリスの詠唱は完了してしまったらしく、ハルバードはもう既に氷のハルバードと化している。

 

 躊躇してしまった自分の甘さに苛立ちながら、またしても躱されるか弾かれるだろうと思いつつ射撃を再開する。仮に弾いたり躱したとしても、隙はできる筈だ。無駄な射撃にはならならいだろう。

 

 轟音とマズルフラッシュの光を発し、凄まじい速度の弾丸を連射してくる銃にエリスは驚いていたが、もう慣れてしまったのか7.62mm弾が放たれるのを目の当たりにしても落ち着いていた。氷で覆われたハルバードを回してから構えた彼女は、エメラルドグリーンの美しい瞳を一瞬だけ細め―――――――まるでロングソードでも振るうかのようなハルバードとは思えない凄まじい速度で得物を振るい、狼の群れのように急迫していた7.62mm弾の群れを薙ぎ払った。

 

「………」

 

 彼女の持つハルバードは2mほどの長さだ。俺の愛用しているアンチマテリアルライフルと同等の長さだというのに、まるで普通の剣を振り回しているかのような速度でそれを振るってくるのである。そんな常軌を逸した速度で長大な得物を振るえるようになるにはやはり使い慣れている必要があるが、ただ単に使い慣れているだけではないだろう。―――――――やはり、かなり鍛えているに違いない。

 

 カキン、と地面に落下した弾丸が生み出した小さな断末魔がいつもと違う事に気付き、俺は違和感を感じながらもその弾丸を凝視する。普通ならば弾かれてひしゃげたか、先端部の砕けた弾丸が地面に転がっている筈なんだが―――――――断末魔と同じく、その弾かれた弾丸の末路も違っていた。

 

「!」

 

 そこに転がっていたのは、小さな氷の粒だったのである。小さな円柱状の氷の粒に見えるが、よく見ると先端部の方はひしゃげていたり、欠けているのだ。

 

 ただの氷の粒にも思えるが、あの形には見覚えがある。

 

「………嘘だろ?」

 

 こいつ、ハルバードで弾いた弾丸を凍らせやがったのか………!?

 

 凄まじい速度で飛来する弾丸にハルバードが接触する時間はごく僅かである。なのに、弾かれた弾丸がすっかり凍り付いたという事は、あの氷のハルバードに触れた瞬間に凍り付いてしまうと考えるべきだろう。

 

 エミリアが言うには、エリスの接近戦の実力はエミリアよりも上らしい。現時点での俺とエミリアの近距離での戦闘力は互角だから、俺とエリスが近距離で戦った場合、勝利するのは彼女の方という事になる。

 

 慢心している様子もない。むしろ冷静沈着だ。………くそったれ、隙がない。

 

「力也!」

 

「エミリア!?」

 

 エリスと睨み合っていた俺の隣に、屋敷の入口から飛び出してきたエミリアが駆け寄ってきた。ドットサイトを取り付けたAKS-74Uとバスタードソードを装備している彼女は、手に持っていたAKS-74Uの銃口をエリスへと向ける。

 

 何を考えてるんだ!? エリスの狙いはお前なんだぞ!? 屋敷の中で援護してろと言った筈なのに、出て来てどうする!?

 

「馬鹿、屋敷に戻ってろ! こいつらの狙いは――――――――」

 

「力也さん!」

 

 今度は―――――――エミリアにそっくりの容姿の少年の声だった。

 

 騎士たちの断末魔の中を駆け抜けながら、エミリアにそっくりな蒼い髪の少年が、チェコ製ハンドガンのCz75SP-01を両手に持って俺たちの傍らへと駆け寄ってくる。

 

「タクヤ!」

 

「加勢します!」

 

「ありがたい!」

 

 3対1だな。タクヤの実力はエミリアと互角。1対1では分が悪すぎるが、この3人でエリスと戦うのならば勝ち目はある。突出した1人の実力者と、その実力者にやや劣る程度の3人の実力者の勝負ならば、有利なのはこちらの方なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 氷に覆われたハルバードを手にする若き日のエリスさんを睨みつけながら、俺もハンドガンを構えていた。銃剣を取り付けたことで白兵戦でも猛威を振るえるようになったとはいえ、銃剣のサイズはサバイバルナイフ程度。小回りならば勝っているが、リーチや攻撃力で勝っているのはエリスさんのハルバードだ。

 

 騎士を蹂躙しながらエリスさんと若き日の親父の戦いを見ていたが、親父の弾丸をエリスさんは見切って弾いたり、回避していた。おそらく、俺が至近距離で銃弾を連射したとしても同じだろう。勝ち目があるのは距離を離して銃撃するような戦い方だ。弾かれるのを防ぐために、飽和攻撃でも仕掛けるべきだろうか。

