数ヶ月後、季節は夏になっていた。
隠れ家での生活にも慣れてきた。
キン!キン!
今は、再不斬さん相手にお兄ちゃんと一緒に組手をしている。
再不斬さんは忍術も体術も出鱈目に強くて、二人掛かりなのに一歩も動く事なく、私達をあしらう。
再不斬さんの周りを走り回る。そして、お兄ちゃんとアイコンタクトでタイミングを合わせて、
((瞬身の術!))
足にチャクラを集中させて、一気に放出する。私とお兄ちゃんで挟み撃ち。これで捉える!
ガシッ!
しかし、再不斬さんの懐に入った瞬間、私達は頭を掴まれてしまう。
「いい速さだ。だが、直線的すぎるな。」
そのまま、私達を地面に叩きつける。
「グハァ!」
しかし、
ボン!
私達が丸太に変わる。
変わり身の術だ。そのまま再不斬さんの背後に私達が踊り出る。お兄ちゃんは、素早く印を組む。
「秘術 千殺水翔!」
再不斬さんを囲むように水でできた千本ができる。でも、これだけじゃ再不斬さんを捉えれ無いだろう。
私はそれの援護をする。両手を前で合わせる。
「風遁 烈風掌!」
私の風遁で千殺水翔の速度を上げる。さらに、再不斬さんの地面から、お兄ちゃんの水分身が2体、再不斬さんに組みつく。
「ちぃ。」
再不斬さんは首切り包丁を一気に振り抜き、風圧で千殺水翔を飛ばす。そのまま、水分身を超速で切り裂く。
「「はあ、はあ、はあ。」」
再不斬さんは首切り包丁をしまう。
「合格だ。明日から移動する。準備をしておけ。」
再不斬さんを一歩でも動かす。術を使わせる。首切り包丁を使わせる。いずれかをさせれば合格。
この組手を繰り返し、今日ようやく合格できた。
「ふう。やっと合格できたね。」
「そうだね。藍がサポートしてくれたからね。瞬身の術もよかったよ。」
お兄ちゃんが撫でてくれる。
「えへへ。............あのね、お兄ちゃん。さっきのあの術はどうやったの?再不斬さんも使った事が無いよね?」
「ああ、さっきのやつね。あれは、雪一族の巻物に書いてあった秘伝忍術だよ。」
「じゃあ、私にもできるかな?」
「もちろん、藍ならきっとできるよ。なんなら今、手本を見せるよ。よく、印を見ておいてね。」
お兄ちゃんは片手であっという間に印を完成させる。
「秘術 千殺水翔」
空中に水の千本ができ、飛翔する。
「おお〜!」
私もお兄ちゃんの真似をしてみる。
「秘術 千殺水翔!」
......................
「うう〜ん。やっぱり、一回じゃ無理か〜。」
「時間はあるから、ゆっくりやっていこう。」
「うん。」
私はどうも忍術が苦手で習得に時間がかかってしまう。それでもお兄ちゃんは、付き合ってくれる。お兄ちゃんは、すでにある程度の水遁の術を使いこなしている。私は、風遁の術を2つしか使えない。水遁は1つもできていない。でも、瞬身の術だけは自信がある。速度だけなら、お兄ちゃん以上だ。
「さあ、中に入ろう。」
小屋に入る。すでに再不斬さんは荷物をまとめだしていた。
「来たか。1つ言い忘れていた事がある。」
再不斬さんは、私達に小さな本を渡してくる。
「それは、ビンゴブックだ。他里の情報や強い忍びの情報が書かれている本だ。その中身を頭に叩き込んでおけ。」
「「はい。」」
「これからは、お前達にも戦闘してもらう事があるかもしれない。基本的には、俺がやるが。その際の決まり事だ。追い忍は必ず始末しろ。あとは、好きにすればいい。あと、金稼ぎのために依頼や賞金首を狙う事もあるだろう。覚悟しておけ。」
「わかりました。」
ビンゴブックを開く。
デイダラ
・岩隠れの抜け忍
