死ぬ覚悟………
それなら、私はダンゾウと大蛇丸に狙われていた時からできていた。…いつ死んでもおかしくないし、死ぬよりも酷い目に遭うことも。
でも、それだけカカシさん達が追い詰められているなら……全て終わらせてもいい。
だけど、私としてはナルト君とサスケ君の行末を見守りたい想いはある。
ナルト君の説明を聞きながら走る。
「…信じられんが…とにかく、そのカグヤってのを封印するには、ナルトとサスケの二人の力が必要って事だな。」
「ああ!でもさっきも言ったけど、サスケが感知できねーんだ!」
「氷が…動いているな…」
視線の先で大きな爆発が発生する。
「あそこだ!」
氷河が動き、ナルト君本体を捉える。
そこに空間から穴が空き、現れるカグヤ。
「どうなってんのアレ…?」
どう見ても時空間忍術でしょうね。シンジがいれば楽なんだけど、オビトの神威でも入り込む事ができるんじゃないかしら。
「サスケは急に感知できなくなったと言ったな。」
「オウ」
「なら別空間に飛ばされたと想像できる。奴は時空間から出てきやがった。オレの瞳術とよく似た能力だ。」
「…入れるか?」
「…もう一度、奴が空間を繋げ開いたと同時にオレの神威と共鳴させれば、まず間違いなく入り込める。そこにサスケがいれば、こっちに連れて帰って来る事はできる…」
「よっしゃ!!ならオレは本体のサポートに回っから!」
「ただ……」
「!?」
「それには膨大なチャクラがいる…オレの時空間じゃないからな。向こうでチャクラが切れたら終わりだ。」
「ならオレも行く!本体も直ぐにやられたりはしねェ。オレは…強ぇーから。」
「分身のお前のチャクラでも足らない。」
「私の百豪のチャクラがあっても足りませんか?」
「それで限度いっぱいだ。二人ともオレと来い。」
「藍は行かないのか?」
「私のチャクラ量では足手纏いになりますよ。」
「え?…でも皆がチャクラ切れを起こしてる間もずっと派手に戦ってたじゃない。」
「ナルト君、私のチャクラ量感知できているでしょう?」
「……ああ。チャクラ量は下忍ぐらいしかないってばよ。甘めに見ても、中忍程度だってばよ。」
「…そんなチャクラ量でどうして………」
サクラさんが不思議そうにしている。
「サスケがその空間にいるかどうかもわからない。だがまずは奴の懐に入り…必ずサスケはオレが見つけ、お前の本体まで届ける。」
「……………オビト…オレの事、助けてくれてありがとう……そしてサスケまで…」
「………こんなオレに礼など言うな。敵を見てろ。」
「もう…面はねーんだな。」
「………オレは…カカシの友であり、お前の父の部下であり…サスケと同じうちはであり、そして……オレはお前と同じ夢を見た先輩…ーーだった。時間のないオレが今更詭弁垂れるつもりはない。ただ…せめてお前達より前を歩いて…死なせてくれ。」
「もう、トビじゃなくてオビトになったのね。」
「ああ、お前もそうだろう、藍。…今ならお前の綺麗事でも戦える。」
「ナルト…そしてサクラと言ったな。オレの体に触れておけ…いつでも別空間へ飛べるように。」
「ハイ。」
カグヤがこちらを見てくる。
「オレ達の事…バレてるな…やっぱ…」
まあ、こっちに来たら容赦なく斬り捨てるつもりだけど。
「神威で別の空間へ飛んだとしても、感知されることを考慮しておかないとな…」
だがカグヤはすぐにナルト君の本体へ向いた。
こちらを脅威とは思って無さそうね。…舐めてくれるとは助かる。これでオビト達も行動しやすくなる訳だ。
ナルト君本体に突っ込むカグヤ。
「ここは妾の空間だ。お前は何もできぬ。」
次の瞬間、ナルト君から蒸気が発生し氷を砕いた。
蒸気……五尾の能力ね。
そのままカグヤを殴り飛ばす。
ハンさんの時もそうだったけど、あの蒸気の力で馬力を上げてるのよね。……よく私、あれで死ななかったわね…
「多重影分身の術!!!」
凄い!……一体どれだけの数がいるのかしら?………本当に信じられないチャクラ量ね。
「今、ここはァ!オレの空間だってばよ!!」
ナルト君がカグヤに殴りかかる。
「う!!」
更に蹴りを放つ。
「ず!!」
背後から殴る。
「ま!!」
正面から挟むように蹴りを放つ。
「き!!」
そして、全てのナルト君が襲いかかる。
「ナルト一帯連弾!!!」
堪らず空間を開けて逃げようとするカグヤ。
そこにナルト君本体が向かう。
同時にオビトも神威で飛んで行った。
ナルト君の方は失敗したようだけど、問題ない。オビト達の方が今回は適任だ。
すぐにカグヤが戻ってくる。
「オリジナルは殺した…!何故…消えてない!?」
カグヤの袖の中の黒ゼツが叫ぶ。
何だか、黒ゼツの精神年齢が下がったような気がするけど気のせいかしら。
「こっちがうまく入れたようだね…オビト。」
ナルト君がカグヤを引きつけるように戦っている。
あまり苛烈にやると、時空間に逃げられてしまう。…かといって、影分身を全て失うような戦いをしてはいけない、難しい時間稼ぎ。
隣を見れば、カカシさんが俯いていた。
「大丈夫ですよ、カカシさん。」
「!?」
「彼らなら、上手くやってくれるでしょう。……それよりもカカシさんはナルト君達の先生です。彼らの動きは私よりもよく理解されてるはず。…だからこそ、ナルト君達も貴方を信用しているんです。写輪眼が無くたって、貴方にしかできない事があるんですよ。」
「………ああ、そうだな。」
カカシさんが再び、前を向く。
その瞬間、空間の穴が開き、サスケ君を連れてオビト達が帰ってきた。
「……やはり上手くいきましたね。」
視線が逸れた瞬間にナルト君がカグヤに貫かれる。
「これでもう心配は要らぬ。」
「まさか……!」
「ナルト!!」
だけど、そのナルト君も影分身。ボフッと白い煙を出して消えた。
「こ……こいつ!」
「ありがとな、サクラちゃん、オビト!!」
「何?大丈夫だったの!?」
「びっくりさせやがる。」
「サスケ!ちゃんとサクラちゃんとオビトに礼言ったか!?」
「………敵に集中しろ。」
カグヤがチャクラを放つ気配を感じた。
咄嗟に自分を剣気で覆う。
次の瞬間、私以外の全員が消える。
全員、また別の世界に転移したわね。
私は周りを見て、誰もいない事を確認する。
さて……さっきからずっと感じていた気配の元へ向かう。
時間凍結
時間を止めて気配の元にたどり着く。
時間凍結解除
空中で止まっていた雪が再び、地上に落ちていく。
「貴様、何者だ?」
そこにいたのは、白装束の二人。頭に角を生やしたカグヤのような気配を放っている。
「……暁の雪藍と申します。………貴方方は?」
「………フン。下等生物に名乗る名などない。……キンシキ、やれ。」
「……ハッ!」
白装束の大柄な男性が前に出てきた。
「我は大筒木キンシキ……参る!!」