☆一輪の白い花   作:モン太

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理想論

谷の国にゼツと2人で来ていた。

 

この国は風の国と火の国に挟まれている。この前の一尾を巡る抗争があったため。暁の情報を豊富に抱えているだろうと言う事でその情報を抹消する潜入任務を2人で終えたところだった。

 

「久しぶりにツーマンセルだったね。」

 

「オレタチハ ホカノメンバートハ ヤクワリガ チガウカラナ。」

 

「本当に人遣いが荒いよね、リーダー。」

 

「その能力に特化してるのはゼツだけだしね。……前線に立たないだけでも恵まれてるって考えたら?」

 

「コンも感知タイプじゃないか。手伝ってよ。」

 

「私も手伝ってるから、他のツーマンセルの案内役もこなしてるんだよ。」

 

「カンチタイプ ノ メンバー ガ オオケレバ クロウ シナカッタンダガナ。」

 

「サポート役が多いからね。感知タイプは戦闘能力が低い傾向だから、ゼツみたいに突出していないと暁には所属できないよ。」

 

「それもそうだね。」

 

私は隣を歩く、ゼツを盗み見る。

 

本当にこいつは突出してるよね、見た目が。

 

「普通に歩いてると目立ちまくりだね。……能力知らなければ、とても隠密が専門職だとは思わないよ。」

 

「……ジッサイニ ケッカヲ ダセバ モンダイナイ。」

 

「そうだね。」

 

そう話しながら歩いていると、ゼツが連絡を受けた。

 

「おっと、リーダーから連絡だ。二尾を捕まえたから、回収しろってさ。」

 

「ふーん。誰が捕まえたの?」

 

「ヒダン ト カクズダ。」

 

「……げっ、あの2人か。」

 

「まあ、そういう事だからさ。じゃあね。」

 

「はーい。」

 

手を振って見送る。ゼツは地中に潜っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そうして数日が経過した時、ユキウサギが情報を持ってきた。

 

どうも火の国の内側。特に国境付近で20の小隊が暁の捜索をしているらしい。

 

やる気満々だね。意気込みが凄い。

 

捕獲して尋問などで情報を吐かせる。或いは抹殺が狙いかな。

 

「水分身の術」

 

10体の水分身を作る。

 

囮だ。影分身なら情報も得られるんだけど、私は会得していない。使えるのは水分身か氷分身だけだ。氷分身は高性能だけど、此方が氷遁遣いだって一瞬でわかってしまうからね。

 

水分身で囮。ユキウサギで情報。これで影分身分の働きをしてもらおう。一応、水分身のチャクラ消費量は影分身と比べて燃費が良いっていうメリットもあるし。効率は悪いけど……

 

まあ、できないから仕方ないよね。

 

『二尾を封印する…今すぐ跳べ。最優先だ。』

 

リーダー長門から連絡だ。

 

意識を飛ばせば、すぐに封印を始めた。

 

『数日の間があったけど、よく死ななかったね。』

 

重症を負い、意識を失っている女性に目を向ける。

 

どうせ飛段の事だから、急所を攻撃したんだろう。よく殺さなかったな。

 

『人柱力は結構タフだからな。』

 

『これから三日はかかる覚悟しておけ。』

 

『三日かよ…。長げーな!こっちは雨だぜ。』

 

『飛段…お前が言うな。』

 

『木ノ葉の奴ら、もう少しで皆殺しにできたんだぜ。無神論者どもにジャシン教の存在を知らしめてやるところだったのによォ!』

 

相変わらずよく吠える。それにしても、木ノ葉の小隊がぶつかったのが、よりにもよってこいつらか。命拾いしたと言えるね。絶対に殺す前提でしか戦わないから。

 

この人柱力の生捕にすらリーダーに異を唱える程だ。

 

『木ノ葉は無神論者では無い。先代を神とし火の意志を思想に行動する。まあ、そんなものは戦う為の大義名分だとも言えるな…』

 

それでも、あるかないかでなら、あった方がいい。作られた大義すらなく殺しを楽しんでいる奴らがいるんだから。

 

『てめェ…そりゃオレを馬鹿にして言ってんのか!あぁ!?』

 

『いや…お前の戦う理由を別段馬鹿にしたつもりはない。オレも同じ穴のムジナだからな。戦争の理由なんてのは何でもいい。宗教・思想・資源・土地・怨恨・恋愛・気まぐれ…どんな下らない理由でも戦争するだけの理由になってしまう。』

 

長年、この問題に取り組んでいるであろう長門の口からは出る言葉には重みがある。

 

本当に争いをなくす事は難しいと感じる。

 

『戦争は無くならない。理由は後付けでいい…本能が戦いを求める。』

 

『誰もてめーの長ったらしい話は聞いてねーんだよ!オレにはオレのやり方ってもんがある。オレ自身の目的もある。全てを組織に委ねるつもりはねーからな!』

 

