異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
ラトーニウス王国とは、因縁がある。
正確には、ラトーニウス王国騎士団に所属するジョシュアという男との因縁と言うべきか。半年前にこの世界に転生し、草原でエミリアと出会った俺は、彼女に導かれて騎士団の駐屯地のあるナバウレアという街に連れて行ってもらった。行くあてのない俺を受け入れてくれたエミリアだったが、彼女の許嫁であるジョシュアという男は面白くなかったらしく、俺を追い出すために決闘を挑んできたのである。
しかし、結局俺の勝利で決闘は終わった。俺が勝ったらエミリアを貰うと言っていたので、言った通りにエミリアを貰おうとした俺だったが―――――――向こうはその約束を守る気などなかったのか、それとも自分が負けるとは思っていなかったのか、決闘は終わったというのに配下の騎士に命じて俺を殺そうとしてきたのである。
だから俺は、エミリアを連れて逃げた。彼女もそれでよかったらしく、結局俺たちはそのまま騎士団でも簡単には追って来れない隣国まで亡命することになった。
美少女と、たった2人での逃走劇。ちょっとした駆け落ちみたいな短い旅を楽しんだが、金がないために野宿を繰り返した上に、魔物を蹴散らしたり騎士団の追っ手と戦いながらの逃走劇となったため、国境へ近づいた時はもう疲れ切ってしまっていた。
最終的に俺たちは国境を越え、このネイリンゲンで傭兵ギルドを始めることになる。それに対してラトーニウス側の被害は、追っ手に投入した騎士の大半が戦死し、国境を守るクガルプール要塞から貴重な飛竜を奪われるという大損害となった。確かに俺にも責任があるが、ジョシュアには自業自得としか言いようがない結果である。
そんな事があったため、俺とあの国には因縁がある。国境を越えれば迂闊に追って来れないだろうとは思ってたんだが………国境を越えて追ってきた以上、撃退する準備をしておくべきだろう。可能であれば最初に交渉し、決裂したのならば仲間たちに発砲命令を下せばいい。
モリガンの制服を身に纏い、いつもの装備を全て装備した俺は、側近として信也を引き連れて屋敷の玄関の扉を開けた。仲間たちは既に武器を装備し、窓から外にいる騎士たちに向かって銃口を向けている。
でも、まだ撃つ必要はない。もしかしたら騎士団はエミリアを連れ去りに来たわけではないかもしれないからだ。かなり可能性は低いけど、俺たちに依頼をしに来た可能性もある。
だが、もし「エミリアを返せ」と言ったのならば、俺は仲間たちに攻撃命令を下すつもりだった。
騎士たちの隊列の中から、騎士を2人だけ引き連れてエミリアにそっくりの少女がこっちに歩いて来る。さっきスコープを覗いた時に隊列の先頭に立っていた少女だろう。やっぱり顔はエミリアにそっくりで、まるで双子のようだ。でも瞳の色と髪型は違う。エミリアの瞳の色は紫色なんだけど、彼女の瞳は翡翠色だ。それに、髪型はポニーテールではなく髪の両側をお下げにしている。
エミリアと同じく凛々しい雰囲気を身に纏う美少女だった。
「―――あなたたちが、モリガンという傭兵ギルドね?」
「ああ」
エミリアにそっくりな少女が、俺の顔を見つめながら問い掛けてきた。
「私は〝エリス・シンシア・ペンドルトン”。ラトーニウス王国騎士団に所属しているわ」
「ラトーニウスの騎士団にはお世話になったことがあるからな。………ジョシュアの野郎は元気か?」
「ええ。まだあなたのことを恨んでいたわよ? 速河力也くん」
「そうか。………それで、何をしに来たんだ?」
