☆一輪の白い花   作:モン太

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移動

数ヶ月後、季節は夏になっていた。

 

隠れ家での生活にも慣れてきた。

 

キン!キン!

 

今は、再不斬さん相手にお兄ちゃんと一緒に組手をしている。

 

再不斬さんは忍術も体術も出鱈目に強くて、二人掛かりなのに一歩も動く事なく、私達をあしらう。

 

再不斬さんの周りを走り回る。そして、お兄ちゃんとアイコンタクトでタイミングを合わせて、

 

((瞬身の術!))

 

足にチャクラを集中させて、一気に放出する。私とお兄ちゃんで挟み撃ち。これで捉える!

 

ガシッ!

 

しかし、再不斬さんの懐に入った瞬間、私達は頭を掴まれてしまう。

 

「いい速さだ。だが、直線的すぎるな。」

 

そのまま、私達を地面に叩きつける。

 

「グハァ!」

 

しかし、

 

ボン!

 

私達が丸太に変わる。

 

変わり身の術だ。そのまま再不斬さんの背後に私達が踊り出る。お兄ちゃんは、素早く印を組む。

 

「秘術 千殺水翔!」

 

再不斬さんを囲むように水でできた千本ができる。でも、これだけじゃ再不斬さんを捉えれ無いだろう。

 

私はそれの援護をする。両手を前で合わせる。

 

「風遁 烈風掌!」

 

私の風遁で千殺水翔の速度を上げる。さらに、再不斬さんの地面から、お兄ちゃんの水分身が2体、再不斬さんに組みつく。

 

「ちぃ。」

 

再不斬さんは首切り包丁を一気に振り抜き、風圧で千殺水翔を飛ばす。そのまま、水分身を超速で切り裂く。

 

「「はあ、はあ、はあ。」」

 

再不斬さんは首切り包丁をしまう。

 

「合格だ。明日から移動する。準備をしておけ。」

 

再不斬さんを一歩でも動かす。術を使わせる。首切り包丁を使わせる。いずれかをさせれば合格。

 

この組手を繰り返し、今日ようやく合格できた。

 

「ふう。やっと合格できたね。」

 

「そうだね。藍がサポートしてくれたからね。瞬身の術もよかったよ。」

 

お兄ちゃんが撫でてくれる。

 

「えへへ。............あのね、お兄ちゃん。さっきのあの術はどうやったの?再不斬さんも使った事が無いよね?」

 

「ああ、さっきのやつね。あれは、雪一族の巻物に書いてあった秘伝忍術だよ。」

 

「じゃあ、私にもできるかな?」

 

「もちろん、藍ならきっとできるよ。なんなら今、手本を見せるよ。よく、印を見ておいてね。」

 

お兄ちゃんは片手であっという間に印を完成させる。

 

「秘術 千殺水翔」

 

空中に水の千本ができ、飛翔する。

 

「おお〜!」

 

私もお兄ちゃんの真似をしてみる。

 

「秘術 千殺水翔!」

 

......................

 

「うう〜ん。やっぱり、一回じゃ無理か〜。」

 

「時間はあるから、ゆっくりやっていこう。」

 

「うん。」

 

私はどうも忍術が苦手で習得に時間がかかってしまう。それでもお兄ちゃんは、付き合ってくれる。お兄ちゃんは、すでにある程度の水遁の術を使いこなしている。私は、風遁の術を2つしか使えない。水遁は1つもできていない。でも、瞬身の術だけは自信がある。速度だけなら、お兄ちゃん以上だ。

 

「さあ、中に入ろう。」

 

小屋に入る。すでに再不斬さんは荷物をまとめだしていた。

 

「来たか。1つ言い忘れていた事がある。」

 

再不斬さんは、私達に小さな本を渡してくる。

 

「それは、ビンゴブックだ。他里の情報や強い忍びの情報が書かれている本だ。その中身を頭に叩き込んでおけ。」

 

「「はい。」」

 

「これからは、お前達にも戦闘してもらう事があるかもしれない。基本的には、俺がやるが。その際の決まり事だ。追い忍は必ず始末しろ。あとは、好きにすればいい。あと、金稼ぎのために依頼や賞金首を狙う事もあるだろう。覚悟しておけ。」

