☆一輪の白い花   作:モン太

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先人達の考え

大蛇丸が案内した場所は木ノ葉の里だ。

 

私は極僅かしかいなかった地だけど、随分と変わったようだ。

 

長門と小南が暴れまったようだけど、だいぶ復興も進んでいるようだ。

 

ん?

 

またナルト君の放つ力が増している。

 

この戦いの中でも成長していくナルト君は本当に凄いな。

 

「…行くぞ。さっさと案内しろ、大蛇丸。」

 

みんな足が止まっていた。感知タイプじゃなくても、感じれる程のチャクラ。

 

「……ここか。」

 

ボロボロの神社に案内される。どうやらうずまき一族の神社のようだ。

 

「ここは手付かずのようね。」

 

「ボロボロね…」

 

「そりゃこんな里の外れならね。」

 

神社の中に入る。

 

「どれだ?」

 

「さて…どこかに…」

 

色んなお面があるのね……

 

「あったわ。」

 

「何か気味が悪いね…見つけたんならさっさと行こうよ。」

 

「顔を隠すのが好きなアナタなら一個持っていったら、どうかしら?」

 

「結構よ。」

 

「…そう。なら全ての秘密が眠る場所へ行きましょう。」

 

木ノ葉の里は意外にも人が普通に行き交っていた。

 

「それにしてもこの時期に雪って、ちょっと早いんじゃない?ボクと重吾は裸足なんだし、寒いよね。」

 

それは私が降らせてる雪の所為だ。

 

サスケ君が電柱に上がって、里を眺める。

 

「何だサスケの奴…?」

 

「私が木ノ葉崩しをやる前と同じね。」

 

「何が?」

 

「たとえ彼や里が変わってしまったとしても、ここは彼の故郷に変わりない。感傷に浸り、過去をなぞることで、己の決意を再確認する時間が必要なのよ。」

 

「ふぅーん、ならアンタはもういいの?」

 

「?」

 

「感傷に浸りつつ、木ノ葉崩しの決意っての。………あのさ、よく考えたらボクらアンタの部下でトップメンバーだったでしょ?んで今…それが木ノ葉の中にいる………里の強者共は戦争でいないとなると、これってアンタにとってチャンスじゃないの?」

 

「フッ…そうかもね…でも一つ違ってるわ。」

 

「?」

 

「アナタ達はもう蛇じゃない。」

 

「まあ、妙な真似をしたら、私が許さないわ。」

 

「……そうかしら?貴女の愛しのイタチとお兄さんと再不斬を生き返らせてあげると言っても?」

 

「くだならない挑発には乗らないわよ。」

 

「……あら、結構本気で考えてたのだけど。」

 

「やる気もないくせに……貴方はただ私が動揺する様が見たいだけ。」

 

「貴女みたいな強者を手玉に取れる事以上に愉悦を感じれることもないものね。」

 

「それ以上に、兄さん達の生体情報を返しなさいよ。……それを持ってるって事は、兄さん達の墓場を荒らしたんでしょう?………こんな状況じゃ無きゃ絶対に許さないわよ。」

 

南賀ノ神社にやってきた。

 

跡形もないのね。

 

瓦礫の山だ。

 

「上辺はいい。大事なのはその下だ。」

 

下に潜る。薄暗い地下室だ。よく読めない石碑がある。

 

「なら始めるわよ。少し離れてなさい。」

 

大蛇丸がお面を被る。

 

「グアアウウッ!!」

 

大蛇丸の身体から死神が出てくる。

 

凄い!

 

十尾なんかを遥かに超える神性だ!

 

これが屍鬼封尽の死神。

 

…あのお面達は屍鬼封尽以外の術にも関連があるのかしら。だとしたら、うずまき一族って一体何者なんだろう。

 

死神が腹を割く。その瞬間大蛇丸の腹も裂けた。

 

「重吾、サスケ、水月…準備なさい!!」

 

「分かった。」

 

重吾君がサスケ君に仙力を与える。すると白ゼツが6体現れる。

 

大蛇丸も感知できていたみたいね。

 

白ゼツの本体は既に私が殺してたから、情報が遅れるのは分かってたけど、サスケ君の体に引っ付いてるから手を出せなかった。…だけど、今は好都合。

 

