☆一輪の白い花   作:モン太

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感謝②

穢土転生体の兄さんと再不斬さん。

 

姿形はあの頃のまま。懐かしさを感じる。

 

とはいえ、死んで尚戦いを強いられるのは忍びない。

 

「ホウ……大きくなったな、藍。あれから何年だ。」

 

「3年ほどですよ、再不斬さん。………兄さんもお久しぶり。」

 

「………藍。凄く綺麗になったね。」

 

「ありがとう、兄さん。……兄さんも昔のまま、美しいよ。」

 

「……そこはカッコイイって言って欲しいかな。」

 

「フフ…それはごめんね。」

 

「………藍!」

 

横から声が聞こえたので、見るとサクラさんが凝視していた。

 

「……サクラさんも成長されましたね。」

 

「アンタ、なんで暁なんかに……」

 

「…それは今、のんびりと話してる余裕はありませんね。」

 

「………敵なの?」

 

横合いから2体の穢土転生が襲いかかってくる。

 

「来たぞ!」

 

「敵襲だ!!」

 

一人は爆遁のガリさん。もう一人は灼遁のパクラさん。

 

ガリさんが突っ込んできて、パクラさんが火球を飛ばしてくる。

 

「爆遁・地雷拳!!!」

 

「灼遁・過蒸殺!!!」

 

火球を受け止めると同時に凍らして、投げ返す。

 

ガリさんが殴りかかってくる。

 

即座に氷剣を作る。

 

私は顔を下に下げて、右足を大きく左へと踏み出す。そのまま右足に体重をかけて身体を回して、すれ違い様にガリさんの首を後ろから刎ねる。

 

「氷遁・万華氷剣」

 

虚空に4本の氷剣を作り、射出。ガリさんの手足を地面に縫い付ける。

 

私が投げ返した氷玉を避けたパクラさんがサクラさんに向かって火球を投げてきた。

 

「サクラッ!!」

 

「氷遁・万華氷剣」

 

氷剣で射抜いて、火球を爆発させる。

 

既に新たな火球が私に迫っていた。

 

サクラさんへの攻撃は囮って訳か。……でもまだまだ甘いですね。

 

火球を身体を逸らして避けると同時に、右手に持っていた氷剣を投擲する。

 

そのまま左手に氷槍を作り、投げる。

 

氷剣を火球で相殺されるが、すぐに氷槍に貫かれた。

 

「罪の枝」

 

次の瞬間、パクラさんの体から無数の氷の槍が飛び出す。そして、そのまま全身を凍りつかせて、パクラさんを拘束した。

 

「さて、外野は黙らせました。……改めて、カカシさん。二人を譲っていただけませんか?」

 

そう問えば、カカシさんは何か悩む様に黙り込んでしまう。

 

サクラさんもどこか緊張した表情になる。

 

「カカシ、代われ。……どうやら、アイツはオレ達と戦いたい様だ。」

 

「……再不斬。」

 

カカシさんが引いてくれた。

 

「口寄せの術」

 

突然兄さんが口寄せの術を使う。

 

6体の穢土転生が新たに召喚された。

 

歴代の忍刀七人衆か。

 

再不斬さんの手にも首切り包丁がある。

 

水月君が持っていたはずだけど…まあいいか。

 

私は二人に向かって歩こうと踏み出した。

 

「動くな暁!!」

 

だけど、私を取り囲んでいた忍が斬りかかってきた。

 

「駄目!!みんなやめて!」

 

サクラさんが制止の声を上げるが、止まらない。

 

「すいません。少し引いていただけませんか?」

 

剣気を放って威嚇する。

 

私を取り囲んでいた忍達の動きが止まる。

 

「……ありがとうございます。」

 

「随分と堂に入った事ができるようになったな、藍。」

 

「貴方が私を育ててくれたお陰です。」

 

「あの泣き虫で白に引っ付いてた頃とは、もう違うって訳か。」

 

「貴方には感謝しています。貴方が育ててくれたからこそ、今の私がある。」

 

「いいだろう。オレを止めて見せろ。」

 

兄さんが再不斬さんの方を見る。

 

「……藍。ボクは再不斬さんを守れなかったのか?」

 

