この1週間、再不斬さんの元でチャクラコントロールの修行をしてそれなりに成果が出てきた頃。
「白、藍。今から出かけるぞ。ついて来い。」
「「はい。」」
再不斬さんはそれだけ言うと家を出て行く。私達はそれについて行く。
再不斬さんの背中には、大きな大剣「断刀 首切り包丁」。数日前に水影から「忍刀七人衆」に任命されて、手に入れたそうだ。
その水影。四代目水影 やぐら。尾獣 三尾の人柱力でその力を完全に制御できる、霧隠れの最強の忍び。この人が、今の水の国の悪政を敷いてる張本人らしい。あんまり難しい事は私にはわからないけど、私達が村から追い出される間接的な原因らしい。
「ここに入れ。」
どうやら目的地についたみたい。
霧隠れの里の外。里を見下ろせる場所の小さな小屋。
「白、藍。俺がいいと言うまでここから出るなよ。何があってもだ。わかったな。」
「「はい。」」
ガチャ。
そう言うと、再不斬さんは私達を小屋に入れた。中は、再不斬さんの家と違い、苦無や手裏剣の忍具が沢山ある。
「どうするの?お兄ちゃん。」
「そうだな。ずっと何もしないのは退屈だし。チャクラコントロールの練習をしておこうか。」
「わかった。」
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しばらくすると、外が騒がしくなる。具体的には、爆発音や金属音。そして、悲鳴が聞こえてくる。
私は退屈だったのと好奇心から外を覗こうと、扉に手をかけるのだが、
「ダメだよ、藍。再不斬さんが外に出るなと言ってたでしょ。」
お兄ちゃんに止められた。
「うぅ〜。気になるもん!」
駄々をこねる私にお兄ちゃんは苦笑いを浮かべる。
「じゃあ、これを練習してみよう。」
「なに?」
お兄ちゃんは、小屋の壁に向かって歩いて行く。そのまま壁に垂直に登りだす。
「おお〜!どうやったの?」
「足にチャクラをためるんだよ。そうすると壁に足が吸い付くんだよ。」
「やってみる!」
私は足にチャクラをためる。そのまま壁に足をかける。
「おお〜。」
壁に足が貼り付いた。そのまま二歩目も壁に貼り付いた。そして、三歩目。
「あれ?」
一歩目に出した右足が壁から離れない。
「うぅ〜、えい!」
足を剥がそうとして力んだ瞬間、今度は壁から弾かれて、床に激突した。
「いったあああい!」
私は床にのたうち回る。
「チャクラが多すぎると、逆に壁から弾かれるんだよ。だから、壁から足を離す時はチャクラを減らせばいいんだよ。」
「もっと早く言ってよ!意地悪。」
「ははは。藍があまりにも飲み込みが早いから、びっくりしちゃって、見惚れてたよ。一歩目で無理だと思ってたから。」
お兄ちゃんの賞賛の声に顔が赤くなる。
「そ、そうなの?」
「うん。藍は才能があるよ。」
「えへへ〜。」
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それから数時間後。私の壁登りが大体できるようになった頃。
ガチャ。
再不斬さんが帰って来た。首切り包丁にべったりと血を付けて。
「二人共来い。」
私達は再不斬さんに連れられ、外に出る。里を見下ろすと、所々に煙が上がっている。
「先程、水影の暗殺を試みたが、手傷を負わせるだけで精一杯だった。幸い、数人の部下も殆ど手傷を負わずに逃げる事に成功した。」
再不斬さんに拾われて、数日の間に言われていた事だ。「俺はあのいけ好かない野郎をぶっ殺す」と。
「白、藍。残念だ。今宵限りで俺は水の国を捨てる。しかし、必ず俺はこの国に帰ってくる。この国を手中に入れてみせる。そのために必要なのは慰めや励ましや、なんの役にも立たない言葉じゃ無い。本当に必要なのは.........」
「わかっています。安心してください。僕は再不斬さんの武器です。言いつけを守るただの道具として、お側に置いてください。」
「...........いい子だ。」
再不斬さんは、何か言いたそうにしていたが、それを飲み込んでニヤリと笑った。
「これから、新しい拠点に移動する。」
「「わかりました。」」
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「ここだ。」
再不斬さんについて歩く事、一週間。途中宿で休憩を挟んだりしたけど、だいぶ移動した。船の移動もあった。別に船酔いとかは無かったけどね。道中で小さな白髪の男の子とすれ違ったりもした。
場所は水の国と火の国、雷の国のちょうど中間に位置する島。その島の密林に囲まれた大きめの小屋。近くには小さな池もある。
「今日からここで暮らす。俺がいない時は小屋から出ずに雪兎の世話をしていろ。」
「「はい。」」
荷物を小屋に運ぶ。再不斬さんが巻物を広げる。巻物には中心に『具』と書かれている。そこに手を当てると、
ボフッ!
煙が上がり、忍具や鍋、その他の生活用品が出てくる。それを手に取り、小屋に運ぶ。
「今日はこれだ。」
荷物をある程度片付けたところで再不斬さんは3つ程巻物を取り出す。
「この巻物には、薬草について詳しく書いてある。医療忍術を扱えればいいのだが、それを扱える忍びは数が少ない。俺も医療忍術はできないしな。だから教える事はできん。代わりに薬草の知識は徹底的に叩き込め。」
「「はい。」」
「それと、血継限界についても俺が扱えるわけでは無い。その中から自分達でどの血継限界かを探し、技を磨け。」
そう言うと、再不斬さんは私達に小さな紙を渡して来た。
「それはチャクラ紙。チャクラの性質は5つあるのは知ってるな?」
「はい。水、火、風、土、雷ですね。」
「そうだ。この紙にチャクラを流すと流した人間のチャクラに合わせて、紙が反応する。」
再不斬さんもチャクラ紙を出して、チャクラを流す。すると紙が湿って濡れた。
「俺は水の性質だ。つまり水遁。まだ、忍術は早いが、性質がわかればどの血継限界かのヒントになるだろう。」
「なぜ、ヒントになるんですか?」
「血継限界には2つの種類がある。特異体質のパターンと秘伝忍術のパターンだ。まあ、そこの巻物を読めばわかる。この方法は、特異体質の見分けには役に立たないが、秘伝忍術の見分けのヒントになる。」
「なるほど。」
私はチャクラを流してみる。すると、再不斬さんと同様に紙が濡れた。お兄ちゃんの方を見ると、お兄ちゃんの紙も濡れていた。
「水の性質か。水の国で血継限界の秘伝忍術は、沸遁、溶遁、氷遁ぐらいだな。特異体質は屍骨脈だな。」
ん?
再不斬さんがあげた中で、ピンとくるものがあった。
確か、お兄ちゃんは水を凍らす事ができたはず。
「どうした、藍?何か気がついたか?」
「あの、お兄ちゃんは確か、水を凍らす事ができたはずです。だから、氷遁じゃないかなと思います。」
「なるほど。ならやってみせろ。」
「はい。わかりました。」
お兄ちゃんは両手をかざす。すると水の球ができ、そして凍らして、氷の球を作った。
「確かに、これは氷遁だな。なら、風の性質も持ってるはずだ。忍術は水遁と風遁をメインでやっていく。.......じゃあ、薬草の方に取りかかれ。」
再不斬さんはチャクラ紙を片付ける。そして、扉を開ける。
「俺は外に罠を仕掛けてくる。夕飯までには帰ってくる。そのうち、飯の作り方や罠の仕掛け方も覚えてもらう。いいな?」
「「はい。」」