・火遁と土遁を合わせた禁術の爆遁の使い手
・あらゆる小国に爆破テロを仕掛けている
はたけカカシ
・木の葉隠れの上忍
・別名 写輪眼のカカシ
・千以上の術をコピーした事から、コピー忍者カカシとも呼ばれる。
・木の葉の白い牙 はたけサクモの息子
ダルイ
・雲隠れの上忍
・雷遁と水遁の使い手
・秘術 嵐遁の使い手で通常の雷遁よりも強力
・剣術にも長けている
干柿鬼鮫
・霧隠れ暗部
・大刀 鮫肌の使い手
・水遁の術を使う
・チャクラ量が多く、尾がない尾獣とも呼ばれている
他にも、人柱力や血継限界の一族の跡取り娘など、戦闘能力はないが、国際問題の火種になる人物も書かれていた。
「この量を覚えないといけないのか〜。」
「まあ、2人でやれば覚えられるよ。」
「そうだね。」
とりあえず、ビンゴブックは閉じて荷物の片付けをする。
荷物を一通り集めると、巻物に封印していく。
次に再不斬さんは変化の術をする。格好は笠を被った旅人といった感じだ。
「お前らも変化の術をやれ。」
「「変化の術」」
私達は茶髪の少年少女に変化した。再不斬さんに笠を渡される。
「お前達もこれを被っておけ。」
笠を被り、再不斬さんの後ろを歩いていく。
目的地は島の最北端、雷の国の国境。
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林の中を瞬身の術で駆け抜ける。再不斬さんは周りを警戒しながら、木々を飛び越えていく。
流石は再不斬さん。全力で走ってるのに後を追いかけるだけで、精一杯だ。瞬身の術なら、ちょっと自信があったんだけどな〜。
林を抜けて街道に出る。街道からは一転してゆっくり歩く。
「ここからは歩きだ。俺達は旅人だ。忍びの振る舞いは厳禁だ、いいな?」
「はい。」
「わかりました。」
そこから1時間、街道を歩いていると、街道の横にポツンと団子屋と思わしき小屋が見えてきた。
「あそこで休憩にする。言っておくが、お前達は何が起こっても旅人の振る舞いでいろ。非常事態には俺が動く。」
私達は再不斬さんの指示に頷く。店は狭く、軒先に置いてある長椅子が二つだけであり、片方には先客が居たため、もう片方へと再不斬さんと共に座る。
「団子三串とお茶を3つ頼む。」
「はい。かしこまりました。」
店員さんは、お茶とみたらし団子三串を持って来た。
「.................」
再不斬さんは出て来た団子を黙って食べている。それを見た私も団子を食べる。
「あ!美味しいよ!お兄ちゃん。」
「うん、美味しいね。」
私はお茶を啜るが、
「ゲホッ、ゲホッ!」
「大丈夫!?」
「.........あっつい...」
「慌てて飲むからだよ。」
「........おい。」
熱いお茶に噎せていると、再不斬さんの不機嫌な声が聞こえた。
「静かに食べることはできないのか?」
「ご、ごめんなさい。」
美味しい団子に舞い上がっていた私の気持ちは、一気に沈んだ。
「...............」
「...................」
「っち。団子2つ追加してくれ。」
「はい。かしこまりました。」
再び店員さんは二串の団子を運んでくる。
「お前達は、そこで食ってろ。俺は少しあたりを見てくる。」
再不斬さんはそう言うと、静かに歩いていく。
お兄ちゃんはニコニコと笑っている。
「どうしたの?」
「やっぱり、あの人はいい人だなと、思っただけだよ。」
「えへへ、そうだね。じゃあ、残りもいただきます!」
しばらく、お兄ちゃんと談笑していると、再不斬さんが帰って来た。
「食べ終わったか。なら行くぞ。」
「「はい!」」