そして、大蛇丸は新たに体を白ゼツに乗り換え、重吾は失った肉体を白ゼツから奪う。

 

残り4体の白ゼツは穢土転生の生贄になる。

 

「さぁ来るわよ!!全てを知る者たち……先代の火影達が。」

 

4体の穢土転生。歴代の火影達。

 

彼らが……

 

「また大蛇丸とかいう忍か…!」

 

「どういう事だ?」

 

「我々を封印していた屍鬼封尽の術…おそらくはそれを解いたのでしょう。そしてその後、穢土転生を…」

 

「まさか…あの封印術を解くなんて……大蛇丸さん…どうやって?」

 

「私をみくびりすぎよミナト。元々はうずまき一族の封印術…今は無き一族の跡地や散らばってしまった文献をずっと研究していたのよ。術を失ってからね。」

 

「また穢土転生の術か。ワシの作った術をこう安易と…」

 

「それほど難しい術ではありませんよ。…ただ…作るべき術ではなかった……」

 

「!?」

 

「二代目…アナタのしてきた政策や作った術が後々厄介な事になってばかりでしてね…今回も…」

 

「貴様…また木ノ葉を襲う気か!?」

 

「ワシの命と引き換えにしてまでお前の術を奪ったというのに…なんたる事じゃ…!!今度は師であったワシまで穢土転生して木ノ葉に仇なす気じゃな!!」

 

「ハァ〜〜いつの世も戦いか。確かにあまりいい術とは言えぬな。扉間よ…だからあの時オレが言ったように…」

 

「兄者は少し黙ってろ。ワシはこの若造と話してる。」

 

「しかしだの…」

 

「黙れ」

 

「勘違いしないでください。私はもうそんな事をする気はありませんよ。だから人格も縛ってないでしょう?」

 

本当かしらね。

 

「今回は少し事情がありましてね。彼たっての希望で話し合いの場を設けたまでです。」

 

「オレはうちはサスケ。アンタ達火影に聞きたいことがある。」

 

「サスケ……か!?」

 

「うちはの者か…成程悪党につくだけはある。」

 

「そういう言い方はよせと言ったはずだぞ!!」

 

「兄者は甘いのだ。」

 

「オレの事はいい。三代目…イタチに何故あんな事を…」

 

「もう…知っておるようじゃな。」

 

「イタチは…うちは一族の復讐としてオレが殺した。その後にトビやダンゾウから本当の事を聞いた。そしてオレは木ノ葉への復讐へと走った。だが…アンタの口から聞いておきたい。イタチの全てを。」

 

「…そうなったか……………同胞を殺めさせた上…逆賊の濡れ衣を着せ、更には暁共を一人で監視させていた。」

 

改めて聞くとあまりにも酷い内容に胸が痛くなる。

 

「…イタチは小さい頃から誰も気に留めぬ先人達からの教えや印に気付き、一人でかつての忍達や里の起こりを感じとる繊細な子供だった…。そのせいかイタチは一族という縛りにとらわれる事なく、忍の先…里について考える事ができ…いつもそれら将来を危惧していた。7歳にしてまるで火影のような考えを持つ少年じゃった。」

 

何故、彼じゃなかったんだろう。

 

きっと彼が火影になれば……いや、彼以上に火影に相応しい人物はいない。それを使い潰すようなやり方で………

 

涙が出そうになる。

 

「ワシらはイタチ一人に全てを任せ、イタチはそれを任務として完璧に果たした。同胞を皆を抹殺し、反乱を止め…それに繋がる戦争を一人で食い止め…暁のスパイとして入り込んでまで里を守った。ワシにお前を里で守る事を条件に出してな。」

 

「……やはりそうか。」

 

「うちはの呪われた運命というやつよ。壊滅状態だとはな…クーデターを企てるに至ったか。いずれそのような事になるとふんでおった。マダラの意志を持つ反乱分子も燻っていたからな。」

 

「そう。うちはを追い込んだのは、二代目…アナタの作ったうちは警務部に端を発してるとも言えるわ。」

 

「何だと…?」

 