右手を腰の右側に下げてあるプファイファー・ツェリスカのホルスターに近づけていく。もしエミリアを連れ戻すと言ったならば、すぐに.600ニトロエクスプレス弾の早撃ちをお見舞いしてやるつもりだ。
エリスはちらりと俺の右手を見て、冷笑しながら言った。
「――――エミリアを返してもらいに来たのよ」
「………なるほど」
やれやれ、もう交渉決裂か………。
最初から一戦交える覚悟でやって来ていたのか、エミリアにそっくりなエリスはにやりと笑った。まるで早く武器を抜けと言わんばかりの笑みを目の当たりにした俺は、素早くホルスターの中に納まっているプファイファー・ツェリスカのグリップを握り、大型のリボルバーをホルスターの中から引きずり出した。スピードのステータスも他のステータスと同じように20000を超えているため、彼女に銃口を向けるまでの速度は西部劇のガンマンよりも速かっただろう。
プファイファー・ツェリスカはオーストリア製の大型リボルバーである。コルト・シングルアクションアーミーと同じくシングルアクション式のリボルバーで、1発ぶっ放したら銃身の後端にある撃鉄(ハンマー)を引き戻す必要があるため連射速度ではハンドガンに劣るが、使用する弾薬は一般的なマグナム弾やハンドガン用の弾薬ではなく、大型のライフル弾である『.600ニトロエクスプレス弾』。破壊力ならば他のリボルバーを遥かに上回る。
いきなり武器を引き抜いた俺に気が付き、エリスが引き連れていた2人の騎士が驚く。だが、エリスはまだ冷笑したままだ。
俺は左手を撃鉄(ハンマー)に近づけると、まず最初にエリスに向かってトリガーを引いた。マズルフラッシュが噴き出た直後、すぐに左手で撃鉄(ハンマー)を元の位置に戻し、銃口を今度はエリスの左右に立っている騎士に向けてトリガーを引く。3発の.600ニトロエクスプレス弾の早撃ちによる先制攻撃だ。
もしかしたらジョシュアから既に銃の事を聞いているかもしれなかったが、このファニング・ショットには対応できないだろう。
猛烈な銃声がまだ残響すら生み出さぬうちに、俺の目の前で2人の頭が砕け散った。.600ニトロエクスプレス弾に喰らい付かれ、頭蓋骨を粉砕されたのは、エリスが引き連れていた2人の騎士だけだ。
エリスはどうした? まさか、躱したのか!?
マズルフラッシュが消え始めた向こうに、エミリアと同じく蒼いエリスの髪が見えた。彼女が引き連れてきた2人の騎士は.600ニトロエクスプレス弾に被弾して頭を叩き割られたけど、エリスは何と俺の早撃ちを見切って右側に回避していたんだ。
こいつ、俺の早撃ちを躱しやがった・・・・・・!!
「信也、屋敷に戻れッ!」
「りょ、了解ッ!」
エリスはラトーニウス王国騎士団の精鋭部隊に所属していて、接近戦ではエミリアよりも強いらしい。エミリアは俺と互角だから、接近戦では俺よりも強いということになる。
だから、信也では勝ち目がない!
「ハルバードを!」
「はっ!」
エリスが後ろに立っていた騎士たちの隊列に叫ぶと、その隊列の中でハルバードを持っていた1人の騎士が、彼女に向かってハルバードを放り投げた。エリスはそのハルバードを後ろにジャンプしながらキャッチすると、槍の先端部を俺に向けて構える。
なるほど、槍が一番得意なのか。
近距離武器ではリーチが長い。しかもエミリア以上に接近戦が得意ならば、剣で挑むのは無謀だな。
右手のプファイファー・ツェリスカをホルスターに戻しながら、耳に装着していた無線機に向かって指示を出す。
「各員、攻撃開始! 殲滅しろ!
『了解!』
くそったれ、予想以上に手強い奴が襲来しやがった!