 

 それにしても、何だか目の前にいる若き日のエリスさんは、戦闘になった時のラウラに雰囲気がそっくりだ。目つきが鋭くなるだけでなく、冷静沈着になり、口調も一気に大人びる。二重人格なのではないかと思ってしまうほど、戦闘になると俺のお姉ちゃんは変貌するのだ。

 

 でも、このエリスさんは俺の知っているエリスさんとかなり性格が違う。まあ、母さんが言うにはこの頃は仲が悪かったらしいからなぁ………。仲が良くなったのはネイリンゲンへの侵攻を撃退し、エリスさんがモリガンの一員になってからだという。それ以降は何が起きたのか、女性であるにもかかわらずあらゆる美女や美少女に抱き付いたり、男性向けのエロ本を大量に購入して親父の前で堂々と読んでいることもあったという。

 

 俺の知ってるエリスさんはそっちのエリスさんなんだよねぇ………。

 

 現時点でトップクラスのキャラ崩壊なんじゃないだろうか。俺、こんなエリスさん知らないんだけど。別人にしか見えないよ、こんな冷たいエリスさん。

 

 とりあえず、歴史を変えないような戦い方をしなければ。歴史の通りならばここで親父と母さんは敗北し、2人ともエリスさんに連れ去られることになっている。そして仲間たちがクガルプール要塞へと侵攻して親父を救出し、そのまま全員で母さんが拘束されることになるナバウレアの駐屯地まで進撃したのだという。

 

 つまり、ここで敗北するのが正解ということだ。ここでエリスさんを倒してしまったら、歴史がかなり変わってしまう。

 

 手加減してわざと負けるしかないな………。

 

 ごめん、親父。加勢できないわ。

 

「え、エミリアが………2人………!?」

 

 あ、エリスさんがびっくりしてる。

 

 まあ、俺の容姿って母さんに似過ぎてるらしいからな。しかも髪型まで同じだから、服装以外でだったら瞳の色と胸の大きさで判別するしかないって事だ。

 

「馬鹿な………ジョシュアの奴、予備を用意していたというの………!?」

 

 は? 予備?

 

 何のことだ? ジョシュアっていうのは………確か、母さんの許嫁だ。ナバウレア駐屯地の指揮を執る貴族の息子で、親父に決闘を挑んで完敗したという。その後ネイリンゲン侵攻を指揮するんだが、ネイリンゲンの草原でモリガンの傭兵たちと交戦し、寝返ったエリスさんと母さんと親父の3人に敗北して死亡するという。

 

 つまり、この侵攻作戦の黒幕だ。でも、予備って何の事だ?

 

 まあ、どうでもいい。

 

「姉さん、ジョシュアの命令なのか?」

 

「黙りなさい。………私はあなたの姉じゃない。それに、私はもうあなたの事を家族と思っていないわ」

 

「ね、姉さん………」

 

 お、おいおい。マジでエリスさんって若い頃はこんなに冷たかったのか!? 結婚した後のエリスさんは絶対こんなこと言わないし、むしろ楽しそうに笑いながら母さんに飛びついたり、親父を押し倒したりしてたんだぞ!?

 

「姉さん、何故だ!? 私が何をした!?」

 

「何も知らなくていいわ。………とにかく、ジョシュアの命令よ。貴方をナバウレアに連れ戻し、その男は始末する」

 

「俺は?」

 

「あ、あなたは………ど、どうしましょう………?」

 

 何で困るんだよ。

 

 困惑しながら下を向き、考え事を始めるエリスさん。まあ、俺についての命令は受けていない筈だ。なぜならば俺とラウラは、この時代には存在しない。未来からやってきたのだから。

 

 とりあえず、今のうちに攻撃してしまおう。

 

「隙ありぃッ!!」

 

「なっ!?」

 

「おいおい!?」

 

 俺は卑怯者だ! 正々堂々と戦うわけねえだろうが!

