☆一輪の白い花   作:モン太

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エピローグ〜はじまり〜

ーーカカシ視点ーー

 

戦場に現れた藍。穢土転生された嘗の師匠と肉親相手にも、動揺する事なく対処していく。その様は流石は暁だと感心はするが、18歳の少女として見れば異常だ。

 

彼らとの戦いを監視していたが、その中で聞いた暁の意外な一面。

 

ある意味当然かとも思った。暁とはずっと敵対していたのだから、残虐な一面しか知らない。ただ、それは向こうも同じなだけ。

 

いっそ鮮やかな手並みで二人を無効化した彼女に声をかけた。

 

そこで話していく内に、何故彼女の眼を見て恐怖を感じたのかわかった。

 

覚悟が他人のそれと違う。

 

“だが、君が挙げたメンバーも…”

 

“そうです。暁の犯罪者です。……ですが、彼らと私に違いなどありません。私だけが特別では無いんですよ”

 

そう言う事を言いたかった訳では無かった。

 

“もう既に皆、亡くなった者達ばかりではないか……”

 

そう問いかけたかった。だが、暁のメンバーを殺したのは木ノ葉のメンバーだ。オレが言う資格は無い……

 

だから、オレは口を噤んでしまった。

 

そして語られる償いの人生。

 

彼女は若く、まだ18年しか生きていない。これから先の人生だって長いはず。それを償いに当てて、人生を台無しにする覚悟。

 

18歳の少女が固めていい覚悟じゃ無い。

 

そもそも彼女にとって、オレと言う存在は憎いはずなのだ。再不斬と兄を手にかけ、再不斬との約束……彼女を護る事ができずに抜忍にさせてしまった。彼女の仲間だった人間も木ノ葉が殺害した。

 

サスケは一族を殺され、兄を殺された木ノ葉に憎しみを抱いた。

 

ナルトは師匠であった自来也様を殺され、ペインに憎しみを抱いた。

 

オレ自身も嘗の戦争による遺恨によって、最初はチヨ婆様に憎まれていた。

 

……じゃあ、この子は?

 

どうして、憎しみのカケラも感じさせないんだ?

 

 

 

覚悟が他人のそれと違う。

 

 

 

自分でもよく分からない焦燥感に駆られて、言葉を紡ごうとしたが、彼女が次に放つ術を聞いてそれどころでは無くなった。

 

穢土転生を殺す術……

 

大規模虐殺……

 

忍界全域……

 

どれもこれもデタラメな内容。

 

だが、そんな事はどうでもいい。

 

彼女は戦争終結後、忍里に禍根を残さないように……自身が恨まれても構わない……戦争で死者を減らせるのならば……

 

そう語った。術もデタラメだが、それを使う覚悟もデタラメだ。

 

精神の怪物。

 

だからなんだろうか……彼女に写輪眼で幻術に掛けようとしたが、通用しなかったのは。

 

強すぎる精神力が幻術をはじいているのかもしれない。

 

そう思う程度には常軌を逸していた。

 

サスケ、ナルトや普通の人間のように憎しみに逃げる事もない。

 

オレだって仲間を失い、この世は地獄だと少なからず思った事があったぐらいだ。

 

戦争の中だけで見た、断片的なものがでしかないが、彼女は余り敵を否定するような発言はしないように見えた。理由を聞く事はあったが、それでも強く否定しているところを見ない。

 

それは元来の優しすぎる性格も起因しているのかもしれない。

 

だが、それだけの覚悟を決めさせる程度には、苦難な人生を歩んだんだろう。……歩ませてしまったんだろう。再不斬と約束したにもかかわらず。

 

次に顔を合わせたのは、カグヤとの戦場。マグマ世界で空中を走って現れた。

 

まさか、無限月読すら掛からなかったのか……

 

疑問が湧いたが、それどころではなかった。

 

しかしながら、同時に悟ってしまった。

 

もう彼女を止められる者は、きっと彼女のお兄さんかイタチしかいないと……

 

それを裏付けるかのようにカグヤ封印後、六道仙人によって現世に口寄せされた時に彼女は行方を晦ませていた。

 

六道仙人にあの世界に取り残されていないか尋ねたが、六道仙人にも見つけられなかった。

 

ナルトとサスケが最後の決着を付けて、戦争が終結した。

 

忍び世界は護られた。

 

サスケも木ノ葉に帰ってきた。

 

オビトとも決着をつける事ができた。

 

それでも心に小さな……それでいてどうしようもないシコリが残った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

戦争は終わった。沢山の犠牲や痛みを伴ったが、皆が心を一つに戦い、勝ち取った現実だ。

 

世界はこれから少しずつ良くなっていくだろう。

 

漠然とだけどそう思う。だけど、それは今すぐじゃない。

 

ビンゴブックには未だに犯罪者の名前が載っている。

 

格段に減ったけど、犯罪者が完全にいなくなった訳じゃない。

 

そんな犯罪者を捕まえては、賞金を得て生活している。以前のままだ。

 

少し違うところがあるとするならば、自分が狙われる事が格段に増えた事と、ビンゴブックの1ページ目に名前が書かれるようになった事だ。

 