「犯罪を取り締まる側は時として嫌われ者になりやすい。更にそういう組織は権限が強い分、思い上がる。犯罪者を監視する為に警務部を牢屋と同じ場所に作り、うちはの家族を露骨に里の隅に追いやった。アレがマダラ分子を助長させたのよ。」

 

「扉間!あれ程うちはを蔑ろにしてはならぬと念を押して!」

 

「うちはにこそできる役職を与え!次のマダラが出たとしても対処できるよう考えた結果だ!兄者も知っているだろ…奴らうちはは…悪に憑かれた一族だ…!!」

 

でもそれは結局のところ、千手側から見たうちはの有効活用法であって、うちはの都合は入ってないよね。

 

「…まるでマダラはトラウマのようですね。そんなにうちはが怖いと?」

 

「若造が…お前はマダラを知らぬ。」

 

「二代目火影…アンタに聞く。うちは一族とはなんなんだ?…何を知っている!?」

 

「…千手一族が術では無く、愛情を力としてるのに対し、うちは一族は術の力を第一とした考えがあった。だが…本当は違うのだ…」

 

「!?」

 

「うちは程愛情に深い一族はいない。だからこそ、うちははそれを封印してきた。」

 

「…どういう事だ?」

 

「一旦、うちは一族の者が愛情を知ると今まで縛りつけてきた情の解放とでもいうのか…千手をも超える愛の力というものに目覚めてしまう。」

 

「…ならOKじゃん?」

 

「ところが、これが厄介なのだ。その強すぎる愛情は…暴走する可能性を秘めていた。」

 

「……」

 

「愛を知ったうちはの者がその強い愛情を失った時…それがより強い憎しみに取って代わり人が変わってしまう。ワシはそれを何度も見てきた。そしてそれにはある特別な症状が出るのだ。」

 

「…症状…?」

 

「うちはの者が大きな愛の喪失や自分自身の失意にもがき苦しむ時…脳内に特殊なチャクラが吹き出し、視神経に反応して眼に変化が現れる。それが心を写す瞳…写輪眼と言われるものだ。写輪眼は心の力と同調し、個人を急速に強くさせる …心の憎しみの力と共に……うちはには確かに繊細な者が多く、強い情に目覚めた者はほぼ闇に囚われ悪に落ちる。闇が深くなればなるほど瞳力も増し、手がつけられなくなる…マダラのようにな。」

 

別に憎しみだけが、強くなるものとは思わない。憎しみなんかに頼らなくても、イタチは強かった。

 

白兄さんは誰かを守りたいと思った時、本当に強くなるといつも言っていた。

 

イタチが強かったのも、サスケ君を守りたいと本気で思っていたからだ。

 

火影にもなるような人なのに、何故それがわからないのか。…うちはってだけで、悪党につく事はあるって、ちょっと酷すぎじゃないかしら。

 

無論、イタチにも写輪眼が宿っている事から、喪失感に苦しんだ筈。だが、憎しみに逃げない強さがあった。

 

「マダラは弟想いの男だった…貴様の兄以上だろうぞ。」

 

「ワシはうちはの力を里の為に貢献できるように形を整え、導いたつもりだ。だが、里の為に自ら自滅したのだとしたら、それも仕方ない事。奴らも木ノ葉の里の役に立ったという事だ。」

 

ダンゾウのような事を言う。…サスケ君が黙ってるから、何も言わないけど、私は結構頭に来ている。

 

「扉間、そういう言い方は止さぬか!話を聞いてるのは純粋なうちはの子だ!」

 

「大事なのは里だ。里が要よ。兄者もそれは分かっていよう。」

 

里が要でありながら、誰よりも里を想っていた人間を抜忍にして、追い出してるんだから、皮肉なものだ。

 

「気にしない。…純粋でもなければ、子供でもない。」

 

ピシッ

 

床の板に亀裂が入った。

 

知らず知らずのうちに熱くなってたみたい。剣気が漏れていた。

 

少し落ち着こう。

 

横を見れば、水月君が大蛇丸の腕にしがみついて、怯えた目でこちらを見ていた。

 

「初代火影…アンタに聞く…里とは何だ?忍とはそもそも何なんだ?」

 

「里………忍とは何ぞ?…か…」

 

