凄まじい質量の大木が槍のように襲いかかってくる。
崩壊氷結
飛んでくる樹木の幹を消し去りながら後方へ逃げていく。
見ればビーさんやナルト君などのチャクラ量が多い人が特に狙われているようだ。
だけど、私に殺到してくる量も多い。崩壊氷結で消し去って入るが、大木は器用に崩壊した幹を己で切断して再び襲いかかってくる事を繰り返している。
「こいつチャクラを一気に吸収しちまうぞ!!!逃げないと死ぬぞ!!」
「助けてくれ!!」
「こ…こんなのありかよ…」
「一人一人確実に生きてるオレ達を狙ってくる…!」
助けに行きたいけど、私は至近距離にいた事と、何故か大量の幹が襲いかかってくる事で手が出せない。
チャクラ量なら、少ない方なのに……
大木の殺意が高い……
さっきのオビトとの戦闘で脅威に思われてるのか……まるで大木そのものに意識があるみたい……
かなりの時間、大木との格闘を続けて、後方にまで下がった。
大木の攻撃も止み落ち着いたが、周りの状況は最悪だった。
死屍累々………
大木にチャクラを吸い取られ、ミイラ化した人々。
……夢の世界を謳っている貴方が、地獄を生み出して、どうするのよ、オビト!
「…もう…だめだ…」
「こんなの……」
「もう…じっとしていろ…お前らは…充分耐え忍んだ。」
空を突く程に大きな大木。
………これが神樹
「忍は終わりだ…もう続けることはない。抵抗しないならば殺しはしない。後悔したくなくば、もう何もしないことだ。」
「何も…しなければ…助かるって…事か…?」
「…そうだ…もう死に怯え耐え忍ぶ事もない……夢の世界へ行ける…」
「諦めるな!!幻術の中に落ちれば死人も同然ぞ!!」
初代様が叫ばれるが、士気がどんどん落ちていく事がわかる。
皆、圧倒的なまでの力の差に絶望している。
まるで蟻と象ね。
「この大樹はオビトと密接に繋がっておるの…まるでチャクラを引き抜く手足…迂闊に近付けぬ。」
「随分弱腰ですね。アナタらしくない…猿飛先生。」
「待たせたね重吾にサスケ。」
「大蛇丸…遅かったではないか!で…五影は?」
「…回復してあげたから…弱腰じゃなければここへ来るでしょうね。」
「フン…皮肉を言うのは変わらんな。」
大蛇丸がやってきたか。普段なら、大きな戦力になるけど、これが相手じゃ多少の強化程度にしかならないわね。
すると突然、皆の様子がおかしくなった。
どうしたんだ?…皆ビクッと動いて固まった。
何か念話みたいなことをしてるのかしら?
「もう…終わりだ…」
「こんな事ならいっそ最初から…」
「そうだ…そのままでいい…悔む事のない世界に連れて行ってやる。」
するとサスケ君がスサノオで大木を切り裂く。
スサノオなら、剣の長さを自在に操れるもんね。………便利だな。
「ナルト…もう…終わりか?オレは行く。」
サスケ君のスサノオが突き進んでいく。
「行くぞ、重吾。」
「ああ……」
また、皆が何かを受信してる。
これはおそらく幻術が通じない体質が災いして、この念話が来てないわね。……剣気は強力だけど、こういう時は不便ね。
「無かった事になんかできねぇーんだよ!!」
よくわからないけど、皆の顔に生気が蘇ってる。
「サスケェ!!オレも行くってばよ!!」
「フン……」
「で…サスケ…お前…相手は仙術しか効かねェって分かってんよな!?」
「さっきのお前と一緒にするな。」
重吾君が呪印の力をスサノオに付与する。
「…香燐ほら…!アレってサスケの呪印模様だよね…」
「呪印の力は無くなってた筈だろ…」
「そもそも重吾の呪印は仙術の力。…かつて私の実験でその重吾のチャクラを注入して直ぐ呪印を解放したサスケ君だもの……サスケ君のスサノオが同じように重吾のチャクラに適応しても何ら不思議じゃないわ。つまり仙術スサノオってとこかしら。」
