異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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砂漠の街に到着するとこうなる

 

 シベリスブルク山脈は、この異世界で最も寒い場所と言われている。猛烈なブリザードの防壁で囲まれら中心部の最低気温は-102.8℃になるため、足を踏み入れればたちまち凍死してしまうという。炎属性の魔術ならば得意だと高を括って挑んだ魔術師の大半が凍死してしまうほどの環境であり、彼らの得意とする炎でも歯が立たないほど危険なダンジョンなのだ。

 

 しかも、ブリザードの壁を越えれば危険度が一気に上がる。魔物はより危険になり、気温も一気に下がる。ブリザードのせいで正面は全く見えず、場所によっては断崖絶壁になっている場所もあるという。

 

 未だに冒険者の調査を許していない場所であるため、一時期は中心部に何か秘宝が眠っているのではないかという噂が有名になり、多くの冒険者が挑んでいったというが…………結果はその中心部に向かう前に魔物に食い殺され、氷のオブジェになって帰らぬ人が大半を占めるという事態になった。

 

 今では死亡率90%以上の危険なダンジョンとされ、熟練の冒険者でも調査の仕事を引き受けることはないという。

 

 もちろん、俺たちはそんな危険な場所に向かうつもりはない。あくまでこの山脈を越えることが目的であるため、極力安全なブリザードの外周部を通って反対側へと越える予定になっている。そうすれば斜面も比較的緩やかだし、気温も中心部よりはマシなのだ。

 

 斜面をドーザーブレードで抉り、キャタピラの跡を残しながら進み始めてもう3時間が経過している。雪の中でも俺は命綱を腰に巻いたまま、まだ音を上げずにタンクデサントを続ける俺だったが、そろそろ車内に入るべきだろうか。スオミの槍でデーモンたちを掃討した影響なのか、今のところ魔物が姿を現す様子はない。

 

 この山脈を越えれば、フランセン共和国の植民地へと到達する。雪山の反対側なのだから寒冷地なのだろうと思いきや、信じがたい事に暖かい草原が広がっているらしく、そのさらに向こうには岩山と砂漠が広がっているという。気候が全く正反対だというのにお互いの環境を維持していられる理由は不明とされており、今でも学者たちが研究を続けているという。

 

 その植民地は―――――――『カルガニスタン』と呼ばれている。

 

 砂漠が雪からカルガニスタンを守り、雪山が熱風からオルトバルカを守っている状態なんだろう。前世では考えられない気候である。

 

 極寒の中でのタンクデサントを続けているうちに、雪が少しずつ晴れ始めた。戦車の上に降り積もっていた雪が少しずつ解け始め、車体の前方から聞こえてくる音が変わり始める。雪をかき分ける音が、段々と地面の岩にぶつかる硬い音へと変貌を始めているのだ。

 

「そろそろドーザーブレード外すか?」

 

『そうね。もう雪山も終わりだし』

 

「はいよ」

 

 メニュー画面を出し、装備している兵器の中からチャレンジャー2をタッチ。カスタマイズの中からドーザーブレードを選び、それだけを装備から解除する。その瞬間からドーザーブレードと岩がぶつかったり擦れる音がぴたりと止まり、装備が外れた戦車が少しだけ軽くなった。

 

 結局、山脈を走行している間は全く魔物に襲われることはなかった。そのため弾薬は1発も使っていないし、装甲は無傷のままである。

 

「ドレッドノートよりヴァイスティーガーへ。そろそろドーザーブレード外した方が良いぞ。どうぞ」

 

『了解(ヤヴォール)。ケーター、お願い』

 

『はいはい』

 

 この山を越えれば今度は砂漠だ。食料は買い込んでたのがまだ残ってるから大丈夫だし、貴重な水はラウラに氷を出してもらってから俺が溶かせばいくらでも調達できるし、問題はないだろう。

 

 とりあえず、カルガニスタンに到着したらまず『クラルギス』という街を目指す。オアシスの中に作った大きな街らしく、湧き水もあるため住民たちは水に困ることなく生活しているという。しかも街の中には大規模な農場もあるらしく、採れた野菜は商人たちが高値で買い取るらしい。