 

「わかりました。」

 

ビンゴブックを開く。

 

デイダラ

・岩隠れの抜け忍

・火遁と土遁を合わせた禁術の爆遁の使い手

・あらゆる小国に爆破テロを仕掛けている

 

はたけカカシ

・木の葉隠れの上忍

・別名 写輪眼のカカシ

・千以上の術をコピーした事から、コピー忍者カカシとも呼ばれる。

・木の葉の白い牙 はたけサクモの息子

 

ダルイ

・雲隠れの上忍

・雷遁と水遁の使い手

・秘術 嵐遁の使い手で通常の雷遁よりも強力

・剣術にも長けている

 

干柿鬼鮫

・霧隠れ暗部

・大刀 鮫肌の使い手

・水遁の術を使う

・チャクラ量が多く、尾がない尾獣とも呼ばれている

 

他にも、人柱力や血継限界の一族の跡取り娘など、戦闘能力はないが、国際問題の火種になる人物も書かれていた。

 

「この量を覚えないといけないのか〜。」

 

「まあ、2人でやれば覚えられるよ。」

 

「そうだね。」

 

とりあえず、ビンゴブックは閉じて荷物の片付けをする。

 

荷物を一通り集めると、巻物に封印していく。

 

次に再不斬さんは変化の術をする。格好は笠を被った旅人といった感じだ。

 

「お前らも変化の術をやれ。」

 

「「変化の術」」

 

私達は茶髪の少年少女に変化した。再不斬さんに笠を渡される。

 

「お前達もこれを被っておけ。」

 

笠を被り、再不斬さんの後ろを歩いていく。

 

目的地は島の最北端、雷の国の国境。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

林の中を瞬身の術で駆け抜ける。再不斬さんは周りを警戒しながら、木々を飛び越えていく。

 

流石は再不斬さん。全力で走ってるのに後を追いかけるだけで、精一杯だ。瞬身の術なら、ちょっと自信があったんだけどな〜。

 

林を抜けて街道に出る。街道からは一転してゆっくり歩く。

 

「ここからは歩きだ。俺達は旅人だ。忍びの振る舞いは厳禁だ、いいな?」

 

「はい。」

 

「わかりました。」

 

そこから1時間、街道を歩いていると、街道の横にポツンと団子屋と思わしき小屋が見えてきた。

 

「あそこで休憩にする。言っておくが、お前達は何が起こっても旅人の振る舞いでいろ。非常事態には俺が動く。」

 

私達は再不斬さんの指示に頷く。店は狭く、軒先に置いてある長椅子が二つだけであり、片方には先客が居たため、もう片方へと再不斬さんと共に座る。

 

「団子三串とお茶を3つ頼む。」

 

「はい。かしこまりました。」

 

店員さんは、お茶とみたらし団子三串を持って来た。

 

「.................」

 

再不斬さんは出て来た団子を黙って食べている。それを見た私も団子を食べる。

 

「あ!美味しいよ!お兄ちゃん。」

 

「うん、美味しいね。」

 

私はお茶を啜るが、

 

「ゲホッ、ゲホッ!」

 

「大丈夫!?」

 

「.........あっつい...」

 

「慌てて飲むからだよ。」

 

「........おい。」

 

熱いお茶に噎せていると、再不斬さんの不機嫌な声が聞こえた。

 

「静かに食べることはできないのか?」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

美味しい団子に舞い上がっていた私の気持ちは、一気に沈んだ。

 

「...............」

 

「...................」

 

「っち。団子2つ追加してくれ。」

 

「はい。かしこまりました。」

 

再び店員さんは二串の団子を運んでくる。

 

「お前達は、そこで食ってろ。俺は少しあたりを見てくる。」

 

再不斬さんはそう言うと、静かに歩いていく。

 

お兄ちゃんはニコニコと笑っている。

 

「どうしたの?」

 

「やっぱり、あの人はいい人だなと、思っただけだよ。」

 

「えへへ、そうだね。じゃあ、残りもいただきます!」

 

しばらく、お兄ちゃんと談笑していると、再不斬さんが帰って来た。

 

「食べ終わったか。なら行くぞ。」

 

「「はい!」」


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