 

 銃剣付きのハンドガンを構えたまま跳躍し、空中で銃口を下へと向ける。考え事をしていたエリスさんははっとして顔を上げたけど、俺は彼女へと容赦なくトリガーを引いていた。

 

 装填されているのは実弾。しかも、ステータスが上の転生者にも通用するように炸薬の量を増やし、攻撃力と殺傷力を底上げした強装弾である。ライフル弾と比べれば威力がないハンドガン用の弾薬だが、被弾すれば致命傷になるだろう。

 

 しかし――――――エリスさんならば弾く筈だ。21年後はモリガンのトップクラスの実力者となり、数多の転生者を氷漬けにして葬ることになるのだから。それに、この時点でも『絶対零度』の異名を持つラトーニウス最強の騎士だという。反応が遅れたとはいえ、銃弾をハルバードで弾くことは可能だろう。

 

 案の定、エリスさんは俺の思った通りにハルバードを振るった。

 

 まるでロングソードを片手で振るっているかのような素早い一撃。振り払われたハルバードから剥離した冷気が衝撃波に絡み付き、俺が立て続けに放った9×19mmパラベラム弾を飲み込む。冷気の衝撃波は瞬く間に今度は弾丸に絡み付くと、金属製の弾丸の表面を包み込み―――――――そのまま氷の粒へと変えてしまう。

 

 殺傷力を失い、人間を凍結させられるだけの低温を維持することもできなくなった冷気の残滓が、跳躍している最中の俺へと届く。人体が凍結するのはありえない温度とはいえ、まるでちょっとした冷凍庫が発するような冷気だ。こんなのをまともに喰らう羽目になったら、人間どころか魔物まで瞬時に氷漬けにされてしまう。

 

 なんてこった。若い頃からこんな魔術を使ってたのか………!

 

 海底神殿での戦いで、エリスさんの戦い方は目にしたつもりだった。ハルバードを片手に持ち、もう片方に第二次世界大戦中にアメリカ軍が正式採用していたM1ガーランドを持つ変則的な戦い方をしていたエリスさんと比べれば、若い頃の方がまともな戦い方をする。というより、まだ変則的な戦い方を知らないだけなのかもしれない。見切るのが難しい攻撃にさらされるよりはマシだけど、こんな攻撃を繰り出してくるのならば手を抜いている場合ではない。全力で戦い、全力で負けなければ。

 

「いきなり攻撃してくるなんて、随分と卑怯な手を使うのね!」

 

「何言ってんだ。殺し合いっていうのは正々堂々やるものじゃねえだろうが!」

 

 前世の平和な日本ではありえなかったが、この世界で〝殺し合い”は日常茶飯事だ。盗賊が馬車や列車を襲ったり、ギャンブルで負けて逆上した男が相手に襲い掛かるケースは珍しくはない。相手は人間ではなかったけど、俺たちもそんな世界で育ったんだ。

 

 死ねば、何もできない。何かをするには生き残るしかない。

 

 そう、死にたくない。だからこそ卑怯な手も使う。

 

 騙すのは当たり前。欺くのは日常茶飯事。そんな環境で、俺とラウラは親父たちに鍛えられた。

 

 空中で発砲を繰り返しながら着地し、すぐに地面を蹴って後ろへと下がるエリスさんを追撃する。エリスさんは俺を牽制するためにハルバードを立て続けに突き出してきたが、後方に下がりながらの一撃はあまり脅威にはならない。当たったとしても軽く突き刺さる程度で、エリクサーを使えば簡単に治療できるだろう。

 

 しかし、エリスさんだからこそ脅威になる要素がある。

 

 ハルバードを覆っている、彼女の氷だ。

 

 先ほどエリスさんは、銃弾に向かってハルバードの衝撃波を放ち、その衝撃波が纏っていた冷気だけで凍結させていた。そんな冷気を発する事ができる氷のハルバードに触れてしまったら、俺まであの弾丸たちと同じ運命を辿る羽目になるのは想像に難くない。

 

 迂闊に接近するのは避けるべきだが、そうすればエリスさんが弾丸を回避しやすくなる。負けたように見せかけるためにも、このまま接近戦を続けるのが一番だろう。

 

「馬鹿、迂闊に突っ込むな! その氷は―――――――」

 

「分かってるッ! でも、距離を離していたら―――――――――」

 

 その瞬間、ブローバックしていたCz75SP-01のスライドが―――――――動かなくなった。

 

 薬莢がエジェクション・ポートに詰まってしまったのだろうかと思って目を見開いた俺だったが、ジャムったわけではないというのはすぐに理解できた。

 

 スライドと銃口に、蒼い氷が付着しているのである。その氷は徐々に成長し始めると、瞬く間にスライドを完全に包み込み、今度はそのまま株のグリップへと広がり始める。触れたら俺の手まで氷付いてしまうのではないかと思った瞬間、俺は大慌てで両手のハンドガンを投げ捨て、腰に下げていたAN-94を引き抜いた。

 

 しかし―――――――武器を持ち替える際に、当然ながら隙ができる。エリスさんはその隙に再びハルバードを突き出すと、今度はハルバードの先端部でAN-94のハンドガードの辺りを突いた。

 

 堅牢なロシア製のライフルはその一撃で壊れることはなかったが――――――――やはり、氷の塊がハルバードの命中した場所から生まれ、凄まじい速度でライフルを包み込み始めた。いくらロシアの武器が堅牢とはいえ、完全に氷漬けにされた状態で動くわけがない。

 

 くそったれ、AN-94はお気に入りなんだぞ………!?