 

 到着したらそこで休んで、後は海を目指して旅をするわけだ。クランたちとはその街でお別れだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪山を越えた向こうに広がっていたのは、本当に草原だった。草で覆われた大地と蒼い空。幼少の頃から駆け回った防壁の外側と全く同じ景色が、雪山の向こうに広がっていたのだ。

 

 やっとアイスティーを飲んでも問題ない気温になったと喜んでいるうちにその草原も姿を消し始め、今度は逆にアイスティーでなければ飲めないほどに気温が上がり始める。最初は貧乏くじだったと思っていたタンクデサントだけど、きっと今頃車内はオーブンの中のように蒸し暑くなっているに違いない。

 

 いつの間にか草原ではなく砂の上を走行している戦車の上で、太陽に照らされながらそう思った俺は、まだ冷たいアイスティーが入っている水筒を口へと運んだ。

 

 ふははははははははっ! ここは特等席だぜ!

 

 フードのおかげで直射日光も気にならないし、適度に風も吹くから涼しい時もある。きっと今頃ナタリアたちは、タンクデサントという名目で風にあたる事ができる俺を羨ましがっているに違いない。

 

 きっとこれは、極寒の中でのタンクデサントに耐え抜いたご褒美なのだ。

 

「お兄様、紅茶のおかわりですわ」

 

「おう、ありがと。………ん?」

 

 ハッチからカノンが顔を出し、紅茶の入った新しい水筒を渡してくれる。軽く振っているとカラカラと氷がぶつかる音が聞こえてきたし、水筒もとても冷たいからアイスティーなんだろうという事はすぐに分かったが、その水筒を受け取った瞬間に俺は違和感を覚えた。

 

 蒸し暑い筈の車内から出て来たカノンは、全く汗をかいていないのである。もちろんタオルやハンカチで拭き取った跡もない。

 

 暑さに強かったのだろうかと見当違いの仮説を立てようとした俺に答えをくれたのは―――――――車内から溢れる冷気だった。

 

 ん? 冷気………? ラウラが氷でも置いてるのか?

 

 カノンが頭を引っ込めた瞬間に、俺も頭だけをハッチの中へと突っ込んで車内を見渡し―――――――目を見開いた。

 

「なっ…………!?」

 

 車内は、全く蒸し暑くなかったんだ。しかもむしろ涼しく、汗をかけるような環境ではない。

 

 嘘だろ…………? どうしてこんなに涼しいんだ!?

 

「はぁ…………この冷房って、とっても便利ねぇ…………」

 

 れっ、れ、冷房だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?

 

 そういえば、居住性も考慮してエアコンを搭載してたんだ! くそ、外が暑くても冷房が使えるから関係ないって事か!!

 

 ああ、羨ましい! 極寒の中でのタンクデサントの次は灼熱の中でのタンクデサントか! 何で俺はいつも貧乏くじばっかり引くんだ、畜生!!

 

 まるで昼寝している猫のように気持ちよさそうな顔をしながら、車長の座席でくつろいでいるナタリアを見下ろして苦笑いしながら顔を引っ込めた俺は、息を吐いてからそっとハッチを閉じた。………ひ、ひでえ………。

 

 絶望しながら砲塔の後ろまで這い、そのまま横になる。最初は気持ちいいと感じていた風だけど、心地良い冷風を常に吐き出し続ける快適さの塊(エアコン)を目の当たりにした後では、まるで俺を嘲笑う風にしか思えない。

 

 戦車の上でため息をついていると―――――――チャレンジャー2から見て左側に広がっていた砂の大地から、まるで噴水が噴き上がるかのように砂が噴き上がる。

 

『ピギィィィィィ………!』

 

「あぁ………?」

 

 砂の柱の中から姿を現したのは、不規則に棘やイボのようなものが生えた外殻を持つ、巨大なサソリだった。カニのように尖った足はずんぐりとした胴体へと繋がっており、その胴体の後端からは外殻で覆われた鞭を思わせる尻尾が生えている。先端部には毒々しい紫色の針が生えており、尻尾が揺れる度に紫色の液体をばら撒いていた。