屋敷の方から聞き覚えのある物騒な音が聞こえた瞬間、俺は反射的に屋敷の方を振り返っていた。幼少の頃からその轟音を耳にし、それを生じる武器の扱い方を教わってきた俺にとっては、聞き覚えのあるというよりは身近な轟音である。
銃身の中から撃ち出される炸薬の断末魔。そしてそれが放たれた向こうから聞こえてくるのは、敵の断末魔だ。
「銃声………?」
ラウラにプレゼントするためのチョコレートとリボンの入った小さな箱を抱えながら歩いていた俺は、反射的に臨戦態勢に入っていた。射撃訓練場で銃声を耳にする時は訓練。それ以外の銃声は実戦だと思って生活していたためなのか、訓練とは思えない状況でそれを耳にすれば勝手に臨戦態勢に切り替わってしまう。
平和な世界になったら大変な体質になるなと思いながらメニュー画面を開こうとしていると、いつの間にか賑わいが絶叫に変貌し、戸惑いながら逃げていく買い物客たちの間から、赤毛の少女が飛び出していくのが見えた。大人びた容姿の少女はいつものように真っ黒なテンプル騎士団の制服に身を包み、片手に包装された小さな箱を持ちながら、屋敷へと向かって走っていく。
「ラウラ!」
「タクヤ………? ちょっと、何してるの?」
「買い物帰りだよ」
彼女のために雑貨店で購入したリボンの入った箱を後ろに隠しながら、俺は片手でメニュー画面を操作して武器をいくつか取り出した。ラウラ用のダネルNTW-20を渡し、接近戦になった時のためにOTs-14グローザを2丁取り出す。このグローザは薬莢が排出されるエジェクション・ポートが右側にある銃であるため、左利きの射手には向かない銃とされている。でも、左利きのラウラのために2丁のうち片方の内部構造を左右ですっかり逆転させた左利き専用のタイプを用意したので、これで問題はないだろう。
サイドアームにはテンプル騎士団で採用しているCz75を渡しておく。俺のCz75SP-01と同じだけど、ラウラは元々白兵戦をあまり考慮していないため銃剣はつけていない。でっかいマズルブレーキとドットサイトとライトが取り付けてあるだけだ。
俺もいつもの装備を取り出す。87式グレネードランチャーを銃身の下にぶら下げたOSV-96を背中に背負い、グレネードランチャー付きのAN-94を装備する。このAN-94は5.45mm弾から7.62mm弾に弾薬を変更しており、場合によってはラウラと弾薬を分け合う事も可能だ。マガジンも同じものを使えるように改良したため、いざという時はそのままマガジンを装着するだけでいい。
サイドアームには2本の大型ワスプナイフと2丁のCz75SP-01を装備する。それと手榴弾をいくつか装備してから、俺はアサルトライフルの安全装置(セーフティ)を解除した。
ここから屋敷までは走れば1分足らずで到着する。キメラの俺たちが全力疾走すれば20秒くらいで屋敷に戻ることは可能だろう。
「ラウラ、敵は?」
「待って。………騎士がいっぱいいるよ」
「騎士? 所属は?」
「えっと、分厚い盾を持ってて………剣を持ってるのが多いよ」
「ラトーニウスか………?」
魔術の発展が遅れているラトーニウス王国では、魔術師が極めて貴重な人材とされているため、人材を失う危険性の高い最前線に魔術師を送り込むことは殆どないと言われている。上層部の出し惜しみなのは明らかだが、武器が発展して魔物に対抗できるようになるのは産業革命以降の話で、この時代では魔術師に援護してもらえない前衛は殆ど魔物の餌食になっているのが現実である。
そんな前衛が少しでも生存率を上げるために必死に発展させたのが、母さんも習っていたラトーニウス式の剣術だ。魔術師が少ないラトーニウス騎士団では、特に接近戦を重視する。
「………急ごう」
「うんっ!」
もし相手がラトーニウス騎士団ならば、接近戦になるだろう。白兵戦ならば俺の独壇場だが、相手も百戦錬磨の騎士団である。しかも産業革命以降と比べれば貧弱な武器で、魔物を相手にしてきたベテランたちだ。銃を持っているからと高を括れる相手ではない。
ラウラと走りながら息を呑む。屋敷に近付いてくるにつれて銃声が大きくなり、屋敷を取り囲んでいる騎士たちの姿がはっきりと見えてくる。
紺色の制服の上に白銀の防具。俺たちの時代の騎士団と比べると防具はがっちりしていて、剣も古めかしいものばかりだ。防具で魔物の攻撃を防ぐよりも、魔物の攻撃を回避しやすいように防具を極力減らした方が生存率が高くなると立証される前の装備だから仕方のない事だ。
あの紺色の制服は………やはりラトーニウスか!