「…イタチは、兄は木ノ葉に利用されたにもかかわらず、命懸けで里を守り、木ノ葉の忍である事に誇りを抱いて逝った。……同胞を殺してまで、己が死んでまで守ろうとする里とは一体何だ?こんな状況を作り上げた忍…それをよしとする忍とは何だ?アンタの言葉を聞いて…本当の事を知ってから、自分で答えを出したい。木ノ葉に復讐するのか………それとも…」

 

ここからの話は慎重にやってもらわないといけないね。どうにかサスケ君が踏みとどまってくれるといいけど。

 

それはそれとして、私個人で言えばここで話を聞く事に少し後悔している。

 

初代様から三代目様の話を聞いて思うに、どことなく傲慢さが感じられる。四代目はそもそも蚊帳の外っぽいからわからないけど。

 

無論、里の事を第一に考え行動するからこそ、火影だったんだろう。

 

トップが下の一族の一つ一つをしっかり把握するなんて不可能だし、それは担当の部下に任せる事こそが上の度量だとも思う。

 

だからこそ、自身の認識に齟齬があるかもしれないという謙虚さが見えない。

 

多くを語り合ったイタチと私ですら、彼の中の狂気を知らなかった。

 

人間なんてそんなものだ。その人自身でもないとその人の気持ちなんてわからない。それに逆も然り、自分では気が付かない自分の気持ちがあったりする。

 

それぐらいには、人間は複雑な生き物だ。

 

火影だからこそ、そこは致命的だと思うのだが。

 

「…木ノ葉への復讐だと!うちはの悪に憑かれた小僧が…ここでワシが………」

 

瞬間、二代目様からチャクラの風が吹き荒れる。大蛇丸が偶にやる威嚇に似てるけど、こちらの方がより迫力がある。

 

サスケ君に危害を与える訳にはいかない。彼はイタチの忘れ形見だ。

 

二代目様の圧力と同等の剣気を放って相殺する。

 

「扉間…」

 

ギン!

 

更に強い圧力で初代様が二代目様と私の圧を吹き飛ばす。

 

床の板がめくり上がってしまった。

 

重吾君がサスケ君を庇うように前に出る。

 

大蛇丸も穢土転生を縛る準備の為に印を結ぼうとしている。大蛇丸には珍しく、表情に余裕が見えない。

 

水月君は大蛇丸の影に隠れている。

 

場が少し混乱してしまった。私も大人気なく対抗してしまったけど。

 

「指を下ろせ…。」

 

「……分かった。そうチャクラを荒立てるな……兄者。」

 

「ガハハハ!!いや、すまんすまん!!」

 

「す…凄いですね…」

 

「…フン……」

 

「いや〜、お主もやるのう。顔色一つ変えずに、扉間に対抗できるとは、中々の忍を育てたものだな、猿飛。」

 

だが、三代目の表情には戸惑いがある。

 

「いえ、この者の顔に見覚えはありませぬ。額当てを見るに木ノ葉の忍のようですが…………お主、何者じゃ?……見たところサスケとそこまで変わらない筈じゃ。なら、ワシが知らない筈はないんじゃが……ミナトはわかるか?」

 

「……いえ、ボクも彼女の顔は見た事がありません。」

 

「…今は私のことよりも、サスケ君の方を優先していただけませんか?」

 

「ならぬ。貴様程の力を持ち得ながら、素性が知れんなどあってはならぬ。」

 

「そうじゃ!それにその衣は暁!…お主何者じゃ!?」

 

「そうもいってらないんですよ。今は時間もありませんから。」

 

「時間がない?」

 

そこで大蛇丸が引き継ぐ。

 

「今は戦争中です。うちはマダラが復活し、この世の忍を消すようです。」

 

「「「「!?」」」」

 

「…………いつの世も戦いか……」

 

「確かにここから二時の方向……何やら強いチャクラを感じる。」

 

二代目様は感知タイプでもあるようね。純粋なチャクラ感知をするタイプか。

 

そして四代目様はナルト君のチャクラに気がついたようね。この人の中にも、ナルト君と同じ神性を感じる。おそらく、九尾のチャクラを持っているに違いない。

 

「…嘘ではないようだな。…確かにマダラのチャクラを感じる。」

 

「ならワシらは戦場へ向かう!!」

 