 

 巨大なサソリのような姿をした魔物だが、ずんぐりとした胴体に生えている頭部は明らかにサソリのものではない。そこに生えているのは昆虫に似た甲殻類の頭ではなく、まるで人間の巨大な髑髏のような頭部である。

 

 確か、『デッドアンタレス』という名前のサソリ型の魔物だ。砂の中からいきなり姿を現して旅人を襲う獰猛な魔物だと図鑑に記載されていたが、まさか俺たちを獲物だと勘違いしてるんじゃないだろうな?

 

 戦車に喧嘩売ってんのかぁ!?

 

『敵襲! カノンちゃん、砲撃を――――――』

 

「俺がぶち殺すッ!」

 

『え?』

 

『あらあら、ドラゴン(ドラッヘ)ったら』

 

 勢いよく起き上がって砲塔の上のKord重機関銃を掴み取り、弾丸が装填されているのを確認してから機関銃を70度ほど左方向へと旋回させる。巨大な鋏を動かしながらこちらへと走ってくるデッドアンタレスは、でかい獲物を見つけたことを喜んでいるのだろうか。

 

 そんな姿を見ていると………とてつもなくイライラする。

 

 極寒の中でタンクデサントを終えたかと思えば、今度は灼熱の中でのタンクデサントだ。どうして俺ばっかりいつも貧乏くじを引いてしまうのか。

 

 幼少の頃から母親に似ているせいで女の子に間違えられるし、温泉とかトイレに入る時に男性用の方に入れば滅茶苦茶目立つ。かといって女性用の方に入るわけにはいかない。酒屋とか宿屋に行けば酔っぱらった冒険者が俺を女だと勘違いして絡んでくるし、時折仲間からも俺が男だという事を忘れられてしまう。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ! 八つ当たりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 とりあえず風穴だらけになれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 

 砂漠の真っ只中で絶叫しながら、俺は重機関銃のトリガーを引いていた。

 

 最初の一撃がデッドアンタレスの近くの砂を抉り取る。それでデッドアンタレスは反撃されているという事に気付いたらしいが、奴が逃げようと横に歩き始めたことには、もう重機関銃の12.7mm弾が外殻を抉り、肉をズタズタにしていた。

 

 死因は被弾。原因は、俺の八つ当たりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラルギスに到着したのは、夜になってからだった。

 

 オアシスの中に作られた小さな村が発展し、更にフランセン共和国による統治で本格的に発展したクラルギスは、オルトバルカ王国の大都市ほどではないものの大きな街で、建築物とオアシスの自然が同居する砂漠の中の楽園のような街だった。

 

 砂と木々が発する自然の香りに包まれた街の外で戦車から下り、戦車を装備から解除してからとりあえず宿屋を探す。幸いここには冒険者が多く訪れるらしく、宿屋だけでなく管理局の宿泊施設が何軒もあったため、宿泊する場所はすぐに見つかった。荷物を下ろして寒冷地用の服装からいつもの服装―――――ダンジョンに行くわけではないので、テンプル騎士団の制服ではなく私服―――――に着替えた俺たちは、街の中にある小さなレストランで夕食を摂ることにした。

 

 明日の朝にはお別れになるし、助けてもらった恩をまだ返していない。だからクランやケーターたちに奢ることにしている。

 

 9人で入ればもう満員になってしまうほど小さなレストランだから、もう実質的に貸し切りと変わらない。木で作られたテーブルの上には特産品の野菜を使ったサラダやスープ料理が並び、美味そうなスパイスの香りが漂っている。

 

「はい、飲み物です」

 

「どうも♪」

 

 店を切り盛りするドワーフのおじさんから飲み物の入った木製のコップを受け取り、みんなに渡すクラン。オレンジジュースとかアイスコーヒーの入ったコップが目の前に次々に置かれていくけど、何だか明らかにジュースとは違う匂いも漂ってくる。

 

 ん? ちょっと待て。これってアルコールの臭いか………?