コンやシロの名前はなくなり、雪藍の名前で統一されていた。賞金額はもう桁を数えるのが億劫な程の高値がついてる。

 

狙われる事が多い要因は何個かある。

 

元々の所属がはっきりしていない為、五大国全ての追い忍がやってくる。元霧隠れだったら、霧隠れの追い忍。元木ノ葉なら木ノ葉の追い忍が来る。だけど、しっかりとした所属がない私は各国の追い忍がやってくるのだ。

 

もう一つはシンプルに賞金額の高さ。その高さ故、実力の高い者や人数が多いチームが襲いかかって来る。

 

そして、一番大きな要因は私が最後の暁だからだろう。小南は現在、雨隠れの長になっている。暁ではあるんだけど、里のトップに据えられ、政治を行なっている小南の身元はしっかりしている。……対して、私は戦争で面をしないで大暴れした。ありとあらゆる忍が私の顔を記憶しているだろう。暁の衣と共に。

 

世界の敵である暁。政治的な駆け引きや人々の憎しみ。あらゆる思惑が交差している事だろう。その最後の生き残り。

 

それが私だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そっちに行ったぞ!!」

 

「了解!!風遁・大突破!!!」

 

吹き荒れる突風に対し、木を蹴り付けて大きく跳ぶ事で回避する。

 

跳んだ先で頭上から刀で斬りつけて来る気配に合わせて、千本で受け止める。

 

そのまま弾いて、木に着地すれば起爆札付きのクナイが飛んでくる。

 

千本を投げて軌道を逸らし、爆発の瞬間に瞬身の術で回避する。

 

「…どうやら本当に氷遁が使えないくらい弱ってるらしいな。」

 

「連日、各隊が攻撃し続けた甲斐がありますね。」

 

「だが、こいつに油断は絶対するなよ。」

 

「了解。」

 

今回は雲隠れの追い忍のスリーマンセルのようだ。

 

戦争での暴れっぷりから察して、勝てないと普通は思うのだが……

 

「……お前ら暁は絶対に許さない…オレのダチを殺した暁はな……!!」

 

そう、憎しみ……

 

勝てない相手にも挑み続ける理由はインプルだ。戦争で何かしらを失ったから。精神が肉体を凌駕するとは正にこのことか……

 

風遁が使える相手に霧隠れの術でサイレントキリングを狙う事はできない。

 

「秘術・千殺水翔」

 

「!?…散!!!」

 

跳んだ一人の風遁使いに千本を投げて、首の秘孔を貫く。

 

意識がそっちに逸れた隙にクナイを投げてきた男性に瞬身で近付き、同じく首を千本で貫いた。

 

気絶した二人が地面に倒れる。

 

「くっ……!ウオオオオオオォ!!!」

 

一人になり、逃げればいいのに、それでも向かって来る。

 

目には憎悪の闇が蠢いている。

 

すれ違い様に首を千本で射抜いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

飛んできた手裏剣を千本で弾く。背後からクナイが飛んでくる。それも同じように千本で弾く。

 

更に起爆札付きクナイが頭上から飛んでくる。

 

千本を投げて起爆札を射抜き、クナイを弾く。

 

今度もスリーマンセルだけど、遠距離から狙って近付かない戦法か。

 

私の得意な体術での勝負はしないと……

 

「水遁・水喇叭!!!」

 

「雷遁・感激波!!!」

 

遠距離の水遁と雷遁攻撃か。

 

「風遁・風切りの術」

 

風遁を当てて相殺。

 

そのまま踏み込んで接近しようとするが、クナイが投げられる。即座にクナイで弾いたが、煙玉が付いていた。

 

辺りに緑色の煙が舞う。

 

「……暫く様子を見よう。」

 

「痺れ薬入りだ。……氷遁が使えない辺り、かなり疲弊しているだろう。…これで終わりだ。」

 

「………な…なあ、里に連行する前にちょっとだけ楽しまないか?」

 

「……そうだな。まあ顔はイケてるしな。……それにどうせ犯罪者だ。ちょっとくらいいいだろ。」

 

「…じゃあ、オレが幻術にかけておいておくわ。」

 

「幻術にかけると反応が悪くならないか?」

 

「…仕方ねーだろ。暁だし万が一逆転されたくねーだろ。」

 

「それもそうか。…なら、最初はオレからでいいか?」

 

「オイ!そこは幻術をかけるオレからだろ!!」

 

もう勝った気でいるなんて、随分と油断してくれてる。

 

サイレントキリングをするのに、わざわざ煙幕を焚いてくれるとは好都合。

 

せっかく警戒して距離を取っていても、これだけ隙だらけだと意味がない。

 

私は煙幕の中から千本を投げて、首の秘孔を射抜き気絶させた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

戦争を経て、大国同士ひいては世界の流れは平和へと進んで行っている。

 

だけど、小国はその限りではない。

 

未だにお金も領土も少ない小国は、世の中が平和になればなるほど、食っていく事ができなくなっていく。

 

だから、未だに小国同士で小競り合いが絶えない。

 

暁の衣を着ていても、もう暁は解体された組織。紛争の手伝いはしない。

 

代わりにその紛争で行き場を失った孤児を救出する事は続けていた。

 