「いえ、兄さんは再不斬さんを守れたよ。……再不斬さんが死んだのはガトーが裏切ったから。……そして再不斬さんは私達の事を道具だとは思ってなかった。ちゃんと愛してくれてたんだよ、兄さん。」

 

「………!!」

 

「………藍。余計な事をベラベラ話すな。」

 

「……」

 

「…藍、容赦するな。オレを超えてみせろ。…オレはもう死んだ。人間として死んだんだ!」

 

「ええ、これが貴方への恩返しとします、再不斬さん。……兄さん、少し待ってて。後でそっちに行くから。」

 

「………藍。」

 

「リー君。兄さんを少しの間、押さえていただけませんか?」

 

「は、はい!お任せください!!」

 

ニコリと微笑んで頼めば、リー君は顔を赤くして大声で返事してくれた。

 

「忍法・霧隠れの術!!」

 

「氷遁・氷剣」

 

「オレの得意技は覚えているな?」

 

「ええ、サイレントキリング」

 

「そうだ……行くぞ!」

 

背後!

 

横薙ぎに振われる首切り包丁の射線に氷剣を置く。

 

首切り包丁と氷剣がぶつかった瞬間に跳んで首切り包丁を躱す。

 

再不斬さんと力勝負なんてやっても無駄だから。氷剣で速度を殺したので、回避は容易い。

 

だが、再不斬さんも私の動きをよく知っているだけに対応が早い。そのまま下から斬り上げてきた。

 

空中に身を投げている私は回避できない、普通なら。

 

だけど空中での姿勢制御は私の十八番だ。

 

身体を回転させて回避し、千本を投げる。

 

再不斬さんは振り切った首切り包丁を大きく振り回して千本を弾く。

 

着地して向かい合う。

 

「体術は更に向上したな。」

 

「ありがとうございます。」

 

「次、行くぞ!」

 

再び霧に紛れていく再不斬さん。

 

今度は真正面から首切り包丁が振われる。

 

水月君の攻撃を止めた時と同様に、首切り包丁の穴に氷剣を差し込み、地面に突き刺して、強制的に止める。

 

そのまま回し蹴りをして、再不斬さんを弾き飛ばす。

 

「そういえば、再不斬さん。水影が代替りしたようです。」

 

「…何?」

 

「今は五代目水影になっていて、血霧の里では無くなったようです。」

 

「………そうか。」

 

「それから、私。こう見えても結構強くなったんですよ。だから、安心してください。」

 

「…………」

 

私は霧に紛れて気配を消す。

 

再不斬さんの気配を捉えて、風で強化した千本を走らせる。

 

「再不斬さん、本当にありがとうございました。」

 

再不斬さんの身体がバラバラになって倒れる。

 

「………ああ。オレも満足だ。」

 

再不斬さんの身体が崩れ去る。

 

視界を遮っていた霧が晴れていく。

 

再不斬さんが逝った。

 

次は兄さんだ。

 

兄さんを探してみれば、リー君にガイさんとサイ先輩が相手をしていた。

 

「兄さんを抑えていただいて、ありがとうございます。ここからは私が相手します。」

 

「君は……」

 

「…………」

 

ガイさんとサイ先輩は少し警戒心を見せる。リー君は全く警戒していない。

 

あまりにも純粋すぎて不安になるね。

 

「………藍。再不斬さんは?」

 

「……うん。先で待ってるよ、兄さん。」

 

兄さんと向かい合う。

 

「ガイさん、リー君、サイ先輩。どうしても信用出来ないなら、ここで見張ってもらって構いません。……そこのカカシさんやサクラさんのように。」

 

後方で二人の気配がビクッと動いたのを感じる。

 

「……先輩?」

 

サイ先輩が疑問の声を上げる。

 

「私も少しの間だけ、『根』に所属していました。だから、貴方は私の先輩に当たります。……まあ、この話はまた機会が有れば…」

 

「行くぞ、リー。」

 

「いいんですか、ガイ先生?」

 

「カカシが見ているなら、オレ達は不要だ。まだ、穢土転生の敵も他にいるからな。」

 

「わかりました、ガイ先生。」

 

ガイさんとリー君は別の戦場へ去っていく。

 

「秘術・魔鏡氷晶」

 

無数の氷の鏡が私を取り囲む。

 

「……兄さんの奥義。久しぶりに見るね。」

 