 

「お、おい、クラン!? お前のそれってビールか!?」

 

「え? そうよ?」

 

 クランが手にしているコップの中にたっぷりと入っているのは、まるでクリームのように真っ白な泡を次々に生み出す透き通った黄土色の液体だった。それが発する匂いは、幼少期に家で親父や遊びに来た信也叔父さんが飲んでいたものと全く同じだったからすぐに分かった。

 

「おいおい、何でビール注文してるんだよ!? お前まだ未成年だろうが!?」

 

「あはははははっ♪ 安心しなさい、ドイツ(ドイッチュラント)では18歳からビール飲んでも大丈夫なのよ♪」

 

「いや、ここはもうあんたの祖国じゃないよ!?」

 

「いいじゃないの。私もう転生してから1年経って18歳だもんっ♪」

 

 うーん、酒が飲めるようになるのが20歳からになってる日本出身としては違和感を感じるが………彼女はそんな環境で育ったんだよな。これは仕方がないか。

 

 ちなみに一般的な転生者は、どんな年齢でも17歳に若返った状態でこの異世界にやってくるという。実際に俺たちの親父であるリキヤも転生する前は22歳の会社員で、転生した時には17歳に若返っていたらしい。

 

 約1名が当たり前のようにアルコールを注文してるけど………とりあえず、乾杯しよう。

 

「じゃあ、乾杯しようか」

 

「そうね」

 

 コップを持って全員で立ち上がる。小さな狭いレストランの中で一気に立ち上がったからなのか、厨房の向こうでせっせと野菜炒めのような料理を作っていたドワーフの店主がびっくりしてこっちを見ていた。

 

 す、すいません………。

 

「「「かんぱーいっ!!」」」

 

 立ち上がろうとすれば椅子かテーブルにぶつかってしまうほど狭い店の中で、俺たちの声が響いた。

 

 互いにコップをぶつけ合ってから、中に入っている飲み物を口へと運んでいく。ついさっきまでずっと直射日光の真下でタンクデサントしてたから、冷たいオレンジジュースが滅茶苦茶美味い。

 

 乾杯を終えてからは再び椅子に腰を下ろし、みんなで料理を食べ始めることにする。野菜を使った料理が中心だけど、牛肉とか豚肉を使った料理も含まれてるみたいだ。こっちのスープには………なんだこれ? でっかい鋏みたいなのが入ってるぞ。カニか?

 

「おじさん、この鋏ってカニですか?」

 

「ん? ああ、砂漠で木端微塵にされたデッドアンタレスの残骸が転がってたんでな。穴だらけになって死んでたんだ。勿体ないから食えそうなところを切り取って持って帰ってきたのさ」

 

 おい、これ俺が八つ当たりで殺した奴じゃねえか。

 

 まさか八つ当たりで殺した魔物が、調理されて夕食として再登場するとは………。

 

「ところでなんであんな死に方してたんだろうなぁ。見たことない傷痕だったぜ」

 

「そ、そうなんですかぁ………」

 

 おじさん、こいつを殺した張本人はここでサラダ食べてますよー。

 

「ぷはぁーっ! あー、やっぱりビール美味しい………! ねえ、ケーターも飲んでよぉ」

 

「俺も!?」

 

「いいじゃーん。ねえ、ケーター」

 

「しょ、しょうがねえなぁ………おじさん、ビール1つ追加で。あ、それとソーセージも下さい」

 

「はいよ、ちょっと待ってな!」

 

 お前も飲むのかよ。

 

 しばらくすると、野菜炒めと一緒にドワーフのおじさんがビールの入ったコップを持って来てくれた。彼からそれを受け取ったクランは、嬉しそうに笑いながらケーターにコップを渡し、乾杯してから2人で一気にビールを飲み干す。

 

 仲がいいんだなぁ………。ケーターから聞いたんだが、クランたちは元々大学生で仲間が良かったメンバーらしい。特にケーターとクランは寮では同室だったらしく、ドイツからわざわざクランの両親が来日するほどだったという。

 

「ふにゃあ………この野菜炒め美味しい」

 