流石に孤児院に暁である私は行く事ができないので、変化の術で姿を変えて送り届けていた。

 

前は風の国に送っていたけど、最近は最寄り国に送るようになった。

 

今の時勢なら非人道的な扱いは受けないだろうと考えて。あと孤児の子供の体力を考えてそうしている。

 

戦場跡に戻ればそこに転がる遺体を埋葬する。最後に氷の花を添えて祈る。

 

……随分と手慣れてしまった。……本当は慣れちゃいけない類のものなんだろうけど。

 

代わりに祈る時間を増やした。

 

それで彼らが救われるかはわからない。殆ど自己満足のようなものだ。それでもこの行為こそが自分が人間であると確認する為に行っている。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「うーん!やっぱり美味しいね!」

 

「本当に好きね、貴女。」

 

雨隠れの里の茶屋に来ていた。

 

私は国際的に指名手配された犯罪者。どこの里にも寄り付く事はできない。孤児院だって変化の術で送ってるぐらいだ。

 

ビンゴブックの1ページ目に載ってるからか、顔もすっかり覚えられてる。

 

例外はここ雨隠れの里だ。

 

雨隠れの里は小南がトップに立ってる。大国の木ノ葉と岩と砂に挟まれた小国で難しい政治の舵取りを行ってる。

 

今のところは大きな争いに巻き込まれてはいない。

 

そんな小南が便宜を図ってくれて、私は変化の術を使ってなら、里内を歩く事ができた。

 

今は茶屋の個室で小南とみたらし団子を食べていた。

 

「まあ、団子は好きだね。」

 

「あまり食べ過ぎると太るわよ。」

 

「いいの!私はスレンダーなんだから!!」

 

「……そう?まあ、確かに細いわね。」

 

その小南の視線が私の胸元に向けられる。表情も少し微笑ましそうに見て来る。

 

「………何よ。馬鹿にしてるの?」

 

「…フフ。気にしなくていいわ。……どうせあっても肩が凝るだけだし。」

 

ぐぬぬ……

 

小南がバッと私の皿の団子を取って頬張る。

 

…ああ。私の団子が……

 

「…確かに中々の味ね。」

 

「……小南は太いんじゃないの?」

 

「あら、拗ねてるの?」

 

「…………」

 

「…フフ、ごめんなさいね。後で追加してあげるから。」

 

このお姉さんにはまだまだ勝てないらしい。

 

仕返しとばかりに小南の皿に手を伸ばす。

 

「…っ……」

 

背中が引き攣って傷が痛む。

 

「貴女、大丈夫なの!?」

 

先程とは打って変わって、こちらを気にかけてくれる小南。

 

身体の強張りは一瞬だったけど、それに気付けるとは流石は元暁。

 

「大丈夫だよ。ちょっとした軽い怪我なんだから。」

 

「うちの医療忍者に見せた方が良さそうね。」

 

「いやいやいや……本当に軽い怪我だって!」

 

「じゃあ、何してたの?」

 

「…………」

 

「何してたの?」

 

「…………」

 

「…………」

 

小南の目がこちらをじっと見つめてくる。話すまで逃さないと言わんばかりだ。

 

「……あはは……」

 

「…………」

 

「……い…いや〜ちょっとね…今までに殺しちゃった人達の家族の所に土下座しに行ったらさ、土下座した状態で背中から包丁をね…」

 

「はあ……」

 

小南が大きな溜息を吐く。

 

「………時々…いや、いつも思うけど、貴女って本当に馬鹿ね。」

 

「……あはは」

 

小南が再びこちらを真剣な目で見てきた。

 

「……ねえ。貴女、雨隠れに来ない?」

 

それはきっと私を想っての提案なんだろう。

 

「……私の産まれは雨隠れじゃないよ。」

 

「そんな事知ってて言ってるのよ。……このまま、今の生活を続けられると本気で思ってるの?」

 

ありがたい申し出だ。

 

だけど、これに頷く事はできない。今ですら、国際指名手配犯を匿ってくれているんだ。雨隠れは大国に囲まれた小国。政治の舵取りは大国以上に難しいもの。

 

どこにも寄り付けない私を心配してくれるには嬉しいけど、これ以上小南の足を引っ張るわけにはいかない。

 

「ありがとう。……でも私は今のままでいい。」

 

「……そう。」

 

小南は小さく呟いた。

 

小南ならもっと強く言ってくると思ったんだけど、意外にもあっさりと引き下がった。

 

「意外そうね。……遺族に土下座するぐらいだもの。………それだけ意志が強いのなら、断られると思ってたから。」

 

なるほど。

 

「でも、これだけは覚えていて。私は貴女の味方よ。どうしても辛くなったら、いつでもここに来ていい。」

 

「うん、ありがとう。小南もこれから大変だろうけど、頑張ってね。」

 

あまり長居するのは、小南に迷惑がかかるだろう。

 

気にしなくていいと言ってくれているが、これ以上甘える訳にもいかないので、雨隠れの里を後にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「土遁・土流壁!!」

 

投げた千本が土遁の壁に阻まれる。

 

またまた襲撃を受ける。

 

今回は見知った顔だった。

 

「ゲンさんにテツさん。お久しぶりです。」

 

