チャクラコントロールの修行も佳境に入る。
再不斬さんが池の水面を平然と歩いて中央までいくと、こちらを振り返った。
「お前達もやってみろ。」
「「わかりました。」」
壁歩きの要領で、片足だけを水に浸けてチャクラを調節していく。
壁登りよりも難しいかも。
なかなか、安定しない。チャクラが多すぎると水を弾いてしまう。少ないと沈む。
そうやって、バシャバシャと水を巻き上げていると、ようやく両足を水につけれた。
お兄ちゃんも水に立てたようだ。
そのままゆっくりと歩いて、池の中心まで歩いた。
「よし。今度は水面を揺らす。その状態でも水の上に立てるようにしろ。」
再不斬さんは水面にチャクラを放出して、波をたたせる。
いきなりの波に対して、慌てたことにより、バランスを崩し池に浸かるはめになってしまった。
「ほれ。もう一度だ。」
この後、十数回繰り返し、なんとか揺れた水面でも立てるようになった。
「今日は、水面を走れるようになるまで修行だ。」
それからもひたすら、池の水の上で走ったり、逆立ちしたりしていた。
しかし、
カランカラン
「「!?」」
再不斬さんが仕掛けた罠に何者かが、引っかかる音が聞こえた。
「白、藍!すぐに小屋に入れ!」
「「はい!」」
私達はすぐに小屋に入る。そして、部屋の隅の床の板をずらす。隠し扉だ。そこから地下に入る。
しばらく地下で息を潜めていると、上が騒がしくなる。
「大丈夫かな?」
不安な私はお兄ちゃんに問いかける。
お兄ちゃんは微笑むと私の手を握ってくれた。
「大丈夫だよ。再不斬さんは強い。どんな相手でも倒してくれるよ。」
「うん。」
1時間ぐらいしたところで、再不斬さんが隠し扉を開く。
「白、藍。出てこい。」
外に出ると、少し小屋の周りが荒れていた。
そして、その荒れた地面に倒れ臥す3人の死体。首と胴が別れた死体。胴体を真っ二つにされた死体。脳天から真っ二つになった死体。
それを見た私は、全身から血の気が引くのを感じた。暑くも無いのに汗が額から流れる。唇や手足の感覚が無くなり震える。最後に胃から込み上げてくるものに耐えきれずに吐き出してしまった。
「だ、大丈夫、藍!?」
お兄ちゃんが私に駆け寄る。
「..................」
再不斬さんは、私達の様子を静かに見ている。
ある程度吐いて、何も出なくなったところでようやく落ち着いてきた。
「はあ、はあ、はあ。」
「大丈夫、藍?」
お兄ちゃんが心配そうに私を見てくる。
「う、うん。」
「藍、中に「白、藍」......」
「白、藍。目を背けるな。この光景はお前達がいずれ何度も見るであろう光景。いくら術や体術ができても実戦、特に人の生き死にを体験しなければ、本当の意味で忍びにはなれない。」
「「................」」
「どうだ?この光景を見ても、まだ俺についてくる気はあるか?」
再不斬さんは私達を試す様に聞いてくる。
「はい。僕は再不斬さんの道具ですから。いつでも、どんな時でも側に置いてください。」
「藍はどうだ?」
「私も。再不斬さんについて行きます。」
私達の言葉を聞いた再不斬さんは、満足したのかニヤリと笑った。
「良いだろう。明日からは基本的な忍術をやる。」
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日は沈み、夜も更ける。
俺は池の側で座り、星を眺めていた。
正直、意外だった。白は意志が強かったから大丈夫だとは思った。だが、藍も答えるとは思わなかった。しかも、直前に吐いていたのにも関わらず。白の精神状態に藍は大きく関わる。だから、藍が無理なら二人共木の葉にでも送ろうかと考えていた。
ガチャ。
小屋の扉が開く音が聞こえた。
白か?
小屋の方を見ると、橙色の瞳と目が合った。
「どうした?明日から術の修行だ。早く寝ろ。」
「目が冴えちゃって。えへへ。」
「.................」
藍は俺の横に座る。
「................」
「................」
「意外だった?」
「..................」
「私ね。死体を見て怖かった、とても。でも、再不斬さんに拾われてから、ずっと夢見ている事があるんです。」
「................」
「私、強くなりたいです。」
「それこそ、意外だな。お前は荒事が苦手なタイプだと思っていたのだがな。」
「うん。怖いです。でも、再不斬さんも人殺しは本当は好きじゃ無いですよね。」
「くっくっく。霧隠れの鬼人に何を言う。」
「えへへ、確かにそうですね。」
「................」
「話逸れちゃいましたね。私の夢。それは、再不斬さんやお兄ちゃんを守れるようになる事です!」
「...........ふん。お前が俺を守るなんざ10年はえーよ。」
「えへへ。」
俺は、俺の理想のために戦い続ける。今もこれからも。そのためには力が必要だ。
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「今日は、変化の術と変わり身の術、分身の術。このあたりをマスターしてもらう。」
「「はい!」」
「まず手本を見せる。それを真似てみせろ。」
俺は一通り術を見せる。
「さあ、やってみろ。」
2人が術を真似る。
やはり白は才能もあり優秀なようだ。簡単に術を会得する。
藍はそれに対し、術の才能が無いのか、白にコツを教えて貰いながら何とか体得していく。それと、チャクラ量がかなり少ない。潜在チャクラ量も下忍レベルだ。これは忍びとしてはかなりのハンデになる。長期戦に向かないと言うより、できないな。だが、チャクラコントロールだけは、白よりも上回っている。壁登りや水面歩行は、影で白は何回も練習していたのに対して、藍はほぼ1回で出来ている。
白は普通に忍びとして、育てれば問題無いだろう。藍は繊細なチャクラコントロールを活かした体術使いが向いているだろう。
本当は、繊細なチャクラコントロールで幻術や医療忍術ができればいいのだが、術の才能が無いからな。
っと、どうやらできたみたいだな。術の才能が無いからと言っても、流石に変化の術や変わり身の術はできないと話にならない。
「よし。できたな。今日はそれをひたすら繰り返せ。」
こいつらがある程度動けるようになったら、ここも移動だな。早速追い忍が嗅ぎつけきたからな。