「アナタ方は私の穢土転生の管理下にあり、その行動は制限される。戦場へ向かいたいなら、話を済ませてからです。」

 

「話は後じゃ!マダラが復活したと聞いて事の重大さがわかっておるのか!?」

 

「…私はこの子に付きます。サスケ君が納得しなければ、アナタ達を使ってここ木ノ葉を潰す事になりかねませんよ。…このタイミングで…」

 

「ぬぬぬ…!こんな術…!!」

 

「大蛇丸とやら、お前何か勘違いをしておる。前回よりも穢土転生の精度上げてしまった事が仇となったな。ワシらが本来の力に近い形でこの世に転生された今回…貴様如きの穢土転生に縛られるワシではないわ。そもそもこの術を考案したにのはワシよ。…兄者こうなっては致し方ないぞ。ワシは動く!」

 

だけど、大蛇丸が印を結べば、二代目様の動きも止められた。

 

「猿飛…かなりの忍を育てたものだ。」

 

「忍の神に褒めていただけて光栄です。」

 

「ガハハハ!!オレの細胞を取り込み、縛る力を上げておるのよ。扉間…少し勘が鈍っておるぞ。」

 

「不躾な物言いで申し訳ありませんが、そもそも火影様達は今外に出る事は叶いません。」

 

「どういう事だ?」

 

「今、外には穢土転生の魂魄を破壊する雪を降らせています。そのまま外に出れば、火影様達の魂魄は無に帰します。」

 

「え?外の雪って、アンタが降らせてるの?……どうりで何処に行っても雪が降って寒い訳だ。……ちょっと、アンタ少しおかしくないか?」

 

「だから言ってるじゃない、水月。この子が本気を出したら、どうなるかなんてこの状況から見てもわかるわ。サスケ君の麒麟だって、積乱雲を作るのに、大掛かりな準備が必要でしょう?…それを広範囲に長時間維持し続けている。……それにこれだけの事をしても、平気な顔をしてるのはやっぱり異常ね。」

 

「好き勝手に分析してるんじゃないわよ。」

 

「……私はね。アナタが私の呪印を精神の力だけで消し去ったあの時から、普通でない事を感じていた。……数多ある呪印でも私の呪印は特別性。一応、呪印を精神の力で押さえ込む事はできるわ。でも消し去る事なんてできないのよ。……サスケ君も身に宿した事があるからわかると思うけど、あの力は私の仙術チャクラに重吾の仙人化の力が宿っている。カブトの仙人モードの強さも知ってると思うけど、あの力を精神力で消し去った事がどれだけ異常な事か。」

 

「……今はサスケ君が優先じゃないの?」

 

「……そうね。アナタへの探究心は後回しにするわ。」

 

また、こいつに目を付けられたような気がしてならない。

 

「術は解きましたが、暫くはまだ降り続けます。それまで待ってください。」

 

「……いいだろう。だが、マダラは健在だ。どういう事だ?」

 

「おそらく、スサノオを使っているかと思います。まあ、スサノオを解けば一瞬で溶けて終わりでしょうが。」

 

「さて……では、その子を縛ってる蟠りを解いてやる方を先としようぞ。」

 

初代様が床に座り込む。

 

長話になりそうね。

 

「うちはの子がオレの話を聞き、どう判断するか分からぬが、この子を今無視すれば、必ず次のマダラとなろうぞ。…それでは戦争が終わり、勝ったとしても意味が無いの。」

 

「…ハァ…兄者の好きにせい。」

 

そうして初代様が話した内容は、マダラとの昔話。そこから最終的にどんな決意に至り、今があるかという話だった。

 

「忍とは耐え忍ぶ者………目標を達成する為に。」

 

あらゆる犠牲を耐える。里の平和の為に。

 

それが初代様の意志。

 

「オレにとってはそれが里作りだった。だが、マダラは別のモノを見つけたようだ。さっき大蛇丸が言った…マダラがこの世の忍を消すとは具体的にどのようなものかは分からぬが…」

 

「無限月読…里も忍も国も民も関係ない。ただ全てを幻術にはめ、己の思い通りに操る事だ。オレの兄が…マダラの弟が…そしてアンタ達が守ろうとしてきた全てを無にするものだ。」