この人達は以前、岩隠れと石隠れの紛争の時に会った人達だ。

 

私が狩った五尾の人柱力 ハンさんに対して、殺してくれてありがとうと言った、良くも悪くも印象に残っている人達だ。

 

あとの二人は知らない顔だ。

 

「……おい、お前らこいつの知り合いか?」

 

「いーや、全然。」

 

「オレも知らねー。」

 

ん?…ああ、そうか。あの時は面をしていたからわからない訳か。

 

「…だよな。」

 

「いいから、やるぞ!!……こいつはオレ達の仲間のハンを殺した奴だ!! ハンの敵討ちとして、ここで絶対に仕留める!! 気を緩めるなよ!!」

 

「「「おお!!」」」

 

ゲンさんがこの小隊のリーダーのようだ。

 

でも、今の口振りなら、私がハンさんを殺したってわかってるよね。……なら、やっぱり私の事もわかってるんじゃ……なんでしらばっくれるのかしら?

 

いやそれを議論しても仕方ないか。今は敵なんだから。

 

「土遁・地動核!!!」

 

私の地面が下がる。

 

すぐにジャンプして離脱。

 

無数のクナイが飛んでくる。

 

空中で身体を捻って回避。

 

千本を投げる。

 

「土遁・土流壁!!!」

 

壁に阻まれるが、それはフェイク。別の方向み投げた千本同士を当てて起動を変えて、壁に回り込むように千本を誘導する。

 

横からくる千本に気が付かずに首を射抜いた。

 

まずは一人……

 

「土遁・黄泉沼!!!」

 

私が着地しようとした地面が底無し沼になる。

 

「水分身の術」

 

真下に水分身を作る。水分身はすぐに沼にハマってしまう。その水分身の背中を蹴って黄泉沼から離脱。

 

跳んだ先にいたテツさんが刀を振るう。それを空中で回転して躱し、すれ違い様に首に千本を刺して気絶させる。

 

「チッ、撤退だ!!」

 

「了解!!」

 

ゲンさんともう一人の忍が気絶した二人を抱えて逃げていった。

 

素早い撤退の指示に感心する。最近は憎しみに駆られ、最後の一人まで向かってくる人達ばかりだった。

 

ひとまず危機は去ったということで落ち着いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

波の国にある私が建てたお墓には、デイダラとイタチと鬼鮫さん、長門にオビトが加わった。

 

随分と増えてしまったなと思う。

 

兄さんと再不斬さんのお墓は、案の定荒らされていた。おそらくカブトの仕業だろう。

 

綺麗に直したけど、二人の遺体はもうここには無い。

 

最初に見た時は思わず放心してしまった。込み上げてくる物に耐えられず、涙を流しながら片付けた。

 

カブトに聞いたけど、すでに遺棄されたそうだ。

 

当然かと思った。あれだけの穢土転生を操ってたんだ。生体情報を得た後に遺体を管理するなんていちいちやってられなかったんだろう。

 

なんとも思わなかった訳ではないけど、ここでカブトを責めても仕方ないし、孤児院達の目の前で殴り飛ばせば、それこそまた憎しみの連鎖になる。

 

せっかくナルト君達が憎しみの連鎖を断ち切ったんだ。

 

私も痛みに耐え忍ぶとしよう。

 

服の袖から一通の手紙を取り出す。

 

表紙には『雪藍様』と書かれている。

 

中身はまだ見ていない。

 

この手紙はカグヤを滅した時に、一人始球空間に取り残された私の元にやってきたシンジに手渡された。

 

『これは前に言った招待状や♪ 心の準備ができたらそれを開いてな♪』

 

この手紙を渡され、ついでに始球空間からの脱出を手伝ってくれた。

 

それを思い出して、再びしまう。

 

殆どやるべき事は一通りやった。

 

水月君のところへも赴いた。相手をしてあげると言ったのに終始逃げ回っていた。と言っても、私の方が足が早いので逃れるわけがないのだが。

 

最終的に首切り包丁は水月君に渡した。扱えない私が持ってるよりも、誰かに使ってもらった方がいいだろう。もう私はここに来ることもないだろうから尚更だ。

 

サイ先輩とは、結局話す機会には恵まれなかった。水月君のように大蛇丸の下につきながらも、ある程度自由の効く身ではないから仕方ない。

 

ユキウサギを口寄せしては定期的に情報を集めさせてる。今までは暁から情報を得ることができていたけど、今は自分で世界情勢を確認しないといけない。

 

紛争などの火種や紛争そのもの、災害などの調査をしてもらってる。実際に有ればそこに赴き、救助を行う。

 

そんな一匹が帰ってきた。

 

お墓の前で座っていた私の膝の上にちょこんと座るユキウサギ。

 

“特に異常はなし”

 

「…そう。ありがとう。」

 

ユキウサギを抱き上げて背中や頭を撫でる。そうすると気持ちいいのか、目を細めて私の顔に頬擦りしてくる。

 

「……ふふ、くすぐったいよ。」

 

かわいい。

 

私に甘えてくるユキウサギが突如、飛び跳ねて走り去る。

 

「…あらら、怖がらせちゃったかな。」

 

「ユキウサギは臆病な性格ですからね。……私によく似ています。」

 