 

 今度は背中のOSV-96に手を伸ばしつつ後ろへと下がるが、今度はエリスさんが先ほどの俺のように地面を蹴って前に出てきた。大慌てで折り畳まれていた銃身を展開しようとしたが、彼女のハルバードは展開を終えたばかりのアンチマテリアルライフルの銃身を直撃すると、またしても長大な銃身を氷で覆い始める。

 

 おいおい、マジかよ!? ふざけんな! これもお気に入りなのに………!

 

「ま、待って! もう武器持ってないって!」

 

「何ですって?」

 

 いや、まだナイフはあるんだけどね。懐にもCz2075RAMIがあるし、秘密兵器も残っている。だから武器を持っていないというのは嘘だ。

 

 狼狽しているかのような演技をしながら、俺は命乞いを始める。もちろん演技だよ?

 

「こ、降参する! 殺さないでくれ!」

 

「てめえ………! 見損なったぞ、タクヤッ!」

 

 ああ、親父には………事情を説明した方がいいかもしれない。説明するのはクガルプール要塞の牢獄の中になるかもしれないけど。

 

 激昂する親父を一瞥してから、俺は演技を再開した。

 

「ね、狙いはあの2人なんだろ? お、俺はもう邪魔しないから………た、頼む」

 

「………無様ね」

 

 ゆっくりとハルバードを下げるエリスさん。氷で覆ったままだったけど、どうやら呆れてしまったらしい。ゆっくりと踵を返したエリスさんはため息をつきながら、戦意を失った俺ではなく親父たちを攻撃するためにハルバードを構える。

 

「卑怯なことをするからこうなるのよ、愚か者―――――――」

 

「もらったぁッ!!」

 

 エリスさんが俺に向かってそう言っている最中に左手をベルトのバックルへと伸ばした俺は、バックルの装飾に見せかけていた金具を倒した。狼狽していた演技を止めてそんな事を言った挙句、金具を倒した音で気付いたのか、エリスさんがぎょっとしながら俺の方を振り返る。

 

 ベルトのバックルの正面が俺から見て右側へと展開し、縦に4つに穴の開いた側面の部分が露出する。続けてバックルの側面にあるスイッチを押した瞬間―――――――その穴の開いた側面の部分からマズルフラッシュが噴き出し、4発の小型の銃弾が一斉に飛び出した。

 

 護身用に持っておいた秘密兵器の片方が、この『バックルガン』と呼ばれる仕込み銃である。第二次世界大戦中のドイツ軍で開発されたらしく、ごく少数が指揮官へと配備されていたという。バックルの中に仕込むために銃身はかなり短く、更に命中精度も最悪だ。弾丸もかなり小型のものを使用するため威力も低いが、命中すれば致命傷を負う羽目になるだろう。

 

「ば、バックルガン!?」

 

 あ、親父は知ってたのか。

 

 念のため、こいつは炸薬の量を減らした弱装弾にしてある。だから殺傷力はかなり落ちている筈なんだが―――――――エリスさんには関係ないようだ。

 

 素早く振り返ったエリスさんが、またしてもハルバードを薙ぎ払う。ハンドガンの弾丸よりも小さな4発の小型の弾丸は瞬く間に冷気に包み込まれ、氷の粒と化して地面へと落下してしまう。

 

「あ………」

 

「―――――――氷漬けになりなさい」

 

 そう言ったエリスさんは、騙し討ちに失敗した俺を睨みつけながら、まるで捕鯨船の船員が巨大なクジラに銛を投げつけるかのように、氷のハルバードを放り投げた。

 

 冷気をまき散らしながら飛来したハルバードは思ったよりも速く、慌てて腹の辺りを外殻で降下し終えた直後に俺の腹を直撃した。硬化していなかったら間違いなく腹を貫通されていた事だろう。騙し討ちされて激昂しているのだろうか?

 

「ぐりぺんっ!?」

 

 そして――――――――ハルバードに触れてしまった俺も、弾丸と同じ運命を辿る羽目になった。

 

 

 




※グリペンはスウェーデンの戦闘機です。

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