『暁という組織に属している以上、その目的にも協力してもらう。暁の目的が達成されればお前の願いもすぐに成就するだろう。』

 

……いや、それは無いよね。平和を目指してるんだから。

 

……嘘の目的を話すつもりか。

 

『フン…あれこれ格好つけたところで暁の目的はただの金集めになってるじゃねーか!角都と同じだ…戦う理由で一番嫌いなタイプだぜ!!』

 

ここだけ切り取れば、立派に聞こえるんだけどねぇ。

 

『そうだ…確かに当面の目的は金だ。…が、本来暁の目的は別の所にある。その目的の為に莫大な金が要るんだ。』

 

『オレはトビとコンの次に新入りだからな。オマエの口から詳しい事も聞いたことねー!オレのいねーとこでコソコソと…』

 

『……拗ねてるのか?フ…なら、そろそろ教えてやろう。暁の最終目的は段階を踏む事で達成できる。それは全部で三段階…まず第一が金だ。』

 

『チィ…』

 

『そして第二段階がそのお金を元手に忍世界初の戦争請け負い組織を作る事だ。』

 

どちらも既にやってる事だね。規模を大きくしたいんだろうけど。

 

『…オイオイ。それじゃ他の忍里のやってる事と同じじゃねーか。依頼をこなして報酬を得るって事だろーが。てめーは召抱えてくれる国も無ェ小さな里の長にでもなりてーのか?下らねぇ……』

 

やってる事だけ見れば、だいたいその通りだよね。……尾獣を集めようとしている事以外は。

 

『フッ…まるで違う…国お抱えの里とはな。順を追って説明してやる。強力な忍里を持つ国にとって忍ビジネスは、その国の収益において大きな役割を担っている。忍里は国内外の戦いに参入する事で莫大な金を稼ぎ、国の経済を支えてると言ってもいい。つまり国が安定した利益を得るには、それなりの戦争が必要になる。しかし、今の時代。小さな戦いこそ数あれ、かつてのような大戦は無くなった。』

 

それ自体はいい事何だけどね。

 

『国は里を縮小し、多くの忍が行き場を失った。忍は戦う為に存在する。国の為に命をかけて働いた見返りがこの有り様だ。』

 

問題はどうやって飯を食わせるかだもんね。

 

『忍び五大国はまだいい…国も里も大きく、信頼もある。他国から依頼も多く安定している。が…小さな国はそうもいかない。忍里の保有には戦時と同じかそれに近いレベルで平時にも莫大なコストがかかる。だからと言って里を縮小しすぎれば、突然の開戦に対応できない。………だから我々暁が作るのだ!国というものに属せず、必要な時に必要なだけの忍を用意し、必要な力を持って、あらゆる小国や小さな里から金で戦争を依頼として請け負う組織!』

 

理論の筋は通ってる。でも、とても難しいように思う。確かに暁のメンバーは強いけど、10人しかいない。それを成すだけの組織としての強さに限界があると思う。

 

『最初は、端金であらゆる戦争を一手に引き受け、戦争市場を牛耳り、さらには尾獣を使い市場の大きさに合わせて戦争を引き起こし、やがて全ての戦争をコントロールし、独占支配する!』

 

『…………』

 

『…それに伴い大国の忍里というシステムも崩壊….暁を利用せざるを得なくなる…そしてその先にある本当の目的に我々はたどり着く…目的の第三段階…』

 

リーダーが手を掲げた。

 

『世界を征服する…』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

三日後、二尾の封印が完了した。

 

『よし終わりだ。解散だ。』

 

『やっとか!』

 

『木ノ葉へ行くぞ、飛段。』

 

『角都、飛段。お前ら木ノ葉へ行くんなら、一つ忠告しとくぜ…うん。あそこにはうずまきナルトって人柱力がいる。そいつに遭ったら気をつけるこったな…うん。』

 

そうか。ナルト君達と戦ってサソリは死んじゃったもんね。

 

『オイオイオイ!てめーと一緒にすんじゃねーよ。デイダラちゃんよォ!角都に腕くっつけて貰った弱輩もんが!』

 

『首よりはマシだ…』

 

『ってオイ!コラ、角都!てめーはどっちの味方だ!?』

 

『…………』

 

イタチをチラッと確認するけど、特に反応ない。なら私も様子見だけに留めておく。

 

ナルト君側の心配は要らなそう。だけど、飛段と角都は心配だな。サソリもそうだったけど、不死身はどこか死ぬはずがない、負ける筈が無いと油断している。

 

まあ、彼らに直接言ったところで聞き入れては貰えないだろうけど。

 

『いいから行くぞ。』

 

『チィ…』

 

2人が去った。

 

この時に感じた嫌な予感が的中してしまい、結局この後2人が帰ってくる事はなかった。


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