「あれは君の口寄せかい?」

 

「……ええ。そうですよ。」

 

「じゃあ、君みたいに強いんだろうね。」

 

「あの子達に戦闘能力はないですよ。可愛かったから契約したんです。」

 

「………かわいいとかで口寄せ契約するのも珍しいね。」

 

「そうですか?……まあ、9歳の時に契約したんですから、その時の私の感性なんてそんなものですよ。再不斬さんにも実用的な奴にしろと怒られました。」

 

索敵や探索をさせているけど、カカシさんの忍犬の方がそっち方面でも上だ。

 

「ところで、こんな所にやってきていいんですか?……まさか、次の追い忍が貴方って訳でもないでしょう、火影様。」

 

「……いやいや、オレはまだだよ。今は引き継ぎ中。」

 

「そうですか。それは失礼しました、カカシさん。」

 

「隣……いいかな?」

 

「ええ、どうぞ。」

 

ずっと後ろから話しかけていたカカシさんが横に座る。人2人分程空けて。

 

私がストレスを感じない絶妙な距離感。こういうところは大人だなって思う。

 

カカシさんが目の前に並ぶお墓に視線を向ける。

 

「………随分と数が増えたね。」

 

「ええ、ここに遺体が眠ってる訳ではありませんが、彼らは私を守って散った英雄達です。」

 

「誰が眠ってるのか、聞いてもいいかな?」

 

「……白兄さん、再不斬さん、クロ、サソリ、デイダラ、長門、イタチ、鬼鮫さん、オビト。」

 

「オビトもいるのか……」

 

「暁に入ったのが、一番最後で年齢も一番下でした。だからか皆、私を妹や娘のように可愛がってくれました。」

 

「……クロというのは知らないな。暁なのか?」

 

「…いえ、彼女は木ノ葉で出会った妹分です。黒髪の似合う可愛らしい女の子でした。」

 

「そうか。……その子もここに有るって事は……」

 

「ええ、彼女も亡くなってます。……本当はサイ先輩がいる時に話したかったんですが、機会に恵まれませんね。……実は私は『根』に所属していたんです。」

 

「……『根』に……どうして?君はあの後、孤児院に送られたはず…」

 

「話すと長くなるんですが、構いませんか?」

 

「……珍しいね。前の時もあまり話したがらなかったのに。」

 

「まあ、尋問ですからね。」

 

「写輪眼も効かないし、話してくれる分には構わないよ。そもそも写輪眼のカカシじゃなくなったしね。」

 

「いつ気付かれましたか?」

 

「戦争中のあの雪の忍術を使う時だね。」

 

ああ、あの口論の時か。確かにカカシさんの目を見て話していた。

 

「写輪眼相手に全く警戒しないで、視線を合わせてくるから、何かの罠かと疑っていたんだけど……まさか、本当に警戒していなかったとはね。」

 

「……最近は幻術にかかるコツがわかってきたんですけどね。」

 

「わざわざ幻術にかかる訓練なんてしなくていいでしょ。」

 

「普通はそうですよね。……でも戦争中にいのさんの心伝身の術に繋がらなかったんですよね。おそらく精神に作用するあらゆる干渉を弾いてるんだと思うんです。」

 

「その口振りだと、意図して幻術を防御してる訳じゃないのか……」

 

「生まれつきの体質っぽいんです。」

 

ついでに毒物や薬物に対する耐性も。

 

「皆が心を一つにして戦っているのに、私だけ蚊帳の外のように感じました。……ここまで覚悟しておいて、今更女々しい事に寂しさを感じたんです。」

 

デイダラがイタチの幻術対策に左目を鍛えていた。それを参考に私も右目にチャクラを集中させ、脱力する事で精神干渉を受け付けれるようになった。

 

だけど、長続きはしない。チャクラを集中させて、脱力するという矛盾する行動を行わなければならないからだ。いわば、水中でいつまでも息を止める事ができないのと同じである。

 

「話が逸れましたね。……私が『根』に来るようになったのは、元を辿れば再不斬さんと一緒に行動していた時にまで遡ります。」

 

「そこまで遡るのか。」

 

「ええ。10年ぐらい前の話ですからね。……当時、大蛇丸は穢土転生の術の試験運用を行おうとしていました。その時の試運転に使われたのは、忍刀7人衆。そして対戦相手に同じ7人衆の桃地再不斬が狙われました。実験は半ば失敗。穢土転生で甦らせた忍は実力も劣る上に感情に流される欠点が見つかった。…だが、大蛇丸にとってこれはただの失敗ではなく発見もあった。それは桃地再不斬に引っ付く2人の血継限界の子供。……大蛇丸とダンゾウ様は裏で繋がっていました。両者共に血継限界を欲していました。とはいえ再不斬さんが付いていた事で手出しされる事はありませんでした。」

 

「大蛇丸とダンゾウが裏で………」

 

「そこで偶然、タズナさんが木ノ葉にやってきました。これをチャンスだと考えたダンゾウ様はタズナさんが木ノ葉に来るまでの道中を『根』の忍に護衛をさせました。そして、雇われたのが貴方達『第七班』だった訳です。」

 

「そうだったのか……」

 