屋敷がラトーニウス騎士団による攻撃を受けているようだ。それを理解した俺だったが、確かモリガンの屋敷が襲撃されたのは数回しかない筈だ。親父から聞いた話だが、その中でも騎士団による襲撃を受けたのは1回のみ。確か………エリスさんが、母さんを連れ戻そうとしていた時だ。
もし歴史の通りならば――――――――あの中に、エリスさんがいるのか………?
「ラウラ、あの中に若い頃のエリスさんがいるかも」
「ふにゃっ!? ママが!?」
「ああ、だから殺すなよ。殺したらラウラは存在しなかったことになっちまう」
「う、うん! 分かった!」
ここは21年前のネイリンゲン。俺たちが生まれる前だ。
もしここでエリスさんが死んでしまったら―――――――ラウラは生まれなかったことになってしまう。そう、エリスさんが死ぬことで親父はエリスさんを妻にすることがなくなってしまうため、ラウラは存在しなかったことになってしまうのだ。
仮説だが、もしそんな歴史を変えてしまうような真似をすれば――――――――元の時代に戻った瞬間、俺たちの時代がその影響を受けて変わってしまっている可能性がある。
例えば、エリスさんが死んだ影響で最初からラウラがいなかったことになっていたり、逆に母さんが死ぬことで俺がいなかったことになっているという可能性もあるのだ。それに、親父が死ねば俺もラウラもいなかったことになってしまう!
つまり下手に介入することは許されない。
じゃあ、傍観するか? 下手に介入できないのであれば、このまま黙って2人で傍観を続け、俺たちの世界が変わらないように若き日の親父たちに戦いをゆだねてみるか?
いや、歴史を変えなければいいのだ。介入の結果をしっかり考えれば歴史は変わらない筈だ!
確かこのネイリンゲン侵攻では、親父やエリスさんの話では母さんと親父が不意を突かれて氷漬けにされ、親父はクガルプール要塞の地下で拷問を受ける羽目になるんだ。それで母さんは、よりラトーニウス王国の内地にあるナバウレアに拘束されることになったと聞いた。俺たちが介入しても、そんな感じの結果になるようにすればいい。
「ラウラ、歴史は変えるなよ!」
「了解! じゃあ、私は狙撃で支援するね!」
「おう。適度に手を抜いてくれよ」
頼むぜ。歴史が変わって俺たちがいなかったことになるのはごめんだぞ。
氷の粒子を全身に纏ったラウラの姿が消失し、草原を駆け抜けていく彼女の足音が段々と小さくなっていく。氷の粒子で周囲の光景を反射させ、まるでマジックミラーのように自分の姿を隠してしまうラウラの能力の1つだ。消費する魔力もごく少量であるため探知は難しく、熱で探知しようにも微細な氷の粒子のせいで反応はない。しかも氷の粒子自体が小さいため過剰に気温を下げることもないから、逆に寒さで探知しようとするのも難しい。
ソナーのように音波で探知しようとしても、ラウラがメロン体から音波を発してそれを打ち消してしまえば探知は不可能だ。
姿の見えない敵から、被弾すればほぼ確実に即死する20mm弾で狙撃されるのである。
裏庭の塀を飛び越え、屋敷の右側から回り込む。頭上にある3階の窓からはLMG(ライトマシンガン)の銃口が突き出ていて、聞き覚えのある雄叫びと共に豪快な銃撃が騎士を薙ぎ払い続けていた。おそらく上の窓で撃ちまくっているLMGの射手はギュンターさんだろう。若き日のギュンターさんは、LMGを2丁持って敵の大軍をひたすら蜂の巣にしていたという。ステラみたいな役目だったらしい。
窓の縁に向かって手を伸ばし、壁を登り始める。幼少の頃から近所のワイン倉庫や工場の壁を訓練で登っていたため、壁を登るのはお手の物だ。手をかけていた窓の縁に足を乗せ、さらに上の窓の縁や掴まれそうなところに手を伸ばすのを繰り返してあっさりと壁を登った俺は、窓から機関銃を突き出して下を睨みつけていたギュンターさんに声をかけた。
「ギュンターさん!」
「うおっ!? あ、姉御!? タクヤか!?」
「あの、これ預かっててください!」
「なんだこれ!?」
ポケットに入れておいたり本の箱と、2人分のチョコレートをギュンターさんに預けておく。つまみ食いしないで下さいよ?
