☆一輪の白い花   作:モン太

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参戦

戦場までは時間遅延を使いながら飛行する。

 

大蛇丸に付けていた氷分身は綱手様に瀕死にされた際に解けてしまっていた。

 

まあ、それは仕方ない。

 

途中で大蛇丸達を追い越した。わざわざ合わせる必要もないので構わない。

 

そして到着してみれば、トビが十尾の人柱力になっていた。右目は写輪眼で左目は輪廻眼になっている。

 

ナルト君は九尾の力を完全に物にしたようね。

 

それにしても、皆んな私がここにいるのにあまり反応がないわね。

 

暁の服を着てる私が居てもそれに反応してる余裕もないだろうけど。

 

いや………

 

遠目に同じ暁の衣を着てる小南が見える。

 

成程。……先に小南がいたからね。

 

トビもといオビトが地面に手を着いた瞬間、大きな花が四つ付いた木が生えて来た。

 

何だろう、あれ?

 

「この世は既に死んでいる。」

 

するとあの四つの花から尾獣玉がチャージされ始める。

 

なんて大きさの尾獣玉だ!

 

私の知ってる尾獣玉とはもはや比較にならない。しかも四つって……

 

「おい…ヤバイぞ……」

 

「4つも…一度にアレを…!?」

 

「あれでは土遁障壁を連合、皆でやっても間に合わん…!数が多すぎる…!」

 

「アレを飛雷神で飛ばすのは一人一つが限度だ…!四代目とワシで二つはいけるとしても、他の二つは無理だ!兄者は…!?」

 

「皆の者、諦めるなオレもおる!!玉の軌道さえ変えれば良いのだ!!火影達も手を打ち、海の外へ弾く!!皆は土遁の壁を頼む!オレは樹界降誕でアレを海へ打ち上げ導く!」

 

スケールの大きい話だ。ここから海までどれだけ離れてると思ってるんだ。

 

それができるぐらいには、射程距離が長い上に威力もあるってことよね……

 

「そうはさせん。」

 

オビトは黒い杭のような物を出して結界を作った。

 

「六赤陽陣!!」

 

「結界だ!!」

 

「これってまさか…オレ達…」

 

「…皆を閉じ込め尾獣玉を外へ弾けなくしたのか…」

 

「こうなったら、アレは飛雷神で結界の外へ飛ばす以外にないぞ。四代目…二ついけるか…!?」

 

「マーキングできない以上一つが限界です…方法はたった一つ…あの…」

 

「木ごと外へまるまる飛ばすつもりか?…させると思うか…アンタは誰も救えない。」

 

「………」

 

たった一つの方法が潰されてしまった。

 

どうするの……?

 

「父ちゃん…上手くいくか分かんねーけど、考えがあんだ…拳を合わせてくれっか。」

 

「…?」

 

ナルト君と四代目火影様が拳を合わせる。

 

何か出来そうな感じね。

 

「ナルト…そいつは何もできない…お前の母を守れもしなかった…己の部下も……明日が何の日か知ってるな?…ミナトとクシナの命日だ。…両親の死んだ日だ。…死ねば終わりだ…この世は……いいか」

 

「そうだった……なら明日は……オレの生まれた日だ。…いいか…終わりじゃねェ…」

 

オビトが黒い球体に包まれていく。

 

あれが防御壁にでもなるのかしら。

 

「オレがこの世にいる!!!…行くぜ、父ちゃん!!!」

 

「ああ!!」

 

さて…………どんどん尾獣玉が大きくなってるね。これだけの神性を放つ相手が使う尾獣玉なんて威力がどんな物なのか想像がつかない。

 

「大変なのはこっからだぜ、父ちゃん!」

 

すると突然、全員に朱いチャクラが纏われる。

 

皆んな朱いチャクラを纏ってる……

 

これはナルト君の九尾のチャクラ……

 

これだけの人間にチャクラを分けて、強化してるのか……

 

とんでもない規格外ね。

 

私も貰っておくべきかしら?……いや、今はそんな事をしてる余裕はないか。

 

「お前らにはオレのチャクラ渡してなかったな!こっちに来てくれってばよ!」

 

「フン…そんなチャクラでどうにかなるのか?」

 

「時間がねェ!早くしろ!!」

 

サスケ君を急かすようにナルト君が叫ぶ。

 

やっぱり、貰った方が良さそうね。

 

ナルト君に向かって走り出した瞬間、尾獣玉が放たれた。

 

ここからじゃナルト君までの距離が遠すぎる……間に合わない。

 

一瞬で悟った。そして、その瞬間には私の視界に映っていた忍連合全員が消えていた。気配は結界の外。

 

まさか、取り残された?

 

不味いわね。着弾まで一秒もない。崩壊凍結でも自分に向かってくる一つしか消せない。……なら、

 

「空間凍結」

 

あの木を覆うように空間凍結をする。ついでに念の為に私の身体を覆うようにも空間凍結をする。

 

そして、爆発。

 

私の視線の先で真っ黒に炭化した木が倒れた。

 

「どうなった?」

 

「またこのチャクラが守ってくれたんだ!!」

 

「いや…よく見てみろ。」

 

「結界の外にいる。」

 

「瞬身の術だな。」

 

「ナルトの奴、こんなことまでできたか!?」

 

「…ナルト君のチャクラだけじゃない…」

 

「こりゃあ、四代目火影の飛雷神の術で移動させたな!」

 

「…四代目…お前はこれで忍の皆を二度救ったことになるな。」

 

「…失敗の数の方が多いですから…まだまだこれからです。」

 

「何をした?」

 

「父ちゃんが連合の全員を結界の外へ飛ばしんたんだってばよ。」

 

「あの術で全員だと?」

 