「桃地再不斬が居なくなり、フリーになった私に早速、ダンゾウ様は接触してきました。カカシさんが引渡しにやってきていた火影直属の暗部……あれが実は『根』です。」

 

「……まさか」

 

「私の所有権を巡って、大蛇丸とダンゾウ様で密約があったみたいです。私をダンゾウ様に渡す代わりに、木ノ葉崩しの際は大蛇丸の里への侵入の手助けと大蛇丸の邪魔をしない事。それと三代目火影を殺す事で合意していました。ダンゾウ様は火影の座が欲しい。大蛇丸も木ノ葉崩しとして火影の首が欲しい。利害が一致していた訳なんです。」

 

とはいえ、ダンゾウは木ノ葉を守ることを目的とし、大蛇丸は木ノ葉崩しが目的だから、最終的にはぶつかっていただろう。

 

「そうして、私は『根』に配属されました。……サイ先輩に聞けばわかるかと思いますが、『根』にはある仕来たりが有ります。それは……」

 

「……仲間同士での殺し合い。」

 

「知っていましたか……その通りです。そこで私のペアになったのがクロです。」

 

「それでその子と……」

 

「まさか、再不斬さんと同じ境遇になるとは思いませんでした。……ですが、私は再不斬さん程、強くも優しくもありませんでした。……これも何の因果なのか、クロは孤児院出身でした。ダンゾウ様から忍になれば、孤児院への支援金を送る事を約束されて『根』にやってきていました。この話を聞いていた私はクロに命を差し出そうとしました。……当時、ダンゾウ様の思惑や大蛇丸との面識がありません。ただ、流されるままに『根』にやってきた私と強い志を持ったクロなら、彼女こそ今後生きていくのに相応しいと思ったんです。」

 

「でも、彼女は……」

 

「しかしながら、私の想いとは裏腹にダンゾウ様はそれを許しませんでした。普段であれば殺し合いの勝った方が『根』になるはずです。ただ、今回私は血継限界でした。それも最後の生き残りです。初めからダンゾウ様は私が生き残る選択しか用意していませんでした。実際、クロの実力はアカデミーを卒業した程度です。私に勝てるはずがありません。その事実を突きつけられながら、ダンゾウ様はクロを殺し、私にその生首を投げつけてきました。……『根』の方針に従わない私は『根』に相応しくない。でも、私は雪一族唯一の生き残り。『根』に入る以外でも木ノ葉に貢献する事はできるとダンゾウ様は言いました。」

 

「……それは?」

 

「 それは……血継限界を増やす母胎としての活用法です。」

 

「…………」

 

「抵抗するなら、手足を捥いで苗床にすると言い、実際に手足を捥ぐように命令された『根』の忍に襲われました。……必死で抵抗し、逃げた私は……」

 

「もういい……」

 

カカシさんに遮られた。

 

「……君にとって辛い話だろう。今までの流れでもそれは大体察しはつく。」

 

「お優しいんですね。」

 

「…優しくは無いさ。君がこんな状態になるまで気が付けなかった。…再不斬に君の事を託されていたと言うのに……」

 

「……そうかもしれませんが、あまり信用しない方がいいですよ。あくまでも私は暁なんですから、一方的に木ノ葉に不利な話をしているだけかもしれません。…何せ証言者になるであろうダンゾウ様はもう居ないのですから。」

 

「……そんな事をする君じゃ無いでしょ。」

 

「……お気遣いありがとうございます。ですが、今この場では不要です。…こんな話。事実だとしても公にはできないでしょう。…この話を持っているだけでも木ノ葉に対する脅しになる。木ノ葉が何かしようものなら、他国にこの話を持っていけばいい。木ノ葉は私に手出しできなくなる。…わざわざ次期火影様になる貴方に話したのはそう言う意味もあるんですよ。……不都合でしたら、今この場で私を殺しても構いませんよ。口封じも時には必要になるでしょうから。」

 

「…………はあ。君はシカマル以上に頭がキレるね。再不斬の言った通りだ。」

 

「……では話を戻しますね。…………必死にダンゾウ様から逃げた私はそこでカブトに待ち伏せされていました。今思えば、当然のことです。ダンゾウ様と大蛇丸は繋がっていたんですから。……気絶させられ捕らわれた私でしたが、氷遁に目覚めた事で大蛇丸に対して大暴れして、なんとか逃げおおせました。……そのまま2年程、ダンゾウ様と大蛇丸の追手から逃げながら、各地を転々とする日々を過ごし、小南と出会い暁に入りました。……当時、暁は裏切り者の大蛇丸の粛正に躍起になっていました。大蛇丸との戦闘経験のある私はそれを期待されてスカウトされました。私は自分の身の安全を確保したい。利害が一致したと言う訳です。」

 

「………なるほど」

 

「暁に入ってからの生活は思いの他、平穏でした。組織から下される任務をこなしていれば、基本的に各々自由にしていいと言う決まりでした。……まあ、その任務の中に尾獣狩りがあった訳ですが。…尾獣は各忍里が保有しています。それに手を出せば、その忍里から睨まれる。結局のところ、暁は滅びの運命を辿る事になりました。…ただ、木ノ葉が早い段階から暁を敵として動く事も、他里が人柱力を奪われても、あまり関心がなかったのも意外でした。」