「藍も氷遁に目覚めたみたいだね。」

 

「私の氷遁は少し毛色が違うんだよね。だから、この術は使えないの。」

 

兄さんが鏡に入り込む。

 

鏡の反射によって、全ての鏡に兄さんが映し出される。

 

「ナルト君は成長したかい?」

 

「……うん。とっても立派になっていたよ。今じゃ里の英雄になってるよ。…火影になるのも時間の問題だよ。」

 

「なら…彼はもっと強くなる。」

 

「そうね。きっと里だけじゃ無くて、この世界すら救ってくれる存在になると思うわ。」

 

もうすっかり、私の方が背が大きくなった。それだけ、時間が経ったんだ。

 

全方位から千本が飛んでくる。

 

「時間遅延」

 

飛んできていた千本の動きが急激に遅くなる。

 

「秘術・千殺水翔」

 

飛んでくる千本を全て迎撃する。

 

「この術を破ったのは、これで二人目になるね。」

 

「兄さんの術が破られたのは、あれが最初で最後だったから……」

 

今度は更に多くの千本が飛んでくる。

 

私も千本を投げて、迎撃。迎撃しきれない物は千殺水翔と体術で全て回避する。

 

「……藍、ボクはね。君とここで再会できて嬉しい反面、悲しくもあるんだ。」

 

「兄さん…………」

 

「強く、立派に成長した姿は嬉しい。………だけど、藍には戦いとは無縁の暮らしを送って欲しかった。」

 

「………そうね。ごめんね。兄さん。」

 

「……謝らないでよ。これはボクが藍を守りきれなかったからだ。」

 

「そんな事はない!!兄さんはいつも私を守ってくれた!!!……これは世界中の誰にも否定させない!!!」

 

思わず声に力が入る。

 

「貴方は私にとって、最強で、最愛で、最も頼りになるお兄ちゃんだ!!!」

 

どうか届いてほしくて、全力で叫ぶ。

 

「………兄さん。確かに私は今でも戦い続けてる。だけど、幸せなんだよ。…色んな人に出会った。」

 

今までの思い出を想起する。

 

「クロって妹分ができた。いつも私に懐いてくれる可愛い子だよ。

 

サソリとデイダラって言う友達もできた。いつも一緒にいるととても楽しくて、よく話相手にもなってる。私を妹のように可愛がってくれる人達だよ。

 

鬼鮫さんって言うちょっと強面の人にも世話になってる。いつも私の行動を見て叱ってくるけど、なんだかんだ世話を焼いてくれる優しい人だよ。まるで父親みたいな人だね。

 

トビって友達もいるんだけど、今は喧嘩中。でも仲直りできると思うんだよ。いつも悲しそうにしてるから、きっと話せば分かり合えると思うんだ。

 

小南と長門って言う仲間もできた。同じ夢を追いかけてる同志。その人達もナルト君に期待してる。今も一緒に戦ってる人達だよ。

 

イタチって言うサスケ君のお兄さんにも会ったよ。いつも私を護ってくれる姿は白兄さんにそっくり。やっぱり兄さんという人種は似てくるのかもしれないね。………ついでに私の恋人。

 

兄さんに紹介できれば良かったなぁ。」

 

話してる内に兄さんの表情も柔らかくなってくる。

 

「……あはは。最後のはちょっと嫉妬しちゃうね。…………でも、幸せなんだね。」

 

「そう。兄さんのお陰だよ。」

 

千本の雨が止む。攻撃が決まらない事から、攻撃パターンが変わったか。

 

千本では無く、兄さんが千本を片手に突っ込んできた。

 

だけど、根本的に速度は変わらない。

 

斬りつけてくる兄さんの右手を左手で優しく包み込んだ。そのまま兄さんを抱き寄せる。

 

やっぱり、私の方が背が高くなったね。

 

兄さんに私の心音が聞こえるように強く抱きしめる。

 

「………ありがとう。愛してるよ、お兄ちゃん。」

 

お兄ちゃんの目から涙が流れる。

 

「うん。ボクもありがとう、藍。元気でね。」

 

抱きしめていた兄さんの身体が崩れ去った。同時に氷の鏡が砕け散る。

 

さようなら、お兄ちゃん。先に再不斬さんと待っててね。


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