「皆にはオレと九喇嘛のチャクラを前もって渡してくっつけてあったんだってばよ。とりあえず父ちゃんとチャクラと皆が…えっと…」

 

「間接的に…」

 

「そっ!カンセツテキにくっついてりゃいいんだから…父ちゃんのチャクラとオレと九喇嘛のチャクラをくっつけてみた…そんだけ!」

 

「影分身の原理を利用したのだ。己のチャクラを分散し、離しても少量でも消さずに残しておけば、本体が再びチャクラをコントロールしようと練った時、分散したチャクラは共鳴を起こして連動する。つまり、ナルトのチャクラに四代目のチャクラを接触させ、連合の皆に残っているナルトのチャクラと連結させたという事だ。そうだな…ナルト…」

 

「え!?…そうなの?」

 

「…もういい…」

 

「二代目のおっちゃんはオレの影分身のことも詳しいんだな…!」

 

「ワシが作った術だ!ワシの術だ!」

 

「力が湧いてきたってばよ!このままいくぞ!!」

 

「ナルト、威勢の良い声を上げ、格好つけるのは良いが…まさかとは思うが、仙術以外効かぬと忘れてはおらぬだろうな…?…お前も馬鹿ではない…」

 

「…………そうでした〜〜!!!」

 

「よし…お前は兄者以上の馬鹿だ。」

 

………仙術………つまり自然エネルギーでしか、ダメージが通らない訳ね。

 

オビトが黒い球体から出てくる。

 

「………貴様……!」

 

この結界の中は私しか残っていないから、すぐに見つかる。

 

私は仙術を使う事はできない。だけど、あれ程の神性が有れば、剣気で大ダメージを狙える。

 

剣気はチャクラではない。……全く無関係ではないが。

 

チャクラは身体エネルギーと精神エネルギーを合わせる。そこにプラスαで陰陽のチャクラを加える事で忍術・幻術・体術を駆使している。

 

剣気は精神エネルギーのみで機能する。シンジが言っていた精神の強さが剣気の強さになるとは、おそらくこの事を指してる。

 

「……何をした…?」

 

「何って、今二代目様が説明してたじゃない。」

 

「……そうじゃない。何故お前は無傷だ?…何故神樹が傷を負ってる?」

 

残念だけど、それに答える訳にはいかない。

 

「…この神樹は無限月読を行う為の希望の大木だ。……貴様の所為で無限月読までの時間がより必要になってしまった……。」

 

「オビト……もういいでしょう?…現実を見ようよ。…こんな妄想の世界に何の意味があるの?」

 

「……逆に聞くが、お前はこんな現実に一体何の意味がある?…お前の人生は失うばかりの人生だったはず。血継限界だっただけで、親に殺されかけ、村からは迫害を受けて追い出される。兄と師匠をカカシに奪われ、木ノ葉で出会った妹分はダンゾウに殺され、自身はダンゾウに性奴隷にされかけ、大蛇丸には実験体として追われる日々。やっとのことで得た安息の地の暁は、これもカカシやナルトに破壊された。そして、イタチはサスケに殺された。…お前程、この世界が如何にくだらないか、知ってる忍はいないはずだ。」

 

「……確かにこの世界を憎んだ事が一度も無いとは言わないよ。」

 

飛段と喧嘩した時に思わずヤケを起こしかけた事もあった。

 

「……でもそれは私だけじゃ無いと思うんだよ。オビトや小南の世代は戦争を体験してる。初代様から三代目様ぐらいなら、戦国時代を経験されてる。…きっと私とは比較にならない程、多くを失ってるはず。…私達だけが失う苦しみを知ってる訳じゃ無いんだよ、オビト。」

 

「……だから黙って現実を受け入れろと?」

 

「それに何かを失う事を人の所為にしてはいけないよ。……父親や村の人々が冷遇したのは、戦いを恐れたから。それは当たり前の気持ちだよ。……兄さんと再不斬さんは任務でぶつかったから。忍である以上、任務で殉職する事は最初から覚悟してる。……まさか、自分や仲間だけは絶対に死なないなんて考えてる訳じゃないでしょう?それを責めるのはお門違いだよ。……私を性奴隷にしようとしたのも、木ノ葉に血継限界の血族を増やす為、里を守りたいが為に力を求めた結果。大蛇丸も同様だ。…そんなの木ノ葉だけが特別じゃない。どこの里だってやってる事だよ。…イタチはサスケ君の為に命を懸けただけよ。」

 

「……フン。とんだ逃げ腰だな。」

 

「それに何度も言うけど、他人の所為じゃ無いよ。……私に力が有れば、話し合いで迫害も何とかなったかもしれない。私にもっと力が有れば、兄さんと再不斬さんを守れたかもしれない。私にもっと力が有れば、クロを守れたかもしれない。私に力があったから、ダンゾウと大蛇丸から逃げる事ができた。私にもっと力が有れば、サソリ、デイダラ、鬼鮫さんにイタチを守る事ができたかもしれない。………全部、私の実力不足が招いた結果だよ。他人の所為じゃない。………それに私は失ったけど、私も誰かを奪っている。五尾の人柱力のハンさんは私が殺した。岩隠れで迫害を受けて、苦しかったであろう人に追い討ちをかけたのは他でもない私だ。…それに暁は世界中に悲劇をばら撒いたんだよ。……だからこそ、私達は世界に憎しみや妄想ではなく、償いを返さないといけないんだよ。」

 

「……それこそ、綺麗事で妄想でしかない。綺麗事でしか物事を語れない小娘に現実を教えてやろう。そうすれば、少しはオレの言う事もわかるだろう。」

 

「氷遁・氷剣の術」

 

「オレをそんな剣で斬る事はできんぞ。仙術が使えないお前はただ逃げ回るだけだ。この結界の中をな。」


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