 

「……意外とは?」

 

「直接尾獣や人柱力を奪われた訳じゃ無い木ノ葉が、早い段階で火の国の各地で小隊を放ち、警戒していた事です。…それに対して岩隠れや霧隠れ、雲隠れなどは直接人柱力を奪われたにも関わらず、無関心でした。…まあ、雲隠れは雷影様の弟さんが襲われれば、流石に怒ったようですが。」

 

「…各里で反応が違った訳か。」

 

「…無関心な里の人柱力は、里で冷遇されている者が多かったように思います。……私が狩った五尾の人柱力であるハンさんは、その後岩隠れの忍に感謝されたぐらいです。」

 

その忍も今や仇打ちとして襲ってくるようになったけど。

 

「……そんな辛い想いをされてるハンさんを殺したのは、他でもない私です。…私だって虐げられる側の気持ちを知っていたにも関わらず……」

 

「…………」

 

「……今目の前のお墓の彼らも私を守って死んだ人達……私は彼らの屍の上に立っている。なら、彼らの想いを受け継ぎ、感謝と償いをしないといけない。」

 

「……君はまだ若い。…これからの人生を全て台無しにするつもりか?」

 

「………暁は沢山の人に悲劇をばら撒いた。この服を着る者として、責任は必ず果たさないといけないと思ってます。」

 

それに仮に私の真実を公表して、私が許される事があったとしても、それは木ノ葉の立場が悪くなるだけの話。その所為で再び戦争にでもなれば本末転倒。何の為にナルト君達が平和を勝ち取ったのか分からなくなる。……結局、取れる選択肢は無い。私1人と忍界に住む何億人との命の重さなんて、比べるまでもない。

 

「……それはお兄さんを含め、ここに眠る彼らもそんな事を望んじゃいないと思うよ。君だけが苦しみ、耐え忍ぶのは。皆で耐え忍ぶならまだしも、1人に苦痛を押しつけて、平和を謳歌するのは、無限月読と変わらない。」

 

「………耳が痛い事を言いますね。」

 

私は改めて、氷の花をそれぞれの墓標に飾っていく。

 

「別にこの行為自体に意味などありません。」

 

「え?」

 

「人が生きてきた最後の標。私がこうして飾り付けるのは、こうあって欲しいと願うからです。自分が死んだ後も誰かの記憶に留まっていたいという願望なんです。」

 

「それは……極論なんじゃないかい?」

 

「そうですね。でも同時にこうも思うんです。それは遺す側の意見であって私達、今を生きる人間にとってはそうではないのだとも。」

 

「…………」

 

カカシさんは目を閉じる。あまり納得はしていないようだ。

 

「墓標の前で手を合わせる。そして故人を想う。それは遺された者が死を受け入れる為の儀式です。私達は死に向かって生きてます。ですが、それは決して生が無機質だと言う訳ではありません。」

 

「…………」

 

「それは私やカカシさん、そしてナルト君達も同様に今を生きる人達が体現し、この戦争の結末こそがその証明だったと思います。」

 

要は自己満足でしか無いと言う事だ。だけど、人はそれが無いと前には進めない。

 

「…………ナルトとサスケは君に感謝していたよ。」

 

「……お二人が…」

 

「…イタチの名誉回復を五代目に相談したんだね。」

 

ああ、その話か。

 

「イタチの話も公にはできないけど、里の上層部では今回の戦争に於いて、穢土転生を止めた功績として、過去の罪を清算する事を決めた。……それと同じくして、サスケの罪も許される事になった。…こっちは無限月読の解術の功績もある。………その話をサスケにしたら、多分君が働きをかけたんだろうって言ってたよ。」

 

成程……

 

「ナルトも君達が最初に戦い、忍としての道を示してくれたからこそ、ここまで戦ってくる事ができた。そう言ってたよ。……オレとしても、君には救われて欲しいと思ってる。…もう一度木ノ葉に来ないか?……今度はちゃんと君を守れるように皆で働くから。」

 

「……そうですか。過分なお言葉ありがとうございます。…ですが、私は考えを変えるつもりはありません。」

 

それでなくても、私は暁だったんだ。今回の戦争の原因だし、その私を庇おうとすれば、せっかく次期火影のカカシさんの立場が悪くなる。

 

「私の力は綱手様やサクラさんのように人を癒す力ではありません。色々と大義名分を言いましたが、所詮は人殺しの力……薄汚れた暴力です。そんな薄汚れた暴力の先にでも、誰かが救われるなら、私が流れる最後の血の一滴になりましょう。」

 

「…………強情だね。」

 

「……ふふ、申し訳ありません。でも、ナルト君風に言うなら『真っ直ぐ自分の言葉は曲げない』って事ですかね。………私は戦いの人生を完遂する。」

 

それにこの世界にはナルト君とサスケ君がいる。

 

ナルト君はお兄ちゃんの想いが……

 

サスケ君にはイタチの想いが……

 

彼ら2人なら、きっとこれからも世界が良くなっていく。もう私がアレコレ裏から手を回す必要もない。

 

だから、これからの戦いの人生の舞台はこの世界じゃない。

 