 

「…………」

 

「兄さんは………柱間…アンタの意志を直接語る事もなく受け継ぐ者だったって事だ。そしてアンタ以上に耐え忍んだ。そして木ノ葉の忍である事を誇りだと語って死んだ。アンタを一番理解した忍がうちは一族だったとは皮肉だな。」

 

「ワシを含め、多くの者が初代様の火の意志を受け継いだ。ただワシは誰よりも甘い忍だったかもしれん…二代目様の里作りを上手く引き継げなかった。その為にダンゾウに…里の闇を背負わせてしまった。」

 

「ダンゾウも復讐としてオレが殺った。奴は最後、卑怯な手を使ってでも里を守ると公言していたがな。」

 

「…どうやらワシは火影として失敗ばかりしてしまったようじゃ。今のこのような外の状況を使ったのは、自分の責任でもあるの…」

 

「イヤ、三代目のせいじゃない。アナタはしっかり里の為に尽くされ全うされた。九尾の里襲来の時にオレが倒れてしまった。アナタに火影として期待されていたのに、その期待に沿えなかった。」

 

「私を差し置いてまで選ばれたのにね。皆、残念がってたわよ。」

 

「大蛇丸様、少し拗ねてます?」

 

「フフ…三代目の前だから少しね。……ただ、ダンゾウの件は失敗としか言えないわね。……彼がいなければ、ここまで悲惨なうちは一族の末路ではなかったでしょうし、ここにいる彼女もダンゾウの被害者だもの。」

 

「何、自分は関係ないみたいな言い方してるの?…お前も大いに関係者でしょ。」

 

「どういう事じゃ?」

 

「大蛇丸とダンゾウは裏で繋がっていました。…大蛇丸は木ノ葉崩しが目的。ダンゾウは火影の座が欲しい事から、アナタの殺害を大蛇丸に期待して。…大蛇丸を里に入れるように裏で便宜を図ったのが、ダンゾウという事ですよ。」

 

「………何たる事じゃ………」

 

「それでそこの小娘はなんの関係がある?」

 

「まあ、長話になりますが、私とダンゾウの陰謀に振り回された少女という事でしょうかね。……結果、世界から犯罪者として扱われた哀れな少女が彼女という事ですよ。……まあ、ある意味イタチ以上に酷い二の舞という事です。……イタチはクーデター阻止という明確な目的はあったけど、彼女はただただ私達のおもちゃにされたあげく、世界の敵認定を受けたわけですから。」

 

「だから、なんでお前は他人事のように言うのかしらね。」

 

三代目は完全に真っ青になり、黙り込んでしまった。

 

まあ、死んでしまった人間に言っても仕方ない。それに今更それを持ち出されても、もう遅いのだ。既に私は犯罪に手を染めてる。今更、過程の話をしても仕方ない。

 

「さあ…サスケ君、どうするの?里を潰すのか…それとも…」

 

サスケ君はどっちを選ぶか………

 

「オレは戦場に行く。この里をイタチを…無にはさせん!」

 

「「「「…………」」」」

 

よかった……

 

なんとかナルト君と足並みが揃いそうね。

 

「……決まりだ!」

 

初代様が立ち上がる。

 

「扉間、外へ飛ぶ準備ぞ!!」

 

「飛雷神を使おうにも、今は縛られておる…」

 

「大蛇丸とやら、お前はどうする?」

 

「お前はサスケに付くとさっきは言ったはずじゃがの?」

 

「もちろん同行しましょう。」

 

「え〜〜〜〜!!じゅ…重吾は?」

 

「オレも同行する。サスケを守るのはオレの役目だからな。」

 

「アナタも同行するわよね?」

 

「ええ、そうするわ。…もう雪も止んでる筈だしね。」

 

外に出てみれば、雪はちゃんと止んでいた。

 

戦場に向かうグループと五影を救出するグループに分かれる。

 

穢土転生とサスケ君と重吾君は戦場へ、残りは五影救出へ向かう。私はどちらでもよかったが、大蛇丸を野放しにするのも危険かと思い同行する。

 

サスケ君は火影達がいるから大丈夫だろう。

 

いよいよ、私もこの戦争に本格的に関わる事になりそうだ。


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