「本当ですわね。あっ、お姉様。ピーマン食べます?」

 

「ふにゅ? 駄目だよカノンちゃん。ちゃんとピーマンも食べないと」

 

「で、でも………苦手ですわ、この緑の野菜は………」

 

「ならばステラがいただきます。はむっ」

 

 ステラには好き嫌いがないんだろうか。逆に食えそうにないものまで食おうとするから、その気になれば何でも食べれるのかもしれない。あの食虫植物みたいな変なものは食べないでほしいけど。

 

 仲間たちを見守っていると、ビールのコップを持ったクランが立ち上がり、ラウラの隣で野菜炒めを皿に取っていたナタリアの隣へとやってきた。顔はもう既に赤くなっているから、もう酔っぱらってるんだろう。

 

「Guten Abend!!(こんばんわ!!)」

 

「きゃっ!?」

 

「きゃははははっ。確か、あなたが車長だったのよね?」

 

「え、ええ。よろしく」

 

 車長はどちらも金髪の美少女か。

 

 ナタリアは冷静なしっかり者って感じだけど、クランはしっかりしていながらもお茶目な奴だから2人の印象とか雰囲気は全く違う。

 

「ほらほら、ナタリアちゃんも飲んでよ♪」

 

「えぇ!? いや、あの、私はちょっと………」

 

「なあ、タクヤ」

 

「ん?」

 

 クランに酒を奨められるナタリアを見守っていると、テーブルの向かいに座っていたケーターに声をかけられた。他のみんなは雑談しながら食事を楽しんでいるんだが、今のケーターはどうやら真面目な話を始めるつもりらしく、表情は戦闘中のように冷静だった。

 

「お前の計画なんだが………」

 

「ああ」

 

 テンプル騎士団のことか。

 

 世界中に諜報部隊と実働部隊を配置し、転生者を狩ったり保護する組織を作るという俺の計画。実現すれば転生者の蛮行は激減するだろうし、この世界を守ることもできるかもしれない。まだスオミ支部ができたばかりだが、今後もいろんな場所で仲間を増やしていこうと思っている。

 

「俺たちも、転生者の蛮行を目にしてきた。………この世界にやって来て最初に殺した人間は、転生者だったんだよ」

 

「………」

 

「あんな奴が世界中で人々を苦しめてるのは許せない。………もしも、お前たちが奴らを狩るために戦うというのなら――――――――」

 

 フォークを皿の上に置いたケーターは、息を吐いてから頭を下げた。

 

「―――――――ぜひ、俺たちも仲間にしてくれないか?」

 

「え?」

 

「仲間たちとも話し合ったんだ。俺たちが世界中を旅しながら奴らと戦ってもキリがない。だから………」

 

 仲間たちともう話し合ってたのか………。もし彼の独断だったら仲間たちと話し合うまで待つつもりだったけど、もう意見が決まっているのならば迎え入れるしかない。第一、今のテンプル騎士団はまだまだ小さな組織なのだ。

 

 それに、実働部隊だけでなく、彼らに情報を伝えるための諜報部隊も編成しなければならない。まだまだ人員が足りないのだから、仲間にしてほしいと言う者がいるのならば積極的に迎えるしかない。

 

 仲間たちの方を見ると、みんな首を縦に振ってくれた。クランに絡まれていたナタリアもこっちを真っ直ぐに見つめながら首を縦に振ってるけど、口の周りには泡のようなものがついている。ん? まさか、ビール飲んじゃった?

 

「………歓迎するよ、ケーター」

 

「いいのか?」

 

「ああ。人員は全く足りないし、俺もケーターたちに仲間になって欲しいと思ってたところだ」

 

 俺1人で仲間たちに武器を支給し切るのは無理がるし、彼らの戦闘力も高い。仲間になってもらえるのであれば、確実にテンプル騎士団の戦力はアップするに違いない。

 

「テンプル騎士団にようこそ、同志」

 

「ありがとう、タクヤ」

 

 手を差し出し、彼のがっちりした手を握る。

 

 こうして―――――――転生者が一気に4人も仲間になった。

 

 

 


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