「さようならです……カカシさん。」

 

「……はあ。やっぱりこうなるんじゃ無いかと思ったよ。」

 

カカシさんが手で合図を出す。

 

するとナルト君とサスケ君とサクラさんが出てきた。

 

「追い忍にしては、顔ぶれが豪華すぎると思いますが。」

 

「オレってば、藍のような難しい事はよくわかんねー。だけど、一人で抱え込むのは間違ってるって事はわかるってばよ!!……もう止まれないってんなら、オレが止めてやる!!」

 

「……ナルト君。大きくなりましたね。兄さんの言っていた事は覚えていますか?」

 

「…ああ、“誰かを守りたいと思った時、人は本当に強くなれる”…だろ?」

 

「ええ、貴方の忍道に変わりはありませんか?」

 

「へっ!オレは今でも『真っ直ぐ自分の言葉は曲げねー』それがオレの忍道だ!!」

 

「……サスケ君。貴方にとって兄弟とは何か?……答えは出ましたか?」

 

「オレにとって兄弟とは、人生の道標であり、目標であり、超えるべき壁であり、今を共に歩むものだ。…オレはまだ兄を超える事はできていない。そんな兄を支えてくれたアンタには感謝してる。…そして、今尚兄の生き様を体現しているアンタを止める事こそ、イタチへの感謝の気持ちだとオレは考えてる。」

 

「……サクラさんも、今の貴女の忍道を教えてください。」

 

「……私はこの馬鹿な二人を支える。それが私の役目よ。…アナタがサスケ君を助けてくれたからこそ、今こうして帰って来てくれた。だから、私も感謝してる。二人がアナタを止めるってんなら、私も二人を手伝う。それが忍道よ!」

 

「………そうですか。」

 

………うん。もう満足だよ。

 

今、私はお墓の前で座ってる。対して彼らは3人とも臨戦態勢だ。先手は取られるな。

 

ナルト君が黄金の輝きを纏う。サクラさんも百豪の呪印が額から広がっていく。

 

次の瞬間、ナルト君とサスケ君が私を挟んで急に出現する。

 

ナルト君の速度は雷遁瞬身以上。サスケ君は輪廻眼の力ね。

 

私を捉えようと腕を伸ばしてくる。

 

時間凍結

 

世界の流れを止める。

 

ここで戦う訳にはいかない。ここは私とみんなの大切な場所だ。

 

場所を変える為に海に出る。二人の忍術は規模が大きいからね。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

なんとなく、自分の軌跡を振り返りたくなった。そんな理由から、波の国の中に入った。墓参りに立ち寄る事はあったけど、街中にはずっと来ていなかった。

 

3年前の波の国はとにかく貧しくて、悲惨な国だった。

 

久々に来てみれば、随分と人が増えていた。橋ができた影響は大きく、交通の要所として賑わっていた。飢えで苦しんでいる人の姿はなく、皆顔には笑顔が咲いていた。

 

これもナルト君達の功績だ。橋の名前は

『なると大橋』

 

正に英雄、うずまきナルトに相応しい門出だった訳だ。

 

タズナさんも元気にされていた。あの一家も変わらず元気に暮らしていた。イナリ君の隣には女の子が歩いていた。多分、彼女さんだろう。彼らも幸せそうだった。

 

次に訪れたのは、水の国。私の生まれ故郷の村に来た。

 

もちろん中には入らない。この顔を覚えてる人はもういないだろうけど、髪色と瞳の色であらぬやっかみを受けるかもしれないし、そもそも暁の服を着ている私を見て騒ぐ人もいるかもしれない。

 

遠目から見た村の様子は特に変わり映えしていなかった。13年前と変わらず、皆農村暮らしをしている。相変わらず雪がよく降っているけど、人々はそれなりに幸せそうに暮らしていた。

 

元気に走り回ってる子供達も見えた。何だか昔の兄さんと私を見ているようで微笑ましかった。

 

私は服の袖から手紙を取り出す。シンジからの招待状。

 

『雪藍様』

 

手紙を開いた。

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの〝箱庭〟に来られたし。』

 

その瞬間、景色が光に包まれた。




名前 雪藍

誕生日 1月9日
年齢 18歳
身長 157cm
体重 44kg
血液型 O型
性格 温厚・素直・一途・自己犠牲的
好きな食べ物 みたらし団子
嫌いな食べ物 油っこいもの
戦ってみたい相手 四代目火影・うちはイズミ
好きな言葉 愛
趣味 氷の花の作成・アート制作

使用忍術
S 奥義・極意レベル
A 禁術・超高等忍術
B 上忍レベル
C 中忍レベル
D 下忍レベル
E アカデミーレベル

風遁
烈風掌 D
風切りの術 C
チャクラ刀 B
獣破烈風掌 A

水遁
千殺水翔 B
水牙弾 B
破奔流 B
霧隠れの術 D
水分身 C

颶風水渦の術 S
口寄せの術 C (ユキウサギ)

ステータス
忍術1、体術5、幻術2、賢5、膂力1、速力4.5、スタミナ5、印4.5 28

ステータス(剣気)
忍術5、体術5、幻術4、賢5、膂力1、速力5、スタミナ5、印5 35.5

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