「ラウラへの誕生日プレゼントなんです! この戦闘が終わったら渡そうかなって!」
「お姉ちゃん想いなんだな! 任せろ!!」
「つまみ食いしないで下さいよ!」
「するか!」
よし、俺も戦いに参加しよう。
ちなみに、ギュンターさんが使っていたLMGはロシア製の『RPD』のようだった。大口径で頑丈な銃が多いロシア製を多用する傾向のあるモリガン―――――――テンプル騎士団も同じだ―――――――らしい武器だな。
第二次世界大戦後に本格的に採用された機関銃で、AK-47と同じ弾薬を使用する。がっちりしたバイポッドと無骨なドラムマガジンを銃身の長いライフルに取り付けたようなフォルムの銃で、やはり極めて堅牢だったらしい。しかし現在では旧式の銃となったため、すっかり退役してしまっている。
「ギュンター、左に弾幕を張って! 右は私が仕留めるわ!」
「了解!」
カレンさんはドラグノフを持っているようだな。こちらもロシア製のマークスマンライフルだ。娘となるカノンと同じく選抜射手(マークスマン)を担当していたカレンさんも、中距離ならば百発百中の優秀な射手だったという。
さて、俺も戦おう。
AN-94のセレクターレバーを2点バーストに切り替え、窓の縁に足を乗せたまま射撃を開始する。裏庭の方へと回り込もうとしていた騎士の背中を撃ち抜き、いきなり倒れた仲間を見て驚く騎士の顔面を7.62mm弾の速過ぎる2点バーストで粉々にする。
数名の騎士が壁に足をかけた状態で狙撃してくる俺に気付き、慌てて分厚い盾を持ち上げた。産業革命以降では完全に退役し、騎士団の武器庫化博物館でしかご対面できない古い盾だ。稀にあんな感じの盾を持つ冒険者を目にするが、魔物を相手にするならばあんな盾を持つのではなく、相手の攻撃をかわす努力をするべきなのだ。盾が攻撃を全て防いでくれるとは限らないのだから。
とはいえ、金属製の分厚い盾を7.62mm弾で貫通するのは骨が折れるだろうか。そう思いながら銃口を向けようとしたその時、密集隊形で盾を構えていた騎士たちの胴体が、何の前触れもなく千切れ飛んだ。
ぐしゃぐしゃになった上半身が鎧の破片と共に地面に落ちる。噴き上がった鮮血が屋敷の庭を真っ赤に汚す。
「うっ………おえっ………!」
「ちょっとギュンター! 吐かないでよね!?」
今の攻撃は――――――――ラウラの狙撃か。
さすがに20mm弾は防げるわけがないよな。しかも被弾したのは盾ではなく、防具で覆われているだけの左脇腹。下手をすれば装甲車も破壊できる圧倒的な攻撃力の弾丸に耐えられるわけがない。
「白兵戦に移ります。もし良かったら援護お願いしますね」
「分かったわ! ……ギュンター、しっかりしなさい! ほら、援護するわよ!!」
「お、おう………!」
し、しっかりしてくれよ………。
苦笑いしながらAN-94を腰に下げ、腰の後ろにあるホルスターの中から2丁のCz75SP-01を引き抜く。安全装置(セーフティ)を外した俺は、眼下で慌てふためく騎士たちを見下ろすと、静かに窓の縁から飛んだ。
白兵戦は―――――――俺の独壇場だ。