サスケ君は重吾君の補助で呪印の自然エネルギーを取り込んだスサノオでトビを攻撃していた。ナルト君も追従している。
「頼む!!我らの愛すべき子供達よ!!今こそ我ら忍の痛みから苦悩から挫折から…紡いで見せてくれ!!我ら忍のーー本当の夢を!!」
初代様が叫んでいる。
内容はよくわからないけど、皆んなの表情は力強い。
五影様も到着された。
これなら………
「ワシ達の代で…その夢についての会談はもう必要なそうだな。…違うか?」
「…そうですね。」
「当たり前じゃぜ。ただしここで勝たねばそれも成就せんぞ!」
「土影の言う通りだ。…もう負けは許されん。」
「よし!我らは広がって指揮を取るぞ!そして忍連合の最大の力を引き出す!それが我ら五影の本来の為すべきことだ。散!!!」
「よし!奴が戦いに気を取られてる内にあの大樹を切るとしようぞ!」
とりあえず、この神樹を切るのね。
私も参加するとしよう。空間凍結で固めた空間を空中に作り、そこに乗る。
俯瞰して見ながらの方がやりやすい。味方を巻き込む訳にもいかないしね。
「氷遁・万華氷剣」
空中に数十億の氷剣を作る。空を埋め尽くす氷剣の葬列。
それを音速で射出する。
氷剣は大木の幹や根っこを撃ち抜き、粉々に砕いていく。
これだけ神性が高いと氷剣の切れ味も凄まじく強化されるわね。気持ちいいくらいにボロボロになるわね。まるで豆腐を切ってるみたいね。
『剣気は相手の神性の高さによってその毒性が増す』
シンジの言ってた通りだ。
大木の枝がこちらに伸びてくる。
そりゃ、こんな派手な攻撃してたら、阻止しにくるよね。
「氷遁・氷槍の術」
右手に氷槍を作る。
それを伸びてきた枝に突き刺す。
「罪の枝」
氷槍を刺した場所からどんどんと奥へ、氷の棘が生えて大木を破壊し尽くす。堪らず大木が自ら枝を切り離した。
「やっぱり器用ね。」
すると伸びてくる枝の先が龍の形をしだす。
なんだか攻撃力を上げた感じかしら。
「氷遁・氷精の吐息」
口から息を細く吹くように冷気を吐き出す。
向かってくる枝を全て凍らせる。
そうしてると地面に大量のカツユが敷き詰められていく。
立ってるだけでチャクラと傷を回復できる大地ね。
すると空から何かが落ちてくる。
一体何が?
煙が晴れれば、ナルト君とサスケ君が倒れていた。
向かい合う形でオビトが睨み合っていた。
「何故起き上がる…!?お前は何の為に戦っているというのだ?仲間の為か、それともこの世界の為か?いいか…仲間にはいずれ裏切られる。そしてこの世界では愛は憎しみに変わる。お前もわかってる筈だ。かつて里の者もサスケもお前を裏切ってきた…そして自来也との愛がお前に憎しみを与えた。お前もオレと同じだ。積み重なる苦しみがいずれお前を変えていく。そして今、お前に更なる苦しみが襲う事になる。それでもお前は自分が変わらないと言い切れるのか!?またいつ仲間がお前を裏切るかもわからない。連合がまたいつ戦争をするかもわからない。そして、このオレに勝てるかもわからない。こんな世界の為にもう戦う意味は無い筈だ。もうこの世界も数分で終わる。そうしてまで何故戦う!?」
………え?
そんなに時間がもう無いのか……
どうしよう……少し強引にやるべきかしら。
「……自分の忍道だからだ。真っ直ぐ自分の言葉は曲げねェ。それがオレの忍道だからだ。」
…………うん。まだ大丈夫そうね。
「次で決着をつけるぞ、ナルト。」
「オウ!眠るのは明日。夢は自分で見る!!!」
ナルト君とサスケ君のチャクラが共鳴した。